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博 士 ( 工 学 ) 岩 下 哲 雄 学 位 論 文 題 名

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Academic year: 2021

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博 士 ( 工 学 ) 岩 下 哲 雄

学 位 論 文 題 名

Intercalation Reactions into Graphite followed by Potential and their Application to Battery

(黒鉛へのイン夕一カレーション反応のポテンシャル      に よ る 追 跡 お よ び そ の 電 池 へ の 応 用 )

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  炭素 の基 本構 造で あ る炭 素六 角網 平面 が 秩序 だっ た積 層 構造 を有 する 炭素 材 であ る 黒 鉛は ,そ の網 平面 を 損な うこ とな く様 々 な原 子, 分子 お よび イオ ンを その 層 面間 に 取 り込 んで 黒鉛 層間 化 合物 を作 る。 黒鉛 眉 間化 合物 が生 成 する 過程 をそ の物 性 およ び 構 造の 変化 によ って そ の場 追跡 する こと は ,黒 鉛の その 層 間へ の侵 入す る反 応 (イ ン ター カレ ー ショ ン反 応) に関 す る有 カな 情報 を与 え る。

  黒鉛 への 化学 酸化 に よる 硫酸 のイ ンタ ― カレ ―シ ョン 時 のポ テン シャ ルは , 生成 す る黒 鉛眉 間 化合 物の ステ ージ 構 造に 対応して, 階段状に上゛昇することを 初めて見出し た 。こ の結 果は ,硫 酸 のイ ンタ ーカ レ― シ ョン 挙動 が電 気 化学 的手 法を 基礎 と する ボ テン シャ ル 変化 の測 定に よっ て 追跡 でき るこ とを 示 す。

  その ポテ ンシ ャル 変 化よ り, 化学 酸化 に よる 硫酸 ―黒 鉛 眉間 化合 物の 生成 反 応が 電 気化 学酸 化 に・ よる 生成 反応 と 基本 的に同じブ ロセスであることを明らか にした。その ブ ロセ スは ,ボ テン シ ャル 上昇 に相 当す る 黒鉛 層の 充電 と ,ポ テン シャ ルの 平 坦部 分 に 相 当 す る 高 ス テ ― ジ 構 造 か ら 低 ス テ ー ジ 構 造 へ の移 行 に大 別す るこ とが で きた 。   化学 酸化 によ る硫 酸 ―黒 鉛層 間化 合物 生 成に は, 酸化 剤 の酸 化還 元反 応に 関 連す る 飽 和ポ テン シャ ルの 上 限値 が存 在し た。 こ の飽 和ポ テン シ ャル の上 限値 とス テ ―ジ 構 造 の移 行を 示す ポテ ン シャ ル値 の関 係か ら ,硫 酸一 黒鉛 層 間化 合物 生成 にお け る硫 酸 濃度 の影 響 を半 定量 的に 説明 す るこ とが でき た。

  さら に, 本研 究で は ,様 々な ホス ト炭 素 材へ のイ ンタ ― カレ ーシ ョン 挙動 の 炭素 材 の 構 造 お よ び 組 織 の 影 響 を ポ テン シャ ル測 定に よ って 観察 した 。種 々 の炭 素材 のX 解 析 に よ っ て 得 ら れ る2次 元 お よ び3次 元 構 造 の 情 報を 評 価し ,そ の炭 素材 の 電子 物 性 値お よび 走査 電子 顕 微鏡 観察 から の構 造 およ び組 織に 関 する 情報 との 対応 性 を検 討 し た 。X線 回 折 バ タ ― ン の フ ― リ ェ 解 析 か ら 得 ら れ る3次 元構 造を 有す る割 合 は, す な わち 黒鉛 化度 は, 炭 索六 角網 平面 に存 在 する 歪が 緩和 し 易い 組織 を有 する 炭 素材 に お いて 高い 値を 示し た 。こ れは ,炭 素材 の 黒鉛 化に 対し て ,網 平面 の歪 を緩 和 する こ

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とが重要であることを示唆している。そして,その歪が緩和されるか否かは,炭素材 の 前 駆 体 だ け で な く , そ の 組 織 に 強 く 依 存 す る 結 果 が 得 ら れ た 。   黒鉛化のバラメー夕―として知られている平均面間隔は,良く黒鉛化された部分を 反映した。黒鉛構造の体積分率である黒鉛化度と平均面間隔の間には,炭素材の組織 に強く依存した相関が観察された。

  これらホスト炭素材中での黒鉛構造の発達の度合および組織は,インターカレーシ ヨ ン 反 応 に 対 し て 支 配 的 で あ る こ と を 以 下 の 研 究 結 果 か ら 示 し た 。   化学酸化による硫酸のインタ―カレーション反応がホスト黒鉛材の構造およぴ組織 に影響されることをポテンシヤル変化の測定から見出した。化学酸化を比較的受け易 い黒鉛構造のエッヂ表面の物理的表面が大きい組織の場合,黒鉛層間の充電プロセス が速いため,ボテンシャルは急速な上昇を示した。ー方,硫酸のインタ一カレ―ショ ン反応を制約するような組織を有するホスト炭索材の場合,1回目の硫酸のインター カレーション時のボテンシヤルは急上昇を示すが,2回目のインタ―カレ―ションで は階段状の上昇を示した。これは,1回目の反応によって組織が破壊され,インター カレ―ションに対する制約が緩和したことに強く起因している。この様に,硫酸のイ ンタ―カレーション反応のホスト炭素材の影響は,ポテンシヤル変化から黒鉛層の充 電プロセスとステ―ジ構造の移行のプロセスの相対速度によって説明された。また,

この説明は,黒鉛層の充電プロセスとステ―ジ構造の移行のプロセスの相対速度を変 化させたときのボテンシャル曲線をシュミレーションしたときの結果によっても指示 された。

  硫酸のインターカレ―ション反応は黒鉛化度の高い材料ほど容易に進行し,階段状 のボテンシャル変化を示した。この現象は,黒鉛化度の高い炭素材ほど電気キャリヤ

―の移動度が大きく,また,塑性変形を受け易いために,ゲスト物質である硫酸の黒 鉛層間での再配列が容易に進行することに起因すると考えられた。一方,全く黒鉛的 積層構造を持たない(乱層構造を持つ)炭素材へは,硫酸がインターカレーションさ れないことが観察された。硫酸がインタ―カレ―トされるには,網平面の積層の厚み が2 0nm以上必 要であっ た。ま た,室温下で正の磁気抵抗値を示す炭素材には硫酸 がインターカレ―トした。この結果は,ホスト炭素材のホール係数,磁気抵抗などの 電子物性値がインターカレ―ション反応を理解するために重要であることを示唆する ものである。

  硝酸を含んだ硫酸溶液中,化学酸化によって合成された硫酸一黒鉛眉間化合物の電 解還元分解に対して,理論電気量よりも多くの電気量が必要であった。この結果は,

硫酸ー黒鉛層間化合物への化学酸化が電解還元中においてでさえも作用しているから であると考えられた。

  化学酸化による硫酸のインタ―カレーション反応の速度は,酸化剤の添加量だけで なく,ホスト黒鉛材の構造および組織に依存した。その結果,化学酸化によって合成

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された硫酸―黒鉛眉間化合物の分解に必要な電気量およぴ電解還元時のボテンシヤル 変化もまた,炭素材の組織に強く依存した。

  硫酸一黒鉛層間化合物の還元によって生成した黒鉛は,開回路状態において硝酸に よって酸化され,ポテンシャル上昇をともなって硫酸が再びインタ一カレートした。

この硝酸酸化によるインタ一カレーション反応が充電に,その逆の電解還元によるデ インタ一カレーション反応が放電に対応することから,正極に黒鉛,負極に金属鉛を 使用 した電 池への応 用を検 討した。その結果,約1. 4Vの開回路電圧,平坦性の良 い放電曲線および理論量より大きい放電容量が得られた。この電池は,充電に対し電 気エ ネルギ―が必要でなくまた,自己放電がないので,緊急の電源に有用である。

  金属水酸化物一黒鉛眉間化合物は,金属塩化物一黒鉛眉間化合物をアルカリ水溶液 中電解酸化を施すことによって合成された。この結果は,黒鉛層間で塩化物から水酸 化物への転換反応がアルカリ水溶液中の電解酸化によって生じることを示唆する。塩 化ニッケルから水酸化ニッケルの転換量は,眉間化合物電極を電解還元する際の電気 量から追跡できた。この転換反応は,黒鉛構造のエッジから進行するため,使用した ホスト炭素材の粒径に強く依存した。

  この金属水酸化物一黒鉛層間化合物は,アルカリ二次電池の正極材として使用でき た。この電極の充放電反応の活性化エネルギーを開回路後のポテンシャル変化の温度 依 存性 から求め た。その 結果, 充電方向 で通常 の水酸化 ニッケ ル電極の2倍の42 kJ/mol, 放 電 方 向 で 約 半 分 の 約7kJ/molで あ っ た 。 実 際 に , 眉 間 化 合 物 電極の放電曲線は放電電流密度が増加してもボテンシャルの低下が小さく,この層間 化合物電極は放電性能が良好であることが見出された。これは,電池活物質である水 酸化ニッケルが導電体である黒鉛の眉間に位置し,しかも,黒鉛層との間に電荷移動 が存在するためであると考えられた。

  最後に,各種炭素材料への硫酸のインターカレ―ション反応を明らかにするととも に , 黒 鉛 層 間 化 合 物 の 電 池 へ の 応 用 の 可 能 性 を 明 ら か に し た 。

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学位論文審査の要旨    主 査    教 授    稲 垣 道 夫    副 査    教 授    小 平 紘 平    副 査    教 授    真 田 雄 三    副 査    教 授    瀬 尾 真 浩 学 位 論 文 題 名

ntercalation Reactions into Graphite fo|lowed by Potential     and their Application to Battery

(黒鉛へのインターカレーション反応の水テンシャルによる追跡     およびその電池への応用)

  炭素六角網面を基本構造とする炭素材は様々な原子、分子及びイオンを網面問に取 り込んで層間化合物を作る。これら化合物が生成する過程をその場追跡することは、

そ の 侵 入 反 応 ( イ ン タ ー カ レ ー シ ョ ン 反 応 ) を 理 解 す る 上 に 重要 で あ る。

  本研究において、炭素材の化学酸化による硫酸のインターカレーション時のポテン シャルは、生成する層間化合物のステージ構造に対応して階段状に上昇し、これによ って、インターカレーション挙動をその場追跡できることをはじめて見い出した。そ して、その手法を多くの炭索材に適用することによって硫酸のインターカレーション 反応に対するホスト効果を明らかにし′こ。また、網面問にある金属塩化物の水酸化物 への転換過程を水テンシャル測定によって解明した。ぎらに、これら層間化合物を電 池電極材として応用する′こめの基礎的検討を行っ′こ。本論文は全8章から成っている。

  第1章は緒論であり、炭素材料を概観すると共に、その層間化合物の歴史、分類、

構造、合成、ぎらに応用にっいて簡潔に述べている。そして、本研究の目的を示して いる。

  第2章では、多数の炭素材にっいてX線構造パラメータおよび電子物性の測定を行 い、それらパラメータの相互関係を検討している。三次元黒鉛構造の発達の度合(黒 鉛化度)は、六角網面が持つ歪を緩和し易い組織を持つ炭素材で高く、黒鉛構造の発 達に対してその組織が支配的影響を持っことを示した。また、構造バラメータと磁気 抵 抗 、 ホー ル 係 数な ど の 電 子物性と の間に良 好な相 互関係を 見い出 している 。   第3章では、化学酸化による硫酸のインターカレーション反応が電気化学酸化によ るものと同じプロセスであることを、ポテンシャル測定から明らかにし′こ。それは水

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テンシャル上昇に相当する網面の充電と、水テンシャルブラトーに相当するステージ 移行の2つの基本プロセスから成る。層間化合物生成には、硫酸濃度と酸化剤によっ て決まる飽和水テンシャルの上限値が存在し、ステージ移行に対応する水テンシャル と の 相 対 的 関 係 が 最 終 ス テ ー ジ 構 造 を 決 定 し て い る こ と を 示 し ′ こ 。   第4章では、様々の炭素材をホストとして、硫酸のインターカレーション挙動を水 テンシャル測定によって追跡し、ホストの構造及び組織がインターカレーション反応 に強く影響していることを示した。第2章で求めた構造及び電子物性パラメータとの 対応から、硫酸のインターカレーションに対するホスト材の構造および電子的クライ テリオン(基準)を明らかにした。

  第5章では、酸化剤としての硝酸を含んだ硫酸中、化学酸化によって合成された層 間化合物を再び電解還元すると、理論量よりもはるかに大きな電気量が取り出し得る ことを見い出し、それが電解還元過程でぎえも化学酸化が生じている′こめであること を実証した。この過程でも、ホスト炭素材の構造、組織が強い影響を及ぱしているこ とを 明ら かに した 。 そし て、 この 反応 の鉛 ー硫 酸電池への応用を試みている。

  第6章では、網面聞にインターカレートした金属塩化物の塩素イオンを、アルカリ 水溶液中での電解酸化によって、水酸イオンに置換することが可能であり、その置換 反応をポテンシャル測定によって追跡しホスト炭素材の効果を明らかにした。この置 換反応は、網面のエッジから進行するため、使用したホスト炭素材の粒子径に強く依 存する。

  第7章では、ニッケル水酸化物ー黒鉛層間化合物にっいて、充・放電反応の活性化 エネルギーを開回路後の水テンシャル変化の温度依存性から決定した。放電反応に対 する活性化エネルギーが従来の水酸化ニッケル電極に比ぺ約半分と小ぎいことから、

大電流放電の可能性を予測し、そのことを具体的な電池を構成することによって実証 した。

  第8章は結論であり、水テンシャル測定のインターカレーション反応研究に対する 有用性および層間化合物の電池電極材としての有効性を示すと共に、今後の展望を論 じている。

  これを要するに、著者は炭素材へのインターカレーション反応の解析とその電池電 極反応としての応用に関した新しい分野を開拓した。これらの成果独、応用化学、材 料工学の発展に貢献するところ大である。よって、著者は博士(工学)の学位を授与 ぎれる資格あるものと認める。

参照

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