博士(工学)山下 学位論文題名
砂の繰返し載荷試験結果に及ぼす諸因子の影響と 試験結果の適用に関する研究
学位論文内容の要旨
聡
室内試験から地盤の液状化強度特性および動的変形特性を求める場合,繰返し三軸試験が広く 用いられている。しかし,この試験では繰返し載荷時の土要素の応力状態が実際の地盤内の状態 と異なっている。それに対し,中空ねじり試験あるいは単純せん断試験では,原位置の応力状態 により対応した条件で試験を行うことができる。一方三軸試験tま,試験装置の取扱い易さ,不撹 乱試料の成形し易さ,試験装置の普及度から,今後も広く研究および実務において用いられると 考えられる。したがって,両試験から得られた試験結果の相互関係および試験結果に及ぼす要因 を的確に評価することによって,繰返し三軸試験の価値も高まると考えられる。そこで,本論文 では三軸試験装置および中空ねじり試験装置を用い,繰返し載荷に対する砂の変形・強度特性を 求め,試験結果に及ばす各種影響因子を定量的に評価することによって,現状の液状化判定法に 対して試験結果の適用性を図ること,および現在基準化されていない動的変形試験方法の確立の ための提言を目的としている。
本 論 文 は 5章 よ り な っ て お り , 各 章 を 要 約 す る と 以 下 の よ う で あ る 。 第1章では,地盤の動的変形・強度特性を評価する必要性および繰返し載荷試験方法の現状と 問題点を述べ,これに対応した本研究の目的を述べている。また,既往の研究成果をまとめ,本 研究の位置づけを行っている。
第2章では,本研究で用いた試料,および供試体の異方性の影響を調べるために用いた供試体 作製方法にっいて述べている。また,微小なひずみレベルから大ひずみレベルまで,1っの装置 を用いて試験を行うことが可能なように改良した試験装置の概要,およびその試験方法にっいて 示している。
第3章では,液状化強度特性に影響を及ぼす諸因子にっいて,その影響の程度と試験結果の液 状化判定 への適用性にっいて検討して いる。得られた結果は以下 のようにまとめられる。
供試体の作製方法の影響に関しては,作製方法の相違すなわち構造異方性の相違によって,得
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られる液状化強度は異なり,特に三軸試験においては供試体作製方法によって2倍以上も液状化 強度が異なることが明らかにされた。
過圧密履歴にっいては,不撹乱試料の場合,室内で短時間の過圧密履歴を与えた場合よりも,
原位置で長期間の過圧密履歴を受けた場合の方が液状化強度の増加率は高くなることが示され た。また,再構成砂に室内で短時間の過圧密履歴を与えた場合の液状化強度増加率は,不撹乱砂 の場合よりも高くなることが明らかにされた。
異方圧密履歴の影響に関しては,液状化強度に及ばす影響の程度が供試体の初期構造によって 異なることが三軸試験において示された。このことtま,異方圧密履歴によって導入された供試体 のダイレイタンシ一特性の相違とともに,三軸伸張条件での変形特性の変化が,同じ異方圧密履 歴を受けても初期構造によって異なるためであるとしている。それに対して,中空ねじり試験で は,供試体の作製方法によらず異方圧密履歴の影響は認められなかった。これは,異方圧密時と 繰返し載荷時の主応力方向が異なるため,三軸試験のような大きな影響が現れなかったとしてい る。
三軸試験と中空ねじり試験による液状化強度の関係は,供試体作製方法および試料の相違に よって複雑に変化した。そこで,両試験による液状化強度の関係を定量的に評価するために,供 試体の異方 性の程度を現すパラメータ として軸ひずみ比E a.c。m,/DAおよび間隙水圧比 Ul.eロmウ/U,を採用した。その結果,軸ひずみ比および間隙水圧比と三軸試験と中空ねじり試 験による液状化強度の比とは密接に関係しており,供試体の作製方法および試料に依らない一義 的な関係が存在することが明らかにされた。これらのパラメータを用いることによって,三軸試 験 で 得 ら れ た 液 状 化 強 度 か ら , よ り 的 確な 液状 化強 度 の予 測の 可能 性が 示 され た。
第4章では,第3章で検討した諸因子が,動的変形特性に対してはどのような影響を及ぼすか を検討している。また,動的変形試験を行う際に特有な問題である,繰返し載荷時の排水条件,
載荷回数,ステージ数等の影響にっいても示している。得られた結果をまとめると以下のとおり
試験に おける 供試 体端面 のべデ ィング エラー の影 響に, またひ ずみレ ベル の大きいところでは排 水条件 の相違 によ るもの である として いる。
異方 圧密履 歴の 影響に っいて は,Gは三 軸試験 では異 方圧 密履歴 を受け ること によ って変 化す るが, 中空ね じり 試験に おいて は,異 方圧密 履歴 の影響 は現れ ないこ とが 示された。これは,三 軸試験 と異な り中 空ねじ り試験 では, 異方圧 密時 と繰返 し載荷 時の主 応力 方向が異なるため,異 方圧密 履歴を 受け ても繰 返し載 荷時の 変形特 性が 三軸試 験のよ うに変 化し なかったためとしてい る。
繰 返 し 載 荷方 法 に 関 して は,測 定する 載荷回 数によ って 得られ るG,hは 変化 するが ,その 傾 向は排 水条件 によ って異 なり, ひずみ レベル が大 きくな ると排 水状態 では 載荷回数の増加ととも にGは 増 加 しhは 減 少 す る が, 非 排 水 状 態 では 逆 にGは 減少 しhは 増 加する こと が示さ れた。 ま た, ス テ ー ジ 数 を多 く する と,ひ ずみ レベル が大き いとこ ろで はGは 高くhは低 くな った。 これ は,以 前のス テー ジで受 けた繰 返し履歴による硬化の程度が,ステージ数の大小によって異なり,
間隙水 圧の発 生量 に相違 が生じ たため として いる 。
さ ら に , 第3章 で 得 ら れた 液 状 化 強 度とGmaxの関 係 を 比 較 して い る 。 そ の結 果 , 両 者 の関 係は同 じ試料 を用 いても 供試体 の作製 方法の 相違 や異方 圧密履 歴を受 ける ことによって多様に変 化し, 一義的 な関 係は存 在しな いこと が明ら かに された 。
第 5章 は , 本 論 文 の 結 論 で あ り , 各 章 で 得 ら れ た 結 果 を 要 約 し て い る 。 以上の よう に構成 された 本研究 より ,微小 ひずみ レベル から液 状化 に至るような大ひずみ領域 までの 広範な ひず みレベ ルの, 砂の繰 返し載 荷に 対する 変形特 性およ び強 度特性に及ぼす各種因 子の影 響が定 量的 に評価 された 。また ,得ら れた 試験結 果から ,試験 方法 の確立のための有用な 提言と ともに ,供 試体の 異方性 と試験 時の応 力系 を考慮 した液 状化強 度の 評価方法が示された。
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学位論文審査の要旨 主査
副査 副査 副査 副査
教授 教授 教授 助教授 助教授
土 岐 三 田 地 鏡 味 澁 谷 三 浦
祥 介 利 之 洋 史 啓 均 也
地震 の多発 国であ る日 本にお いては ,地震 時に発 生す る砂質 地盤の 液状化 現象により多大な被 害が 生じて いる。 この液 状化現 象の メカニ ズムを 解明し ,そ の対策 を行う ために は,地盤材料が 繰返 し載荷 を受け たとき の強度 およ び変形 特性を 適切に 評価 できる 室内試 験方法 を確立するとと も に , 試 験 結 果 に 及 ぼ す 各 種 因 子 の 影 響 を 定 量 的 に 把 握 し て い な け れ ば な ら な い 。 この ような 背景の もと で本論 文は, 種々の 条件の もと で室内 繰返し 載荷試 験を行い,試験結果 に及 ぼす諸 因子を 定量的 に評価 する ととも に,現 状の液 状化 判定方 法への 試験結 果の適用性の検 討 ,お よ び現在 進めら れて いる繰 返し変 形試験 方法 の基準 化のた めの提 言を行 った もので ,5章 より 構成さ れてい る。
第1章 で は , 本 研 究 の 背 景 , 目 的 お よ び 内 容 の 概 要 に っ い て 述 べ て い る 。 第2章 では, 本研究 で用 いた試 料,お よび著 者が新 たに 開発し た供試 体作製 方法 を含む 試験方 法に っいて 述べて いる。 また, 微小 なひず みレベ ルから の変 形特性 を正確 に測定 するために改良 した 試験装 置の概 要にっ いて示 して いる。
第3章 では, 液状化 試験 結果に 及ぼす 諸因子 の影響 の定 量的評 価と, 試験結 果の 液状化 判定へ の適 用性に っいて 検討し ている 。具 体的に は,供 試体作 製方 法,過 圧密履 歴およ び異方圧密履歴 の影 響を考 察する ととも に,三 軸試 験とね じり試 験によ る液 状化強 度の比 較を行 い,液状化判定
そこで ,三軸 試験よ りも 地盤内 での地 震時の 応力 状態に 近い状 態で試 験がで きる ねじり試験を 行 い , 三 軸 試 験結 果 と 比 較 して い る。 試験結 果に基 づき, 新し いパラ メ一夕 として 軸ひず み比
£ ロ. ロmカ/DAの導入を提案し,三軸試験で得られた液状化強度から,在来の方法にくらべ信頼 性 の高 い液状 化強度 の予測 が可 能であ ること を示し ている 。
第4章 では ,繰 返し変 形特 性に及 ばす供 試体作 製方法 ,応 力履歴 ,試験 装置の 相違 ,およ び繰 返 し変 形試験 特有の 問題で ある 繰返し 荷重の 載荷方 法の影 響に っいて 検討し ている 。その結果,
変 形定 数を室 内試験 から求 める 場合, 三軸試 験で得 られる 変形 定数は ねじり 試験よ りも多くの因 子 の影 響を受 けるが ,それ らの 影響を 定量的 に評価 するこ とに よって ,試験 が容易 で普及度の高 い 三 軸 試 験 か ら , 十 分 に 信 頼 性 の 高 い 結 果 を 求 め 得 る こ と を 示 し て い る 。 また, 繰返し 載荷試 験と 単調載 荷試験 による 変形 係数の 比較を 行い, 単調載 荷試 験での測定精 度 の向 上によ って, 両試験 の微 小ひず みレベ ルでの 変形係 数は 一致す ること を示し ている。この こ と は , 従 来1っの供 試体か ら求め られ なかっ た微小 ひずみ 領域 での変 形係数 と破壊 強度が 同時 に 得ら れるこ とも示 してい る。
さ ら に ,第3章 で得ら れた 液状化 強度と せん断 剛性率 の関 係を比 較し, 両者の 間に は在来 いく っ か の 報 告 で 示 さ れ て い る よ う な 一 義的 な 関 係 が 必 ずし も 存 在 し ない こ と を 示 して い る 。 第5章 は, 本論 文の結 諭で あり, 各章で 得られ た結果 を要 約し, 今後の 課題に っい て述べ てい る 。
これを 要する に本論 文は ,砂の 広範な ひずみ 領域 での繰 返し載 荷に対 する変 形特 性および強度 特 性に 及ぼす 各種因 子の影 響を 定量的 に評価 し,地 盤の変 形お よび強 度特性 を精度 よく求めるた め の室 内試験 方法に 対して 重要 な知見 を与え ている 。また ,現 在基準 化され ていな い繰返し変形 試 験方 法の確 立のた めの有 用な 提言を 行うと ともに ,三軸 試験 による 在来よ りも信 頼性の高い液 状 化強 度の評 価方法 を提案 して おり, 地盤工学および土質工学の進歩に寄与するところが大きい。
よ っ て , 著 者 は , 博 士 ( 工 学 ) の 学 位 を 授 与 さ れ る 資 格 あ る も の と 認 め る 。
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