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疲労センサーの鋼製橋脚隅角部への適用

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Academic year: 2022

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疲労センサーの鋼製橋脚隅角部への適用

      川崎重工業㈱      正会員○梅田聡,小林朋平,小林徹雄

阪神高速道路公団  正会員  堀江佳平,正会員  鈴木徹       

はじめに

  著者の一部が開発してきた金属箔のき裂進展特性を応用した疲労センサーは,溶接部の疲労損傷度を間接 的に評価する上で非常に有効な手段と考えられる.一方,昨今鋼製橋脚の隅角部溶接のき裂が都市高速道路 を中心に発見されており本格的な補修・補強工事が検討,実施されている.そのような状況の下,非破壊検 査でき裂が検出された阪神高速道路3号神戸線の鋼製橋脚に対して疲労センサーを利用して隅角部溶接の疲 労損傷度の評価(余寿命予測)を実施したので報告する.

1.疲労センサーの概要

疲労センサーの基本構造は,図1に示すようにセンサー部はスリット入り純ニッケル箔であり,ある値以 上の応力を受けた場合,この金属箔のスリットを起点としてき裂が進展する特性を有しており,この金属箔 を接着剤もしくは抵抗溶接にてベース材に貼り付けている.この疲労センサーを繰り返し応力を受ける部材 にある一定期間貼り付け,き裂進展長さを計測する.き裂進展状況から疲労センサーの疲労損傷度を求め,

続いて疲労センサーと溶接部とのS−N線図の傾きが同じであることを利用して,間接的に対象部材の疲労 損傷度を推定しようとするものである1),2)

2.対象橋脚と非破壊検査によるき裂状況

  対象橋脚は,図2に示すような門型橋脚とT型橋脚であり,1970年に供用を開始している.門型橋脚の隅 角部に対して内外面から非破壊検査(磁粉探傷検査及び超音波探傷検査)を実施したところ,張出し部の梁 下フランジと柱フランジの溶接部で最大表面長さ 175mm,深さ 2.4mm のき裂が検出された.き裂の起点 はコーナー部ではなくコーナー部から約130mm離れた位置であることが確認された.また,T型橋脚の隅 角部に対して外面から非破壊検査(磁粉探傷検査)を実施したところ,梁下フランジと柱フランジの溶接部 で最大21mmのき裂が検出された.

3.疲労センサーの適用とその妥当性確認

疲労センサーは隅角部のコーナーの溶接近傍に貼付した.1隅角コーナー部あたり2〜4枚の疲労センサ ー(門型橋脚18枚,T型橋脚12枚)を7〜8ヶ月間貼付し,その期間2〜3回の点検でセンサーのき裂進 展計測を実施した.疲労センサーのき裂の進展は,直接スリットを拡大鏡にて観察した.

なお,門型橋脚については,疲労センサーと併用してひずみゲージを用いた応力頻度計測による疲労寿命 評価も実施した3).レインフロー法による応力頻度測定は連続 24 時間平日に実施し,ひずみゲージはコー ナー部から50mm離れた位置と縦リブ位置に貼付した.疲労寿命評価法はいわゆる累積損傷度の考え方に基 づいて算出した.

さらに,シェアラグの効果を考慮するために,FEM 解析から活荷重下での最大発生応力範囲の板幅方向 分布を求め,ひずみゲージ位置とコーナー部の応力比率からコーナー部の疲労寿命を算出した.

4.疲労寿命

(1)門型橋脚    疲労センサーは,約8ヶ月間貼付したが,スリットからのき裂の進展は確認できなかっ た.き裂進展量が0.1mm以下を仮定した場合の「設計線基準の疲労寿命(非破壊確率97.7%,ばらつき下 限界の寿命)4),5)」は300年以上と算出された.一方,応力頻度測定から,応力振幅レベルは比較的低く,

ひずみゲージ位置の最短の疲労寿命は5,600年となった.また,FEM解析から求めたひずみゲージ位置σ1

キーワード:疲労センサー,鋼橋,疲労き裂,余寿命

連絡先:〒675-0155  兵庫県加古郡播磨町新島8  川崎重工業㈱  TEL0794-35-2102,FAX0794-35-2152 土木学会第58回年次学術講演会(平成15年9月)

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(2)

とコーナー部σ2の応力比率はσ2/σ1=1.39となり,コーナー部の最短の疲労寿命でも230年となった(図 3).両者の結果から本橋脚に生じたき裂は,疲労単独原因であるとは考えにくく,他の原因の介在(溶接割 れ等)の可能性も考えられる.

(2)T型橋脚    本橋脚では,2回の点検時の計測にて 12 枚中9枚の疲労センサーにき裂の進展が見ら れ,その最長は0.89mmであった.疲労センサーのき裂進展が確認された9枚のうち,き裂が比較的長い4 箇所について「設計線基準の疲労寿命」と「平均線基準の疲労寿命(非破壊確率50%,ばらつき平均の寿命)」 を算出した(表1).設計寿命と平均寿命は最短でそれぞれ,34年,150 年であり,実損傷をよく説明しう る結果となった.なお,この疲労寿命は疲労センサーに基づく診断結果であり,疲労寿命を保証するもので はない.

【参考文献】1)川口他:疲労センサーによる損傷モニタリングの橋梁への適用,土木学会第 57 回年次学 術講演会Ⅰ−295,2002.9,2)梅田他:疲労センサーによる鋼橋の疲労損傷度評価,国土交通省近畿地方 整備局平成14年度管内技術研究発表会,2002.7,3)(財)道路保全技術センター:応力頻度測定要領(案),

1996.3,4)(社)日本道路協会:鋼道路橋の疲労設計指針,2003.3,5)(社)日本鋼構造協会:鋼構造物

の疲労設計指針・同解説,1993.4

3 , 0 5 0 1 0 , 3 0 0

3 , 0 5 0 9,590 1,200 700

1 , 2 0 0 1 , 2 0 0

1 6 , 4 0 0 1 6 , 4 0 0

1,500

平 面 図

正 面 図

       

平 面 図

正 面 図

8 , 8 7 0 1 , 5 0 0 7 , 5 4 0

12,261

1 6 , 4 1 0 1 6 , 4 1 0

1,1807001,844

1 2 3 4

隅角部① 起点側 柱

隅角部① 起点側 梁

隅角部① 終点側 梁

隅角部② 起点側 梁

0.10mm 0.60mm 0.30mm 0.80mm

0.20mm 0.75mm 0.50mm 0.89mm

Class_E Class_D Class_D Class_D

78年 41年 61年 34年

300年 180年 270年 150年

貼付場所

き裂長さ(貼付後132日)

設計線基準の疲労寿命 平均線基準の疲労寿命 き裂長さ(貼付後208日)

評価S-N線図

±ひずみ

金属箔 ベース

部材 スリット

き裂

図1  疲労センサーの基本構造

  (b)T型橋脚 図2  対象橋脚の一般図

0 20 40 60 80 100 120

0 100 200 300 400 500 600 700

隅角部・端部からの幅方向距離 [mm]

最大発生応力範囲 [MPa]

FEM解析結果 計測データ

④-4計測位置での応力:72.3MPa 端部での応力:100.7MPa

計測データ

端部から50mm;④-1、④-4 端部から450mm;④-2、④-3

き裂中心 き裂先端 き裂先端

図3  最大発生応力範囲の板幅方向分布

表1  疲労センサーのき裂 長さと疲労寿命

(a)門型橋脚 土木学会第58回年次学術講演会(平成15年9月)

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参照

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