博 士 ( 環 境 科 学 ) 東 條 卓 人
学位論文題名
Studies on control of leafCe11CyCleanditSeXpanSion byArabidopSiStranSCrlptionalCO − aCtiVator ,AtMBF1 (シロイヌナズナ転写コアクチベーター AtMBFl による 葉の細胞の周期および肥大成長の調節に関する研究)
学 位論文内 容の要旨
第一章堕要亘
Multjpr 〔)temBridg むlgF 恥torlQ 忸F1 )は真核生物全体にそのアミノ酸配列が高度に 保存されており、転写因子とTATA 一box 結合タンパク質との間に介在し、標的遺伝子 の転写を促進する転写コアクチベーターとして知られている。植物であるシロイヌナズ ナ a ′ め 砒 p お 伽 施 め め は そ の ゲ ノ ム 中 に 3 種 類 の MBF1 遺 伝 子 ば 砒 毋 門 口 一 イ砒毋鬥c )を有している。しかしながら、植物における MBF1 の詳細な機能に関し ては不明な点が多い。
そ こ で我 々 はそ の 機能 を 調べ る ため に、 AMBF1 に転写 抑制ドメイ ン SRDX を付与 したキメラ遺伝子を過乗lJ に発現エする形質転換シロイヌナズナを作製した。S 剛)X を付 与された転写潛陸化因子は、転写抑制因子として機能することが知られており、内生の 転写因子 と競合する ことで標的遺伝子の転写を抑制する。その効果は SRDX を付与し た転写因子のみならず同属の転写因子にも及ぶことが知られており、この手法は特に遺 伝子 フ ァミリー に属する転 写因子の機 能を解析す る場合に有 効であると される。
Am 皿 F1 _ SRDX は 転 写 コ リ プ レ ッ サ ー と し て 機 能 す る こ と が予 想 され 、 内生 の AMBF1 と競 合すること でその標的 遺伝子の転 写を抑制す ることができると考えられ る。
AMBF1 − SRDX を過剰発現する形質転換シロイヌナズナ( A : MBF1 −Sm ))P )は野生 型に比べ て非常に小 さな葉を呈した。その葉の細部を観察したところ、特に内生の AMBF1 が強 く発現して いる葉の維 管東組織周 辺の細胞が 野生型に比べて顕著に矮小 化していることが観察され、それに加えて葉を構成する細胞数も減少していることが確 認された。葉の成長期には葉の細胞数が増加する時期、およぴ細胞が肥大成長する時期 の二 段 階がある ことが知ら れている。 経時的な葉 細胞の大き さの測定結 果から、
AMBF1 ・S 耐))ご)E では葉の細胞が肥大成長する時期においてその伸張度合いが野生型
に比べて抑制されていることが示された。このことから、過剰発現しているA :MBF1 ‐
SRI )X は葉の肥大成長の制御に影響を及ばしていることが示唆された。細胞あたりに
含まれ るDNA 量の 調節が細胞 の肥大成長 制御に重要な役割を果たすことが知られて いたた め、その DNA 含量を制 御している 機構「エンドリデュプリケーション」に関 し て調 査 を行 っ た。 そ の結 果 、AtMBFl̲SRDXOE で は葉の 細胞の DNA 含量が野生 型 と比べて著しく減少しており、いくっかのエンドリデュプリケーションの調節因子の発 現の様 子も野生型 と比べて変 化している ことが確認 された。こ れらのことから、
AtMJ3Fl‑SRDX はエンドリデュプリケーションの制御因子に働きかけ、葉細胞におけ る DNA 含量 の 増 加を 抑制 しているこ とがわかっ た。ここか ら、AtMBFl は細胞内 に おける DNA 含量の 調節に関与 し、葉の肥 大成長に寄与している因子であること示唆 された。
植物細 胞の肥大成長に MBF1 が関与していることを示唆した本研究結果は、生物科 学的な基礎知識を提供することはもちろんのこと、農学方面において「大きな農作物の 作出」といったような観点で応用されることも期待される。
第二章の要旨
動物では多くの生理学的プロセスがホルモンによって調節されている。ホルモンは 細胞の増殖や分化、機能の調節ばかりでなく、様々な疾患の成因および治療にも深く関 与している。一方、動物のホルモン受容体に結合し、ホルモンによる情報伝達饑隣をか く乱するおそれのある内分泌撹乱化学物質(環境ホルモルが、排水や農薬として環境中 に流出した汚染物質に含まれていることが報告されている。ゆえに、環境中に存在する 環境ホルモンを調査、除去することは早急の課題であると言える。また、ホルモン様物 質は値物等にも含まれていることが知られており、未知のホルモン様物質が含まれてい る食品等を知らずに摂取することによる人体への影響も考えられる一方、そのような自 然界に存在するホルモン様物質の化学構造の多様陸から、創薬という観点からも注目を 集めている。
そこで我々は、予期せぬホルモン摂取による健康被害を未然に防ぐため、遺伝子組 換え植物を用いて試料中から簡便にホルモン活陸をスクリーニングできるシステムの構 築を試みた。今回は特に女性ホルモン様物質に着目し、ヒトエストロゲン受容体、およ びそれにりガンド依存的に相互作用する転写コアクチベーターを植物に導入し、女陸ホ ルモン依存的にレポーター遺伝子の発現が活t 生化される系を構築した。この植物はエス トロゲン濃度依存的にレポーター遺伝子を発現し、さらには汚水や随物抽出液からも女 性ホルモン活陸を検出することができた。また本システムを改良することで、甲状腺ホ ルモンやグルココルチコイドも検出することができた。このことから、当研究によって,
本システムがさまざまなホルモン潛陸を持つ物質を探索する上で非常に有用であること が示された。
以前は調査にかかる費用や手間のために調査すらされていなかったさまざまな環境
サンプルや食品,およぴ化学物質のホルモン活陸を簡便に測定する事によって,我々の
生活環境に隠れたりスクが軽減されること,およぴ有用な薬剤の開発による医療分野へ
の貢献を期待する。
学位論文審査の要旨
主査 准 教 授 山 崎 健一 副査 教 授 森 川 正 章 副査 教 授 大 原 雅
副査 教 授 山口淳 二( 北海道 大学 大学院 先端 生 命 科 学 研 究 院 )
学 位 論 文 題 名
Studies on control of leaf cell cycle and its expansion by Arabidopsis transcriptional co − activator , AtrvIBFl
(シロイヌナズナ転写コアクチベーターAtMBFl による 葉の細胞の周期および肥大成長の調節に関する研究)
蔓旨
Multiprotein Bndging Factorl (MBFl)は真核生物全体にそのアミノ醪酒己列カ滴度に保存されており,転写 因子とTATA‑boX結合夕ンバク質との間に介 在し,標的遺伝子の転写を 促進する転写コアクチベーターと して知られて しゝる。植物であるシ口イヌ ナズナば′め泣弼血ガ班施 脚はそのゲノム中に3種類のm.門 ば砒毋朋qイm雪鬥6,m舩丑朋c)を有して いる。しかしながら,植物におけるMBF1のi韓田な機能に関して は不明な点が多し〕。
そこ で我 々は そ の機 能を 調べ るた め に,AMBF1に転写抑制 ドメインS肛次を付与したキ ヌラタンバク 質(Am凪F11SRI)殉を過剰に発現する形質 転換シ口イヌナズナを作製した。S心)Xを付与した転写活性化 因子は,転写抑制因子として機能することが知られており,内生の転写活亅陸化因子と競合することで標的遺 伝子の転写を 抑制する。その効果はSRDXを 付与した転写因子のみなら ず,同属の転写因子にも及ぷこと が知られており,この手法は特に同一の遺伝子ファミリーに属する転写因子の機能を解析する場合に有効で あ ると され る。AMBF1‐Sm〕Xは 転写 コ リプ レッ サー とし て 機能 する こと が 予想 され 内生 のAm凪F1と 競合することでその標的遺伝子の転写を抑制することができると考えられる。
AMBF1‐SRI)Xを過剰発現する形質転換 シ口イヌナズナ(AMBF1‐SRI))P)は野生型に比べて非常に小 さ な葉 を呈 した 。その葉の細部 を観察したところ,特に内生 のAMBF1が強く発現している 葉の維管束組 織周辺の細胞が野生型に比べて顕著に矮小化してしゝることが観察されそれに加えて葉を構成する細胞数も 減少してしゝることが確認された。葉の成長期には葉の細胞数が増加する時期,および細胞が肥大成長する時 期の二段階が あることが知られている。葉 細胞の大きさの経時的な測 定結果から,AtMBF1−Sm))Pでは 葉の細胞が肥大成長する時期においてその伸張度合いが野生型に比べて抑制されていることが示された。こ
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の こ と か ら ,AtMBFl‑SRDXの 過 剰 発 現 は 葉 の 肥 大 成 長 の 制 御 に 影 響 を 及 ぼ す こ と が 示 唆 され た 。 細 胞 あ た り に 含 ま れ るDNA量 の 調 節 が 細 胞 の 肥 大 成 長 制 御 に 重 要 な 役 割 を 果 た す こ と が 知 ら れて い た た め , そ のDNA含 量 を 制 御 し て い る 機 構 「 工 ン ド リ デ ュ プ リ ケ ー シ ョ ン 」 に 関 し て 調 査 し た 。 そ の 結 果 , AtMBFl̲SRDXOEで は 葉 細 胞 のDNA含 量 が 野 生 型 と 比 べ て 著 し く 減 少 し て お り , い く つ か の エ ン ド リ デ ユ プ リ ケー シ ョ ン の 調 節因 子 の 発 現 レベ ル も 野 生 型と 比 べ て 上 昇し て い る こ と が確 認 さ れ た 。す な わ ち , AtMBFl‑SRDXは エ ン ド リ デ ュ プ リ ケ ー シ ョ ン の 制 御 因 子 に 作 用 し , 葉 細 胞 に お け るDNA含 量 の 増 加 を 抑 制 し て し ゝ る こ と が わ か っ た 。 以 上 の こ と か ら ,AtMBFlは 細 胞 内 に お け るDNA含 量 を 制 御し , 葉 の 肥 大成長 に関与 して いる因 子であ ること 示唆さ れた 。
植 物 細 胞 の 肥 大 成 長 にMBF1が 関 与 し て い る こ と を 示唆 し た 本 研 究結 果 は , 生 物科 学 的 な 基 礎 知識 を 提 供す る こ と は も ちろ んの こと, 「大き な農f倒勿 の作 出」と いった ような 観点 でMBF1カ苅 ま用 できる 司'肓旨陸 も 示 し た 。 デ ー タ ベ ー ス お よ び 系 統 解 析 に よ りMBF1は ほ ば 全 て の 植 物 が そ の 遺 伝 子 を 有 し て い る と 考 え ら れ る た め ,MBF1は 他 植 物 に お い て も 葉 の 肥 大 成 長 制 御 に 関 与 し て い る 可 能 性 が あ る 。 MBFlt撚 , 乾 燥お よU輔 原 菌な ど へ の 耐 陸 増加 に 関 与 す るこ と も 幸 殴 告さ ゎ ー て い るこ と か ら ,MBFlを 利 用 するこ とで職 スト レスに 強く, かつ肥 グd匕した 農作物 を創 出する ことカ ミでき る可 能'陸がある。温暖イヒや人 口増 加 に 伴 う 食 糧危 機 に 対 し て, 栽 培 地 域 の拡 大 や 単 位 面積 あ た りの農 作物の 収量を 増加さ せる 可能陸 のあ るMBFlIrあ もJなもの である と考 えられ る。
付録 の要 旨
動 物で は 多 く の 生理 学 的 プ ロ セス が ホ ル モ ン によ っ て 調 節 され て いる。 ホルモ ンは細 胞の 増殖や 分化, 機 能 の 調 節| ま か り で なく ,様々 な疾患 の成 因およ び冶療 にも深 く関与 して いる。 一方, 動物の 木ル モン受 容体 に結 合し ,ホル モンに よる´l青‑frfii達機 構をかく乱するおそれのある内分泌撹舌Lイビ芋物質黼ホルモン)が,
排 水 や 農薬 に 含 ま れ て いる こ と カ 嘩 晧さ れ て い る 。ゆ え に , 環 境中 に存 荏する 環境ホ ルモン を調 査,除 去す る こ と は早 急 の 課 題 で ある と 言 え る 。ま た , 動 物 ホル モ ン 様 物 質が 植物 等にも 含まれ ている こと カ蜘ら れて お り , 未知 の ホ ル モ ン 様物 質 が 含 ま れて い る 食 品 等を 知 ら ず に 摂取 する ことに よる人 体への 影響 も考え られ る 一 方 ,そ の よ う な 自 然界 に 存 在 す るホ ル モ ン 様 物質 の 化 学 構 造の 多様 性から ,創薬 という 観点 からも 注目 を集 めて いる。
そ こで 私 は , 予 期せ ぬ ホ ル モ ン摂 取 に よ る 健 康被 害 を 未 然 に防 ぐ ため, 遺伝子 組換え 植物 を用い て武糾 中 か ら 簡 便に ホ ル モ ン 活 陸物 質 を ス ク リー ニ ン グ で きる シ ス テ ム の構 築を 試みた 。今回 は特に 女性 ホルモ ン様 物 質 に 着目 し , ヒ ト 由 来エ ス ト 口 ゲ ン受 容 体 ,およ びそれ にり ガンドfik存 的に相 互作用 する 転写コ アクチ ベ ー タ ー とレ ポ ー タ ー 遺 伝子 を 植 物 に 導入 し , 女 陸 ホル モ ン 様 物 質を 検出 できる 系を構 築した 。こ の植物 はェ ス ト 口 ゲン 濃 度 依 存 的 にレ ポ ー タ ー 遺伝 子 を 発現し ,さら には 汚水や 植物抽 出液か らも 女性ホ ルモW舌Jl生 を 検 出 す るこ と が で き た 。ま た 本 シ ス テム を 改 良 す るこ と で , 甲 状腺 ホル モンや グルコ コルチ コイ ドも検 出で き た 。 この こ と か ら , 本シ ス テ ム が さま ざ ま なホル モン活J陸 を持つ 物質 を探索 する上 で非常 に有 用であ るこ とカ 詠さ れた。
調 査に か か る 費 用や 手 間 の た めに 調 査 す ら さ れて い な か っ たさ ま ざまな 環境サ ンプル や食 品およ び化学 物 質 の ホ ルモ ン 活 性 を 本 シス テ ム の 利 用に よ り 簡 便 に測 定 す る 事 によ って ,生活 環境に 隠れた りス クが軽 減さ れ る こ とIお よ び 新 規ホ ル モ ン 様 物 質の 発 見 に伴 う有用 な薬剤 の開発 によ る医療 分野へ の貢献 が期 待され る。
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