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博士(文学)高槁靖以 学位論文題名

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Academic year: 2021

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(1)

     博士(文学)高槁靖以 学位論文題名

アイヌ語十勝方言の助詞 学位論文内容の要旨

  

本 論文 は 、ア イ ヌ 語十 勝 方言 (本別方 言)を、 話者(沢 井トメノ 氏、

1906

年 生 ) と の5 年 間 に わた る 実 地調 査 によ っ て 、特 に 助詞 に 重 点を置 いて記述 した も の で あ る 。 な お 、 本 論 文 は 、

400

字 詰 原 稿 用 紙 換 算

583

枚 の 分 量 で あ る 。

  

序 章で は アイ ヌ 語 の研 究 にお ける十勝 方言の位 置付けと 、本論文 で扱う「 助 詞 」 の 定義 を 先行 研 究 の検 討 に基づぃ て行い、 助動詞、 後置副詞 も広義の 助詞 と し て 扱う こ とを 述 べ 、併 せ て助動詞 的な機能 を果たす 連語的表 現も対象 とす ることを述べる。また、資料と表記にっいてもふれる。

  

1

章 では 、 アイ ヌ 語 の助 動 詞に 関 す る主 な 先行 研 究 をま とめ、 それらに 基 づ ぃ て 十勝 方 言の 助 動 詞を 純 粋の助動 詞と、助 動詞的に 用いられ る動詞と に分 類 し、さ らに意味 、機能によ って「時 間表現(

a

rok

...a

a

nlsa

awan

kuski

)」 、 「推 量 表 現(nankor) 」、「当為 表現

(kun)

」、 「意志表 現

(kuski

nankor)

」、「願望表現(rusuy) 」:「受益表現

(manu)

」、「程度表現

(kaspa)

」、「否 定 表現(somoki ) 」、「命 令表現

(nankor)

」、 「助動詞 的形式と して用い られる 動 詞 」 に分 け て、 個 々 の形 式 の用法を 実例に基 づいて記 述し、ま た、この 分類 に入れにくい少数の形式についても記述している。

  

2

章 では 、 アイ ヌ 語 の格 助 詞に 関 す る主 な 先行 研 究 をま とめ、 それらに 基 づぃて十勝方言の格助詞を意味、機能によって「位置・方向(ta ,en ,

wa

,peka) 」、

「様態

(ne

koraci

)」、「限定

(pak

pakno)

」、「程度

(pakno)

」に分類し、個々 の形式の用法を実例に基づいて記述している。

  

3

章 では 、 アイ ヌ 語 の後 置 副詞 に 関 する 主 な先 行 研 究を まとめ 、それら に 基 づぃて十 勝方言の 後置副詞を 意味、機 能によっ て「位置・方向(pekano ,

OS1

osken

,kasiken) 」、「道具・手段

(ari

)」、「共同(tura ,turano) 」、「原因・理由

(kus)

」、「様態(nepkon) 」、「意志(renkahine) 」、「数量(opi tta) 」に分類し、個々 の形式の用法を実例に基づぃて記述している。

  

4

章 では 、 アイ ヌ 語 の副 助 詞に 関 す る主 な 先行 研 究 をま とめ、 それらに 基 づ ぃて十勝 方言の副 助詞を意味 、機能に よって「 提題

(anak

anakne)

」、「例示

40 ‑

(2)

(ene)

」 、 「 追 加

(kay

ka

usa)

」 、 「 並 列

(newa

,ene ,kay ,

ka

usa)

」、 「 限定

(pokay patek

keraypo

pak

pakno)

」 、「 不定

(kay

,ka) 」、 「否 定(kay ,

ka)

「 文 全 体 の モ ダ リ テ ィ ー に 関 係 す る 副 助 詞

(estap

etap

tap)

」 に 分 類 し 、 個 々 の形 式の用法を実例に基づぃて記述している。

  

5

章 で は 、 ア イ ヌ 語 の 接 続 助 詞 に 関 す る 主 な 先 行 研 究 を ま と め 、 そ れ ら に 基 づ い て 十 勝 方 言 の 接 続 助 詞 を 意 味 、 機 能 に よ っ て 「 時 間 表 現

(wa

tek

kan

ahinne)

」、 「原 因・ 理由

(kus

,wa )

j

、 「目 的(kunine ,kuni ,kus) 」、「付帯状況・

様 態

(no

wa)

」 、 「推 定・ 比況

(kotom

pokon)

」 、 「程 度(pakno) 」 、「 条件

(cik

cikanak

cikanakne

yak

kor

akus)

」 、 「 譲 歩

(yakkay

hike)

」 、 「 逆 接

(korkay)

」 に 分 類 し 、 個 々 の 形 式 の 用 法 を 実 例 に 基 づ ぃ て 記 述 し て い る 。

  

6

章 で は 、 「 接 続 助 詞 十 補 助 動 詞 」 型 の 助 動 詞 的 形 式 に 関 す る 主 な 先 行 研 究 を ま と め 、 そ れ ら に 基 づ い て 十 勝 方 言 の こ の 種 の 形 式 を 意 味 、 機 能 に よ っ て

  

「時 間 表現

(kor an

,wa an ,

tek an

kan an

ka an

,kan iki ,wa oman ,wa ek ,

wa okere

,wa isam) 」、「推定・上ヒ況(kotom an ,pokon an ,kotom iki ,kotom ne) 」、

「 受 益

(wa kore)

」 、 「 命 令

(cik pirka)

」 、 「許 可(yakkay pirka) 」、 「伝 聞

(yak a

ye)

」 に 分 類 し 、 個 々 の 形 式 の 用 法 を 実 例 に 基 づ ぃ て 記 述 し て い る 。 ま た 、 こ の 分 類 に 入 れ に く い 少 数 の 形 式

(wa inkar

wa inu

wa ama)

に つ い て も 記 述 して いる。

  

7

章 で は 、 「 形 式 名 詞 十 補 助 動 詞 」 型 の 助 動 詞 的 形 式 に っ い て 、 先 行 研 究 を ま と め 、 形 式 名 詞

ru

sir

haw

hum

そ れ ぞ れ に づ ぃ て 十 勝 方 言 の 関 連 す る形 式を実例に基づぃて記述している。。

  

8

章 で は 、 ア イ ヌ 語 の 終 助 詞 に 関 す る 主 な 先 行 研 究 を ま と め 、 そ れ ら に 基 づ いて 十 勝方 言の 終助 詞を 意味 、機 能に よっ て「 伝達

(ne

na

wa)

」 、「命令(ani ,

yan)

」 、 「 勧 誘

(rok)

」 、 「 疑 問

(ya

he)

」 に 分 類 し 、 個 々 の 形 式 の 用 法を 実 例に 基づ いて記述している。

  

以 上 、 本 論 文 は 、 ア イ ヌ 語 十 勝 方 言 の 助 詞 の 全 体 像 を 体 系 的 に 提 示 し た も の

で あ る が 、 そ れ と 同 時 に 、 他 方 言 も 含 め た 先 行 研 究 に 十 分 に 目 配 り す る こ と に

よ り 、 ア イ ヌ 語 の 助 詞 記 述 一 般 に 関 す る ー つ の モ デ ル を 提 供 す る も の で あ る 。

(3)

学位論文審査の要旨 主査   助教授   佐藤知己 副 査    教 授    門脇誠一 副 査    教 授    津曲敏郎

学 位 論 文 題 名

アイヌ語十勝方言の助詞

  序 章 で は 「 助 詞 」 の 定 義 を 、 先 行 研 究 の 慎 重 な 検 討 に 基 づ ぃ て 行 い 、 取 り 扱 う 対 象 を 明 確 に し て い る 。 そ の 結 果 、 こ れ ま で 助 動 詞 、 後 置 副 詞 と し て 一 般 に 扱 わ れ て い た 形 式 も 広 義 の 助 詞 と し て 扱 う こ と を 述 べ 、 併 せ て 助 動 詞 的 な 機 能 を 果 た す 連 語 的 表 現 も 対 象 と す る こ と を 述 べ る 。 こ れ に よ り 、 本 論 文 は ア イ ヌ 語 の 助 詞 記 述 の ー つ の モ デ ル を 提 示 し た も の と 言 う こ と が で き る 。   1章 で は 、 ア イ ヌ 語 の 助 動 詞 に 関 す る 先 行 研 究 を ま と め 、 そ れ に 基 づ ぃ て 十 勝 方 言 の 助 動 詞 を 純 粋 の 助 動 詞 と 、 助 動 詞 的 に 用 い ら れ る 動 詞 と に 分 類 し 、 さ ら に 意 味 、 機 能 に よ っ て 「 時 間 表 現 」 、 「 推 量 表 現 」 、 「 当 為 表 現 」、 「意 志 表現 」 、「 願 望表 現 」、 「受 益 表現 」 、「 程 度表 現」 、 「否 定 表 現 」 、 「 命 令 表 現 」 、 「 可 能 表 現 」 に 分 け て 、 個 々 の 形 式 の 用 法 を 実 例 に 基 づ ぃ て 記 述 し 、 ま た 、 こ の 分 類 に 入 れ に く い 少 数 の 形 式 に つ い て も 記 述 し て い る 。 注 目 す べ き 指 摘 の 一 例 と し て は 、 従 来 、 接 続 助 詞 と し て 記 述 さ れ て き たkanと い う 形 式 に 助 動 詞 と し て の 用 法 が あ り 、 南 西 部 方 言 の kaneと 意 味 、 用 法 的 に 良 く 対 応 す る こ と を 初 め て 指 摘 し て い る こ と が あ げ ら れ る 。   2章 で は 、 ア イ ヌ 語 の 格 助 詞 に 関 す る 主 な 先 行 研 究 を ま と め 、 そ れ ら に 基 づ ぃ て 十 勝 方 言 の 格 助 詞 を 意 味 、 機 能 に よ っ て 「 位 置 ・ 方 向 」 、 「 様 態 」 、 「 限 定 」 、 「 程 度 」 に 分 類 し 、 個 々 の 形 式 の 用 法 を 実 例 に 基 づ ぃ て 記 述 し て い る 。 南 西 部 方 言 と は 異 な る 点 に 関 す る 重 要 な 指 摘 の 一 例 と し て は 、 esoroと ぃ う 形 式 が 、 南 西 部 方 言 で よ く 言 わ れ て い る よ う な 川 を 軸 と し た 下 方 で は な く 、 専 ら 垂 直 方 向 の 運 動 に 関 し て の み 用 い ら れ る こ と を 指 摘 し て い る こ と が あ げ ら れ る 。   3章 で は 、 ア イ ヌ 語 の 後 置 副 詞 に 関 す る 主 な 先 行 研 究 を ま と め 、 そ れ ら に 基 づ ぃ て 十 勝 方 言 の 後 置 副 詞 を 意 味 、 機 能 に よ っ て 「 位 置 , 方 向 」 、 「 道 具 ・ 手 段 」 、 「 共 同 」 、 「 原 因 ・ 理 由 」 、 「 様 態 」 、 「 意 志 」 、 「 数 量 」 に 分 類 し 、 個 々 の 形 式 の 用 法 を 実 例 に 基 づ ぃ て 記 述 し て い る 。 興 味 深 い 指 摘 の 一 例 と し て は 、 格 助 詞 の pekaと 形 が 類 似 し て い る が 、 意 味 、 機 能 が 大 き く 異 な るpekano とい う 後置 副 詞が 十 勝方 言に 存 在す る こと を 指摘 して い るこ と があ げ られ る 。

  4章 で は 、 ア イ ヌ 語 の 副 助 詞 に 関 す る 主 な 先 行 研 究 を ま と め 、 そ れ ら に 基 づ い て 十 勝 方 言 の副 助 詞を 意 味、 機 能に よっ て 「提 題 」、 「 例示 」、 「 追加 」 、「 並 列」 、 「限 定」 、 「不 定 」、 「 否定 」「 文

42ー

(4)

全体 のモダ リティ ーに関 係する 副助詞 」に分 類し、個 々の形 式の用 法を実 例に基 づいて記述し てい る。こ れらの 形式に 関して は、他 の方言 では既に 指摘さ れてい るが、 十勝方 言でも一部の 副 助 詞 が 情 報 の 焦 点 を 示 す 機 能 を 有 す る 可 能 性 を 指 摘 し て い る 点 が 注 目 さ れ る 。

  

第5 章 では 、 ア イヌ語の 接続助 詞に関 する主 な先行 研究を まとめ 、それ らに基づ ぃて十 勝方 言の接続助詞を意味、機能によって「時間表現」、「原因・理由」、「目的」、「付帯状況・様態」、

「推定・比況」、「程度」、「条件」、「譲歩」、「逆接」に分類し、個々の形式の用法を実例に基づ い て 記 述し て い る。な かでも 、同時 性を表 すkan とい う形式 が程度 を表す 用法を有 するこ とを 指摘 してい ること は、こ の形式 の機能 や歴史 を探る上 で重要 な視点 を提供 するも のと言える。

  

6

章では 、「接続 助詞十 補助動 詞」型 の助動 詞的形 式に関 する主な先行研究をまとめ、それ らに基づいて十勝方言のこの種の形式を意味、機能によって「時間表現」、「推定・比況」、「受 益」、「命令」、「許可」、「伝聞」に分類し、個々の形式の用法を実例に基づぃて記述している。

また 、この 分類に 入れに くい少 数の形 式にっいても記述している。中でも、継続を表すkor an と い う 形 式 が 十 勝 方 言 で は 一 人 称 と 共 起 し な い こ と を 初 め て 指 摘 し た 点 が 注 目 さ れ る 。

  

7

章では 、「形式 名詞十 補助動 詞」型 の助動 詞的形 式につ いて、先行研究をまとめ、形式名 詞

ru

sir

haw

、hum そ れぞれに ついて 十勝方 言の関 連する 形式を 実例に 基づい て記述し てい る。 なお、 これら の表現 が情報 構造と 深く関 わってい る可能 性を指 摘して いるの は、本質を突 い た 見 方 と 言 え 、 こ れ ら の 形 式 の 研 究 に 新 た な 可 能 性 を 開 く も の で あ る 。

  

第8 章 では 、 ア イヌ語の 終助詞 に関す る主な 先行研 究をま とめ、 それら に基づい て十勝 方言 の終助詞を意味、機能によって「伝達」、「命令」、「勧誘」、「疑問」に分類し、個々の形式の用 法を 実例に 基づぃ て記述 してい る。注 目され るのは、 先行研 究では 十勝方 言(本 別方言)の勧 誘 の 助 詞と し て は

na

が 報 告さ れ て い るの み で あ り、 南 西 部 方言 と 形が類 似した

rok

とい う形 式が本別方言にもあるという報告は、興味深い発見のーっと言える。

  

本 論文の主 要な研 究成果 は、1 ) 体系的 な調査 によっ て、ア イヌ語十勝方言の助詞及び関連す る形 式の全 体像を 初めて 明らか にした 点、2 ) 先行研 究を十分 にふまえ、他方言の用法と対照し つつ 、これ まで気 が付か れてい なかっ た十勝 方言の助 詞及び 関連す る形式 の種々 の微妙な特徴 を明 らかに してい る点、

3

)アス ペクト 、モダ リティ ーに関す る多種多様な形式について、豊富 な 用 例 に 基 づ い て そ れ ら の 用 法 を 記 述 し て い る 点 、 の 三 点 に ま と め ち れ る 。

  

以 上に基づ き、全 体とし て本論 文はア イヌ語 の助詞 を包括 的に扱っ た研究 として 、また、先 行研 究の少 ないア イヌ語 十勝方 言の記 述的研 究として 高く評 価し得 るもの と言う ことができる と判 断され 、当委 員会は 、本論 文が博 士(文 学)を授 与する に十分 値する 学問的 価値を有する ものと全員一致して認めるものである。

‑ 43

参照

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