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自然人 1 意義 私法上の権利義務の主体( 私権の主体 ) となる資格 = 権利能力 という市民社会のメンバ シップを持つ者をいう その中で いわゆる生身の生きている人間が自然人であり 自然人以外で法によって権利能力の持主と認められたもの ( 例えば会社 ) が法人である 私権の享有主体 自然人と法

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(1)

私権の

主体

(2)

1 

意義

「私法上の権利義務の主体(私権の主体)となる資格=権利能力」という 市民社会のメンバ−シップを持つ者をいう。 その中で、いわゆる生身の生きている人間が自然人であり、自然人以外で 法によって権利能力の持主と認められたもの(例えば会社)が法人である。 ■私権の享有主体・自然人と法人 ■能力の種類・概観(☆) ■能力の種類・イメージ図

自然人

行為能力 意思能力 権利能力 出生(例外・胎児) 6 〜 7 歳(小学校入学)程度 20 歳、成年擬制 私権の主体 自然人 出生〜死亡 法人 設立〜解散後の清算結了 権利能力 権利及び義務の主体となる資格のことをいう。 意思能力 有効に意思表示をする能力であり、行為の結果を判断できるだけの精神的能力のことをいう。 行為能力 単独で完全に有効な法律行為を行うことができる能力のことをいう。 ☆ なお、責任能力という概念もある。

(3)

第 1章 私権の主体 民法総則

条文確認

2 

権利能力の始期

第3条 1項 私権の享有は、出生(☆)に始まる。 2項 外国人は、法令又は条約の規定により禁止される場合を除き、私権を 享有する。 第 721 条 胎児は、損害賠償の請求権については、既に生まれたものとみなす。 第 886 条 1項 胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす。 2項 前項の規定は、胎児が死体で生まれたときは、適用しない。 第 965 条 第 886 条及び第 891 条の規定は、受遺者について準用する。 ☆ 胎児が母胎から全部露出することをいう(全部露出説)。Cf.刑法 まだ出生していない胎児は「人」ではありません。よって、本来は権利能 力を有しないはずです。しかし、胎児の間は権利能力が一切認められないと なると、違和感(不公平感)が生じる場合があります。 そこで、民法は、不法行為に基づく損害賠償請求(721)、相続(886)、 遺贈(965)については、例外的に胎児も既に生まれたものとみなす(☆)(権 利能力を有する)こととしました。 なお、既に生まれたものとみなされるのは、生きて生まれた場合に限られ ます。つまり、死産の場合は除かれます。 ☆ 「みなす」とは、実際とは異なるとしても「そういう扱いにしてしまう」ということ である(反証しても覆らない)。これと間違いやすいのが「推定する」であり、これ

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夫Aと妻Bと子供Cの3人家族がいました。そして、妻Bは夫Aの子Dを 妊娠しました。その後、夫Aは亡くなる運命だったのですが、胎児が権利能 力を有しないという原則を貫けば、子Dは、     夫死亡前に生まれた場合は     夫死亡後に生まれた場合は     相続できる      相続できない    A死亡 となってしまいます。このように、生まれる時期のちょっとした違いで結論 が大きく変わるのは、何か不都合を感じますよね。     「胎児の権利能力は不法行為に基づく損害賠償請求、相続、遺贈について 認められるということですが、認知(779)についてはどうなのですか?」 「胎児の側から、つまり、母が胎児のために、父に対して認知請求をする ことは認められないんだよ。」 「じゃあ、胎児を認知することはできないのですね?」 「いや、父は、母の承諾を得て胎児を認知することができるから(783 Ⅰ)、 ちゃんと区別して覚えておくといいよ。」     胎児のうちに起きた事件については、出生すれば損害賠償請求でき、死産 の場合は損害賠償請求できません(争いなし)。 では、胎児である間に、母親が胎児を代理して損害賠償請求や示談等を することはできるのでしょうか?具体的には、「胎児中は権利能力がないが、 無事に生まれた場合に胎児の時に遡って権利能力があったと考えるのか」、 それとも、「胎児中でも限定的に権利能力があり、無事に生まれることがで きなかった場合に胎児の時に遡って権利能力がなかったと考えるのか」が問 題となります(☆)。 ☆ この問題は、母親が胎児を代理するためには、胎児に権利能力が認められる必要

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第 1章 私権の主体 民法総則 ア 解除条件説 ① 出生まで権利能力はあるから、法定代理人を付けられる。 ② 出生の場合は当然に初めから権利能力がある。 ③ 死産の場合はそれまでの権利能力が遡って消滅する。       死 産 →権利能力消滅    父死亡  胎児  出 生 →引き続き権利能力あり       権利能力あり(☆) ☆ 解除条件説によって胎児に法定代理人が付けられるといっても、損害賠償、 相続、遺贈の3つに限られる! イ 停止条件説(阪神電鉄事件;大判昭 7.10.6) ① 出生まで権利能力はないから、法定代理人は付けられない。 ② 出生の場合は遡って権利能力を取得する。 ③ 死産の場合は初めから権利能力がない。       死 産 →初めから権利能力なし    父死亡  胎児  出 生 →遡って権利能力取得 損害賠償請求 胎児 電鉄会社 代理?

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❶ Aが死亡した時点でCがまだ胎児であった場合には、Aを相続するのは BおよびDであるが、その後にCが生まれてきたならば、CもBおよびD とともにAを相続する。なお、Aの死亡時には、配偶者B、Bとの間の子 CおよびAの母Dがいるものとする。(2007-35- イ) 答 【×】 解説 胎児は、相続については、既に生まれたものとみなされる(886 Ⅰ)。 ❷ 胎児に対する不法行為に基づく当該胎児の損害賠償請求権については、 胎児は既に生まれたものとみなされるので、胎児の母は、胎児の出生前に 胎児を代理して不法行為の加害者に対し損害賠償請求をすることができる。 (2012-27- 1) 答 【×】 解説 胎児は、損害賠償の請求権については、既に生まれたものとみなす (721)。もっとも、判例によれば、胎児中の権利能力については、出生し た段階で遡って権利能力を取得するものとされている(阪神電鉄事件;大 判昭 7.10.6)。よって、胎児の母が胎児の出生前に胎児を代理して不法行 為の加害者に対し損害賠償請求をすることはできない。 A B D = = C E F

(7)

第 1章 私権の主体 民法総則

条文確認

3 

権利能力の終期

第 882 条 相続は、死亡によって開始する。 第 32 条の2 数人の者が死亡した場合において、そのうちの一人が他の者の死亡後にな お生存していたことが明らかでないときは、これらの者は、同時に死亡した ものと推定する。

(1) 死亡

相続開始の原因になる(882)。

(2) 同時死亡の推定(32 の2)

      例えば、父(A)、母(B)、長男(C)、次男(D)の4人家族のうち、 AとCが一緒に乗っていた飛行機が墜落してAとCが同時に死亡した場合、 Aの残した相続財産はどうなるのでしょうか? A=B C D A=B ア Aが先に死亡したら、B1/2、C 1 /4、D1/4。次にCが死亡したら、BはCの財産も相続する。最終的 にB3/4、D1/4になる(Bにとって有利な結論)。 イ Cが先に死亡した後、Aが死亡したら、B1/2、D1/2。そうすると、上の例に比べてDの相続分が増加す

(8)

■同時死亡の推定・まとめ相続遺贈は、相互に開始しない! ②代襲相続は認められる! 第1順位 被相続人の ( ☆1、4) 配偶者 配偶者は、存在すれば 常に相続人になり、他 に相続人となるべき者 がある時はその者と同 順位になる。 第2順位 (☆2)被相続人の直系尊属 第3順位 (☆3、4)被相続人の兄弟姉妹 ☆1 実子と養子、嫡出子と非嫡出子の間に順位の差はない。また、胎児につい ては、既に生まれたものとみなされる(886)。 ☆2 子がいない時に初めて直系尊属が相続人になり、親等の異なる者の間で は、その近い者が先に相続人になる。なお、普通養子が死亡した場合の相続 人は、実親及び養親である。 ☆3 子も直系尊属もいない時に初めて兄弟姉妹が相続人になる。 ☆4 代襲相続もあり得る(相続人が被相続人の兄弟姉妹の場合は、その子(甥、 姪)までであるが、詳しくは後ほど触れる)。 配偶者 (常に相続人であり、他の相続人と 同順位である) 第2:直系尊属 第3:兄弟姉妹 被相続人 = 第1:子 親族・相続は最後の方でしっかりやりま すが、ちょっと先取りしてみましょう!

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第 1章 私権の主体 民法総則 A B D = = C E F ■代襲相続 ❶ Aの死亡と近接した時にCも死亡したが、CがAの死亡後もなお生存し ていたことが明らかでない場合には、反対の証明がなされない限り、Aを 相続するのはBおよびDである。なお、Aの死亡時には、配偶者B、Bと の間の子CおよびAの母Dがいるものとする。(2007-35- ア) 答 【〇】 解説 数人の者が死亡した場合において、そのうちの一人が他の者の死亡後 になお生存していたことが明らかでないときは、これらの者は、同時に死 亡したものと推定する(32 の2)。本肢の子CはAの死亡時に既に死亡し ているので、CはAを相続せず、Aの相続人はB・Dとなる。 A = B C D E EがCに代わってAの相続人になるので、 相続分は、B1/2、D1/4、E1/4となる。

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4 

意思能力

有効に意思表示をする能力であり、行為の結果を判断できるだけの精神的 能力のことを意思能力という。 意思能力がないことを意思無能力といい、意思無能力者としては、例えば 幼い子ども等が挙げられる(意思無能力者が行った法律行為は無効であると するのが判例である(大判明 38.5.11))。 ❶ 後見開始の審判を受ける前の法律行為については、制限行為能力を理由 として当該法律行為を取り消すことはできないが、その者が当該法律行為 の時に意思能力を有しないときは、意思能力の不存在を立証して当該法律 行為の無効を主張することができる。(2012-27-5) 答 【〇】 解説 後見開始の審判を受ける前の法律行為については、制限行為能力を理 由として当該法律行為を取り消すことはできない。しかし、民法は意思主 義を採用しており、その者が当該法律行為の時に意思能力を有しないとき は、当該法律行為は無効である(大判明 38.5.11)。よって、この場合には、 意思能力の不存在を立証して当該法律行為の無効を主張することができる。

(11)

第 1章 私権の主体 民法総則

制度趣旨

5 

行為能力

単独で完全に有効な法律行為を行うことができる能力のことを行為能力と いう。 (1) 独立して取引する能力が不十分な者に保護者を付することによって、 その者の能力不足を補充し、かつ、その者が単独で行った行為を後から 取り消すことができるとすることによって、制限行為能力者を保護する (静的安全を重視)。 (2) 制限行為能力者を法律で類型化することによって、制限行為能力者と 取引する相手方に不測の損害を与えないようにする(取引の安全(動的 安全)を重視)。 ■制限行為能力者のまとめ このようなバランスを図る、 つまり、利益を調整する道具が 法律である、と考えましょう! 取引安全 静的安全 未成年者 生まれた日から起算して20歳に達しない者。 成年被後見人 精神上の障害によって事理を弁識することができる能力(判断能力)を欠く常況にある者であって、家庭裁判所におい て後見開始の審判を受けた者。 被保佐人 精神上の障害によって事理を弁識することができる能力(判断能力)が著しく不十分な者であって、家庭裁判所におい て保佐開始の審判を受けた者。 被補助人 精神上の障害によって事理を弁識することができる能力(判断能力)が不十分な者であって、家庭裁判所において補助

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■制限行為能力者・体系図 制限行為 能力者 未成年者 (4~6) 成年期 未成年者の行為能力 例外1 権利を得、 義務を免れる行為 成年被後見人 (7~10) 被保佐人 (11~14) 被補助人 (15~18) 相手方の催告権 制限行為能力者の詐術 後見開始の審判 審判の取消し 後見開始:成年被後見人の行為能力制限 保佐開始の審判 審判の取消し 補助開始の審判 審判の取消し 保佐開始:被保佐人 の行為能力制限 補助開始(同意権付与): 被補助人の行為能力制限 制限行為能力者と取引した 相手方の保護(20、21) 例外2 自由財産の処分 営業に関する行為例外3

(13)

第 1章 私権の主体 民法総則

条文確認

6 

未成年者

第4条 年齢 20 歳をもって、成年とする。 第 753 条 未成年者が婚姻をしたときは、これによって成年に達したものとみなす。 第5条 1項 未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければ ならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為について は、この限りでない。 2項 前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。 3項 第1項の規定にかかわらず、法定代理人が目的を定めて処分を許した 財産は、その目的の範囲内において、未成年者が自由に処分することが できる。目的を定めないで処分を許した財産を処分するときも、同様と する。 第6条 1項 一種又は数種の営業を許された未成年者は、その営業に関しては、成 年者と同一の行為能力を有する。 2項 前項の場合において、未成年者がその営業に堪えることができない事 由があるときは、その法定代理人は、第4編(親族)の規定に従い、そ の許可を取り消し、又はこれを制限することができる。

(1) 未成年者

20歳に満たない者をいう(4)。

(2) 成年擬制

20 歳に満たない者であっても、婚姻をすれば、成年に達したものとみな される(いわば、一人前に扱われる)(753)。

(14)

  「成年とみなされた者は、すべて成年と同じように扱われるのですか?」 「いや、成年とみなされるといっても、それは私法上のものについて成人 と同じ扱いを受けるということだよ。」 「では、タバコやお酒に関してはどうなるのですか?」 「飲酒や喫煙は成年とみなされても認められないよ。」

 (3) 未成年者の保護者

ア 未成年者を保護するのは、まずは親権者である父母であるが(818 Ⅰ)、 親権者が不存在等のときには、未成年後見人である(838 ①)。 イ 親権者及び未成年後見人は法定代理人なので、代理権・同意権・取消 権・追認権がある(824、859、120、124)。 ■未成年者の保護者・まとめ

(4) 未成年者の法律行為

ア 原則 未成年者が法律行為(☆)をする場合、その法定代理人の同意を要す る(5Ⅰ本)。その同意を得ずにした法律行為は、取り消すことができ る(同Ⅱ)。 ☆ 法律行為には、意思の通知、観念の通知という準法律行為も含まれる。 まずは… 親権者である父母 親権者不存在、又は、親権者 が子の財産管理権を有しない ときは… 未成年後見人

(15)

第 1章 私権の主体 民法総則 イ 例外 次の場合には、未成年者が単独で行為を行うことができる(5Ⅰ但・ Ⅲ、6Ⅰ)。 ☆1 以下の行為は、未成年者が単独で行うことはできない。 a 貸したお金を返済してもらう行為(債務の弁済を受ける行為)   未成年者が既に持っている債権を失うことになるので、単に権利を得る行為 ではないからである。 b 負担の付いた遺贈を受ける行為   負担を負うことになるので、単に権利を得る行為ではないからである。 c 負担の付いている遺贈を放棄する行為   遺贈を受けられなくなるので、単に義務を免れる行為ではないからである。 ☆2 つまり、その営業に関する行為については同一の行為能力を有し、単独で有効 に行為することができる。なお、営業の許可が撤回された場合、撤回までの営業行 為は有効なままである。 ① 単に権利を得、又は義務を免れる法律行為(負担のない贈与を受ける契 約等、不利益にならないもの)(☆1) ② 法定代理人から目的を定めないで処分を許された財産(おこづかい)の 処分や、法定代理人が目的を定めて処分を許した財産(旅費、学費)の目 的の範囲内の処分 ③ 法定代理人から営業を許された場合(Ex. 魚屋の営業を許可された場合)、 その営業に関する行為(魚を売る行為)(☆2)

(16)

条文確認

「原則として未成年者は単独で法律行為をできないということですが、相 続に関する行為で、遺言等はどうなるのですか?」 「未成年者であっても、15歳に達すれば、親権者や未成年後見人等の 法定代理人の同意を得ることなく単独で遺言をすることができるんだよ (961)。」 「では、15歳未満の未成年者はどうなるのですか?」 「15歳末満の未成年者は、遺言をすることができないということになる ね。」

7 

成年被後見人

第7条 精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者については、 家庭裁判所は、本人、配偶者、4親等内の親族、未成年後見人、未成年後見 監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、 後見開始の審判をすることができる。 第8条 後見開始の審判を受けた者は、成年被後見人とし、これに成年後見人を付 する。 第9条 成年被後見人の法律行為は、取り消すことができる。ただし、日用品の購 入その他日常生活に関する行為については、この限りでない。 第 10 条 第7条に規定する原因が消滅したときは、家庭裁判所は、本人、配偶者、 4親等内の親族、後見人(未成年後見人及び成年後見人をいう。以下同じ。)、 後見監督人(未成年後見監督人及び成年後見監督人をいう。以下同じ。)又 は検察官の請求により、後見開始の審判を取り消さなければならない。

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第 1章 私権の主体 民法総則

制度趣旨

精神上の障害によって事理を弁識することができる能力(判断能力)を欠 く者が行った法律行為は当然に無効になるはずである。しかし、そのことを 証明することは難しいので、成年被後見人として類型化しておき、意思能力 がなかったことの証明ができないとしても、その者が行った法律行為は取 り消すことができるとして、その者の財産の保護を図る(静的安全)。また、 類型化することによって、取引の相手方に不測の損害を与えないようにする (取引安全(動的安全))。

(1) 要件

ア 実質的要件 精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者(7)。 イ 形式的要件 一定の者(☆)の請求により、家庭裁判所の後見開始の審判を受けた 者(7)。 ☆ 本人、配偶者、4親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、 保佐監督人、補助人、補助監督人又は検察官

(2) 保護者

ア 成年後見人である(8)。 イ 成年被後見人の財産に関する法律行為について代理権を有する (859)。また、取消権(120 Ⅰ)、追認権(122 本、124 Ⅲ)も有する。 ウ 法人(株式会社(営利法人)等)は成年後見人になることができる。

(3) 成年被後見人の法律行為

ア 原則として取り消すことができる(9本;無効になるのではない)。

(18)

イ なお、成年被後見人に単独で法律行為をさせるのは危険である。   そこで、成年後見人に同意権はない。つまり、成年被後見人は、成年 後見人の同意を得ても有効な法律行為をすることはできないということ である。

(4) 審判の取消し

家庭裁判所は、7条に規定する原因が消滅したときは、一定の者(☆)の 請求により、後見開始の審判を取り消さなければならない(10)。 ☆ 本人、配偶者、4親等内の親族、後見人(未成年後見人及び成年後見人、以下同 じ)、後見監督人(未成年後見監督人及び成年後見監督人、以下同じ)又は検察官

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第 1章 私権の主体 民法総則 ❶ 自然人ばかりでなく法人も、成年後見人になることができるが、株式会 社等の営利法人は、成年後見人になることはできない。(2005-24- ア) 答 【×】 解説 成年後見人を選任するには、成年被後見人の心身の状態並びに生活及 び財産の状況、成年後見人となる者の職業及び経歴並びに成年被後見人と の利害関係の有無(成年後見人となる者が法人であるときは、その事業の 種類及び内容並びにその法人及びその代表者と成年被後見人との利害関係 の有無)、成年被後見人の意見その他一切の事情を考慮しなければならな い(843 Ⅳ)。この規定は、法人が成年後見人になることができることを 前提としており、また、法人の要件を特に定めた規定もないので、株式会 社等の営利法人も、成年後見人になることができる。   なお、未成年者、保佐人、補助人についても同様である(840 Ⅲ、876 の2Ⅱ(843 Ⅳ準用)、876 の7Ⅱ(843 Ⅳ準用))。 ❷ 制限行為能力者が成年被後見人であり、相手方が成年被後見人に日用品 を売却した場合であっても、成年被後見人は制限行為能力を理由として自 己の行為を取り消すことができる。(2006-27-3) 答 【×】 解説 成年被後見人が行った行為は、原則として取り消すことができる(9 本)。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、本 人の自己決定権尊重の観点から、例外的に取り消すことができない(同但)。 ❸ AがBに対してA所有の動産を譲渡する旨の意思表示をしたことを前提 に、Aが、精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある場合、 Aは当然に成年被後見人であるから、制限行為能力者であることを理由と して当該意思表示に基づく譲渡契約を取り消すことができる。(2010-27-1) 答 【×】 解説 精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者であって も、後見開始の審判を受けていなければ、成年被後見人とはならない(7、

(20)

条文確認

8 

被保佐人

第 11 条 精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者について は、家庭裁判所は、本人、配偶者、4親等内の親族、後見人、後見監督人、 補助人、補助監督人又は検察官の請求により、保佐開始の審判をすることが できる。ただし、第7条に規定する原因がある者については、この限りでない。 第 12 条 保佐開始の審判を受けた者は、被保佐人とし、これに保佐人を付する。 第 14 条 1項 第 11 条本文に規定する原因が消滅したときは、家庭裁判所は、本人、 配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、 保佐監督人又は検察官の請求により、保佐開始の審判を取り消さなけれ ばならない。 2項 家庭裁判所は、前項に規定する者の請求により、前条第2項の審判の 全部又は一部を取り消すことができる。

(1) 要件

ア 実質的要件 精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分な者(11 本)。 イ 形式的要件 一定の者(☆)の請求により、家庭裁判所の保佐開始の審判を受けた 者。なお、7条に規定する原因がある者は除かれる(11)。 また、本人以外の者の請求によって保佐開始の審判をする場合、本人 の同意は不要である。 ☆ 本人、配偶者、4親等内の親族、後見人、後見監督人、補助人、補助監督人 又は検察官

(21)

第 1章 私権の主体 民法総則

(2) 保護者

ア 保佐人である(12)。 イ 保佐人には、原則として代理権はない。しかし、家庭裁判所は、特定 の法律行為について保佐人に代理権を付与する旨の審判をすることがで きる(876 の4Ⅰ)。なお、本人以外の者の請求によって前項の審判を するには、本人の同意が必要である(同Ⅱ)。   この代理権付与の対象となる特定の法律行為は、13 条1項に列挙さ れた事由に限定されない。 ウ 取消権(120 Ⅰ)、追認権(122 本、124 Ⅲ)を有する。

(3) 被保佐人の法律行為

13 条が規定している。 ■整理 原則 自ら単独で有効に法律行為をすることができる。 例外 一定の重要な財産上の法律行為(13 条1項に列挙されている行為等)については保佐人の同意を要する。

(22)

条文確認

第 13 条 1項 被保佐人が次に掲げる行為をするには、その保佐人の同意を得なけれ ばならない。ただし、第9条ただし書に規定する行為については、この 限りでない。 ⒈ 元本を領収し、又は利用すること。 ⒉ 借財又は保証をすること。 ⒊ 不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をする こと。 ⒋ 訴訟行為をすること。 ⒌ 贈与、和解又は仲裁合意(仲裁法(平成 15 年法律第 138 号)第2条 第1項に規定する仲裁合意をいう。)をすること。 ⒍ 相続の承認若しくは放棄又は遺産の分割をすること。 ⒎ 贈与の申込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込みを承諾し、 又は負担付遺贈を承認すること。 ⒏ 新築、改築、増築又は大修繕をすること。 ⒐ 第 602 条に定める期間を超える賃貸借をすること。 2項 家庭裁判所は、第 11 条本文に規定する者又は保佐人若しくは保佐監 督人の請求により、被保佐人が前項各号に掲げる行為以外の行為をする 場合であってもその保佐人の同意を得なければならない旨の審判をする ことができる。ただし、第9条ただし書に規定する行為については、こ の限りでない。 3項 保佐人の同意を得なければならない行為について、保佐人が被保佐人 の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは、家庭 裁判所は、被保佐人の請求により、保佐人の同意に代わる許可を与える ことができる。 4項 保佐人の同意を得なければならない行為であって、その同意又はこれ に代わる許可を得ないでしたものは、取り消すことができる。

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第 1章 私権の主体 民法総則 1号の具体例 貸金を受け取ることや、利息付きでお金を貸すこと。なお、利息や賃 料を受け取ることは保佐人の同意を要することなくできることなので注 意です。 2号の具体例 時効完成後の債務の承認、約束手形の振出。 3号の具体例 抵当権の設定や、不動産賃貸借契約を合意解除すること等。 4号についての補足 訴訟行為とは、民事訴訟で原告となって訴訟を遂行する一切の行為を いいますが、相手方の提起した訴え又は上訴(控訴、上告)について訴 訟行為を行う(応訴する)場合は含まれないので、単独ですることがで きます。 5号についての補足 贈与とは他人に贈与することをいうのであって、単に贈与を受けるこ とは含まれません。和解とは、当事者が互いに譲歩して、その間に存在 する争いをやめることを約する契約のことをいいます。 6号についての補足 相続の承認とは、相続が開始した後に相続人が相続を受ける旨の意思 表示をいい、相続の放棄とは、相続の開始した後に相続人が相続するこ とを拒否する旨の意思表示(家庭裁判所への申述)をいいます。遺産分 割とは、共同相続(相続人複数の相続のこと)の場合に、共有状態となっ た相続財産を各相続人に具体的に配分することをいいます。 7号についての補足 負担付きではない単なる贈与や遺贈を受けることは含まれません。 8号についての補足 注文主となって請負契約等を行うことをいいます。 9号についての補足 602 条は、短期賃貸借についての規定です。山林の賃貸借は 10 年、

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(4) 審判の取消し

家庭裁判所は、11 条本文に規定する原因が消滅したときは、一定の者(☆) の請求により、保佐開始の審判を取り消さなければならない(14 Ⅰ)。 ☆ 本人、配偶者、4親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保 佐監督人又は検察官 ❶ 被保佐人がその保佐人の同意を得なければならない行為は、法に定めら れている行為に限られ、家庭裁判所は、本人や保佐人等の請求があった ときでも、被保佐人が法に定められている行為以外の行為をする場合に その保佐人の同意を得なければならない旨の審判をすることはできない。 (2015-27- イ) 答 【×】 解説 被保佐人がその保佐人の同意を得なければならない行為は、法に定め られている行為(13 Ⅰ)だけではなく、それ以外の行為をする場合であっ ても保佐人の同意を得なければならない旨の審判をすることができるとさ れている(同Ⅱ)。 ❷ AがBに対してA所有の動産を譲渡する旨の意思表示をしたことを前提 に、Aが、被保佐人であり、当該意思表示に基づく譲渡契約の締結につき 保佐人の同意を得ていない場合、Aおよび保佐人は常に譲渡契約を取り消 すことができる。(2010-27-2) 答 【×】 解説 被保佐人が 13 条1項各号に掲げる行為や、保佐人の同意を得なけれ ばならない旨の審判を受けた行為をするときは、その保佐人の同意を得な ければならず(13 Ⅰ各号・Ⅱ)、その同意又はこれに代わる許可を得ない でしたものは、取り消すことができる(同Ⅳ)。よって、A及び保佐人は「常 に」取り消しができる訳ではなく、限定されている。

(25)

第 1章 私権の主体 民法総則

条文確認

9 

被補助人

 第 15 条 1項 精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者については、 家庭裁判所は、本人、配偶者、4親等内の親族、後見人、後見監督人、 保佐人、保佐監督人又は検察官の請求により、補助開始の審判をするこ とができる。ただし、第7条又は第 11 条本文に規定する原因がある者 については、この限りでない。 2項 本人以外の者の請求により補助開始の審判をするには、本人の同意が なければならない。 3項 補助開始の審判は、第 17 条第1項の審判又は第 876 条の9第1項の 審判とともにしなければならない。 第 16 条 補助開始の審判を受けた者は、被補助人とし、これに補助人を付する。

(1) 要件

ア 実質的要件 精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分な者(15 Ⅰ本)。 イ 形式的要件 一定の者(☆)の請求により、家庭裁判所の補助開始の審判を受けた 者。なお、第7条又は第 11 条本文に規定する原因がある者は除かれる(15 Ⅰ)。 また、本人以外の者の請求によって補助開始の審判をする場合、本人 の同意が必要である(15 Ⅱ)。 ☆ 本人、配偶者、4親等内の親族、後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人 又は検察官

(26)

条文確認

イ 補助人には、原則として代理権はない。しかし、家庭裁判所は、特定 の法律行為について補助人に代理権を付与する旨の審判をすることがで きる。(876 の9Ⅰ)。なお、本人以外の者の請求によって前項の審判を するには、本人の同意が必要である(同Ⅱ、876 の4Ⅱ)。   この代理権付与の対象となる特定の法律行為は、13 条1項に列挙さ れた事由に限定されない。 ウ 取消権(120 Ⅰ)、追認権(122 本、124 Ⅲ)については、後述。

(3) 被補助人の法律行為

第 17 条 1項 家庭裁判所は、第 15 条第1項本文に規定する者又は補助人若しくは 補助監督人の請求により、被補助人が特定の法律行為をするにはその補 助人の同意を得なければならない旨の審判をすることができる。ただし、 その審判によりその同意を得なければならないものとすることができる 行為は、第 13 条第1項に規定する行為の一部に限る。 2項 本人以外の者の請求により前項の審判をするには、本人の同意がなけ ればならない。 3項 補助人の同意を得なければならない行為について、補助人が被補助人 の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは、家庭 裁判所は、被補助人の請求により、補助人の同意に代わる許可を与える ことができる。 4項 補助人の同意を得なければならない行為であって、その同意又はこれ に代わる許可を得ないでしたものは、取り消すことができる。 家庭裁判所は、13 条1項に列挙された事項の特定の一部について、補助 人に同意権を付与することができるが、本人以外の者の請求により前項の審 判をするには、本人の同意が必要である(17 Ⅰ・Ⅱ)。 補助人は、同意権が付与された行為につき、取消権及び追認権を有する (120 Ⅰ、122 本、124 Ⅲ)。

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第 1章 私権の主体 民法総則 「補助開始の審判によって自動的に一定の範囲の代理権又は同意権が補助 人に付与されるのですか?」 「いや、補助の制度の場合には、①補助人に代理権を付与するのか(876 の9Ⅰ)、同意権を付与するのか(17 Ⅰ)、その双方を付与するのか、② のような法律行為について代理権又は同意権を付与するのかは、全て当事 者の選択に委ねられているんだ。だから、補助開始の審判とともに、補助 人に同意権又は代理権の『一方又は双方』を付与する審判をすることが必 要になってくるんだよ(15 Ⅲ)。」 「補助開始の審判とは別に、補助人に代理権を付与する旨の審判又は補助 人に同意権を付与する旨の審判によって、特定の法律行為についての代理 権又は同意権が補助人に付与されるということですね。」 「そうだよ。ただ、被補助人は、補助人が同意権を有する行為を除いて、 自ら単独で有効に行為をなし得るんだ。つまり、補助人に対し代理権『のみ』 が付与された場合の被補助人は、単独で確定的に有効に法律行為をするこ とが可能ということだよ。」

(4) 審判の取消し

家庭裁判所は、15 条1項本文に規定する原因が消滅したときは、一定の 者(☆)の請求により、補助開始の審判を取り消さなければならない(18 Ⅰ・Ⅲ)。 ☆ 本人、配偶者、4親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、補助人、補 助監督人又は検察官 ❶ 本人以外の者の請求によって保佐開始の審判をするためには、本人の同 意が必要である。(2005-24- ウ) 答 × 解説 本人以外の者の請求によって保佐開始の審判をするためには、本人の 同意は不要である。これに対して、本人以外の者の請求によって補助開始

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人、配偶者、4親等内の親族は、補助開始の審判を請求することはできる が、後見人や保佐人は、これをすることはできない。(2005-24- エ) 答 【×】 解説 後見人や保佐人も、補助開始の審判の請求をすることができる(15 Ⅰ)。 ❸ 家庭裁判所は、本人や保佐人等の請求によって、被保佐人のために特定 の法律行為について保佐人に代理権を付与する旨の審判をすることができ るが、本人以外の者の請求によってその審判をするには、本人の同意がな ければならない。(2015-27- ウ) 答 【〇】 解説 家庭裁判所は、本人や保佐人等の請求によって被保佐人のために特定 の法律行為について保佐人に代理権を付与する旨の審判をすることがで きるが(876 の4Ⅰ)、本人以外の者の請求によってその審判をするには、 本人の同意がなければならないとされている(同Ⅱ)。 ❹ 家庭裁判所は、本人や配偶者等の請求により、補助開始の審判をするこ とができるが、本人以外の者の請求によって補助開始の審判をするには、 本人の同意がなければならない。(2015-27- エ) 答 【〇】 解説 家庭裁判所は、本人や配偶者等の請求によって補助開始の審判をする ことができる(15 Ⅰ)が、本人以外の者の請求により補助開始の審判を するには、本人の同意がなければならないとされている(同Ⅱ)。 ❺ 後見開始の審判をする場合において、本人が被保佐人または被補助人で あるときは、家庭裁判所は、その本人に係る保佐開始または補助開始の審 判を取り消す必要はないが、保佐開始の審判をする場合において、本人が 成年被後見人であるときは、家庭裁判所は、その本人に係る後見開始の審 判を取り消さなければならない。(2015-27- オ) 答 【×】 解説 後見開始の審判をする場合において、本人が被保佐人又は被補助人で あるときは、家庭裁判所は、その本人に係る保佐開始又は補助開始の審判 を取り消さなければならない(19 Ⅰ)。これに対し、保佐開始の審判をす る場合において、本人が成年被後見人又は被補助人であるときは、その本 人に係る後見開始又は補助開始の審判を取り消さなければならない(同Ⅱ)

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第 1章 私権の主体 民法総則 ■総整理! 未成年者 成年被後見人 被保佐人 被補助人 審判の要件 なし (20 歳未満の者) 精神上の障害 により事理を 弁識する能力 を欠く常況に ある者であり、 家庭裁判所の 後見開始の審 判を受けるこ と。 精神上の障害 により事理を 弁識する能力 が著しく不十 分である者で あり、家庭裁 判所の保佐開 始の審判を受 けること。 精神上の障害 により事理を 弁識する能力 が不十分な者 であり,家庭 裁判所の補助 開始の審判を 受けること。 保護者 ・親権者・未成年後見人 (法人も可) 成年後見人 (法人も可) (法人も可)保佐人 (法人も可)補助人 権限の有無 代理権 ○ ○ △ △ 同意権× ○ △ 取消権 ○ ○ ○ △ 追認権 ○ ○ ○ △ 保護者の人数 2人以上も可 単独で有効な 行為について ・単に権利を得、 又は義務を免れ る法律行為 ・ 法 定 代 理 人 か ら目的を定めな いで処分を許さ れた財産の処分 や、目的を定め て処分を許した 財産の目的の範 囲内の処分 ・法定代理人から 営業の許可を受 日用品の購入 その他日常生 活に関する行 為 原則:自ら単 独で行為をす ることができ る。 例外:一定の 重要な財産上 の 法 律 行 為 (13 条 1 項に 列挙されてい る行為等)に ついては保佐 原則:自ら単 独で行為をす ることができ る。 例外:家庭裁 判 所 は、13 条 1 項に列挙 された事項の 特定の一部に ついて、補助 人に同意権を

(30)

条文確認

制度趣旨

10 

制限行為能力者の相手方を

保護する制度

制限行為能力者が行った法律行為は、後に追認されることによって確定的 に有効なものとなる。追認があるまで有効は有効だが、取り消されてしまえ ば、行為の時に遡って無効になる(これが「取消し」の効果(121 本))。し かも、制限行為能力者の静的安全の保護を重視しているため、制限行為能力 者と取引をした善意の相手方を保護する規定もない。 このように、制限行為能力者と取引をした相手方は不安定な状態に置かれ ることになるので、その相手方の保護のため、相手方に催告権を与えて、法 律関係を速やかに確定することを可能にしている(20)(なお、法律関係を 速やかに確定させる制度として、法定追認(125)、取消権の短期消滅時効 (126)がある)。

(1) 相手方の催告権

第 20 条 1項 制限行為能力者(未成年者、成年被後見人、被保佐人及び第 17 条第 1項の審判を受けた被補助人をいう。以下同じ。)の相手方は、その制 限行為能力者が行為能力者(行為能力の制限を受けない者をいう。以下 同じ。)となった後、その者に対し、1箇月以上の期間を定めて、その 期間内にその取り消すことができる行為を追認するかどうかを確答すべ き旨の催告をすることができる。この場合において、その者がその期間 内に確答を発しないときは、その行為を追認したものとみなす。 2項 制限行為能力者の相手方が、制限行為能力者が行為能力者とならない 間に、その法定代理人、保佐人又は補助人に対し、その権限内の行為に ついて前項に規定する催告をした場合において、これらの者が同項の期 間内に確答を発しないときも、同項後段と同様とする。 3項 特別の方式を要する行為については、前2項の期間内にその方式を具 備した旨の通知を発しないときは、その行為を取り消したものとみなす。 複雑だけど、頑張って 押さえましょうね!

(31)

第 1章 私権の主体 民法総則 4項 制限行為能力者の相手方は、被保佐人又は第 17 条第1項の審判を受 けた被補助人に対しては、第1項の期間内にその保佐人又は補助人の追 認を得るべき旨の催告をすることができる。この場合において、その被 保佐人又は被補助人がその期間内にその追認を得た旨の通知を発しない ときは、その行為を取り消したものとみなす。 ア 催告を受ける者と確答がない場合の効果 制限行為能力者本人 〈1〉 〈2〉 Ⓐ 単独で取引 相手方 Ⓒ 相手方 Ⓒ 制限行為能力者本人 Ⓐ 催 告 催告 法定代理人等 その後 Ⓑ 催告を受ける者 確答がない場合の効果 未成年者及び成年被後見人 (行為能力者となった後)(☆1) 追認みなし(20 Ⅰ) 未成年者及び成年被後見人の 法定代理人 ・特別の方式(☆2)以外は追認みなし (20 Ⅱ) ・特別の方式は取消しみなし(20 Ⅲ) 被保佐人及び被補助人 (制限行為能力者の間)(☆1) 取消しみなし(20 Ⅳ) 被保佐人及び被補助人 (行為能力者となった後追認みなし(20 Ⅰ) 保佐人及び補助人 ・特別の方式以外は・特別の方式は取消しみなし(20 Ⅲ)追認みなし(20 Ⅱ)

(32)

「確答の通知不発信の効果の見極め方のポイントはありますか?」 「それは、『制限行為能力者の側が、単独で追認できるかどうか』という点 に注意して判断すると良いんだよ。」 「『単独で追認できる』者であれば『追認みなし』で、『単独で追認できない』 者であれば『取消みなし』と考えれば良いということですか?」 「そのとおりだよ。」 イ 催告の仕方 ① 催告をされる者が単独で追認できる場合は、1ヵ月以上の期間内に 取消し可能な行為を追認するか否かを確答するように催告する(20 Ⅰ・Ⅱ)。 ② 特別の方式を要する場合で、未成年後見人に未成年後見監督人、成 年後見人に成年後見監督人がおり、その同意を要する場合も、①と同 じように、催告をされる者が単独で追認できる場合は、1ヵ月以上の 期間内に取消し可能な行為を追認するか否かを確答するように催告す る(20 Ⅲ)。 ③ 催告の相手方が被保佐人・被補助人である場合は、1ヵ月以上の期 間内に保佐人・補助人の追認を得るよう催告する(20 Ⅳ)。 ☆2 特別の方式を要する行為とは,後見監督人が選任されている場合で,法定代理 人等の後見人が後見監督人の同意を得て追認するとき等である。

(33)

第 1章 私権の主体 民法総則 ❶ 制限行為能力者が未成年者の場合、相手方は、未成年者本人に対して、 1か月以上の期間を定めてその行為を追認するかどうかを催告することが でき、その期間内に確答がなければその行為を追認したものとみなされる。 (2006-27-2) 答 【×】 解説 未成年者、成年被後見人であるうちは意思表示の受領能力がないので (98 の2参照)、催告をしても対抗することができない。20 条1項は、制 限行為能力者が行為能力者になった後の規定である。

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条文確認

制度趣旨

(2) 制限行為能力者が詐術を用いた場合

第 21 条 制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたと きは、その行為を取り消すことができない。 いくら制限行為能力者の静的安全の保護が重要でも、だからといってその 保護されるべき者が詐術(つまり、行為能力者であると偽ること)によって、 その者と取引をする相手方に行為能力者であると誤って信じさせた場合にま で保護すべきではない(取引安全の保護に傾く)。 そこで、詐術を行った制限行為能力者(法定代理人も含む)は、自らの法 律行為を取り消せないとし(21)、いわば制裁を課すことにした。 なお、第三者による詐術が行われた場合は、21 条の話ではない。 「詐術を用いたとき」とは、無能力者(現在の制限行為能力者のこと)が能 力者であることを誤信させるために、相手方に対し積極的術策を用いた場合 に限るものではなく、無能力者が、ふつうに人を欺くに足りる言動を用いて 相手方の誤信を誘起し、又は誤信を強めた場合をも包含すると解すべきです。 したがって、無能力者であることを黙秘していた場合でも、それが、無能 力者の他の言動などと相俟って、相手方を誤信させ、または誤信を強めたも のと認められるときは、なお詐術に当たるというべきですが、単に無能力者 であることを黙秘していたことの一事をもって、右にいう詐術に当たるとす るのは相当ではありません(最判昭 44.2.13)。

(35)

第 1章 私権の主体 民法総則 ❶ 制限行為能力者が被保佐人であり、保佐人の同意を得なければならない 行為を被保佐人が保佐人の同意またはそれに代わる家庭裁判所の許可を得 ずにした場合において、被保佐人が相手方に対して行為能力者であると信 じさせるために詐術を用いたときには、制限行為能力を理由としてこの行 為を取り消すことはできない。(2006-27-4) 答 【〇】 解説 制限行為能力者が、行為能力者であることを信じさせるため詐術を用 いたときは、制限能力者保護の必要性がなく、その行為を取り消すことが できない(21)。これに対し、単に制限行為能力者であることを黙秘して いた場合には、詐術には当たらない(最判昭 44.2.13)。なお、「それに代 わる家庭裁判所の許可」は民法 13 条3項に根拠があるので確認しておこう。 ❷ Aが自己所有の甲土地をBに売却する旨の契約(以下、「本件売買契約」 という。)が締結されたことを前提に、Aは未成年者であったが、その旨 をBに告げずに本件売買契約を締結した場合、制限行為能力者であること の黙秘は詐術にあたるため、Aは未成年者であることを理由として本件売 買契約を取り消すことはできない。(2014-28-5) 答 【×】 解説 判例によれば、無能力者(現在の制限行為能力者のこと)であること を黙秘することは、無能力者の他の言動などと相まって、相手方を誤信さ せ、または誤信を強めたものと認められるときには、「詐術」に当たるが、 黙秘することのみでは詐術に当たらないとされている(最判昭 44.2.13)。 本肢のように、単なる黙秘では「詐術」(21)には当たらない。 

(36)

条文確認

11 

制限行為能力者の法律行為の取消し

第 120 条 1項 行為能力の制限によって取り消すことができる行為は、制限行為能力 者又はその代理人、承継人若しくは同意をすることができる者に限り、 取り消すことができる。 2項 詐欺又は強迫によって取り消すことができる行為は、瑕疵ある意思表 示をした者又はその代理人若しくは承継人に限り、取り消すことができ る。 第 121 条 取り消された行為は、初めから無効であったものとみなす。ただし、制限 行為能力者は、その行為によって現に利益を受けている限度において、返還 の義務を負う。 第 124 条 1項 追認は、取消の原因となっていた状況が消滅した後にしなければ、そ の効力を生じない。 2項 成年被後見人は、行為能力者となった後にその行為を了知したときは、 その了知をした後でなければ、追認をすることができない。 3項 前2項の規定は、法定代理人又は制限行為能力者の保佐人若しくは補 助人が追認をする場合には、適用しない。 第 126 条 取消権は、追認をすることができる時から5年間行使しないときは、時効 によって消滅する。行為の時から 20 年を経過したときも、同様とする。

(37)

第 1章 私権の主体 民法総則

(1) 取消権者

(2) 取消権行使の効果

ア 取り消すことができる行為は、一応、有効である。しかし、取り消さ れた行為は、初めから無効であったとみなされる(121 本)。 イ このように、一度行われた行為が初めから無効であったとみなされる ので、その行為の当事者には、原状回復義務が発生するはずである。   しかし、制限行為能力者保護の観点から、不当利得の返還範囲につい ては、「現に利益を受けている限度」で返還すれば足りる(121 但)。 「『現に利益を受けている限度』で返還すれば良いということは、『浪費し た場合』は返還しなくて良いのですか?」 「現に利益を受けたとはいえないため返還しなくて良いよ。」 「『現に利益を受けている限度』というのをもう少し分かりやすく教えても らえますか?」 「『現に利益を受けている限度』とは、受けた利益のうち、今もなお存続し ているものをいうんだよ。」 「では、生活費はどうなるのですか?」 ア 制限行為能力者本人(未成年者・成年被後見人・被保佐人・被補助人)(☆) イ 法定代理人(親権者、後見人) ウ 承継人 エ 同意をすることができる者(保佐人、補助人) ☆ 制限行為能力者本人も単独で取消しができる。

(38)

「ギャンブルはどうですか?」 「別の判例では、ギャンブル等に浪費してしまった場合には現存利益はな いとされているよ。」

(3) 取消権の消滅

取消権は、追認をすることができる時から5年経過した時、又は、行為の 時から20年経過した時に消滅する(126)。 なお、追認することができる時とは、本人が行為能力者となり、自分の取 り消し得る行為を認識した時(124 条 2 項は、特に成年被後見人について自 己のなした行為の認識を要求した注意規定である)、また、法定代理人、制 限行為能力者の保佐人、補助人が制限行為能力者の行った行為を知った時を いう(124)。 ❶ 制限行為能力者が被補助人であり、補助人の同意を得なければならない 行為を被補助人が補助人の同意を得てした場合であっても、相手方は、制 限行為能力を理由として補助人の行為を取り消すことができる。(2006-27-5) 答 【×】 解説 補助人の同意を得なければならない行為であって、その同意又はこれ に代わる許可を得ないでしたものは、取り消すことができる(17 Ⅳ)。し かし、同意又はこれに代わる許可を得てした行為は、取消しの対象とはな らない。また、同意を得ないでした場合であっても、取り消すことができ るのは被補助人側であり(120 Ⅰ)、相手方ではない。 ❷ 未成年者であるBが親権者の同意を得ずにAから金銭を借り入れたが、 後に当該金銭消費貸借契約が取り消された場合、BはAに対し、受領した 金銭につき現存利益のみを返還すれば足りる。(2011-27- オ) 答 【〇】

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第 1章 私権の主体 民法総則 未成年者 Ⓐ 単独で取引 相手方 Ⓒ 法定代理人 Ⓑ 解説 制限行為能力者による取消しの場合には、制限行為能力者保護の観点 から、不当利得の返還範囲については、「現に利益を受けている限度」で 返還すれば足りる(121 但)。よって、BはAに対し、受領した金銭につ き現存利益のみを返還すれば足りる。 ❸ Aが 19 歳の時に、その法定代理人Bの同意を得ずにCにAの所有する 不動産を売却した場合に、AおよびBは、Aが成年に達したときには、A C間の売買契約を取り消すことはできない。(2004-25-1) 答 【×】 解説 未成年者がその法定代理人の同意を得ずに法律行為をした場合、原 則として、その未成年者及び法定代理人は取り消すことができる(5Ⅰ、 120 Ⅰ)。そして、取消権は、追認をすることができる時から5年間行使 しないときは、時効によって消滅する(126、124 参照)。本肢の場合、B は、Aが成年に達したとき、法定代理人でなくなるので、AC間の売買契 約を取り消すことはできなくなる。しかし、Aは、Aが成年に達したとき から5年間は取り消すことができる。

(40)

条文確認

条文確認

12 

住所

第 22 条 各人の生活の本拠をその者の住所とする。 第 23 条 1項 住所が知れない場合には、居所を住所とみなす。 2項 日本に住所を有しない者は、その者が日本人又は外国人のいずれであ るかを問わず、日本における居所をその者の住所とみなす。ただし、準 拠法を定める法律に従いその者の住所地法によるべき場合は、この限り でない。 第 24 条 ある行為について仮住所を選定したときは、その行為に関しては、その仮 住所を住所とみなす。

13 

失踪宣告

第 30 条 1項 不在者の生死が7年間明らかでないときは、家庭裁判所は、利害関係 人の請求により、失踪の宣告をすることができる。 2項 戦地に臨んだ者、沈没した船舶の中に在った者その他死亡の原因とな るべき危難に遭遇した者の生死が、それぞれ、戦争が止んだ後、船舶が 沈没した後又はその他の危難が去った後1年間明らかでないときも、前 項と同様とする。 第 31 条 前条第1項の規定により失踪の宣告を受けた者は同項の期間が満了した時 に、同条第2項の規定により失踪の宣告を受けた者はその危難が去った時に、 死亡したものとみなす。 第 32 条 1項 失踪者が生存すること又は前条に規定する時と異なる時に死亡したこ

(41)

第 1章 私権の主体 民法総則

制度趣旨

との証明があったときは、家庭裁判所は、本人又は利害関係人の請求に より、失踪の宣告を取り消さなければならない。この場合において、そ の取消は、失踪の宣告後その取消前に善意でした行為の効力に影響を及 ぼさない。 2項 失踪の宣告によって財産を得た者は、その取消によって権利を失う。 ただし、現に利益を受けている限度においてのみ、その財産を返還する 義務を負う。 例えば、夫が蒸発したとする。この場合の夫は、住所又は居所を去った者(= 不在者)として生死不明となり、帰ってくる見込みもなく死亡の可能性が高 い者であるといえる。にもかかわらず、その者に関する法律関係が確定しな いまま放置されると、その者の家族(妻)や債権者等の関わりある者(=利 害関係人)は不安定な状態に置かれる。 そこで、一定の要件が満たされた場合に家庭裁判所が失踪宣告をすること でその者を死亡したものとみなし、法律関係を確定させることとした。

(1) 要件

以下の場合に、利害関係人からの請求によって、家庭裁判所が行う。 普通 失踪 不在者が生存していることが確認された最後の時から年間不明な場合(30 Ⅰ) 特別 失踪 戦地や、沈没した船舶の中にいた者その他死亡の原因 となる危難に遭遇した者の生死が、その危難が去った 時から年間不明の場合(30 Ⅱ)

(42)

「失踪宣告の請求権者である利害関係人とは具体的にどんな人がいるので すか?」 「不在者の配偶者や推定相続人、不在者に対する債権者等が挙げられるよ。 なお、少し細かいけど、不在者の財産管理人のところでは検察官が請求権 者になっている(25 Ⅰ)のに対し、失踪宣告の請求権者に検察官が入って いないことを覚えておくと、引っかけ問題の対策になるよ。」

(2) 効果

ア 普通失踪 7年間の期間が満了した時に死亡したものとみなされる(31)。 イ 特別失踪 危難が去った時に死亡したものとみなされる(31)。 「失踪宣告の制度は、失踪者を死亡したものと扱うのですから、失踪者が 実際に生きていた場合は、死んでいるのにどうやって生きていけばいいの ですか? これでは、まるでゾンビみたいです。」 「いやいや、失踪宣告の制度は、失踪者の従来の住所又は居所を中心とす る法律関係を確定させるために死亡したものと扱うだけなんだよ。その者 の権利能力がなくなるものではないんだよ。」 H16.1.1 失 踪 H23.1.1 7年 宣 告 死亡 H22.1.1 危難が去る 死亡 遡る H23.1.1 宣 告

(43)

第 1章 私権の主体 民法総則

(3) 失踪宣告の取消し

ア 要件 失踪者が生きていることの証明、あるいは、死亡とみなされた時と異 なる時に死亡したことの証明があった場合には、家庭裁判所は、本人又 は利害関係人の請求により、失踪宣告を取り消さなければならない(32 Ⅰ前)。 イ 効果 ① 失踪宣告の取消しによって、失踪宣告は初めからなかったことにな る。これにより、失踪宣告を原因とする相続はなかったことになるの で、その相続によって取得した財産は返還しなければならなくなる。 また、失踪宣告によって解消した婚姻関係は解消しなかったことにな るなどのように、身分関係も復活することになる。 ②a 失踪宣告により直接財産を得た者(Ex. 相続人、受遺者、生命保 険金の受取人)は、その取消しにより権利を失うが、不当利得の返 還義務の範囲は現存利益で足りる(32 Ⅱ)。  b なお、条文上は区別されていないが、このような返還義務の範囲 の限定は、悪意の者には適用がないとするのが通説である(全部返 還+利息+損害賠償)。 ③ 失踪宣告の取消しは、取引安全の観点から、失踪宣告の後、その取 消しの前に善意で行われた行為の効力に影響を及ぼさない(32 Ⅰ後)。  例えば、失踪宣告の後、その取消しの前に行われた行為が売買契約 である場合、その売買契約の当事者の双方が善意であることを要する というのが判例である(大判昭 13.2.7)。 (夫)

 = 

(妻) 売却 失踪宣告 △ 取消し △

(44)

  なお、失踪宣告を受けた者の配偶者が再婚していた場合、その失踪 宣告取消しの効力は、以下のように整理できる。 ■失踪宣告の取消し(婚姻について) ❶ 失踪の宣告を受けた者は、死亡したものとみなされ、権利能力を喪失す るため、生存することの証明がなされ失踪の宣告が取り消された場合で も、失踪の宣告後その取消し前になされた行為はすべて効力を生じない。 (2012-27-2) 答 【×】 解説 失踪宣告制度は、失踪者の従来の住所又は居所を中心とする法律関係 を確定させるために死亡したものと扱うものであり、その者が権利能力を 喪失するものではない。よって、失踪宣告後も、失踪者は有効に法律行為 をすることをし得る。また、失踪宣告後その取消し前に善意の者がした行 為の効力は、失踪宣告が取り消された場合でも影響を受けない(32 Ⅰ)。 a 再婚当事者の双方が善意の場合   前の婚姻は復活せず、後の婚姻だけが存続する。 b 再婚当事者のどちらか一方でも悪意の場合  前の婚姻が復活して重婚状態が生じるため離婚原因となり、後の婚姻に ついては取消原因となるに過ぎないとされている。

(45)

第 1章 私権の主体 民法総則

1 

はじめに(民法改正)

現在の法人制度の全体が完備したのは、平成 18 年の一般法人法、公益社 団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律、これら2つの法律の施行に 伴う関係法律の整備法による(合わせて公益法人制度改革三法という)。 この改革の結果、民法典の中の法人の規定のうち 38 条〜 84 条がまとめ て削除された。

2 

法人制度の必要性

もし、権利・義務の主体として自然人(個人)しか認められないとすると、 人は、その活動範囲を拡大していくことができず、不便である。例えば、多 数の人々が集まって、団体を構成して共同で事業を営んでいる場合を考える と、その団体が不動産を取得したとしても、あくまで、個々の構成員の共同 所有財産である。そうすると、もし構成員の一人が借金をした場合、その構 成員の債権者は、団体の財産に対するその構成員の持分を差し押さえること ができてしまう。そのようなことが認められると、団体の財産は、いつ何時 その構成員の債権者から差し押さえられてしまうか分からない。 そこで、このような不都合を避けるために、団体に自然人(個人)と同じ ように権利能力(法人格ともいう)を認め、団体の名前で取引して財産を取 得したり、訴訟を提起したりできるようにする法技術が「法人」である。

法人

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(( .  entrenchment のであって、それ自体は質的な手段( )ではない。 カナダ憲法では憲法上の人権を といい、

2)海を取り巻く国際社会の動向

市民的その他のあらゆる分野において、他の 者との平等を基礎として全ての人権及び基本