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交流用高電流密度超伝導線材の開発に関する研究

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

交流用高電流密度超伝導線材の開発に関する研究

三浦, 大介

https://doi.org/10.11501/3120512

出版情報:Kyushu University, 1996, 博士(工学), 論文博士 バージョン:

権利関係:

(2)

第3章. 人工ピン型超伝導線材を用いた 高磁界用交流超伝導マグネットの試作

3. 1 はじめに

第2章において述べたようにアイランド形状のNb人工ピン導入型交流用NbTd:泉 材の開発の結果、 従来の交流用線材では実現不可能であった広範囲の磁界におけ る高Jcイヒが達成され、 人工ピンを設計して導入することにより、 望まれる仕様で の高Jc線材の設計が行える見通しが得られた。 超伝導交流応用機器にこのような 高Jc線材を用いることは使用する超伝導体の体積減少につながり、 機器のコンパ クト化、 コスト低減が可能になるだけでなく、 機器に要求されている導体の大容 量化に結びつくものである。 本章ではこのような人工ピンによる高Jcイヒのメリッ トを明確にするために従来の交流用線材と比較検討を実施する。 はじめに交流マ グネットの設計を例に取り、 従来の交流用線材を使用した場合と人工ピン型交流 用線材を使用した場合について比較を行い、 高Jc線材を使用する利点について指 摘する。 次に現状の人工ピン型交流用線材の特徴を最大限に活かした2.5Tの高磁 界を発生する超伝導マグネットを設計し、 それに使用する線材の人工ピンによる Jc設計を行う。 そして大型ビレ ットで製作された線材の特性、 さらに製作した交 流マグネットの性能試験結果について従来の交流マグネットと比較しながらその 有効性について議論する。

-119-

(3)

】4・・

3. 2 超伝導交流応用機器における適用

3. 2. 1 大容量化におけるメリット

超伝導交流機器用導体には数KA�数10KAの大容量導体が使用される。 従来の交 流線では素線一本当たりの1 (;は高々10A程度であるため、 導体は素線を多数本 撚 り合わせた撚線を数次に撚った多重撚線構造、 または撚線をRutherford cable型 に成形した成形撚線構造が一般的である。 ところで交流通電における撚線の臨界 電流値( ACクエンチ電流値〉は一般に素線の本数倍にはならないという劣化現象 が知られている。 この原因としては作製過程における機械的ダメージ、 電磁力に よる動き(wi re movement)、 交流損失による温度上昇[111 J、 素線のインダクタン スバランスの不均一[112Jなどが論じられてきたが、 最近では縦TIrt界での素線内飽 和領域の拡大による磁気的不安定性が大きな原因として考えられている[113J。 多 次の撚線では個々の素線の縦磁界成分が大きくなり、 これによる飽和領域の拡大 が導体のクエンチ電流レベルを極端に低下させるロ また、 撚線においては従来の 横磁界交流損失に加え縦磁界交流損失も考慮する必要があり、 特に高磁界中では 縦磁界損失が大きくなることも明らかにされている[114 Jロ またその改善方法とし ては素線の撚ピッチ、 撚方向の最適化、 さらには入Jcを増大させることが指摘さ れている。 これらの要請に適した交流用線材としては人工ピン型交流用線材が有 望である。 素線の高Jcイヒにより、 撚線のi欠数を減少させることができるからであ る。 一次、 二次撚線レベルでは素線の縦磁界成分がそれほど大きくないため電流 値劣化は少なく、 ほぼ素線本数倍の電流値が通電できるとした設計が可能である。

人工ピン型交流用線材を用いれば、 二次撚線レベルで1T程度までの磁界領域では 十分にKA級導体の製作が可能である。 例えば素線径をO. 16 mm、 超伝導占積率入と して0.25を用いた6x6撚線導体を考えると、 前章での結果から0.5Tでの予想1 c値

-120-

(4)

は4900A、 2Tでも 1600Aの電流容量が達成されることになり、 この程度の電流容 量が要求される機器に関しては二次撚線レベルで十分に導体設計 が可能である。

また三次撚線の縦磁界交流損失に関しでも、 高J c{ヒによるメリットが指摘されて いる[ 114J。

3. 2. 2 高磁界用超伝導交流応用機器におけるメリット

現在開発の進められている超伝導交流用機器は、 使用線材の磁界領域がほぼOに 近いS-N転移型超伝導限流器[115Jや有鉄芯型超伝導変圧器[116Jなどの0.5T程度 以下の低磁界領域における応用が主体であり、 1T以上の高磁界領域での応用例は

少ない。 これは大磁界振幅による交流損失の増大もさることながら、 従来交流用 線材のλJcが高磁界で極端に低いことによるところが大きい。

1T以上の磁界領域での機器としては、 全超伝導発電機、 超伝導空芯変圧器、 S

LIM (超伝導リニア誘導モーター) [117J等が挙げられる。 これらの機器は高磁界で 大きな 電流密度を必要とするため人工ピン型交流用線材の格好なターゲットになる。 界 磁巻き線に直流およびパルス用超伝導線材を使用した超伝導発電機は、 現在工業 技術院のSuper-GMにおいて70門VAのパイロ ット機の製作が行われている[1 J。 一方、

電機子巻き線の超伝導化により発電機効率がさらに上昇し、 機器の小型化も図ら れるため、 電機子巻き線に交流用超伝導線材を用いた全超伝導発電機も各研究機 関で試作、 研究が進められている[2, 3J。 電機子巻き線領域には交流用線材として はかなりの高磁界がかかるため、 それに使用される交流用超伝導線材は高磁界で 十分な電流密度を有し、 さらに低交流損失な高性能線材が必要とされている。 実 機レベルの600MVAの全超伝導発電機の概念設計は石郷岡ら[118Jによって行われて いる。 この設計によれば電機子巻き線領域の磁束分布は1. 5 T ,...2 Tの寓磁界であり、

電機子巻線領域の電流密度は13A/旧m2と設計されている。 設計に用いた線材の詳細 は不明であるが、 こ れに人工ピン交流線材を使用すれば巻き線電流の高密度化が

-121-

(5)

』・

図られ、 線材体積の減少とそれに伴う全交流損失の低減が期待される。 超伝導空 芯変圧器[119Jは磁束密度が鉄の飽和により制限されないので、 有 鉄芯型と比較し さらなる小型化及び設計自由度が大きいことなどの様々な利点がある。 空芯超伝 導変圧器の開発のためには 鉄の飽和磁束密度である1.5Tを凌ぐ高磁界を発生させ る交流用超伝導線材を使用する必要がある。 また最近では導体の磁気浮上輸送を

目的として、 積極的にマグネットの電磁力を用いたSLI門(超伝導リニアイけのわョンモータ ー〉の開発が進められている。 これは鉄鋼プロセスにおける溶鋼、 鋼板等の導電性 材料を二次導体とし、 非接触で直接駆動力を与えることができるため応用範囲の

広い装置と考えられている。 SLIMでは狭い空間に大きな磁界(1.5T程度以上〉を

発生させることが求められるため、 高磁界でより臨界電流の高い交流用線材が必 要とされている。

以上のように1T以上の比較的高磁界において使用する交流機器用線材として、

高磁界で高入Jcを有する人工ピン型交流用線材は非常に有望であり、 その線材の 要請に十分に対応することができる。 ここでは交流マグネットにおける高Jcイヒの 有効性を従来交流用線材と比較検討するために1Tのソレノイド型交流マグネット の設計を行ったロ 簡単な比較の為、 Jcは従来線材の5000A/mm2 (1 T、 O.5 ,U mフィ

ラメント〉に対して人工ピンは2倍の値とした。 線材の諸元及びマグネットの設 計結果を表3-1示す。 これによれば人工ピン線材を使用したマグネットの方が小型 化が図られ、 それに応じて線材長は半分以下で済むこと、 それに対応 してインダ

クタンスも極端に低いことがわかる。 表3-1にはマグネット全交流損失として履歴 損失と結合損失をマグネットの磁界分布を 考慮して計算した結果も合わせて示さ れている。 線材長の減少によりマグネットの交流損失も従来線材の6割程度に低 減されている。

-122-

(6)

表3-1人工ピン線材と従来線材を用いた1 Tソレノイド マグネットの特性比較

Art. pin AC wire used / Coventional AC wire used

Critical current density at 1T 10000A/回目2 Wire dia. 0.14mm Filament dia. 0.5μ田 Twist pitch 1.4mm Cu/CuNi/NbTi 0.5/2.5/1 Insulated dia. o .16mm Stranded numbers 7 Cable pitch 3mm Insulated dia. 0.6皿皿 Operation current 134.7A

Magnet

Bore dia. 50 mm Inner dia. 60 回目 Outer dia. 70.8mm

Length 150mm

Layer numbers 4 Turn numbers 1000

Inductance 0.023H Central field 1. 017T Total cable length 205.5m

AC LOSS(lT,50Hz)

Hysteresis loss 53KW/囚3 Coupl ing loss 25KW/m3 Magnet loss 4.3W

5000A/田IB2

67.3A

8 2000 o .106H 1. 034T 451 m

26.5KW/m3 25KW/m3 7.2W

-123-

(7)

..-

3. 3 線材およびマグネットの設計

前項での検討結果により交流マグネットに高Jc線材を使用する利点が明らかに なったロ ここではさらに様々な条件で使用する超伝導交流機器に適用する線材と して、 特に高い磁界振幅で使用可能な線材として人工ピン型交流用線材の位置ず けを行う。 これは従来型交流用線材のJcがlT以上の磁界領域では急激に減少する ため、 高磁界で使用する交流用機器には適当で無いと考えられるからである。 さ らに人工ピン線材は高磁界交流用線材として使用する時、 そのメリットを最大限 に発揮できると予想される。 そこで、 人工ピン線材の性能を検証するため、 それ を使用した2. 5Tの磁界を発生する100KVA級の交流マグネットの開発を行うことと

した。

マグネットの定格電流および電圧は、 使用する電源容量により60Hzにおいて、

それぞれ100Arms、 1000Vrmsに て設計を行う。 従って、 これらの制限の下に最大磁 界が2. 5Tを満足するようなマグネットの設計を実施した。 設計手順としては最初 に定格電流を満足する線材設計を行い、 次にその線材を用いてマグネットを設計 した。

3. 3. 1 クエンチ保護からの臨界電流密度の設計指針

交流マグネットの線材設計にとって重要な問題の一つにクエンチ保護がある。

交流用線材は結合損失低減化のためにマトリクスに高抵抗のCu-Ni合金を用いるの で、 従来の安定化理論[66.67Jに基づいた直流用線材のように多量の安定化Cuを導 体内部に付随することはできない。 また、 導体にはホルマール、 テトロンなどの 絶縁被覆を施し、 さらには導体の固定のためにエポキシ含浸を行うこともあるた め、 直接的なヘリウムでの冷却効果も期待されない。 従って、 擾乱によりクエン チした巻き線を保護するためには、 クエンチ検出をして電源を遮断するまでの時

-124-

(8)

..-

聞において、 導体の温度上昇を許容温度以下に抑えな ければならない。

一方、 交流マグネットのクエンチ現象においては、 常伝導伝ばん速度が通常の 二桁も早い、 交流用撚線導体に特有の高速常伝導転移現象[120Jが知られており 、 クエンチ保護の面で有望である。 しかし、 導体長が100m以上の巻き線においては、

積極的な発生工作をしない限り高速常伝導転移を起こすことは困難である。 また、

編組絶縁が施された撚線では、 同一層内での二次元的な伝搬[121Jも期待できない。

従って現段階では、 クエンチした 導体の常伝導部におけるジュール発熱を導体比 熱で吸収する 以外に良い方法はなく、 導体の許容温度で定格電流密度が決定され てしまうことになる。 図3-1、 表3-2に岩熊らが行った計算結果[ 122Jを示す。 許容 温度を300Kとし、 安定化銅の体積率入Cu=20児においても、 素線当たりの定格電流

密度は7.7X108A/m2程度に抑える必要がある。 すなわちクエンチ保設の面から、 素 線のJc設計には上限が与えられることになる。 例えば、 マグネットの定格運転電 流を、 臨界電流の50先に設計し、 素線のNbTi占積率を入=0. 2とした場合では、 Jc 値として7.7X109A/m2 CNbTi当たり〉が上限となる。 図3-2に開発されたNbアイ ランド型の人工ピン型交流用線材の代表的なJc- B特性を示す。 0.5T以下の低磁 界ではJc値は非常に高く、 2"'3X101oA/m2の 値が達成されている が、 磁界が2Tま

で上昇すると、 Jc値は7"'8X109A/m2まで低下し、 上記のクエンチ保護から制限さ れるJcの上限値とほぼ等しくなってくる。 従って、 現状の人工ピンによるJc設 計において、 2T以上の高磁界マグネット用線材の設計に関してはクエンチ保護か らのJcの制限を受けずに、 人工ピンの性能をフルに活かした線材設計を実施する ことができる。

3. 3. 2 線材設計

Nbアイランド型人工ピンによるJcの設計は線材開発における研究成果に基づき、

2. 5Tにおいて6.5X109A/m2を目標に実施された。 ピン形態としては2.5Tにおいて

-125-

(9)

10

Copper Volume

λcu:0%

108

t = 50msec Matrix: Cu -30N i

Tb= 4.2 K

Je, A/m2

109

図3-1 交流用線材において安定化Cu比を変化させた場合の通電電流密度と線材 のクエンチ後5 0 m s e c時の温度上昇の関係[122J。

-126-

(10)

表3-2 クエンチ時の温度上昇の要請からくる超伝導線材の臨界電流密度の 上限値[ 122J。

温度上昇

200K 300K

0先

1.4 1.9

(XI08A/mつ

Cu占積率

5先 10児 20先

3. 8 5. 1 7.0

4. 2 5.7 7.7

-127-

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B(T)

図3-2 今回開発されたNbアイランド型人工ピン交流線材の代表的なJ cの磁界 依存性。 破線はクエンチ後の許容温度を300Kとした場合の臨界電流密度の上限ラ イン。 0:持2-0.203、 ム:町一O.156、 口:出-0.203、 .尚一O.299、 ....:持6-0. 102

-128-

(12)

最大ピンカを達成した19芯タイプを採用した。 ピン体積率は最適化された17児とし、

ピン間隔はこの磁界付近においてFpのピークを達成させるために61nmに設計した。

素線は電流密度を確保し、 かっ交流損失を低減するために線径はO. 16mm、 フィラ メントf至をO. 29 �mに、 またマトリクスにはCu-30児Niを用いてフィラメント間隔は O. 11川とした。 さらにクエンチ保護のために、 コア部にCuNiで仕切られたCuを12 先ほど配置した。

マグネット定格電流は祐度をみてJcの約6害IJで設計し、 ケーブルはSUS�:泉の芯 材の周囲に8本の素線を配置した、 8+1の1 <欠撚線構造とした。 素線およびSUS�:泉は、

素線開結合を防止するためにポリエステル絶縁され、 さらに撚線には同じくポリ エステル編組絶縁が施されている。 設計された素線及び撚線導体の諸元を表3-3に 示す。

3. 3. 3 マグネット設計

マグネットは上記の線材を用いて、 最大経験磁界2.5T、 定格電圧が1000Vrms以 下となるような設計がなされた。 その諸元を表3-4に示す。 クリアボアは20mmが確 保され、 定格電流での最大中心磁界2. 3T、 電気容量は約100KVAである。 人工ピン 線材の使用により、 このスペックを有する交流マグネットとしては非常にコンパ

クトで、 かっ低インダクタンスな設計が実現されている。

3. 3. 4 クエンチ時の線材温度上昇

線材の定格電流密度および入Cuの設計においては、 十分なクエンチ対策がなさ れているが、 これを確認するためにホットスポットモデルによりマグネットクエ ンチ時の線材温度上昇の計算を行った。 計算には、 クエンチ後の常伝導部の伝搬 による電流減衰を考慮し、 線材の比熱 には復合則による平均比熱を、 また電気抵 抗には並列回路を用いた。 クエンチ時の線材温度上昇は、 次式の熱および回路方

-129-

(13)

程式により求められる。

dT

C (T) 一一一 =ρ(T)J2(t) d t

Ve J (t) S =

(r(t)2+ωL) 1/2

(3-1)

(3-2)

ここで、 Tは温度、 tはクエンチ後の時間、 C (T)、 S、 ρ(T)はそれぞれ超伝 導素線の単位体積当たりの比熱、 断面積、 抵抗率であり、 Jは電流密度、 Veは定 格電圧、 しはマグネットのインダクタンスである。 常伝導部の抵抗r(t)は、 常伝 導部の伝搬速度Vn用いて以下の式で表せられるD

Vnt r (t) =ρ(T)

S

また常伝導部の伝搬速度には次式を用いた[68J。

Vn=

J (t) L 0 e 8

C (T) e 8 - e 0

(3- 3)

(3-4)

ここで、 Loはローレンツ比で2.45XIO-SWQK-2、 e 0は4.2Kであり、 。sは定格電流 密度における臨界温度である。 計算はクエンチ開始から電流遮断までの時間、 60 Hzの3周期に当たる50msecまで実施した。 その結果を図3-3に示す。 50msec後の線

材の温度上昇は、 ホットスポットにおいて130K程度であり、 クエンチによる線材 の焼損、 劣化の恐れは無いことが理解される。 さらに電流減衰の効果はほとんど

なく、 温度上昇は比熱と定格運転電流でほぼ決定されることも半IJった。

-130-

(14)

140 120

80 100

ハHU

ρnu

40 20 (){)

ω 'HDHCMω(目白

ω '円、 ハhu ハHU ハHU

O. 05 O. 04

O. 03 O. 02

O. 01

ハHU ハHU

Time(sec)

図3-3 (3-1)及び(3-2)式より計算された線材のクエンチ後のホットスポット温度 の時間依存性。 50msec後の温度は130 K程度に抑えられている。

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(15)

表3-3 設計された線材の諸元

Strand

Stranded Cable

Pin numbers Pin diameter、

Pin interval Volume fraction of pins per NbTi

Filament numbers Filament diameter Filament spacing Wire diameter

Twist pitch Cu/CuNi/NbTi

19 28口m 61nm

17.3児 78625 O. 29μm O. 11μm 0. 16mm

1. 47mm

0.12/0.64/0.24 Insulation Polyester varnish Insulated diameter、O.18mm

Strand numbers 8+1 CStainless steel) Insulation Braided polyester Insulated diameter、O.78mm

-132-

(16)

表3-4 設計された交流用超伝導マグネットの諸元

Mag net Clear bore dia. 20mm

1 nner bore d i a. 30mm Outer bore dia. 75mm

Length 60mm

Spacer thickness 1mm Layer numbers 14 Turn numbers 1050 Cable length 173m Field constant 0.0166T/A

Inductance 0.026H Central field 2.3T Operation cur、rnt 140A

Frequency 60Hz

Capacity 100KVA

-133-

(17)

3. 4 実規模レベルの人工ピン型線材の製作とその特性

3. 4. 1 線材製作及び実験方法

素線の製作は直径100mmの実規模レベルのビレットを用いたことを除いて、 前章 で製作した線材と同様な夕、ブルスタック法で行われた。 その加工性おいては特に

問題となる点はなく、 最終素線径において4Km以上の長尺化が達成された。 図3-4

a, bに最終素線およびそのフィラメント断面のSEM像を示す。 llifr面形状はコア部に CuNiで仕切られた19芯の安定化Cuが配置された典型的な交流用線材と同様な構成 である。 全体としてはほぼ設計通りに加工されているが、 フィラメント及びピン

形状は小型ビレットを用いた前章のR&Dのときよりは多少変形度が大きい。

線材の特性評価としてJc測定及び磁化測定を実施し、 マグネットへの適用性の 確認を行った。 Jc測定は電圧タップ長85mmの四端子法で行い、 Jc定義はピンを

含めたNbTi あたりの比抵抗定義10-14Qmとした。 磁化測定は両端を研磨した短尺試 料を用い、 VS門により実施したロ 各測定は線径の変化による振る舞いを観測するた めに、 設計線径O. 16mmの前後の線径0.34"'0. 13mmの線材で行った。

3. 4. 2 Fp特性

各線径のFp- B特性の結果を図3-5に示す。 Fpピークの磁界位置はピン間隔d

sの縮小化により、 高磁界側にシフトする傾向が観測されている。 またそれに伴い、

高磁界特性も向上した。 線材径O.16mmではピン設計通り、 磁界2. 5TにおいてPpピ ークが達成され、 11.7GN/m3のピンカが得られた。 この値はJcに換算すると、 目 標値6 .5X 109A/m2の約7割の4.7x 109A/m2に相当する。 しかしながら、 撚線の臨 界電流値は170A程度が確保されるため、 マグネットの定格電流値としては十分な 値である。 一方、 Jc値がR&D線材からの予想、より低下した原因としては、 ビレ ットサイズの大型化による全加工率の増大や、 加工工程の違いによるフィラメン

-134-

(18)

a・・

図3-4 S E Mによる最終線材の断面観察結果。 (a)全断面、 (b)フィラメン

ト領域。 フィラメント形態は前章のR&D線材と比較して歪みの度合いが大きい。

(フィラメント領域の観察は最終押し出し直後で行った。〉

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図3-5 線材径o. 34m mから0.13mmまでの試料におけるピン力の磁界依存性白 マ グネットに用いる線材径0.16 mmの最大ピン力は、 ピン設計通り2.5T付近で、達成 されている。 o : 0=0. 34mm,ム:0=0. 25mm,口:0=0. 16mm,・: 0=0. 31mm

-136-

(20)

トのダメージが考えられる。 図3-6に今回の線材とR&D線材のフィラメント径が O. 3 �mにおけるn値の磁界依存性を示す。 今回の線材のn値は7程度でR& D�:泉材 の値より低下している。 従って、 今回のJc値の低下は主として加工によるフィラ メントダメージが 原因であると推測される。

3. 4. 3 履歴損失

次に各素線径および撚線における履歴損失の磁界振幅依存性の測定結果を図3- 7に示す。 履歴損失はフィラメント径の縮径化により、 全磁界領域において線径O.

16mmまでは減少し、 さらにフィラメント径を細めた線径O.13mmで、は、 フィラメン ト間隔の減少による近接効果が顕著になり損失は増加した。 この測定結果から 、 設計線材のフィラメント間隔O.llpmの設計の妥当性が検証された。 しかしながら 線径O. 16 mmにおいても、 ツイストされた撚線の損失はツイストを施してない素線 より幾分か低下し、 磁化のツイスト依存性が観測された。 従って、 この線径にお いても若干の近接効果が起きているものと考えられる。 この原因としては、 n値 の低下にもみられるようにフィラメントの歪みが予想より大きく、 フィラメント 間隔が部分的に狭くなったことによると推測される。 これは有効フィラメント径 の振る舞いによっても確認されている。 有効フィラメント径、 d effは大磁界振幅 における臨界状態モデルの適用により、 (3-5)式で与えられる。

d eff = 3πL1 M/ (4μ。λJc) (3- 5)

ここで、 t:]Mはその磁界における減磁と増磁の磁化の幅であり、 μoは真空中の透 磁率である。 図3-8にO.5Tにおける有効フィラメント径と設計フィラメント径の関 係を示す。 設計フィラメント径が減少するにつれ有効フィラメント径も減少し、

履歴損失の結果と同様に、 線径O.13mmで、は上昇に転ずる。 有効フィラメント径と

-137-

(21)

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図3-6 今回の線材とR&D線材のフィラメント径約0.3μmの試料におけるn値 の磁界依存性。 n値の低下はフィラメントの歪みの度合いと対応していると考え

られる。 0:R&D-#2,ム:R&D一件5,口:R&D-#4,・:今回の線材

-138-

(22)

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Field Amplitude, BmCT)

図3-7 V S M測定による線材径0.34mmから0.13mmまでの試料の履歴損失の磁

界振幅依存性。 フィラメント径の低下(0. 8 2μm---O. 29μm)により設 計線材径までは履歴損失の低下が確認されている。 o : 0=0. 34mm,ム: 0=0. 25mm,口

: 0=0. 16mm,・: 0=0. 31mm,・:撚線ケーブル(0=0.16mm)

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図3-8 各試料の0.5Tにおける有効フィラメント径と設計フィラメント径の関係。

0:今回の線材、 ム:R&D-出,口:R&D-持5

-140-

(24)

設計値の比は2. 5倍程度であるが、 この値はR&D線材の結果より大きく、 n値が 低いことに対応している。 このことは言い換えれば、 健全なフィラメントの線材 を製作すれば、 より高いJcが得られることを意味している。 現状の方法で製作さ れた従来型交流用線材にお いてもフィラメントダメージ、 および近接効果による 磁化の増大により有効フィラメント径は設計値の2"w3倍であるのが一般的である

[123�125J。 一方、 大磁界振幅における履歴損失はλJcとフィラメント径の積に 比例するので、 交流用線材の評価指標であるP h/λJcの50Hz換算値は有効フィ ラメント径により決定されることになる。 今回の線材のO. 5Tにおける評価指標は 2.7XI0-5W/Amが得られており、 現在開発されている同サイズのフィラメントを持

つ従来型交流用線材と同程度かそれ以下の値である[25]。

一141-

(25)

3. 5 交流マグネットの特性

3. 5. 1 マグネットの製作及び実験方法

マグネットの巻き枠には渦電流損失が無く、 低温での岡IJ性に優れたGPRPを使用 した。 さらに冷却チャンネルを確保するため、 層聞には幅lmmのFRPスペーサーを 用いた。 一方、 電気絶縁対策としては、 クエンチ時の温度上昇における液体ヘリ ウムの絶縁性能の低下、 PRPスぺーサーによる沿面放電などを考慮して、 厚さ20,u mのカプ トンシートを各層間に挿入した。 巻き線部からのケーブルの引き出しは磁 界計算を行い、 縦磁界効果[126,127Jをできるだけ避けるように配置し、 さらに引 き出し部分をFRPパイプで固定した。 また、 最終的にマグネットにはワイヤーモー ション防止のため、 エポキシ含浸を実施した。 図3-9に完成したマグネットの外観 を示す。

マグネットの評価実験として4. 2Kにおける60HzのAC通電実験、 および蒸発法に よる全交流損失の測定を実施した。 図3-10に測定ブロック図を示す。 通電電流は 1000Vrms-100Armsのトランスにより供給され、 電圧および電流値はPT、 CTでそれ ぞれ測定電圧に変換された後、 パワーメーターに取り込まれる。 マグネットがク エンチした場合は、 撚線導体の中心sus線と素線に発生する電圧のキャンセル分か らのずれを検出する方法により、 トランスの一次側を3周期以内に遮断可能であ る。 交流損失 はPRPクライオスタット内の液体ヘリウム蒸発量を 液面計で測定し、

自然蒸発を差しヲ|いて求めたロ また、 ヒーターによる校正も行った。 この際、 熱 侵入の差による測定誤差を少なくするために、 測定中のヘリウム液面の測定範囲 を一定にし、 さらに渦電流による損失を極力抑えるために、 つり下げ装置も一部 FRP化したものを用いた。

-142-

(26)

図3-9 完成したlOOkVA級高磁界交流マグネットの外観。

-143-

(27)

A. C.

Power Supply Quench

VI Detector

Liq.He

Analyzing Recorder

図3-10 通電試験及び蒸発法による交流損失測定のための測定ブロック図。

-1 44-

(28)

3. 5. 2 通電特性

通電はトランスの容量を50KVAから徐々に上昇させ、 最終的に定格値である容量 104.8KVA、 電流値105.8Arms、 電圧値991.2Vrmsをクエンチ無しで達成した。 その

際、 中心磁界はピーク値で2.5T、 最大経験磁界としては2. 6Tの高磁界を発生した。

マグネットのロードラインを撚線の臨界電流曲線と合わせて図3-11に示す。 到達 地点はロードライン上で撚線の臨界電流値の約90児であり、 クエンチレベルまで通 電を実施すれば中心磁界はさらに上昇することが期待される。

3. 5. 3 交流損失

中心発生磁界振幅が0.7Tから2Tまでの60Hzにおけるマグネット全交流損失測定

結果を図3-12に示す。 全交流損失は2Tで4. 8Wとなり、 この時の容量69KVAに対して O. 007児と極めて低いことが確認された。 さらに有効ボアおよび有効巻き線長が同 様である、 従来交流用線材を使用した100KVAクラスの交流マグネット[128]と比較 すると、 発生磁界1Tにおいては6.5Wに対して2. 3Wと交流損失は約1/3に減少した。

このことは高電流密度の線材を用いることによるマグネット小型化の優位性を示 している。

次に-{欠t然、線の履歴損失の測定結果を用いてマグネットの交流損失を見積もり、

測定結果との比較を行う。 計算はマグネット内部の径方向(r)および軸方向(z)の 磁界8 r、 8zを考慮し、 内部の磁界の大きさ、 8(r, z) = (8r2+8z2) 1/2を 各 層、 ター ンごとに求め、 撚線の単位体積当たりの交流損失P(8)の磁界依存性とそこでの撚 線の体積V(r, z)の積の和から、 全交流損失W T;=�P(r, z)V(r, z)として求めた。 撚 線の交流損失のうち、 履歴損失は図3-7の測定結果をPh=αB rnで折れ線近似し、

また結合損失には素線内部の結合損失のみを考慮して、 Turckの計算式[49]を用い た。 計算されたマグネット交流損失の結果は図3-12に合わせて示されている。 低 磁界で測定値が低いことを除いて両者ともほぼ一致し、 測定結果の妥当性、 およ

-145-

(29)

び交流損失以外の機械的損失等はほとんど無いことがわかった。 また、 計算され た交流損失のうち、 結合損失の占める割合は非常に小さく、 中心磁界振幅2Tにお いても、 全損失の4先程度であった。 これはソレノイドマグネットにおいて、 高磁 界が加わる領域の線材体積が少ないことに起因している。 一方、 低磁界で実測値 が計算値より低下した原因としては、 撚線の履歴損失測定試料が短尺であったこ とによると考えられる。 既に述べたように使用した線材は、 低磁界において若干 の近接効果が観測されており、 短尺試料の結果ではツイストによる効果が長尺試 料と比較すると小さいことも確認されている[129]。 従って、 長尺試料における測

定結果を用いれば、 低磁界においても測定結果と一致すると考えられる。

-146-

(30)

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ハHU ハHU 2

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Maximum

図3-11 交流マグネットのロードラインと導体の各定義による臨界電流の磁界依 存性。 *印はl05kVA到達地点を示す。 この際クエンチは一回もしていない

-147-

(31)

20

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Field(T) Central Magnetic

図3-12 80Hzにおける交流マグネットの交流損失の中心磁界振幅依存性。 従 来の交流用線材を使用した同サイズの交流マグネットの損失[128Jも併せて示す。

発生磁界1Tにおいて交流損失は2.3Wと従来の約1/3となり、 人工ピン型交流 用線材を使用することによるマグネット小型化のメリットが実証された。 ・:開

発した交流マグネット、 �:従来の交流マグネット[128J 一一ー :計算結果

-148-

(32)

3. 8 まとめ

交流用NbTi超伝導線材の高Jcイヒにおける人工ピン導入法の研究により、 従来型 交流用線材では実現不可能であった高Jc化が達成され、 ピン導入によるJc設計 の方針が得られた。 今回はさらに実用化への前段階として、 100KVA級の高磁界交 流マグネットの開発を行い、 人工ピンによるJc設計の妥当性、 および高Jc線材 を用いたマグネットの有効性を検証した。 製作した線材の特性および マグネット の性能試験結果は以下に要約される。

( 1 )第2章で述べた一連のR&Dの研究結果に基づき、 実用線材のJc設計とし

てマグネットの最大磁界2.5TでPpピークを達成させるようなピン設計を実 施した結果、 F'pピークは予想通り2.5Tにおいて達成され、 また臨界電流密 度としてはマグネット運転電流値の仕様を十分に満足する4.7X109A/m2が 得られた。

( 2)素線の交流損失は設計線材であるフィラメント径0.29pm、 フィラメント間 隔O.11川で最低値を示し、 フィラメント間隔設計の妥当性が確認された。

さらに交流用線材の評価指標であるP h/入Jcは、 0.5Tにおいて50Hz換算 で、 2.7X10-5W/Amとなり、 同じフィラメント径を有する従来型交流用線材 と同レベル以下の値であった。

(3) AC60Hz、 4.2Kにおけるマグネット通電実験の結果、 容量104.8KVA、 電流値 105.8Arms、 電圧値991.2Vrmsの定常運転に成功した。 その際、 中心磁界は 2.5T、 最大経験磁界としては2.6Tの高磁界を発生した。

-149-

(33)

(4)蒸発法による全交流損失測定の結果、 中心磁界振幅2Tでは4.8Wとなり、 こ の時の容量69KVAに対して0.007児と極めて低いことが確認された。 さらに有 効ボアおよび有効巻き線長が同様である、 従来型交流用線材を使用した

100KVAクラスの交流マグネットと比較すると、 磁界振Ip� 1 Tにおいては、 従 来の6.5Wに対して2.3Wと交流損失は約1/3に減少した。 これにより、 高電流

密度の線材を用いることによるマグネット小型化の有効性が確認された。

今後は、 これらの研究成果を全超伝導発電機、 変圧器、 限流器などの超伝導電 力応用機器、 及びSLIMなどの実用機器に使用する線材設計に適用していくこ

とが期待される。

-150-

(34)

第4章. ブロンズ法による交流用

N b

3

S n線材の開発

4. 1、 はじめに

既に第l章で述べたように、 Nb3Sn超伝導極細多芯線はNbTiと比較して高温、 高 磁界で使用可能な優れた超伝導特性を有し、 Jcも高い。 さらに線材の温度上昇が Jcに与える影響が比較的少なくクエンチマージンが大きいという特徴を持つ。 従 って交流損失の低減が十分になされ商用周波数での交流運転が可能になれば、 こ れらのメリットを活かして超伝導交流応用機器へ適用することが強く期待されて いる。 Nb3Sn線材におけるこの様な要請に対して、 本章では交流損失の低減化に関 してフィラメントのサブミクロン化技術の確立を目的としたCu合金バリアを用い たブロンズ法による交流用線材製作方法を提案し、 その方法を用いて実際に製作 した線材の超伝導特性の評価を行った。 その結果、 近接効果が十分に抑制された O. 3μmのフィラメント径を達成し、 線材の大幅な交流損失低減が図られた。 さら

に開発した線材の一次撚線を使用した小型の交流マグネットの製作も行った。 試 作したマグネットの発生磁界O.5Tでの50H z通電運転による交流損失は178k W

/m3であり、 交流用として開発中である他の製法によるNb3Sn線材と比較しでも 非常に低い値が得られた。 この結果、 本製作方法による交流用Nb3Sn線材の定常的 な交流通電は十分可能であることが明らかになり、 Nb3Sn線材の交流応用への道が 聞かれた。

-151-

(35)

4. 2、 ブロンズ法による交流用Nb3Sn線材の設計とその製作方法

4. 2. 1 線材の設計方針

Nb3Sn線材を交流用として使用可能にするための最重要課題は低交流損失化であ る。 特に履歴損失低減化のためにはフィラメントをサブミクロンサイズにするこ とが必要不可欠である。 また近接効果を防止するためにはフィラメント間隔を制 御することやマトリクスの高抵抗化が重要であり、 さらには結合損失を低減する ためにツイストピッチを十分に小さくする必要もあり、 線材の十分な縮径化が要 求される。 このような要請を満足する線材を開発するために、 ここでは直流 ・ パ ルス用として数ミクロンのフィラメントを有する極細多芯線材の製作方法として 最も実績があり、 比較的製作が容易なブロンズj去を用いて交流用超伝導線材の開 発に着手した。

ブロンズ法はCu-Sn合金(ブロンズ〉中にコアとなるNbを挿入し、 数回のスタッ クを重ねてコアを細線化し、 7000C前後の最終熱処理 における拡散反応によってN

b3Snフィラメントを生成させる方法である。 現状の商用線材のフィラメント径は 生成熟処理条件やJcとの関係から10"'3μm程度のサイズのものが選択されている。

これは拡散距離が大きいとNb3Snの生成に長時間の熱処理が必要なこと、 逆にフィ ラメントを細線化しすぎると製作過程におけるフィラメントダメージ等の外的要

因により、 Jcが低下してしまう為である。 このフィラメントダメージの原因とし ては最終押し出し、 及びそれ以降のブロンズ焼鈍熱処理過程によりフィラメント 表面に生成するNb- Sn化合物の影響が考えられている。 実際に最終押し出し以降 のコア表面のSEM観察によれば無効なNb3Snの核生成が確認されている[130J。

またそうして製作されたフィラメントにはソーセイジングが観察され、 n値の低 下も観測されている[131, 132J。 従ってサブミクロンサイズのフィラメントを製作 するためには、 製作過程における熱処理中のSnのNbコアへの拡散を制御し、 化合

-152-

(36)

物の生成を抑制することが必要である。 そこで新たにCu合金を拡散バリアとして Nbコアの周囲に設けるCu合金バリア法の検討を行い、 この方法を用いた交流用Nb

33n極細多芯線の開発を行った。 またこのバリアは単に拡散バリアの機能のみに留 まらず、 種々の元素添加により近接効果の抑制や結合損失の低減化などに対して も非常に有効である。

次に交流用線材に要求される3つの主項目に対する具体的な交流用Nb3Sn極細多 芯線の設計方針を以下にまとめる。

1 )交流損失低減化

フィラメントのサブミクロン化のためには拡散バリアを用い、 製作工程中のNb コアへの3nの拡散を制御する。 同時に、 ブロンズ中の3n濃度を下げることにより ブロンズの焼鈍温度を低下させ、 バリアへのSnの拡散距離を減少させる。 一方、

フィラメント間隔の減少に伴う近接結合を防止するために、 適切なフィラメント 間隔を設計し、 また拡散バリアへの元素添加やブロンズマトリクスにSn以外の元 素添加を行い高抵抗化を図る。 結合損失を低下させる為には近楼効果を防止させ る手法と同様にマトリクスの電気抵抗を上昇させることの他に、 ツイストピッチ を低減するための線材細線化を行う。

2)高電流密度化

線材の臨界電流密度を増加させるためにはブロンズ比を可能な限り低下させる。

これは主に製作時におけるスタック回数の低減、 およびフィラメント間隔の制御 によって決定される。 またフィラメントのサブミクロン化に伴うフィラメントダ メージを抑制するCuバリア法を確立する。 一方、 Jcを増加させるために熱処理方 法を最適化し、 ピンニング点となる結晶粒界を増加させることが必要となる。

-153-

(37)

3 )高安定化

一般的なNbTi交流用線材では、 クエンチ保護のためにCu Niで 分割した安定化Cu

を中心に配置して おり、 また ブロンズ法による直流用Nb3Sn線材では、 安定化Cuへ のSnの拡散を抑えるためにTaバリアが用いられている[133J。 従って、 交流用とし てはTaで安定化Cuを分割することが考えられる。 しか し低磁界においてはT a

は超伝導であるためにそれに起因する 損失が増加することが予想される。 そこで 今回は交流損失をできる限り低減させる という視点に立ち、 安定化Cuを皆無とし た構造を選択する。 従って線材は可能な限り細線化し、 液体ヘリウムへの熱伝達 性能の向上を図る。 この安定化Cu無しの設計はNb3Snの臨界温度が高く、 温度マー

ジンが大きいことを利用したもの である。

4. 2. 2 線材の製作方法

設計に用いる Cu拡散バリア厚を決定するための基礎実験 として、 Cuとブロンズ (Cu14.3wt児Sn-0.3w切T i)の拡散対を熱間押しだしにより製作し、 その試料の熱処 理温度及び時間を変化させ、 CuへのSn拡散距離をEPMAによって測定した。 任 意温度における拡散係数Dcはアレニウスの式に従い、

Dc=Doexp (-Q/RT) (4-1 )

で表される。 ここでDoは振動数項、 Qは活性化エネルギ一、 Rは気体定数、 Tは 温度である。 実験結果を(4-1 )式 を用いて評価しDo、 Qを求めた結果を図 4-1に示 す。 J欠に実験によって 求めたDcを用い、 拡散距離Xが放物線則に従うとして任意 の温度、 時間による拡散距離を次式から求めることができる。

x= (Dct) 0. 5

-154-

(4- 2)

(38)

(υω∞\Ng)冨ω芯何回hooQ口。百石泊。

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0.0012 0.0014

t,i ハU

ハU ハU

1/Temperature(l(1 )

図4-1 C u -14. 3wtおSnブロンズとCuの拡散対によるCuへのSnの拡散距離 の温度及び時間依存性の(4-1)式によるフィッテイングの結果。 振動数項DO=2.

95X10-4m2/sec、 活性化エネルギ-Q = 1. 85X105 J /mol

phJU Fhu 噌lよ

(39)

(4-2)式から求まる拡散距離を用い、 最終押し出しの熱処理時においてNbへのSnの 拡散距離が拡散バリア厚さ以上となるような設計値を逆算して求める。 計算の結 果、 約O.5mm以上のバリア厚が設計時に必要であることが明らかになった。

Cu拡散バリアの導入によりブロンズ中の見かけのSn濃度は初期濃度より減少す ることになる。 今回はCu中のSn固溶限界に近い14.3wt%を用いた高Snブロンズを 使用しているが、 これにより最終熱処理によるNb3Sn生成がある程度影響を受ける ことが懸念される。 しかしながら交流用線材設計の場合、 近接効果を防止するた めにフィラメント直径とフィラメント間隔の比が1 : 1程度と直流線材設計の場 合と比較して大きく、 その結果ブロンズ比も大きい。 またフィラメントも焔径化 されているので生成熟処理における拡散距離が短くなり、 バリア導入に伴う見か け上のSn濃度減少がNb3Sn生成に与える彩響は少ないと考えられる。

Reddiらによれば、 ある適当な温度でNb3Snの生成が始まるためには一定量以上 のSn濃度がブロンズ中に必要であることが実験的に示されている[ 134J。 この実験 で使用した試料はフィラメント直径が5μm程度のものであるが、 生成熟処理温度 として75 00Cを仮定した場合、 そのSn濃度として2.5wt%以上が必要である。 図4- 2に残存Sn濃度が2.5wt%の場合のNb3Sn生成に必要な ブロンズ比とブロンズ中のS n濃度の関係、を示しである。 この結果から、 例えばブロンズ比が6の場合ではSn濃 度は9wt%以上あればよいことがわかる。 設計においてはこの関係も考慮してバリ ア厚、 ブロンズ比を決定する必要がある。

一方、 バリア導入による見かけのSn濃度の減少は、 最終的にはマトリクスの電 気抵抗の減少をもたらす。 図4-3に4.2Kにおけるブロンズ比抵抗のSn濃度依存性 を示す。 Nb3Sn生成後におけるブロンズ比抵抗は10-sQmオーダーに低下する。 こ のことはフィラメント間の近接結合を引き起こし易くし、 また結合損失の増大に

もつながる。 従って、 これらを防止するためにはCuバリアへの元素添加を行い、

その電気抵抗を増加させる必要がある。 また近接効果を防止するためには磁性元

-156-

(40)

16

....-._

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A。h

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υ

∞ ロ

81-

6.

E E

3 4 5 6 7 8 9 10

Bronze ratio

図4-2 残存Sn濃度が2.5wt犯の場合のNb3Sn生成に必要なSn濃度とブロンズ比 の関係。

(41)

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- o 2 4 6 8 10 12 14 16 Sn concentration (wt. %)

μJ

図4-3 4.2Kにおけるブロンズの電気抵抗のSn 濃度依存性

(42)

素の添加も有効であることが指摘されている[56J。 添加元素の種類、 添加量を決 定するには常温におけるCuへの各種元素の添加量と比抵抗との関係を示した(4-3) 式を参考にすることができる[ 135Jロ これは不純物添加の場合、 室温低抗と4.2K ではその比抵抗にそれほど差がないことによる。 Cuヘ各元素をX wt児で添加した場 合の比抵抗は近似的に、

ρ= 1. 68X 10-8+1. 2X 10-8 X (0. 5XA十XB十2Xc+ 3XD+4XE+5Xr+6Xc+10XH +15Xr+17.5XJ)

ここで、 A: Zr, Zn, Ag, Pt, 1 n, Au B: Sn,Ni,Pb,Gd,Pd,Bi

C: A 1, 1 r, Mg 0: Sb, Mn, Rh,Ge E: Cr, Be

F: As G: Si, Co

H: Fe 1: P J: T i

(4-3)

で表される。 さらに添加元素に要求されることとしては添加により加工性を損な うことがないこと、 及び、Nb3Sn生成や超伝導特性に悪影響を及ぼすことがないとい う点である。 以上の点を踏まえ、 今回は比抵抗増大効果が大きいS iと近接効果の 抑制に有効なMnを選択した。 それらの添加量として以下に示す2種類のCu合金バ

リア材を用意した。

-159-

(43)

①Cu-2.4wt%Si-0.94wt%Mn

②Cu-3.6wt%Si-0.64wt制n

これらの合金の4.2Kでの比抵抗はそれぞれ1.7x10-70m、 3.1X10-70mである。

この値は交流用NbTi線材のマトリクスに用いられているCuNi合金と同程度の値で ある。 最終的にはバリア中のこれらの添加元素は、 Nb3Sn生成熟処理時にブロンズ マトリクス内に拡散することも考えられるが、 その際でもマトリクスの比抵抗と して10-70mに近い値が維持される。

設計された線材は4種類である。 各線材の諸元を表4-1に示す。 使用したブロン ズSn濃度は各線材ともに共通で、 高Snブロンズの標準的な組成14. 3wt%Sn-0. 3wt児 T iを用いた。 コアの材質としてA線材は純Nbを用い、 他の線材はNb-7.5wt児Taを用 いた。 各線材のブロンズ比、 バリアの厚さ、 及びバリア材質は異なり、 それに伴 い見かけのブロンズ中の各元素濃度も異なる。 またフィラメント径とフィラメン ト間隔の比は1:0.7"'1:1と線材によって変化させている。

線材の製作工程フローを図4-4に示す。 まず一次ビレ ットとしてブロンズビレ ッ

トにガンドリルで最終的なフィラメント直径、 間隔になるように設計された複数 本穴をあけ、 そこにフィラメントとなるNbあるいはNb-TaコアとCu合金拡散バリア の管を挿入する。 この一次ビレ ットは熱間押し出しされ、 さらにブロンズの焼鈍

熱処理を行いながら伸線されて一次素線が製作される。 これらの素線を二次ビレ ットに挿入し、 熱間二次押しだしを行う。 さらにブロンズ焼鈍熱処理を行いなが ら所定の線径に仕上げる。 その後、 Nb3Sn生成熟処理を行い線材が製作される。

図4-5に製作された線材の外観、 及びA, B線材の最終押し出し後のコアのSE M像を示す。 純Nbコアを用いたA 線材はNbコアの変形が大きい。 一方、 Nb-Taコア

を使用したB線材は変形は少ない。 これはブロンズの変形抵抗がNb-Taとは比較的

-160-

(44)

間程度であるがNbよりは大きいため、 Nbコアの場合には伸線加工時におけるコア ヘ応力集中が原因と考えられる。

ー161-

(45)

N b 3 S n線 材 の 諸 フE

材 外 径 を 示 す。

用 車泉 流は&マ

〆、

)

m

m

イ乍 製

D 4 - 1

Wiどe D 1.92 X D X D

1.92 2.03 X D

2.11 X D

mp diameteど Filament

1.92 X D X D

1.92 1.53 X D

1.79 X D

mp spaclng Filament

12502 12179

42295 20384

filaments Number of

Nb-7.5Ta Nb-7.5 Ta

Nb-7.5Ta Nb

(wt.

Composition of core

Cu-9.1Sn-0.1Ti Cu-11.5Sn-0.2Ti

Cu-13Sn-0.3Ti Cu-13Sn-0.3Ti

Composition of matrix

-0.9Si-0.4Mn -0.5Si-0.2Mn

-0.2Si-0.1Mn (wt.

including diffusion baどどie工

1-ONl

6.4 wire C

Wiどe B Wiどe A

Specimen

6.6 4.7

10 Bronze ratio

(46)

Bronze

1st. billet

Bronze

2nd. billet

Final wire

図4-4 C u合金バリアを用いたブロンズ法による交流用Nb3Sn線材の製作工程図。

ダブルスタックで製作される。

-163-

(47)

(a)

(b)

図十5 S EMによるA線材(a)及びB線材(b)の最終押し出し後のフィラメ ントの観察結果。 Nbコアを用いたA線材はフィラメントの歪みが著しい。

-1 6 4-

(48)

4. 3、 ブロンズ法による交流用Nb3Sn線材の諸特性

4. 3. 1 近接効果によるフィラメント間結合の測定

製作した各線材 の特性評価として最初に近接効果によるフィラメント間結合の 評価を実施した。 伸線に伴うフィラメント間隔の減少により、 フィラメント聞に ジョセフソン電流が流れ、 その結果磁化が増大する現象はrlli化のツイストピッチ 依存性から測定することができる[63J。 また他の方法としては、 マイスナー領域 の磁界において磁化率のバルク値からのずれから近接効果を測定する方法がある [ 136J。 今回は簡便な後者の方法を用い、 マイスナー領域の比較的低磁界における

近接効果の有無の測定を行った。 測定に用いた試料は各線材で線径を徐々に減少 させた短尺試料である。 磁化測定はSQUID磁化測定装置により行った。

通常のバルク材 ではマイスナー領域における磁化は磁場侵入長 入Lの影響がほと んど無視できるのでほぼ完全な反磁性を示し、 その単位体積あたりの磁化率χは -1/4π(emu/cm3)の一定値を示す。 しかしながら磁場侵入長が無視できないサイ ズの超伝導フィラメントにおいてはその反磁性部分が減少するために、 磁化率は 一定値からのずれを生じる。 その値は超伝導体の形状、 及び印加磁界方向によっ て決定され、 磁場と平行な無限円柱モデルでは以下の式で表される。

χ=-1/4π ・ [1一(2/x)11 (x) /10 (x) J (4-4)

入L=λ。[ 1一(T/Tc)4JーO. 5 (4-5)

ここで、 x=r/入Lであり、 rは円柱の半径、 1 1、 1 0はそれぞれ0<欠、 1 <欠 のmodified Bessel functionであり、 また 入。はOKにおける磁場の侵入長である。

伸線によりフィラメント間隔が狭くなり、 フィラメント聞にJosephson電流の環流

Fhu 円hu噌BIA

(49)

による磁化の増大が起これば、 それは磁化率の理論値からのずれとして観測でき る。 ここで磁界を横磁界でなく縦磁界(円柱方向〉に印加したのは試料長の影響 を避けるためである。

測定試料として各線材でフィラメント径を約2μmから0.3μmまで変化させた ツイスト無しの試料を 熱処理前のNbフィラメントのものと、 同じ試料を6500Cで十 分に生成熟処理を行ったNb3Snフィラメントのもの2種類を用意した。 試料は約5 mm長の適当な本数を樹脂に埋め込み、 両端をフィラメントが独立するまでエメ リー紙および研磨斉IJで十分に機械的研磨を行った。 またその際にSEMによる観 察も実施した。 磁化測定はSQUID磁化測定装置( (株) HOKUSAN製〉を用い、

Z F C (zero field cool ing)でフィラメントのH c 1以下である5mTの印加磁界

をかけて実施した。 図4-6に 熱処理前のフィラメントの結果を示す。 A線材のみフ ィラメント径が0.78μmの試料から磁化率の理論値からのずれが 観測されている。

A線材の熱処理前のマトリクスの電気抵抗はCu-10wt%Niの値に近く、 約1.5x10

-7 Q mである。 またCu-10wt児Niの近接限界距離は5mTで約O.12μmである[82Jロ

これと比較してA線材ではフィラメント間隔はO.6μmから理論値からのずれが生 じる。 これはSEM観察で確認されるように コアに用いた純Nbの変形が著しく、

フィラメント間隔が設計値より大幅に狭くなった為と理解することができる。 一 方、 B、 C、 D線材ではフィラメント間隔がO.3μmまでの測定範囲では 磁化率の 理論値からのずれは観測されなかった。 これはNbTa合金の使用でコアの変形が抑

えられていること、 及びバリア材へのSi、 Mnの元素添加の効果によると考えられ る。

図4-7は生成熟処理後の結果である。 Nb3Sn生成に伴うマトリクス中のSn量の減 少による電気抵抗の低下でマトリクスのコヒーレンス長が増加すること、 及びフ ィラメントの体積膨張によるフィラメント間隔の減少により、 D線材を除いた各 線材で近接効果による磁化の増大が生じている。 A線材ではフィラメント間隔は

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図4-6 熱処理前の各線材における磁化率のフィラメント径依存性。 破線は(4-4)、

(4-5)式による理論値でλ= 0.06μmの場合。 ・:A線材、 0: B線材、 ム:C線 材、 口:D線材

一167-

参照

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