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―模型振動実験の数値シミュレーションによる考察―

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Academic year: 2022

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全文

(1)

大深度シールド立坑の地震時挙動と可撓継手の効果に関する基礎的研究

―模型振動実験の数値シミュレーションによる考察―

大成建設 正会員 ○澤田 茉伊 大成建設 フェロー会員 志波 由紀夫 大成建設 正会員 畑 明仁 早稲田大学 学生会員 徳丸 大介 早稲田大学 正会員 小泉 淳

1.はじめに

硬質な地層と軟質な地層にまたがって建設される大深度シールド立坑では, 地層境界部付近に大きな地震時応力 が発生することが予想されるが, この軽減策のひとつとして, 立坑の水平断面に可撓性継手を設ける方法が考えら れる. その効果は, 小型模型を用いた振動台実験により, 継手を設けることで立坑に発生するひずみが軽減される など, 有効であることが確認されている

1)

. 本稿では, この実験を3次元FEMによる地震応答解析によって再現 し, 解析的な視点から立坑全体の基本的な地震時挙動を捉え, 継手効果について検討した内容を述べる.

2.解析の概要

振動台実験

1)

に用いた小型模型は, 硬・軟の地層 境界にまたがる立坑を想定し, 硬度の異なる2層 のシリコン地盤中にウレタン製の立坑を埋め込ん だものである. 実験では, 表 1 に示す 4 ケースの立 坑模型が検討された. 解析では, 模型の地盤部分を ソリッド要素, 立坑および継手部分をシェル要素 でそれぞれモデル化した. 要素数は約 8 万であり, すべて線形弾性とした. 物性値は, 各材料の一軸圧 縮試験結果と, 実験により得られた各ケースの共 振曲線(1 次固有振動数は, いずれも 6.0Hz 程度)

に基づき, 実験結果を忠実に再現できる値とした.

図 1 に解析モデルの一例(ケース 2)を示す.

3.振動台実験の再現

まず, 上記 4 ケースについて, 振動数を模型の共振振動数

(6.0Hz)と一致させた, 振幅 50Gal の正弦波による加振実験を再 現した. 地盤の変位および加速度については, いずれのケースにお いても全計測点について実験結果を精度よく再現できた. 立坑の ひずみについては, ひずみゲージの接着と較正値決定に一部不備 があったために, 正確な計測値が得られず, 解析結果が合致しない

測点もあるが, 概ね実験結果を再現できた. 図 3 に, ケース 2 において実験と解析により得られた位置 C の地盤変 位と位置 A の立坑内側の鉛直方向ひずみの最大値の深さ方向の分布の比較を示す.

実地震波で加振した場合についても, 正弦波加振の場合と同様の結果が得られた. 一例として,ケース 2 について, 兵庫県南部地震の神戸海洋気象台波(時間軸 1/10, 振幅 300Gal に調整)で加振した場合の応答波形の一部を図 4

キーワード シールド立坑,可撓継手,地震応答解析

連絡先 〒245-0051 横浜市戸塚区名瀬町 344-1 大成建設 技術センター TEL045-814-7231

加振方向

上層 γ=9.7 kN/m3 E=291 kN/m2 ν=0.4 h=4 %

下層 γ=9.8 kN/m3 E=541 kN/m2 ν=0.4 h=4 % 25cm

20cm

10cm

側面:自由 底面:固定

立坑 γ=11.0 kN/m3 ν=0.5 E=46700 kN/m2 h=4 % 継手 γ=13.1 kN/m3 ν=0.5 E=3070 kN/m2 h=4 % 位置B 位置A

位置C 52.5cm

17.5cm 52.5cm

17.5cm

図 1 解析モデル(深さ 40cm の継手を有する立坑モデル)

表 1 検討ケースの一覧

ケース1 ケース2 ケース3 ケース4

立坑深さ40cm 立坑深さ40cm 立坑深さ25cm 立坑深さ

25cm

継手なし 継手あり 継手なし 継手あり

ケース1 ケース2 ケース3 ケース4

立坑深さ40cm 立坑深さ40cm 立坑深さ25cm 立坑深さ

25cm

継手なし 継手あり 継手なし 継手あり

ケース1 ケース2 ケース3 ケース4

立坑深さ40cm 立坑深さ40cm 立坑深さ25cm 立坑深さ

25cm

継手なし 継手あり 継手なし 継手あり

土木学会第66回年次学術講演会(平成23年度)

‑977‑

Ⅰ‑489

(2)

および図 5 に示す.

4.立坑の地震時挙動と継手の応力軽減効果

前期の解析モデルが実験結果を良好に再現できることを確 認した上で, 次に, 立坑の挙動と継手効果を解析結果に基づ き詳細に検討した. 図 6 は上述の正弦波で加振した場合の立 坑に作用する位置 A の鉛直・円周方向軸方向応力, 位置 B の 面内せん断応力の最大値の深さ方向の分布を示したものであ る. いずれの応力成分も地層境界付近において最大となり, 特に鉛直方向軸応力と面内せん断応力が際立って大きく, 実 構造物においても設計上厳しい条件になると予想される. し かし, 継手を設けることにより, 地層境界をまたぐ深い立坑 のケースにおいては, 鉛直方向軸応力では半分

程度, 面内せん断応力では 30%程度軽減できてい る. これは, 継手部分が大きくせん断変形する ことにより, 継手に挟まれた躯体のひずみを緩 和するためである

2)

. また, 地層境界をまたが ない浅い立坑においても継手による応力軽減効 果が見られるが, 深い立坑の場合のほうがより 効果が大きいと言える. なお, 面外曲げ応力成分 についても継手による応力軽減効果は見られた が, 今回のケースでは, 軸応力に比べ, 曲げ応力 は小さいため, 詳細は省略する.

5.まとめ

振動台実験の再現解析によ り, 可撓性継手を設けた立坑 では, 継手部分が大きくせん 断変形することにより, 躯体 部分に発生する地震時応力を 緩和できることがわかった.

中でも, 応力レベルの高い鉛 直方向軸応力と面内せん断応 力については, 今回の検討ケ ースでは, それぞれ半分程度, 30%程度の大幅な軽減が見られ, 特に効果的であると考えられる.

参考文献

1) 大深度シールド立坑の地震時挙動と可撓継手の効果に関する基礎的研究―地盤・立坑模型の振動台実験によ る挙動把握―:安藤恒平, 藤原康史, 志波由紀夫, 畑明仁, 澤田茉伊, 小泉淳, 第 66 回年次学術講演会概 要集, 2011

2) 大深度シールド立坑の地震時応力を軽減するための可撓性継手の効果に関する解析的検討:澤田茉伊, 志波 由紀夫, 畑明仁, 徳丸大介, 小泉淳, 第 46 回地盤工学研究発表会発表講演集, 2011(投稿中)

図 6 立坑の最大応力の分布(解析値)

0 5 10 15 20 25 30 35 40 45

0 0.02 0.04 0.06 0.08 0.1 円周方向軸応力(N/mm2)

深度(cm)

case1 case2 case3 case4

0

5 10 15 20 25 30 35 40 45

0 0.02 0.04 0.06 0.08 0.1 鉛直方向軸応力(N/mm2)

(cm)

case1 case2 case3 case4

0 5 10 15 20 25 30 35 40 45

0 0.02 0.04 0.06 0.08 0.1 面内せん断応力(N/mm2)

深度(cm)

case1 case2 case3 case4

図 5 地層境界付近での立坑内側の鉛直方向ひずみ(ケース 2)

-500 -300 -100 100 300 500

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 1.4 1.6 1.8 2

時間(s)

鉛直ひずみ(内側)μ)

解析 実験

図 4 地表面における応答変位(ケース 2)

-0.3 -0.2 -0.1 0 0.1 0.2 0.3

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 1.4 1.6 1.8 2

時間(s)

変位(cm)

解析 実験

図 3 最大応答値分布の比較(正弦波加振時)

0 5 10 15 20 25 30 35 40 45

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1

変位(cm)

深度(cm)

case1(解析) case2(解析) case3(解析) case4(解析) case1(実験) case2(実験) case3(実験) case4(実験)

0 5 10 15 20 25 30 35 40 45

0 500 1000 1500

鉛直方向ひずみ(内側)(μ)

深度(cm

実験 解析 加振方向

ケース2 断面1は欠測

土木学会第66回年次学術講演会(平成23年度)

‑978‑

Ⅰ‑489

参照

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