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回転す る巻 糸体周 りの流 れ と動 力損失

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Academic year: 2022

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(1)53. 論. 文. 回転す る巻 糸体周 りの流 れ と動 力損失 (第2報)有. 限要素法による流 れ場解析 とその考察. 金沢大学工学部. 新. "尾. 田. "山 "伴. The. Flow. Part. around. 2 : Flow. the. Rotating. Analysis. Pim. 宅. 崎 場. and. Power. 救 十. 裕 秀. 徳(会 員) 八. 之(会 員) 樹. Loss. by FEM and-Considerations. Sukenori Shintaku, Juhachi Oda, Hiroyuki Yamazaki, Hideki Banba Faculty of Engineering, Kanazawa. University, Kanazawa. Abstract. The flow around a. pirn rotating at high speed was analysed and considered by using parameters as numbers of revolutions and pirn surface conditions The results obtained from this analysis were as followed 1) The flow around the rotating pirn with the boundary conditions of numbers of revolutions and pirn surface conditions can be analysed. 2) The velocity vector of flow in the proposed analysis has good agreement with experiment results for the previotis described conditions. 3) From the flow analysis by FEM (finite element method), we can learn contour of Stokes' stream function , vortexes and circumferential reverse flow which can't be easily obtained from experiment . (Received July 17, 1989). 摘. 要. 目的 巻糸 体 の回転 数 や表面 状態 をパ ラメー ター と して,高 速 回転 す る巻 糸体 周 りの流 れ場 を有 限要素 法 に よ り解析 して,こ の結果 を先 に発表 して いる実験 結果 と比 較,検 討 しなが ら考 察す る. 成果 本研 究 に よ って得 られた結 果 を以下 に示 す. 1)巻 糸 体 の回転数 や 表面状 態 の境界 条件 の扱 い を含 めて,巻 糸体 周 りの流 れ場 を解析 す るこ とが で きた. 2)巻 糸 体周 りの速 度 ベ ク トル解 析値 は,前 報 の各条 件下 の実 験結 果 と比較 して ほぼ一 致 した. 3)流 れ場 解析 結果 か ら,測 定 実験 で は容易 に得 るこ とので きな い流 れ関 数や渦 度 の等値 線 及 び円周方 向 の流 れの逆 流等 を知 ることが で きた.(平. 1.緒. 成元 年7月17日 受 理). を モー ターの反 力 よ り測 定 し,.これ と流 れ状 態 か ら. 言. 求 めた動力損 失 値 との関 係 を考察 した.そ して実験 前報 にお いて著 者 ら1)は,回 転 す る巻 糸体 周 りの. 結 果 を もとに,巻 糸 体 か らの流 れの吹 き出 しを押 さ. 流 れ状 態 を可 視化 実 験 に よ り定 性 的 に観 察 した.. え,か つ流 れ がス ム ース にな るよ うなカバ ー を推 定. 文,定 量 的 には これを実験 的 に求 め る手 法 を提案 し て実験 を行 った.さ らに,こ の流 れ に伴 う動 力損失. し,実 際 に試 作,設 置 して巻糸 体周 りの流 れ と動 力 損 失 の改善 を図 った.. T34.

(2) 繊 維機 械 学 会 誌. 54. と ころで,現 在 まで に報告 されて い る回転 体 周 り の流 れ に関 す る研 究 は,回 転 の対 象体 が 円柱 に限 ら れ た もの が ほとん どで あ り,又,本. 実験 のよ うな高. 速 回転域 の研 究報 告 は数 少 な い.こ れは 円柱 以外 の 形状 の回転 体 を扱 う時 は,そ の周 りの流 れは極端 に 複雑 とな り,こ の回 転数 域が 高速 に な ると流 れ の可 視化 及 び速度 や圧 力分 布 な どの測定 が難 しくなるか らで あ る.又,巻. 糸 体 の よ うな表面 が繊 維 で覆 われ. た物 体 を扱 う際 に,数 値計 算 にお け る この表 面上 の 境 界 条件 の取 り扱 いは特別 な配 慮 が必要 で ある.計 算 上 にお いて も,こ の よ うな回転体 の場 合 に は,時 間 に対 す るその特 性 が周期 的 であ り,よ って計算 に お いて何 回 か収束 す る計算 結果 の いずれ が正 しいの か とい う点 で,計 算結 果 が真 に安定 したか ど うかを 判 定 しに くい欠 点 が あ る. そ こで本報 で は,最 近 で は色 々 な分 野 で使用 され るよ うにな った有 限要 素法 を用 いて,上 述 した数値. .. 図1座. 計 算 にお け る境 界条 件 の取 り扱 い方等 を含 め て,高 速 回転 す る巻糸 体周 りの流 れ場 を解析 す る.又,同. 標系. 法 を 用 い た.ψ で 表 し たVr,Vzの. 時 に,流 れ場 の速度 ベ ク トル図 や実験 で は容易 に得 る ことが で きなか った流 れ関 数及 び渦 度 の等値 線等. 式 を以 下 に 示 す.. (1). (2). 一 連 の 流 れ を フ ロ ー チ ャ ー トに して 図2に. 示す .. を同 時 に出力 させ,巻 糸 体周 りの流 れを前 報 とは別 の観点 か ら考察 す る.そ して,こ の結 果 と前報 の測. 図 中 の 右 肩 の 添 え 字 は タ イ ム ス テ ップ を 意 味 す る.. 定 結果 を比 較,検 討 す るこ とによ り,巻 糸 体 の表面. この 流 れ に 沿 っ て 各 ブ ロ ッ ク を 簡 単 に説 明 す る と,. 状 態 の違 い によ る境 界条 件 の扱 い方 や前報 で設 置 し た カバ ー の妥 当性等 を考 察す る.. 最 初 は 渦 な し流 れ(ポ. 2.流. (ブ ロ ッ ク1)す. テ ン シ ャ ル 流 れ)か. さ せ た タ イ ム ス テ ップ(ブ. れ場解 析 の有 限要素 法理 論. 流 れ 場 に渦 度 の式(ブ ロ ッ ク4)及. 巻 糸体 周 りの空気 流 れを有 限要素 法 に よ って解析. ら出 発. る.そ して,わ ず か ず つ 時 間 を 増 分 ロ ッ ク10)ご. ロッ ク2)と. と に,こ. の. 渦 度 方 程 式(ブ. び θ方 向 の 運 動 方 程 式(ブ. ロ ッ ク6). す る.対 象 が回 転体 で あ るので,座 標 系 は図1に 示. に よ って,ψ とq及. す よ うな巻糸 体 の 自軸 を中心 軸 に と った 円筒座 標系. Vθ は,隣 接 す る節 点 の ψ とq及. を用 い る.仮 定 と して,扱 う流 れの速度 には 円周 方. 開 した 式 に 代 入 して 求 め る.こ れ よ り境 界 条 件 は,. 向(θ 方 向)の 変化 はな い もの とす る.こ れよ り主 と. ψ とq及. して解析 及 び結果 は,半 径 方 向(r方. 方 程 式 に与 え る(ブ. 向)と 軸方 向. びVθ を求 め る.境 界 上 のq及. び. びVθ を テ イ ラ ー 展. びVθ を タ イ ム ス テ ッ プ ご と に そ れ ぞ れ の ロ ッ ク3,5):こ. こで,計 算 中. (z方 向)の 座標 で形成 され る面 を 中心 に行 う.又,. の あ る流 速 が 与 え た周 速 の 最 大 値 を越 え た 場 合 を 発. 本解 析 範 囲 内 で は,扱 う流 体 は非 圧 縮 性 流 体 とす る.. 散 した と判 定 す る.発 散 しな い で,q及. びVθ の 時 間. に 関 す る変 化 率 が 十 分 小 さ くな っ た 時 に準 定 常 な 流. 数 値 計 算 法 は,時 間 に関 す る逐 次 計 算 法 を用 い. れ と み な して 計 算 を打 ち切 り(ブ ロ ッ ク7,8),巻. る.逐 次 計算 法 に よ る繰 り返 し計算 は,運 動 方程 式. 糸 体 周 り の 粘 性 流 体 の 流 れ 特 性 と して 速 度 ベ ク トル. と連続 の式 を基礎 式 と して用 い る.そ して,こ れ ら. や流 れ関数 及 び渦度 の等値 線等 を得 る ことがで き る. の式 を ス トー クスの流 れ関 数(以 下,流 れ関数)ψ2). (ブ ロ ッ ク9).. と渦 度q及 び 円周 方 向 速度 成 分Vθ によ って変 形 さ 3.計. せ た,渦 度 の式 及 び渦 度方 程式 を時 間的 に準 陰的 な ス キー ムに置 き換 え て用 い る.そ して,こ れ らの ψ. 算 モ デ ル と境 界 条 件. 巻 糸 体 周 り の流 れ 場 の 解 析 に 用 い た メ ッ シュ デ ー. とg及 びVθ の 空 間 方 向 へ の離 散 化 に はGalerkin. タを 図3に,又,流. T35. れ の 速 度 場 を 動 力 損 失 の点 か ら.

(3) 55. (論 文 集)Vol.43,No.5(1990). 1. ポ テ シシ ャル 流 れ と して 出 発. 2. (r,z∈Tt:ψ. に 関 す る 基 本 境 界 条 件). 3. 4. (r,z∈T3:qに. 関 す る 基 本 境 界 条 件). 5. 10. 6. (r,z∈r5:V8に. 関 す る 基 本 境 界 条 件). 7. NO. 8. YES 9. 図2回. 転 体 周 りの 流 れ場 解 析 の フ ロ ーチ ャ ー ト. 改善 す る目的で設 置 した カバ ー付 き巻糸体 周 りの流 れ場 解析 の メ ッシュデ ータを図4に 示す.実 験 によ. め,図. の よ う に500mm×180mmの. 範囲をメッシ. り巻 糸 体 表 面 か ら200mmを. が348要 素 か ら成 り ,重 要 な 巻 糸 体 近 辺 に つ い て は. ュ分 割 した.メ ッ シ ュ は,節 点 数 が208節 点,要. 越 え た と ころで は流. れの速 度変 化 は ほ とん どな い ことを確認 して い るた. 細 か い 分 割 を 行 っ た.な. T36. 素数. お カバ ー付 きの流 れ場 に.

(4) 繊維 機 械学 会 誌. 56. 図3巻. 図4カ. 糸 体 周 りの流 れ場 解 析 の メ ッ シュ デ ー タ(単 位:mm) (節点 数208,要 素 数348) ●:Vθ の 境 界 値 \\\\:す べ りな し 巻 糸 体 と平 板 の か ど点:q=0. バ ー付 き巻 糸 体 の メ ッ シ ュ デ ー タ(単 位: mm) (節点 数199,要 素 数316) ●:Vθ の境 界 値 \\\\:す べ りな し 巻 糸 体 と平 板 の か ど点:q=0. は,カ バ ー部 の メ ッ シュを消去 して199節 点,316要. る損 失 や毛 羽 同士 の相互 干渉 は考 慮 しない もの とす. 素 と した.又,同. る.. 図 には与 え た境 界条 件 も同時 に示. 境 界条 件3.巻. 糸体 を支 え る底 面 を ψ=0の 基 準. した.こ こで,巻 糸 体表 面 の速度 境界 層 の厚 さや こ の付 近 の流 れ状 態 は,巻 糸 体表面 の周 速 や表面 状態. 面 とす る。 そ して この底 面 で はす べ りはない もの と. 及 びそ の他 の要因 によ って 随時変 化 す る と考 え られ. す る.. るが,こ こで は原 則的 に次 の3条 件 を境界 条件 と し. 以 下各 条件 につ いて説 明 す る.条 件1に つ いて,. て与 え る.. 巻糸 体 の表面 が なめ らか な場 合 に は巻 糸体 の表面 の. 境 界条 件1.巻 糸体 の表面 で流 れの主方 向 とな る θ方 向 に周速度 を与 え る(図3,4中 の ●印 の点),. 度(r・ ω)を 与 え る.し か しなが ら,綿 巻 糸体 の様. Vθ と して巻糸 体 の半 径rに 角速 度 ω を乗 じた周 速. 又,カ バ ー付 きの場合 に は カバ ー表面 で はVθ=0. に綿 糸 の毛 羽 に よ り表面 が粗 い場 合 は,こ れ を取 り. で あ る(図4中. 扱 う際 に図5の よ うに毛 羽流 れ に対 して直 角 に置か れ た円柱 と仮定 す る.こ れ よ り,あ る要素 内 の毛 羽. 境 界条 件2.綿. の カバ ー部 の● 印 の点). 巻糸 体 の場合,毛 羽周 りの渦 によ. T37.

(5) (論 文 集)Vol.43,No.5(1990). 57. よ う に,1本 m当. か ら500本 ま で 積 分 す る こ と に よ り,1. た り の 毛 羽 の 全 長Hkが. 分 か る.. (5) 例 え ば,こ 糸1m当 図5毛. 羽 の モ デ ル化. て も よ い 数 値 で あ る.こ. に作用 す る空気 抗力Fkを 次式 よ り求 め る. ここでCDは 空気 抗力 係数 で あ り,dk及. の 値 が 意 味 して い る の は,19.7texの た り に1mm長. の値 に巻糸 体表面 の要素長. さ を 乗 ず る こ と に よ って,そ. (3) びlkは 巻糸. 分 か る.一 方,dkに. 綿. の 毛 羽 が430本 あ る と考 え. の要素 の毛 羽 の全長 が. 比 してlkは 非 常 に 大 き い の で,. 毛 羽 の 抗 力 係 数CDはlk/dk=∞. の 時 の係 数 で あ る. 体 表面 の あ る要 素 の毛 羽 の直径 と全長 で あ る.毛 羽. CD=1.20を. 直径 は0.01mmと して,こ の値 は巻 糸 体 の 表面 に お いて一定 とす る.毛 羽長 さと毛 羽数 の関 係 は,綿. 体 表 面 の 周 速 度 を 代 入 す る.そ. 糸 の毛 羽長 分布 図 で あ る図6よ り求 め られ る.こ の. 分 の 項 に,(3)式. 毛 羽測 定 に は東 レ製 光電 式毛 羽計 測装 置 を用 いた. な お同図 に おいて,毛 羽長 さ0に お け る毛 羽数 とは. した 方 程 式 に よ って 有 限 要 素 解 析 を 行 う.又,カ バ ー は固 定 され て い る の で ,カ バ ー表 面 のVθ は0で. 糸 表面 上 で測定 され る毛 羽数 を累 積 した値 で あ る.. あ る.. 用 い る.又,(3)式. す る要 素 辺 に お い て,θ. よ って,そ の数 は糸表面 で最 大 とな るので,こ の位. 次 に条 件2に. 内 の 流 速Vに. は巻 糸. して 巻 糸 体 表 面 に接. 方 向 の運動方 程 式 の外力成. よ り算 出 したFkを. 要 素 ご とに加 算. つ い て は,綿 巻 糸 体 の 場 合 に は綿 糸. 置 を糸表面 と定 義 す る.い ま,巻 糸体 表面 に巻 い た 19.7texの 綿 糸 の毛 羽長 分布 の関係 を片 対数 グ ラフ. 表 面 に毛 羽 が あ る た め に表 面 が 粗 く,毛 羽 同 士 の か. 上 で近 似 す る と,. 渦 流 れ が 発 生 し て い る と 考 え られ る.し. らみ 合 い が あ っ た り,又,こ. の 毛 羽 周 り に二 次 的 な か しなが. ら,毛 羽 周 りの 渦 損 失 や 毛 羽 同 士 の 相 互 干 渉 は こ こ. (4) を 得 る.こ の関係式 のNkを 図6の 縦 軸 か ら分 か る. で は考 慮 しな い もの とす る. 最 後 に 条 件3に. つ い て は,巻. 糸体 を支 え る底面 は. r方 向 に 無 限 に広 く表 面 が な め らか な 固 定 平 板 を 想 定 し,ゆ え に こ こで の 流 体 の 出 入 りや す べ り は な い もの と し て ψ=0及 又,巻. びす べ り な し条 件3)を 代 入 した.. 糸 体 と こ の 平 板 の か ど点 に はq=0を. 代入 し. た. こ こで 計 算 に用 い た 準 陰 的 な ス キ ー ム は,陽 ス キ ー ム に比 して 計 算 は速 くな る が,レ (粘 性 力 に 対 す る慣 性 力 の 比)が が 不 安 定 に な る傾 向 が あ る.そ. 的な. イノ ルズ数. 大 き く な る と計 算 こ で 本 解 析 で は,各. 要 素 ご と に動 粘 性 の 項 に 人 工 粘 性 係 数4)を 導 入 し, 又,Courant数5)に. よ る 時 間 増 分 を 十 分 小 さ くす る. こ と に よ って 数 値 計 算 を安 定 させ な が ら計 算 を行 っ た.Courant数. を 以 下 に 示 す.. (6) こ こでUは. 代 表 速 度 を表 し,こ こで は巻 糸体 表 面. の周速 度 を代 入 す る.又 △tは時間増 分量,Sは. 三角. 形 要素 の最小 辺 長 さを表 す.そ して この式 を満 たす よ うに △tを決 定 す る. 図6綿. 糸 の毛羽長分布図. T38.

(6) 繊維 機 械 学 会 誌. 58. 4.解. 析結 果及 び考 察. カバ ーな しで あ る図3の モデル にお け る巻糸 体周 りの各 方 向 の速 度成 分 の前報 の実測 値 と解 析 した理 論 値 を上 下 に対 比 させ て,半 径(γ)方 向 につ いて は 図7に,円. 周(θ)方 向 につ いて は図8に,軸(z)方. 図9巻. 糸 体 周 りの軸 方 向速 度 成 分 (半径方 向距 離 γ=68(mm)). 向 にう いて は図9に 示 す.又 , 同時 に これ らの図 か ら,巻 糸体 の表 面状態 及 び回転 数 の違 い によ る各 速 図7巻. 糸 体 周 りの半 径 方 向 速 度 成 分 (半径 方 向 距 離 γ=68(mm)). 度 成分 の特 性 を読 み取 る ことがで きる.そ れで は, まず 図7に 注 目 しよ う.半 径方 向 の吹 き出 し流 は, 実験 理 論 の両 者 と も巻 糸 体 の 中央 部 で あ るz= 210mmで 最 大 とな り,そ の大 き さもほぼ等 しい. た だ,実. 験 値 は円柱 部 の端部 でVrが 負 とな って い. る ことか ら,吸 い込 み流 れ が認 め られたが,理 論 値 で はそ こで のVrは ほぼ0で あ り,そ. の傾 向 は認 め. られなか った.こ れ は,数 値計 算 に おいて考 慮 した の は連続 の理論 によ る吹 き出 しと吸 い込 みの流量 関 係 の釣 り合 いの みで あ り,こ れ だ けでは巻糸 体 回転 によ って表面 に生 ず る,速 度境 界層 内 の流 れが うま く表 現 され なか った ため と考 え られ る.次 に図8に お いて,理. 論 の綿巻 糸体 のVθ が ナイ ロ ン巻糸 体 の. それ よ り小 さ くな った.回 転 数 が同 じで あれ ば巻糸 体 表面 のVθ は同 じであ るの に対 して,Vθ の逆 流値 (Vθの負 の値)は 綿巻糸 体 の方 が大 き い.こ のた め, 巻 糸体 表 面付 近 はVθ の正 流,逆 流 がrに 対 して交 互 に発生 してお り,こ の間 を平均 した計算 点 の綿巻 糸 体 のVθ はナ イ ロ ン巻 糸 体 の それ に比 して小 さ く な るか らで あ る.ゆ えに これ は,巻 糸 体近 辺 の メ ッ シュ分割 の精 度 の問題 で あ り,本 来 の綿巻 糸体 の理 論 値 はナ イ ロ ンのそ れ に重 な るか,そ れ よ りわず か 図8巻. に大 き くな る もの と考 え られ る.又,ナ. 糸 体周 りの 円周 方 向速 度 成 分 (半 径方 向距 離 γ=68(mm)). イ ロ ン巻糸. 体 の場 合 で,理 論値 は実験 値 よ り も大 きい傾 向を示. T39.

(7) 59. (論 文 集)Vol.43,No.5(1990). して い るが,こ れ は巻糸 体 表面 か ら10mm付. 近 はγ. 糸体周 りの流 れ場 を よ く解 析 して い る といえ る. 以 上 の3つ の解析 例 の結 果 とカバ ー付 きの場合 の. 方 向 に対 す るVθ の速 度 差 は非 常 に大 き く,例 えば γ が1mm違 うと大 きい時 で3m/sも 違 うの で,こ の. 結 果 を含 めて,動 力 値及 び収 束 した計算 回数 を表1. 差 は実験 値 の測定 誤差 と考 え られ る.又,理 論 で は, 円柱 部 の端部 でVθ が負 とな って い る ことか ら,回. に示 す.計 算全 般 にお いて,カ バ ーな しの場 合 はす べ て1,800回 を越 え た と ころで 収束 した が,カ バ ー. 転 とは逆 方 向 の流 れ の存 在 が予 測 され る.実 験 にお いて もVθ の逆 流 は認 め られ たが その点 の測 定値 が. 付 きの流 れ の場 合 で は計 算回 数 が極端 に少 な くな り 収束 が はや い.こ れ は,カ バ ーを設置 す るこ とで大. 不安 定 で あ り,し か もその逆 流 の検 出 が瞬 間的 で あ. きな流速 の 出現 のな い流 れ状 態 とな ったため と考 え. るの で,測 定時 間 を十分 に とる と結 局 デ ー タ として この逆 流 は検 出 され なか った.こ れ は図10に 示 す よ. られ る.又,巻. 糸 体 の表面 が なめ らか な場 合 に は計. うに,実 験 で は この付近 の γ方 向 に対 す るVθ の速. 算動 力 値 は実 際 の動力 値 に ほとん ど一 致 す る.こ の ことは逆 に,ナ イ ロ ン巻糸 体 はそ の表面 が十 分 にな. 度差 が大 きいの に対 し,こ れ を測定 す るセ ンサ ー部. め らかで あ る ことを意 味 して い る.し か しなが ら,. (球直径10mm)が. 表面 が粗 い綿巻糸 体 の(c)の場合 には計算 動力 値 は実. 大 きか ったた め に,こ の逆 流 を. 検 出で きな か った もの と考 え られ る.又,こ. のせ ん. 際 のそれ よ り も低 い値 を示す.こ の よ うに,高 速 な. 断流 は巻 糸体 に近 い こと もあ って,流 れ に多 大 の損. 空気流 に対 して,あ らゆ る形状 や方 向 を示 す毛 羽 を モデル化 す る ことは大変 難 し く,流 れ場 を考 察 す る. 失 を与 えて い る と考 え られ る.し か しなが ら,後 に 示 す速度 ベ ク トル図 か ら分 か るよ うにカバ ーを設 置 す るこ とによ り,カ バ ー部 は巻 糸体 円柱 部 の流 れ場. と綿 巻 糸 体 に お いて お よ そ の解 析 はで きた とい え. の逆 流 発生箇 所 に位 置 して い るので,カ バ ーを設 置. る.. 生 した と し. 次 に,図7〜9を 分 か りやす く γ−z平 面 にお いて ベ ク トル表示 し,さ らに カバ ー付 きの この種 の結果. て もこの逆 流 の最大 値 は設置 してい ない もの に比 し. を含 めて図11に 示 す、 こ こで左 図 は実測 した速 度 べ. て小 さ くな る.一 方,図9に. ク トル図で あ る.̀又,本 解 析 か ら同時 に得 られ た ψ の等 値線 を図12に,qの 等 値 線 を 図13及 びVθ の等. す る ことで逆 流 発生 箇所 は減 り,又,発. お いてz方 向 の流 れ の. 衝 突 位置 は実験,理 論 と も巻 糸体 の中央 であ り,そ の速 度分布 も又 ほ とん ど一致 して い るこ とが認 め ら れ る.た だ カバ ーを設 置 すれ ば,巻 糸体 中央部 で の. 値 線 を図14に 示 す.こ こに各 図の(a)〜(d)は 表1に 同 じで あ る.速 度 ベ ク トル図及 び ψの等 値線 図で あ る. 流 れ の衝 突 はほ とん どな くなる こと も後 の結果 か ら. 図11と 図12か ら全体 的 にい え る ことは,巻 糸体 付近. 分 か る.. の空気 は巻 糸体 上下 部 の テーパ ー部 か ら吸 い込 まれ. 図7〜9よ. り,本 実 験 の範 囲内 で はいず れの場 合. て,巻 糸体 中央 の円柱部 か ら吹 き出 して い る.各 条. も回転 数 よ り表面 状 態 に よる要 因 が速度 に大 き く影. 件 にお いて もこの流 れ状 態 は同 じで あ り,巻 糸 体 の. 響 す るこ とを示 して い る.又,こ. れ らの結果 は各 条. 表面 状態 や回 転数 によ って流 速 の絶対 値 のみ が大 き. 件 に対 して,実 験,理 論 の両 者 ともほぼ一致 して い. くな る.qの 等 値線 で あ る図13よ り,渦 の発生位 置. る ことか ら,境 界条 件 の考 え方 を含 めて本 手法 は巻. (巻糸 体表面 全 体)や 渦度 の大 きな位置(巻 糸 体 の 中 央部 付近)は,カ. バ ーな しのす べて の場合 にお いて. 同 じで あ り,こ の位 置 の渦形 を何 か で置 き換 え る こ とに よ りこの渦 に よる流 れ の損失 をな くす こ とが で き る.渦 度 の大 きい位 置 の円柱部 の渦 は,前 報 のよ うな カバ ーで置 き換 えが で きるが,テ ーパ ー部 の カ バ ー は実 際問 題 にお いて難 しい と考 え られ る.図14 のVθ の等 値線 を み ると,円 柱 部 に おいて はVθ の逆 流 は考察 しだが,そ れ以上 に巻 糸体 のテ ーパ ー部 で これ が最大 とな って い る ことか ら,渦 度 の 問題 も含 め て テ ーパ ー部 に何 らか の対 策 が 必要 か も しれ な い法 ここで,巻 糸体 周 りの流 れ の改善 箇所 を探 るた め に,巻 糸体 をz方 向 に5分 割 して ここに表面 が粗 い異 種 の糸 を各 部分 に巻 き付 けた7種 類 の モデ ルに. 図10実 験 で逆流を検 出できない理 由. T40.

(8) 繊維機械学 会誌. 60. 実測 した速 度 ベ ク トル 図. 図11(a)流. れ 場 のr‑z平. FEMに. よ る速度 ベ ク トル図. 実 測 した速 度 ベ ク トル 図. .図11(c)流. 面 の 速 度 ベ ク トル 図. (ナ イ ロ ン巻 糸 体,7000rpm). 実測 した速 度 ベ ク トル 図. 図11(b)流. れ 場 のr‑z平. FEMに. よ る速 度 ベ ク トル図. 面 の 速 度 ベ ク トル 図. (綿 巻 糸 体,7000rpm). よ る速 度 ベ ク トル図. 実測 した速 度 ベ ク トル図. 面 の 速 度 ベ ク トル 図. 図11(d)流. (ナ イ ロ ン巻 糸 体,5000rpm). お け る 消 費 動 力 値 を表2に. FEMに. れ 場 のr‑z平. れ 場 のr‑z平. FEMに. よ る速 度ベ ク トル図. 面 の 速 度 ベ ク トル 図. (ナ イ ロ ン巻 糸 体,7000rpm,カ. バ ー 付 き). 示 す.右. に あ るモデ ルほ. る毛羽 は吸 い込 み流 によ り巻 糸体 側へ と押 し付 け ら. ど 消 費 動 力 は 大 き くな っ て い る.こ. れ か ら読 み 取 れ. れ るのに対 して,吹 き出 し部 分 で は この毛 羽が 引 っ. い. 張 られて,こ れ が管内流 れ で い うと管壁 の突 起物 の. 込 み よ り も吹 き 出 し部 分 で あ る こ と が は っ き り と分. る よ うに,動. 力 に 大 き く影 響 して い る部 分 は,吸. よ うな存 在 とな り,そ の分 円周方 向 の流 れ抵 抗 を大. か る.こ れ は 吸 い 込 み部 分 で は,表 面 を 粗 く して い. き くす るため に損失 動 力が大 き くな って い るの であ. T41.

(9) 61. (論 文 集)Vol.43,No.5(1990). (a)ナ. イ ロ ン巻糸 体,7000rpm. (b)ナ. イロ ン巻糸 体,5000rpm. (c)綿. 巻糸 体,7000rpm. (d)ナ. イ ロ ン 巻 糸 体,7000rpm,カ. バ ー付 き. 図12FEMか ら得 られ た ψの 等 値 線(単 位:m3/s) (等値 線 の間 隔0.005m3/s). (a)ナ. (b)ナ. イロ ン巻 糸体,7000rpm. イ ロ ン巻 糸体,5600rpm. (C)綿. 巻糸 体,7000rpm. (d)ナ. イ ロ ン巻 糸 体,7000rpm,カ. バ ー付 き. 図13FEMか ら得 られ たqの 等 値 線(単 位:1/s) (等値 線 の 間 隔901/s). 及 びVθ の逆 流 で 問 題 と な っ. 円柱部 の吹 き出 し流 れ及 びz方 向 の流 れ の衝突 を う. た テ ー パ ー 部 は 吸 い込 み 部 で あ る か ら,動 力 的 に は. ま く制御 し,又 は緩和 す る よ うな方 向で カバ ーを設. さ ほ ど影 響 しな い と思 わ れ る.む. 計 した方 が よ い と考 え られ る.そ うい った こと も含. る.こ. の 実 験 か ら,渦. し ろ そ れ よ り も,. T42.

(10) 繊維 機 械 学 会 誌. 62. (a)ナ. イロ ン巻 糸体,7000rpm. (b)ナ. イ ロ ン巻糸 体,5000rpm. (c)綿 巻 糸 体,7000rpm. (d)ナ. イ ロ ン巻 糸 体,7000rpm,カ. 図14FEMか ら得 られ たVθ の等 値 線(単 位:m/s) (等値 線 の間 隔8m/s,負 の値 はVθ の逆 流 の最 大 値 を示 す) 表1測. 定 した動 力値 と計 算 及 び前報 の 実 験 か ら求 め た動 力値 の 比較. ※ 表 内 の 各 動 力値 及 び(a)〜(d)の 意 は 次 の 通 りで あ る. 測 定 動 力値‑モ ー ター の 反 力 よ り求 め た 動 力値 計 算 動 力値‑本 解 析 よ り得 られ た流 れ 状 態 か ら求 め た動 力値 実 験 動 力値‑実 験 に よ り得 ら れ た流 れ状 態 か ら求 め た動 力値 こ こで,測 定 及 び実 験 動 力 値 は前 報 の値 を 用 い た. (a)‑試 料:ナ イ ロ ン巻 糸 体,回 転 数:7,000rpm (b‑試 料:ナ イ ロ ン巻 糸 体,回 転 数:5,000rpm' (c)‑試 料:綿 巻 糸 体,回 転 数:7,000rpm (d)‑(a)の カバ ー付 き また(d)に つ い て は,13.05Wの 内10.91Wは 巻 糸 体 とカ バ ー 間 の せ ん 断 流 れ に よ る損 失 動 力 で あ る.. 表2部. ※白. 部:ナ. イ ロ ン巻糸 体. 斜 線 部:ナ. 分 巻 パ ー ンの実 際動 力(W). イ ロ ン粗 糸 巻 糸 部. T43. バ ー付 き.

(11) 63. (論 文 集)Vol.43,No.5(1990). めて,前 報 の カバ ー は動 力 的 にみて よ い結 果 を生 ん. 含 めて,巻 糸 体周 りの流 れ場 を解析 す るこ とが で き た.こ の結果 によれ ば,前 報 のパ ラメー ターに よ る. だ もの と思 わ れ る. 以上 の流 れ場観 察 か ら,巻 糸 体 の定性 的 な流 れ状. 流 れ状 態 の変 化 は少 な く,上 下 部 か ら吸 い込 まれた. 態 や渦 の発生 位置 が糸 種 や回転 数 に よ らず ほぼ同 じ. 巻 糸体 近辺 の空気 は,回 転 しなが ら中央 部 に集 ま っ. で あ る ことか ら,巻 糸 体周 りの カバ ーを設計 す ると. て ここか ら吹 き出 して いた.. きは巻糸 体 の形状 のみ によ って設計 す れ ばよ い と考. 2)巻 糸 体周 りの速度 ベ ク トル解析 値 は,前 報 の. え られ る.形 状 とい って も,糸 の巻 き付 けに よ って. 各条件 下 の実験 結果 と比 較 して ほぼ一 致 した.こ の. 巻 糸体 の形状 は随 時変化 す るわ けで あ るが,設 計 対. 結果 を もと に前 報 に示 した ポ ンプの 動 力理 論 に よ. 象 は もっ とも動 力 を必要 とす る最 大形 の巻 糸体 にお いて設 計 すれ ば よい と考 え られ る.実 際 に は,回 転. り,巻 糸体 回転 の損 失動 力 を求 め る ことがで きた.. 円板 に お いて無限 空間 と密 閉容 器内 とで は摩擦 抵抗. る ことので きな い流 れ関数 や渦度 の等 値線 及 び円周. 係数 は,後 者 が前 者 の60%ま で低下 させ られ るこ と が知 られて い る6).よって巻 糸体 につ いて も,こ の全. 方 向 の流 れ の逆 流等 を知 る こ とが で きた.こ の結 果 を考察 して,巻 糸 体周 りの流 れ場 の改善 箇所 が分 か. 体 を覆 うよ うなカバ ー が理 想 的で あ るが,設 置及 び. った.. 3)流 れ場解 析結 果 か ら,測 定 実験 で は容易 に得. 糸道 な どの条件 が あ るため に カバ ー は種 々の制約 を 受 ける.そ こで前報 の 断面 が三角 形 の カバ ー は ほと. 参考 文献. ん ど吹 き出 しを お さえて い るので,動 力 は巻糸 体 と. 1)新 宅 ら;繊 機 誌,43,Tl(1990). カバ ー間 の せん断 力 のみ に失 われて お り,こ れが そ. 2)"機 31林. れ ほ ど大 き くないの で,結 果 と して損 失動 力 は20%. 本 機 械 学 会(1976) 倉 書 店(1987‑. 5). 分 改善 され た と思 われ る. 5.結. 械 工 学 便 覧",p.8〜45,日. ら;"パ ソ コ ンに よ る流 れ解 析",p.86朝. 言. 4)松. 田 ら;機 械 学 会 論 文集B,45,395,915(1979‑7). 5)林. ら;"パ ソ コ ンに よ る流 れ解 析",p.85,朝. 倉 書 店(1987‑. 5) 6)"機. 1)巻 糸 体 の回転 数 や表面 状態 のパ ラメ ー ター を. T44. 械工 学 便 覧",p.8‑15,日. 本 機 械 学 会(1976).

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参照

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