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博士 (水産 科学) 芳村 毅

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Academic year: 2021

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博士 (水産 科学) 芳村    毅

学 位 論 文 題 名

水 圏 に お け る り ン の 循 環 機 構 と 制 限 栄 養 塩 と し て の そ の 重 要 性

学 位 論 文 内容 の 要 旨

  水 圏の 生態 系に おい て最 も重 要な 生産者 であ る植 物ブ ラン ク卜ンが作りだす有機物は 食物 連鎖 を通 して 高次 の栄 養段 階に 転送さ れて おり ,水 圏の 生態系は植物ブランクトン によ る基礎生産によって支えられていると考えることができる.海洋においては窒素が,

湖沼 にお いて はり ンが 最も 一般 的に 基礎生 産を 制限 して いる と考えられてきたが,近年 いく つか の海 域に おい てり ンが 基礎 生産を 制限 して いる こと が明らかとなり,湖沼・海 洋を 問わ ずり ンの 動態 が注 目さ れて いる. リン は植 物プ ラン クトン体内で核酸・リン脂 質 .ATPと いっ た重 要な 働き をす る生体 構成 元素 であ るが ,天 然水 中に 存在 する 生物 学 的に 利用 可能 なり ンは 非常 に低 濃度 である ため にし ばし ば植 物プランクトンの生長の制 限要 因と なっ てお り, リン が水 環境 中をど のよ うに 循環 して いるのかを知ることは非常 に重 要な 課題 であ る. 本研 究は 同じ 亜寒帯 域に 属す る淡 水域 である渡島大沼および沿岸 海域 であ る噴 火湾 を調 査対 象と し, リン現 存量 の変 化を 精密 に測定した,さらに,リン の動 態を 知る ため に放 射性 同位 体を 用いて りン 酸塩 の取 り込 み実験をおこなうとともに ア ル カ リ フ オ ス フ ァ夕 ― ゼ 活 性(APA)を測 定し た. アル カリ フオス フん ター ゼ(APase) はり ン酸 塩が 低濃 度に なっ た際 に溶 存有機 リン(DOP)を 利用 するために植物プランクト ンお よび バク テリ アが 作り だす りン 酸モノ エス テル 加水 分解 酵素である.本研究では,

植物 プラ ンク 卜ン を単 なる ーつ の群 集とし てと らえ るの では なく,バクテリアと植物プ ラン クト ン, ある いは サイ ズの 異な る植物 プラ ンク トン をそ れぞれ独立した群集として とら える ため に, 孔径 の異 なる フィ ル夕一 によ るサ イズ 分画 法を用いて三つの群集に分 画し ,水 圏の りン の循 環機 構の 解明 を試み た,

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  渡島大沼におけるク口口フアルa (Chla)濃度は平均12 pgL.1であり,―年を通して植 物プ ランク卜ン現存量が高かった.また,基礎生産量も35―460 mg‑C m'h.1と高く,生 産性の非常に高い湖であった,―方,栄養塩環境は溶存無機窒素態栄養塩(DIN)濃度が高 いも のの溶存反応性リン(SRP)濃度が一年を通して極めて低かった.大沼は湖水の平均 滞留 時間 が80日 と短 く, 河川 水の 影響を強く受けており,N:P比が高い栄養塩の負荷が 大沼の栄養塩環境(N:P〓74―3000)に大きく影響していた.一方,植物プランク卜ンの元 素組成比(N:P=33)はレッドフィールド比(N:P=16)を上回っており,リン制限を受けてい る傾 向が 見られ た. この こと は植 物プ ラン ク卜 ンの りン 制限 の指標であるAPAが高かっ たことからも示唆された.プランク卜ン群集によるりン酸塩の取り込み速度は2.4ー6.3 nmoI一PL.1min.1とはやく,ここから計算された全リンの回転時間は75―300分であり,

取り 込み から分 解を 経て 無機 化さ れるまでの過程が数時間のうちにおこなわれるりン循 環系が構築されていた‐リン酸塩の取り込みを優占したのは012ー1um画分(45―86%)で あっ たが,O.2−1um画分の植物プランクトンの生物量および基礎生産量(無機炭素同化 速度)が低かったことから(0−30%),リン酸塩取リ込みの多くはバクテリアによっておこ なわ れて いたこ とが 示唆 され た. 植物 プラ ンク 卜ン は非 常に 高いAPAを有しており,基 礎生 産が りン酸 塩の 直接 の取 り込 みに よっ て支 えら れて いた わけではなく,APaseを作 りだ すこ とによ ってDOPを加 水分 解し ,生成 した りン 酸塩 を取 リ込んで増殖していたと 考えられた.

  一 方, 噴火湾 にお けるChla濃度 は春季ブルーム時には20ugL・1に達するものの,他の 期 間 は1ugL.1以下 であ り, 大沼 と比 較し て生 産性 は低 かっ た.春 季ブ ル― ム前 のSRP 濃 度 は1HMであ った が, 春季 ブル ーム によ り硝 酸塩 ・ケ イ酸 塩が枯 渇し た時 点でSRPは 0.3uM残 存して いた .表 層のSRP濃度はこれ以降DINが枯渇している環境下において徐々 に滅 少し ,8月 末に は完 全に 枯渇 した .この 時期 の表 層水 は淡 水の流入による塩分の低 下が みら れるこ とか ら, このSRP濃度 の滅少 には 流入 河川 およ び降雨からもたらされた 窒素に富んだ栄養塩の供給(N:P=88−190)が大きく関与していた.SRP濃度が減少して いく 夏期 に測定 した りン 酸塩 取り 込み 速度 はSRP現存 量の 減少 速度と比較的よく一致し てい た. また,SRP現存 量の 減少 速度 はセジ メン ト卜 ラッ プ実 験によって報告されてい

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るりンの沈降粒子束とも一致したことから,表層でりン酸塩が生物に取り込まれ,沈降 除去されたために表層のSRP濃度が減少していたと推測された,Chla濃度の増加した 10月を除きIリン酸塩の取り込みは0.2−1um画分が優占したが(55―94%),0.2−1pm 画分は基礎生産においても主画分であり(23ー85%),大沼で見られたほどバクテリアが りン酸塩の取り込みに関与していなかった.一方,リン酸塩の取り込み速度はSRPが残 存し てい た期間 は0.2−0.5 nmol L‑1 h‑1であったが,SRPが枯渇したときには2.2 nmolL.1h.1と高く,リンが非常にはやく循環していた,SRPの枯渇した8月には非常に 高いAPAが見られたが,その大部分は10 pm以上画分によるものであった.この画分に 含まれる大型の植物プランク卜ン群集はChlaにして全体の7%を占めたが,小型プラン クトン群集にりン酸塩の取り込みを優占されたためにりン不足となり高いAPAを示して お り , 生 物 量 を 維 持 す る た め にDOPの り ン を 利 用 し て い た と 推 測 さ れ た ・   大沼と噴火湾は栄養塩環境は大きく異なったが,生物活動が活発化する以前の栄養塩 のN:P比が大沼は330であったのに対し,噴火湾は11であり,大きく異なるN:P比のもと で植物プランク卜ンがN:P=16の比で栄養塩を同化することにより,大沼はりン制限と なり噴火湾は窒素制限になったと考えられた.その後河川および降雨によるN:P比の高 い栄養塩の負荷を受けるために大沼はりン枯渇環境が継続した一方,噴火湾表層は窒素 枯渇環境を維持しながらもSRP濃度を徐々に減少させた.湖沼および沿岸海域において りン制限環境が形成される過程には系外からのN:P比の高い栄養塩の負荷が大きく関わっ ていた.

  一方,リン酸塩の取り込みのサイズ組成は0.2−1pm画分が優占する点で大沼と噴火湾 は―致した‐0.2−1pm画分に取り込まれたりンは微生物食物連鎖を経由するなかでの分 解過程で放出され,これが再び利用されることによりはやいりン循環機構が成り立って いたと推測された.大沼は1pmよりも小型の植物プランク卜ン量が少なかったためにり ン酸塩の取り込みに対するバクテリアの寄与が明確であった.噴火湾では1umより小型 の植物プランクトンが基礎生産に大きな役割をはたしていたことから,リン酸塩の取り 込みをめぐる0.2−1um画分内でのバクテリアと植物プランク卜ンの競合関係は明らかで はなかった,しかし,1―10um画分にもりン酸塩の取り込みが見られたことはバクテリ アによるりン酸塩の取り込みを制限する要因があったことを示唆しており,バクテリア     ―1342−

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の炭素源である溶存有機炭素の供給が不足していたためにバクテリアの増殖カs'$u限され,

その 結果リン 酸塩の取 り込みが制 限されて いたと推 測された.一方,大型植物プランク ト ン はり ン 酸塩 の 取 り込 み に何ら 関与して おらず,APaseを作りだ すことに よってDOP から りンを得 て増殖し ていた,APaseは ,特に大 沼では高 い基礎生 産量を支 えるりン の 取り込みをも可能にする働きを担っていた.

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学位論文審 査の要旨 主査

副査 副査 副査

教授 教授 教授 助教授

久万 角皆 松永 工藤

学 位 論 文 題 名

健志 静男 勝彦     

水圏におけ るりンの循環機構と 制限栄養塩と してのその重要性

  リ ン は 植 物 プ ラ ン ク ト ン 体 内 で 核 酸 ・ リ ン 脂 質 . ATPと い っ た 重 要 な 働 き をす る 生 体 構 成 元 素 で あ る が , 天 然 水 中 に 存 在 す る 生 物 学 的 に 利 用 可 能 な り ン は 非常 に 低 濃 度 で あ る た め に し ば し ば 植 物 プ ラ ン ク ト ン の 生 長 の 制 限 要 因 と な っ て お り, リ ン が 水 環 境 中 を ど の よ う に 循 環 し て い る の か を 知 る こ と は 非 常 に 重 要 な 課 題 であ る . 本 研 究 は 同 じ 亜 寒 帯 域 に 属 す る 淡 水 域 で あ る 渡 島 大 沼 お よ び 沿 岸 海 域 で あ る噴 火 湾 を 調 査 対 象 と し , リ ン 現 存 量 の 変 化 を 精 密 に 測 定 す る と と も に , リ ン 酸 塩 の取 り 込 み 実 験 お よ び 溶 存 有 機 リ ン(DOP)加 水 分 解 酵 素 で あ る ア ル カ リ フ ォ ス フ ァ タ ー ゼ 活 (APA)の 測 定 を お こ な っ た . 本 研 究 で は , 植 物 プ ラ ン ク ト ン を 単 な る ー つ の 群 集 と し て と ら え る の で は な く , 孔 径 の 異 な る フ ィ ル タ ー に よ る サ イ ズ 分 画 法 を用 い て 三つ の群集 に分画し ,水圏 のりンの 循環機構 の解明 を試みた .

  渡 島 大 沼 に お け る ク 口 口 フ ィ ルa (Chlあ 濃 度 は 平均12 pgLlで あ り, 基 礎 生産 量 35460mgCm2h1と 高 く , 生 産 性 の 非 常 に 高 い 湖 で あ っ た . 一 方 , 栄 養 塩 環 境は 溶存無 機窒素態 栄養塩 (DIN) 濃度が高 しゝも のの溶存 反応性 リン(SRP)濃 度が一年 を 通 し て 極 め て 低 く , 河 川 か ら 高 いNP比 の 栄 養 塩 負 荷 が 栄 養 塩 環 境 に 大き く 影 響 し て いた . 一 方, 植 物 プ ラン ク ト ンの 元 素 組成 比 (NP33)はりン 制限を 受けてい る 傾 向 を 示 し た が , こ の こ と は 植 物 プ ラ ン ク ト ン のり ン 制 限 の指 標 で あるAPAが 高 か っ た こ と か ら も 示 唆 さ れ た . プ ラ ン ク ト ン 群 集 に よ る り ン 酸 塩 の 取 り 込 み 速 度 は 2463nmoH L1mm1と は や く , 取 り 込 み か ら 分解 を 経 て無 機 化 され る ま での 過 程 が 短 時 間 の う ち に お こ な わ れ る り ン 循 環 系 が 構 築 さ れ て い た . リ ン 酸 塩の 取 り 込み を優占 したのは0.21ルm画分(45ー86%)であったが,021」リm画分の植物プラ

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ンクトンの生物量および基礎生産量が低かったことから(0―30%),リン酸塩取り込 みの多くはバクテリアによっておこなわれていたことが示唆された.植物プランク トンは非常に高いAPAを有しており,アルカリフエスファターゼ(APase)を作りだ すことによってDOPを加水分解し,生成したりン酸塩を取り込んで増殖していたと 考えられた.

  一方,噴火湾におけるChl讙度は春季プルーム時には20 p{gL・lに達するものの,

他の期間はlygL一1以下であり,大沼と比較して生産性は低かった.春季ブルーム によりSRP濃度は大きく減少するものの3割は残存するが,これ以降も徐々に減少 し,8月末には完全に枯渇した.このSRP濃度の減少には流入河川および降雨から もたらされた窒素に富んだ栄養塩が大きく関与していた.リン酸塩の取り込みは 0.2ー1メm画分が優占したが(55―94%),0.2−1ルm画分は基礎生産においても主画分 であり(23―85%),大沼で見られたほどバクテリアがりン酸塩の取り込みに関与して いなかった.一方,リン酸塩の取り込み速度はSRPが残存していた期間は0.2‑0.5 nmol L‑1h−1であったが,SRPが枯渇したときには2.2 nmolL―th−1と高く,リンが 非常にはや く循環して いた,SRPの枯渇した8月には10 ym以上画分による非常に 高いAPAが 見られたこ とから,生 物量を維持 するためにDOPのりンを利用してい たと推測された.

  大沼は一年を通してりン制限環境であった一方,噴火湾はブルーム後には窒素制 限環境であったが,その後河川および降雨から多量の窒素の負荷を受けるために徐々 にりンが枯渇しており,湖沼および沿岸海域においてりン制限環境が形成される過 程 に は 系 外 か ら のN:P比 の 高 い 栄 養 塩 の 負 荷 が 大 き く 関 わ っ て い た .   一方,リン酸塩の取り込みのサイズ組成は0.2―1ym画分が優占する点で大沼と 噴火湾は一致した.0.2−1」レm画分に取り込まれたりンは微生物食物連鎖を経由する なかでの分解過程で放出され,これが再び利用されることによりはやいりン循環機 構が成り立っていたと推測された.大沼は1 ymよりも小型の植物プランクトン量が 少なかったためにりン酸塩の取り込みに対するバクテリアの寄与が明確であった.

噴火湾では1ルmより小型の植物プランクトンが基礎生産に大きな役割をはたしてい たことからIリン酸塩の取り込みをめぐる0.2―1」Mm画分内でのバクテリアと植物プ ランクトンの競合関係は明らかではなかった.しかし11―10 pfm画分にもりン酸塩 の取り込みが見られたことから,溶存有機炭素の供給が不足していたためにバクテ   リアの増殖が制限され,その結果バクテリアによるりン酸塩の取り込みが制限され ていたと推測された.一方,大型植物プランクトンはりン酸塩の取り込みに何ら関 与しておらず,APaseを作りだすことによってDOPから1」ンを得て増殖していた.

APaseは,特に大沼では高い基礎生産量を支えるりンの取り込みをも可能にする働

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きを担っていた.

  審査員一同は申請者が博士(水産科学)の学位を授与される資格のあるものと判 定した.

参照

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   よって、著者は、ヨ黼大学博士(理学)の学位を授与される資格のあるものと認める。.

  

  

   審査員一同は、これらの成果を高く 評価し、大学院課程における研鑽や取得単位なども 併せ 申請 者が 博士 ( 医学 )の 学位 を受 ける のに 充分

    

   審査員一同は、これらの成果を高く評価し、大学院研究科における研鑚と併せ、申 請 者 が博士 (医 学) の学 位を受 ける のに 充分 な資格 を有 する ものと