路盤 載荷輪
路床 2000mm
載荷装置
表・基層
スケール:1/10
図1 小型移動載荷試験装置
表・基層(CAモルタル)
ひずみゲージ
路床(礫質砂)
1cm 5cm
20cm 路盤(砂質礫,
セメント改良した砂質礫)
図2 舗装模型
No.13
No.3 No.4 No.6 No.7
No.14 50mm
No.2 No.1
No.12 No.11
No.8 No.9 No.10
No.16 No.15
50mm 載荷輪幅
No.5
載荷輪接地形状
図3 ひずみゲージ配置図
表1 試験ケース 表・基層 路盤
CaseA 強度 小 セメント改良なし
CaseB 強度 大 セメント改良なし
CaseC 強度 小 セメント改良1%
CaseD 強度 小 セメント改良3%
貨物コンテナヤード舗装を対象とした移動載荷による模型実験
中央大学大学院 学生会員 守屋英海 フェロー 姫野賢治 (財)鉄道総合技術研究所 正会員 桃谷尚嗣 正会員 関根悦夫
1.はじめに
貨物コンテナヤードでは荷役の効率化と多様化に対応するため,大きな輪荷重を持つ荷役機械を導入しており,
通常の道路舗装に比べて大きな荷重が作用する.そのため,通常の道路舗装では 49kN 換算輪数を基準に設計を行 っているのに対して,貨物コンテナヤード舗装では12ftフォークリフト(輪荷重約100kN)換算輪数を基準に設計 を行っている.しかしながら近年は最大輪荷重が500kNにおよぶトップリフタ等の大型荷役機械も使用されており,
重荷重に対応した設計方法の確立が必要とされている.本研究では,重輪荷重の作用によるひずみレベルの大きい 領域での舗装の変形特性を把握するため、図 1 に示すような小型移動載荷試験装置(土槽の幅:2000mm,土槽の
奥行:300mm,載荷輪の直径:200mm,載荷輪の幅:50mm)を用いて,表・基層の剛性,路盤の剛性,および移
動速度の違いが舗装の変形特性に与える影響を検討した.
2.測定方法
図 2 に示すように舗装模型の表・基層には模型の縮尺を考慮して,ア スファルト混合物と同様の変形特性を有し,大きな骨材のない CA モル タルを用いた.CA モルタルは強度 大(一軸圧縮強度4MPa)および強度 小(一軸圧縮強度1MPa)の2種類とし,厚さを1cmとした.路盤には 砂質礫およびセメント改良した砂質礫を用い,厚さを5cmとした.路床 には礫質砂(締固め度95%)を用い,厚さを20cmとした.また,図3 に示すように基層下面にはひずみゲージ 16 枚を設置することにより,
ひずみの分布を測定した.表1に試験ケースを示す.
載荷方法は載荷輪を左右に移動させる移動載荷とし,載荷荷重を段階 的に増加させた.載荷輪の移動速度および載荷回数は各載荷荷重におい て,それぞれ2cm/sで100回,0.2cm /sで10回とした.なお,舗装表面 にクラックを生じてひずみゲージの測定が不可能になる,または荷重の 制御が不安定となる時点で試験を終了した.
3.試験結果
図4にCaseBの200N,2cm/sの1回目における進行方向の基層下面の ひずみと載荷輪位置の関係を示す.載荷輪がひずみゲージを通過すると きに引張ひずみを生じ,通過した後は引張ひずみが減少する.図5に載 荷輪の進行方向と直交する方向のひずみと載荷輪位置の関係を示す.載 荷輪の接地面の中心にあるひずみゲージ(No.13)において最も大きな 引張ひずみが生じ,載荷輪の端部では引張ひずみは小さくなる.また,
載荷輪の接地面から離れた位置にあるひずみゲージには圧縮ひずみが 生じている.
図6にCaseCの各載荷荷重に対する基層下面のひずみと載荷回数
の関係を示す.載荷荷重が小さいときは繰返し載荷を行っても,ひ ずみの変化はあまり見られないが,載荷荷重を増加させると,載荷
【キーワード】 貨物コンテナヤード舗装 移動載荷 模型実験
【連 絡 先】 〒112-8551 東京都文京区春日1-13-27 TEL 03-3817-1796 土木学会第60回年次学術講演会(平成17年9月)
-177- 5-089
350 400 450 500 550 600 650 -600
-400 -200 0 200 400 600
基層下面のひずみ (μ)
200N 2cm/s 1回目
載荷輪位置 (mm) ひずみゲージ
No.3 No.4 No.5 No.6 No.7 載荷輪
350 400 450 500 550 600 650
-200 -100 0 100 200 300
基層下面のひずみ (μ)
200N 2cm/s 1回目
載荷輪位置 (mm) ひずみゲージ
No.11 No.12 No.13 No.14 No.15
載荷輪
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 110 0
1000 2000 3000 4000 5000
6000 2cm/s 0.2cm/s
基層下面のひずみ(μ)
載荷回数(回)
100N 200N-1 500N 200N-2 1000N 2000N
図4 基層下面のひずみと載荷輪位置 図5 基層下面のひずみと載荷輪位置 図6 基層下面のひずみと載荷回数
CaseB(表・基層:強度大,路盤:セメント改良なし)
CaseC(表・基層:強度小,路盤:セメント改良1%)
図9 舗装の破壊形状
回数とともに徐々にひずみが増加する.また載荷荷重が大きく,ひ ずみが大きいときは,移動速度を減少させると著しくひずみが増加 する傾向が見られる.なお,図6に示したひずみはひずみゲージNo.1
~No.9を平均した値である.
図7,8に基層下面のひずみに対する表・基層および路盤の強度の 影響を示す.図7より表・基層の強度が異なる CaseAとCaseBを比 較すると,CaseB(強度大)は CaseA(強度小)よりひずみが小さくな ることがわかる.また図8より路盤の剛性が異なるCaseA,CaseCおよ び CaseDを比較すると,セメント改良を行なった CaseCおよび CaseD はセメント改良なしのCaseAよりひずみが小さくなることがわかる.ま た路盤の砂質礫をそれぞれ 1%と 3%にセメント改良した CaseC と
CaseD を比較すると,ひずみの差はほとんど見られなかった.ただし,
これには CaseD において路盤を十分に締め固められなかったことも影
響していると考えられる.なお,図 7,8 に示したひずみは各載荷荷重 において最終回(110回走行目)の値である
図 9に CaseBと CaseCにおける舗装の破壊形状を示す.表・基層
の強度が大きく,路盤の強度が小さい CaseB においては,
載荷輪の両脇に大きななひび割れが生じ,路盤の変形によ るわだち掘れが生じた.一方,表・基層の強度が小さく,路 盤の強度が大きいCaseCにおいては,路盤の変形はほとん ど見られず,舗装表面の流動によるわだち掘れが生じた.
4.まとめ
1) 載荷荷重を大きくすると,載荷回数とともにひずみは徐々 に増加し,特に移動速度を減少させると著しく増加した.
この結果から,重輪荷重の載荷によりひずみレベルが大き くなる場合は,速度の影響を考慮しなければならないと考 えられる.
2) 表・基層および路盤の強度を大きくすることにより,基層 下面に生じるひずみは小さくなった.
3) 表・基層の強度が大きく,路盤の強度が小さい場合は載荷輪の両脇に大きなひび割れが生じ,路盤の変形 によるわだち掘れが生じた.一方,表・基層の強度が小さく,路盤の強度が大きい場合は,路盤の変形は ほとんど見られないが,舗装表面の流動によるわだち掘れが生じた.
【参考文献】 上浦正樹・丸山暉彦・姫野賢治・阿部長門:鉄道貨物ヤードにおけるアスファルト舗装設計に関する研 究,土木学会論文集,No.520/Ⅴ-28, pp.47-54,1995.8.
0.0 0.5 1.0 1.5 2.0
0 1000 2000 3000 4000 5000
CaseB 表・基層 強度大
(一軸圧縮強度 4MPa)
載荷荷重(kN)
基層下面のひずみ(μ) CaseA表・基層 強度小
(一軸圧縮強度 1MPa)
図7 表・基層の強度の影響
0.0 0.5 1.0 1.5 2.0
0 1000 2000 3000 4000 5000
CaseC 路盤 セメント改良1%
CaseD 路盤 セメント改良3%
CaseA 路盤 セメント改良なし
載荷荷重(kN)
基層下面のひずみ(μ)
図8 路盤の強度の影響
舗装表面(クラック) 路盤表面
(わだち掘れ大))
舗装表面(流動) 路盤表面
(わだち掘れ微小)
土木学会第60回年次学術講演会(平成17年9月)
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