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人睾丸の電子顕微鏡的研究 : 1.支持細胞について

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27 (東京女医大一鶴28巻第4号頁253−264昭和33年4月)

人睾丸の電子顕微鏡的研究

L支持細胞について

東京女子医科大学教室

久保田くら・串田つゆ香・野村淑子

クボタ

クシダ カ ノムラHシコ

小島桂子・小野泰子

ゴ ジマ ケイ コ オ ノ シゲ コ 言

(受付昭和33年3月5日)

支持細胞は一般に精細胞に栄養を与え,かつま た精細胞形質内の不要物を食するともいわれてい る。随って細胞形質内には種々の物質が含有せら れていると考えられる。 光学顕微鏡による支持細胞の研究は多数行われ ている。殊に詳細なる伊東(1940)の研究がある。 その他多数の実験も試みられている。 人睾丸は材料の入手困難と,電子顕微鏡像の視 野の狭さと両者相まつて研究が思うままに進まず 甚だ不完全なるものである。また光学顕微鏡の所 見と比較してみるに,より稽詳細に観察し得たと いう程度にすぎないが現在までに人睾丸の電子顕 微面的研究は類をみないので発表する。 材料及び方法 手術にて得たる入睾丸の新鮮なるものを,1%のオ スミウム酸緩衝液(pH約7.4)にて固定し, O. 1 paの 超薄切片として鏡検する。 所 見 支持細胞は,曲精細管の管壁に座する細胞にし て,その型は極めて不規則である。精細胞の闇を うねり,甚だ奇異なる型を呈する(図1) 核は1個,しばしば核膜に切痕を有する(図2)。 又核膜は平担でなく,切痕及び凹突を有して細胞 形質内に深く入り込む。 切痕中に比較的小なるミトコンドリアを含む揚 合がある(図2,3,8)。 また核膜は部分によっては小宮粒の蛙列の如く にみえ,膜として認めがたい細胞もある。核中に はしばしば1個の核小体を認める。核小体は紐状 構造を呈する場合が多く,その内部に均質性なる 球状の部分を認める場合もある(図7)。 上述の如く切痕叉は深き入り込みを持つ細胞に おいては細胞形質内に多数のミトコンドリアがあ る。ミトコンドリアは核の形態的変化のある部分 に長軸をむけてならぶ傾向がある。核内には繊細 なる顯粒構造を持つ。 ミトコンドリア 種々の型をとるが,細長なる桿状のミトコンド リアが最も多い(図5,6)。内部構造すなわちPal− adeの所謂櫛状構造を有する(図5,6)。 細長のミトコンドリアの端が丸く亜鈴状に膨大 し,後にくびれ,切れて独立せる小なる点訳とな りゆく像がみとめられる(図4,5,6)。 多量の分泌顯粒をもつ間細胞に比較すれば支持 細胞の穎粒は少い。ことに分泌顯粒と思われる類 脂質顯粒は少い(図9)。 細胞形質内は類脂質に富む(図7∼12)。巨大な る類脂質が多量で,中にi数個叉は10個余の大小の 空胞を入れている。空胞なき揚合は膜が断裂さ れ,類脂質は破散して円形をとらず,細胞形質内 に小塊として散在する(図11)。 小塊はミトコンドリアとは異る。多くの空胞を 有し,かつその空胞が大きくなり,空胞の壁すな

Kura KVBOTA. Tsuyuka KUSHIDA, Yoshiko NOMURA, Keiko KOJIMA & Shigeko ONO :

(Department of Anatomy, Tokyo Women’s Medical College) Electron microscopic studies on

human−testi$. i. The sustentacular ce]ls.

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わち細胞形質に接近している空胞の壁が破れて小 滴となる(図9,10,11,12)。 類脂質の塊又は空胞を有する類脂質に類脂質の 小滴が附着していることがある。 かく類脂質多:量の細胞に於て,ミトコンドリア は小さく,細胞の活動旺盛とは思われない。類脂 質の滴滴の近くに小ミトコンドリアが群っている こともある。 またミトコンドリアの内部構造も明瞭ではな い。長島状のミトコンドリアが多い細胞に於ては 類脂質は多くない。 ゴルジー装置を観察する機会は極めて少なかっ たが,電子顕微鏡的には整った形態のものをみる ことができた(図15)。 小胞体 支持細胞の小胞体は縦断面においては二層の紐 状を呈し長くのびている(図13,14)。横断すれ ば恰も層板状にみえ,紐の両側を微細なる査読が 取り囲む(図15)。なお微細童謡に取りかこまれて いる不定型の大小の腔をみる(図4)。細胞形質内に は如上の如き腔は非常に多くかつ形態が種々であ るが,中には小胞に相応しない大腔もある(4図)。 細胞と細胞との間隙 支持細胞と支持細胞との間には両者の細胞膜問 に昏晦を持ち,その間隙の大小は不定である。間 隙内には数個の小顯粒を入れることもある(図9, 10,13)。 これらの古血はミトコンドリアよりも 小さいが構造はミトコンドリアに等しい。個々の 細胞に境界を有する。他の細胞に比し複雑で,二 重膜にみられる向合もある「B合胞体らしい細胞は みられない。 精子と支持細胞との関係 支持細胞が管腔に向う部分,すなわち基底膜の 反対の部分に精子が頭部を入れている像がみられ る。近辺に精子尾部の断面も認められる。 基底膜 支持細胞の座せる基底膜には膠原線維及び弾性 線維が存在する。轡曲の多い膜であり,かつ多層 である(図1及び2)。 結晶様体はみることができなかった。 考 案 不規則な形をとる支持細胞は,合胞体であると する学者も多いが伊東は殆どの細胞は独立してい るが,合胞体をなす細胞もあると記載している。 著者らが電子顕微鏡にて観察したところでは伊東 の如くほとんどが独立していて,相互の聞に間隙 を持っている。その間隙の中にミトコンドリアを 入れているのは相となれる細胞が互に連絡をもつ からであると考えられる。 シャンデリアの如く精子が支持細胞に附着する と称するが頭を形質内に入れ,ミトコンドリアは 集団してその頭部の近くにある。なお人の精子形 成に関しては後日発表する事として,今回は省略 する。 ミトコンドリアの形は長桿状でくびれ切れ,応 身となりゆく像は支持細胞が分泌を営むことをも のがたるものである。 また類脂質がすこぶる多量に存在するし類脂質 の中には大小多数の空胞が認められる。 類脂質内空胞の小さい細胞形質内にては類脂質は 破散して大小の滴となり然る後に吸収されるかと 考えられる。然らずんば小滴が徐々に集まり大き くなりつつあるかどうかは決定しがtい。 分泌との関係は現在までの分泌四恩に対する考 をもつてすれば支持細胞のミトコンドリアの形態 も分泌を営むことになる。前述の類脂質の在り 方,ミトコンドリアの形態等からみて分泌,なか んずくホルモンの分泌に関係が深いかと思われ る。すでに伊東は脂肪の存在とミトコンドリアの 量とについて述べているが長桿状のミトコンドリ アを多量に有する細胞には類脂質はみられない。 ミトコンドリアは物質の代謝に関係があるといわ れているから,類脂質の代謝にも関与するは当然 と思われる。 ミトコンドリアは核の形態的変化を有するとこ ろにその長軸をむけて集団する。長くは核膜の形 態的変化ある個所において膜として認められず極 小の頼粒の並列の如くにみえることは中井(1956) のいうe“とく核が細胞の諸代謝と関係深きを示す 一つの所見とも老えられる。 要 約 a)支持細胞は五に融合して細胞の境界がない と称せられるがわれわれの観察では確然たる境界 をもつ。ただし細胞の形態は特異である。 b)類脂質の増減とミトコンドリアの量とは略 規則正しい「バランス」を維持している。 c)精子は正に支持細胞の形質内に頭部を入れ こみ,ミトコンドリアも精子の近辺にあつまる。 一 254 一一;

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29 d)細胞枷と凹凸,切れこみのある場合yp常に ゆるやかな場.合もあるが・深ひ切れこみρ)中にミ トコンドリアを入.れ.る場合もあり,かつ殆んどの ミトコンドリアは長軸を切れこみに向けて存在す る。かく核の形態的変化を有する細胞形質内には 多くの丁合ミトコ?ドリアが多量である。 e)類脂質の大,小滴(類脂質が破散し小滴と なり,然る後に吸収さ.れるか,或は逆.に小滴が五 に集り互に融合しつつ大滴となるか何れか決定し 難い).の近くにミトコンドリアが群がるのは,類 脂質とミ.トコンドリアとの関係深き証明とみなさ れる。 以上の研究に際し,慶応義塾大学電子顕徴鏡研究員 各位に並々ならぬ御支援をたまわりましたことを深謝 いたします。 交 献

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11) 12) 13) 14) 15) 16) 17) 18) 19) 図1 なる形を呈している に接し, 図2 中にはミbコンドリア(M)が侵入.している。. 4800) 図3:支持細胞核(N)には切痕(1)を有し,ミト コンドリアが侵入している。細胞質内にはミトコンド リア(M),所謂脂質穎.粒(L−gr)1小胞体(CS)等 が見.られる。(×4800) 図4:支持紬胞核(N)}( 2個所に切痕(.1)を有 し,不正形を.呈す。細胞質内には長桿状のミ.〉コンド. ’Jア(M)・脂質顎粒(L−9・)・空月卿状穎粒(V・“9;)脅 認む。 (×9500) 図5:支持細胞細川に見られる長桿状のミ1・コンド .リア.(Ml)及び精細胞質内の円形のミ〉コンドリア

of the mitochohdrial” 唐狽窒浮モ狽浮窒?D 1. HiStochem.

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附 図 説 明 :支持細胞(SC)は精細胞の問に位し,奇異 。精祖細胞(SG)及び支持細胞 基底膜(BM)が認められる。(×4800) :支持細胞核(N)は切痕(1)を有し,切痕 (× 一 20eor 一

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(M2)。両者共に明瞭なる櫛構造(Cr)を認む。 (× 15000) 図6:麦持細胞質内のミ〉コンドリア像(M)。 ミトコンドリアの端が丸く膨大し(↓),くびれ小穎粒 (gr)となる状態が観察される。(×15000) 図7:麦持細胞核中には核小体(NC)がみられ る。核小体は紐状なし構造を呈し,内部に円形の均質 なる。部分が認められる。細胞形質内には多くの小胞 体(CS)を認める。(×4800) 図8:支持細胞の核(N)には切痕(1)を有し,ミ トコンドリア(M)が侵入している。細胞形質内には ミトコンドリア(M),脂質穎粒(L−gr),空胞状小願 粒(V−gr)等が認められる。(×4800) 図9:支持細胞間には互に明廓なる境界を有し(?) その間隙問には小願粒(gr)が認められる。細胞i形質 内には・ミトコンドリア(M),内部に空胞を有する脂 質穎粒(L−gr)等がみられる。(×3000) 図10:同上 (×7000) 図11:支持細胞質内は不正形の大なる脂質穎粒 (L−gr)}こ富んでいる。(×7000) 図12:支持細胞核(N)は楕円形を呈し,内部に1 個の核小体(NC)を認む。細胞質内には内部に空胞 (V)を含んだ大なる脂質願粒(L−gr),空胞壁が破 散した如き脂質の小塊(L−m),ミトコンF” iJア(M)等 が見られる。 (×6300) 図15:支持細胞の小胞体(CS)はしばしば図の如 く縦断面では規則的な平行構造を呈するが,横断面で は同心円状を呈している。 (×12000) 図14:支持細胞形質内には同心円状の小胞体(CS) を認め,さらに不正形の脂質穎粒(レgr)及びミ}コ ンドリア(M)等を認める。(×4800) 図15:精細胞のGolgi小体(Goc.1)及び支持細 胞にもGolgi小体(Goc.2)を認む。(×7800) 図16:精子尾部形成に関与する精細胞のミトコンドリ ア像(M)。(×16000) 一一 256 一・

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31

1

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3

4

(7)

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図 5

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図 7

図 8

(9)

35

9

図 10

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11

12

(11)

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蜒S繊轟、

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図 13

14 一 .C68 一

(12)

15

15

図  12 一262一

参照

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