Field(T) Central Magnetic
図3-12 80Hzにおける交流マグネットの交流損失の中心磁界振幅依存性。 従 来の交流用線材を使用した同サイズの交流マグネットの損失[128Jも併せて示す。
発生磁界1Tにおいて交流損失は2.3Wと従来の約1/3となり、 人工ピン型交流 用線材を使用することによるマグネット小型化のメリットが実証された。 ・:開
発した交流マグネット、 �:従来の交流マグネット[128J 一一ー :計算結果
-148-3. 8 まとめ
交流用NbTi超伝導線材の高Jcイヒにおける人工ピン導入法の研究により、 従来型 交流用線材では実現不可能であった高Jc化が達成され、 ピン導入によるJc設計 の方針が得られた。 今回はさらに実用化への前段階として、 100KVA級の高磁界交 流マグネットの開発を行い、 人工ピンによるJc設計の妥当性、 および高Jc線材 を用いたマグネットの有効性を検証した。 製作した線材の特性および マグネット の性能試験結果は以下に要約される。
( 1 )第2章で述べた一連のR&Dの研究結果に基づき、 実用線材のJc設計とし
てマグネットの最大磁界2.5TでPpピークを達成させるようなピン設計を実 施した結果、 F'pピークは予想通り2.5Tにおいて達成され、 また臨界電流密 度としてはマグネット運転電流値の仕様を十分に満足する4.7X109A/m2が 得られた。
( 2)素線の交流損失は設計線材であるフィラメント径0.29pm、 フィラメント間 隔O.11川で最低値を示し、 フィラメント間隔設計の妥当性が確認された。
さらに交流用線材の評価指標であるP h/入Jcは、 0.5Tにおいて50Hz換算 で、 2.7X10-5W/Amとなり、 同じフィラメント径を有する従来型交流用線材 と同レベル以下の値であった。
(3) AC60Hz、 4.2Kにおけるマグネット通電実験の結果、 容量104.8KVA、 電流値 105.8Arms、 電圧値991.2Vrmsの定常運転に成功した。 その際、 中心磁界は 2.5T、 最大経験磁界としては2.6Tの高磁界を発生した。
-149-(4)蒸発法による全交流損失測定の結果、 中心磁界振幅2Tでは4.8Wとなり、 こ の時の容量69KVAに対して0.007児と極めて低いことが確認された。 さらに有 効ボアおよび有効巻き線長が同様である、 従来型交流用線材を使用した
100KVAクラスの交流マグネットと比較すると、 磁界振Ip� 1 Tにおいては、 従 来の6.5Wに対して2.3Wと交流損失は約1/3に減少した。 これにより、 高電流
密度の線材を用いることによるマグネット小型化の有効性が確認された。
今後は、 これらの研究成果を全超伝導発電機、 変圧器、 限流器などの超伝導電 力応用機器、 及びSLIMなどの実用機器に使用する線材設計に適用していくこ
とが期待される。
-150-第4章. ブロンズ法による交流用
N b
3S n線材の開発
4. 1、 はじめに
既に第l章で述べたように、 Nb3Sn超伝導極細多芯線はNbTiと比較して高温、 高 磁界で使用可能な優れた超伝導特性を有し、 Jcも高い。 さらに線材の温度上昇が Jcに与える影響が比較的少なくクエンチマージンが大きいという特徴を持つ。 従 って交流損失の低減が十分になされ商用周波数での交流運転が可能になれば、 こ れらのメリットを活かして超伝導交流応用機器へ適用することが強く期待されて いる。 Nb3Sn線材におけるこの様な要請に対して、 本章では交流損失の低減化に関 してフィラメントのサブミクロン化技術の確立を目的としたCu合金バリアを用い たブロンズ法による交流用線材製作方法を提案し、 その方法を用いて実際に製作 した線材の超伝導特性の評価を行った。 その結果、 近接効果が十分に抑制された O. 3μmのフィラメント径を達成し、 線材の大幅な交流損失低減が図られた。 さら
に開発した線材の一次撚線を使用した小型の交流マグネットの製作も行った。 試 作したマグネットの発生磁界O.5Tでの50H z通電運転による交流損失は178k W
/m3であり、 交流用として開発中である他の製法によるNb3Sn線材と比較しでも 非常に低い値が得られた。 この結果、 本製作方法による交流用Nb3Sn線材の定常的 な交流通電は十分可能であることが明らかになり、 Nb3Sn線材の交流応用への道が 聞かれた。
-151-4. 2、 ブロンズ法による交流用Nb3Sn線材の設計とその製作方法
4. 2. 1 線材の設計方針
Nb3Sn線材を交流用として使用可能にするための最重要課題は低交流損失化であ る。 特に履歴損失低減化のためにはフィラメントをサブミクロンサイズにするこ とが必要不可欠である。 また近接効果を防止するためにはフィラメント間隔を制 御することやマトリクスの高抵抗化が重要であり、 さらには結合損失を低減する ためにツイストピッチを十分に小さくする必要もあり、 線材の十分な縮径化が要 求される。 このような要請を満足する線材を開発するために、 ここでは直流 ・ パ ルス用として数ミクロンのフィラメントを有する極細多芯線材の製作方法として 最も実績があり、 比較的製作が容易なブロンズj去を用いて交流用超伝導線材の開 発に着手した。
ブロンズ法はCu-Sn合金(ブロンズ〉中にコアとなるNbを挿入し、 数回のスタッ クを重ねてコアを細線化し、 7000C前後の最終熱処理 における拡散反応によってN
b3Snフィラメントを生成させる方法である。 現状の商用線材のフィラメント径は 生成熟処理条件やJcとの関係から10"'3μm程度のサイズのものが選択されている。
これは拡散距離が大きいとNb3Snの生成に長時間の熱処理が必要なこと、 逆にフィ ラメントを細線化しすぎると製作過程におけるフィラメントダメージ等の外的要
因により、 Jcが低下してしまう為である。 このフィラメントダメージの原因とし ては最終押し出し、 及びそれ以降のブロンズ焼鈍熱処理過程によりフィラメント 表面に生成するNb- Sn化合物の影響が考えられている。 実際に最終押し出し以降 のコア表面のSEM観察によれば無効なNb3Snの核生成が確認されている[130J。
またそうして製作されたフィラメントにはソーセイジングが観察され、 n値の低 下も観測されている[131, 132J。 従ってサブミクロンサイズのフィラメントを製作 するためには、 製作過程における熱処理中のSnのNbコアへの拡散を制御し、 化合
-152-物の生成を抑制することが必要である。 そこで新たにCu合金を拡散バリアとして Nbコアの周囲に設けるCu合金バリア法の検討を行い、 この方法を用いた交流用Nb
33n極細多芯線の開発を行った。 またこのバリアは単に拡散バリアの機能のみに留 まらず、 種々の元素添加により近接効果の抑制や結合損失の低減化などに対して も非常に有効である。
次に交流用線材に要求される3つの主項目に対する具体的な交流用Nb3Sn極細多 芯線の設計方針を以下にまとめる。
1 )交流損失低減化
フィラメントのサブミクロン化のためには拡散バリアを用い、 製作工程中のNb コアへの3nの拡散を制御する。 同時に、 ブロンズ中の3n濃度を下げることにより ブロンズの焼鈍温度を低下させ、 バリアへのSnの拡散距離を減少させる。 一方、
フィラメント間隔の減少に伴う近接結合を防止するために、 適切なフィラメント 間隔を設計し、 また拡散バリアへの元素添加やブロンズマトリクスにSn以外の元 素添加を行い高抵抗化を図る。 結合損失を低下させる為には近楼効果を防止させ る手法と同様にマトリクスの電気抵抗を上昇させることの他に、 ツイストピッチ を低減するための線材細線化を行う。
2)高電流密度化
線材の臨界電流密度を増加させるためにはブロンズ比を可能な限り低下させる。
これは主に製作時におけるスタック回数の低減、 およびフィラメント間隔の制御 によって決定される。 またフィラメントのサブミクロン化に伴うフィラメントダ メージを抑制するCuバリア法を確立する。 一方、 Jcを増加させるために熱処理方 法を最適化し、 ピンニング点となる結晶粒界を増加させることが必要となる。
-153-3 )高安定化
一般的なNbTi交流用線材では、 クエンチ保護のためにCu Niで 分割した安定化Cu
を中心に配置して おり、 また ブロンズ法による直流用Nb3Sn線材では、 安定化Cuへ のSnの拡散を抑えるためにTaバリアが用いられている[133J。 従って、 交流用とし てはTaで安定化Cuを分割することが考えられる。 しか し低磁界においてはT a
は超伝導であるためにそれに起因する 損失が増加することが予想される。 そこで 今回は交流損失をできる限り低減させる という視点に立ち、 安定化Cuを皆無とし た構造を選択する。 従って線材は可能な限り細線化し、 液体ヘリウムへの熱伝達 性能の向上を図る。 この安定化Cu無しの設計はNb3Snの臨界温度が高く、 温度マー
ジンが大きいことを利用したもの である。
4. 2. 2 線材の製作方法
設計に用いる Cu拡散バリア厚を決定するための基礎実験 として、 Cuとブロンズ (Cu14.3wt児Sn-0.3w切T i)の拡散対を熱間押しだしにより製作し、 その試料の熱処 理温度及び時間を変化させ、 CuへのSn拡散距離をEPMAによって測定した。 任 意温度における拡散係数Dcはアレニウスの式に従い、
Dc=Doexp (-Q/RT) (4-1 )
で表される。 ここでDoは振動数項、 Qは活性化エネルギ一、 Rは気体定数、 Tは 温度である。 実験結果を(4-1 )式 を用いて評価しDo、 Qを求めた結果を図 4-1に示 す。 J欠に実験によって 求めたDcを用い、 拡散距離Xが放物線則に従うとして任意 の温度、 時間による拡散距離を次式から求めることができる。
x= (Dct) 0. 5
-154-(4- 2)