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眼球運動に対し頑健な視覚野網膜地図の推定手法に関する研究

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(1)

眼球運動に対し頑健な視覚野網膜地図の推定手法に

関する研究

著者

外川 龍之介

学位授与機関

Tohoku University

(2)

修士学位論文

眼球運動に対し頑健な視覚野

網膜地図の推定手法に関する研究

東北大学大学院情報科学研究科

応用情報科学専攻

バイオモデリング分野

中尾・片山研究室

外 川 龍 之 介

平成

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2

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2

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1

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.

2

)

(3)
(4)

内容

1辛 序 論…・...1 1.1 本研究の概要…...1 1.2 木論文の構成.…・・…… ・・……・・…・…・……・・……・・……・…・・…・……・・……・…...・H ・-… ..2 2章 網膜地図推定法とその問題点...3 2.1 は じめに…-…....・H ・-…・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…..3 2.2 動物の視覚能力の評価手法.……・・……・・…・…・……・・……・…・一………H ・H ・H ・H ・.3 2.2.1 既存の評価手法とその問題点...3 2.2.2 網膜地図を用いた視覚能力の評価法の提案…・・…・…・………一………3 2.3 従来の網膜地図推定手法と問題点...6 2.3.1

Grating

法による網膜地図推定手順…・…・…………...・H ・...・.H ・-………...・H ・

.

.

6

2.3.2 従来の網膜地図推定法の問題点...7

2

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4

木研究の目的・……・…・・…-……・… ・・…

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8

3章 視覚野の活動とマウス眼球運動の計調IJ方法...9 3.1 実験動物と手術 ……… ……… …9 3.2 視覚刺激の方法 (奥畑, 2018,修士論文[1叶)....•..•..•••••••••.••.•...•.••...••••••••••• 10 3.3 内因性光信号イメージング(rOS1)法…・・……・ ・ ・ … ・...・H ・...11 3.3.1 内因性光信号イメージング法の原理一…・-…・ …・・・…・ …・…・・ …・….11 3.3.2 計測手法...…・ ・・・・・ ・ ・・・・・・・…・・・...…...11 3.4 限位の計測法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・ …・…...・H ・....・H ・....…H ・H ・..・.H ・-….12 4

4

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:

綱JJ莫地図の推定アルゴ‘リズム…・....・H ・...16 4.1 感度分布関数に基づく網膜地図の推定法…・...16

4

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2

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5草 開発した網膜地図推定'アルゴリズムの評価…・…...・H・・・H ・H ・....・H ・-………...・H ・-…...・H ・..18 5.1

Globa

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除去の効果 ...18 5.2 感度分布パラメータの推定結果…-…...・H ・-…...…...・H ・...・H -・ …・・……・・...・H ・....18 5.3 網膜地図の推定結果……H ・H ・-…H ・H ・-…...・H .・...・..H ・-…-………...・H ・-………H ・H ・...・...23 5.3.1 提案法で推定された網膜地図…・…・…....・H ・-………・ ……23 5.3.2 推定された網膜地図と従来法との比較…・…・……・………・……… 23 5.4 考察……一 ...・H ・...………...・...……・・……・・・H ・H ・....・H ・....・H ・...・H ・...・H ・-…一…29 5.4.1 推定された視覚野領域と脳アトラスとの比較.……・…・…・……・……・………29

(5)

5.4.2 二次視覚野の構 造 ...29 5.4.3 今回使用した視覚刺 激について.…...29 6章 結論…・・…-…....・H ・....・H ・-・・…一… ...・H ・-…...・H ・-…....・H ・-…・ …....・H ・H ・H ・...・H ・.31 参考文献…・・ …・...・H ・-……… ...・.H ・...… ・・ - …・・H ・H ・....・H ・-… 33 発表文献...36 謝辞・…....・H ・...・.H ・'"…-…・・…...・・・ …....・H ・...・...37

(6)

1

章 序 論

1

.

1 本研究の概要

視覚能力を回復させることを目的として,様々な新しい視覚再建技術[1][2][3]の研究 ・開 発が行われている.これらの技術をヒトに適用する前にマウスなど、の実験動物を月弘、て知 視覚能力の評価

i

実験[2][3]を行う必要がある.従来の評価方法は視覚誘発電位の計測や移動 する縞模様を提示した時の首阪り運動などがある[4].これらの手法で、は視覚能力が回復で、 きたかどうかの評価を行うことはできるが,再建された視野の範囲や解像度などを評価す ることは困難で、ある. そこで,本研究室では網膜地図(retinotopicmap)を用いた視覚能力の評価法を提案してき た[5].これにより, 再建された視覚能力を一次視覚野レベルで、評価することだけでなく高 次の脳機能領域との関連についても評価することが可能になると期待できる.さらに,内因 性光信号イメージング法を利用することによって長期的な神経団路の再構築の過程も観察 できることも期待できる. こ れ ま で , 網 膜 地 図 の 推 定 に は Grating法[5][6] [7] [8][9][10]と MovingBar法 [10] [11] [12][13][14] [15]の二種類が用いられている.Gl'ating法では視野を6-24箇所に分 割しその一つの領域に様々な方向に移動する縞模傑の視覚刺激(Gratingパターン刺激)を 提示する.刺激タイミングで同期平均を行い,同期平均波形から各視覚刺激提示箇所別の反 応の大きさを求める.最も強い反応を誘発した刺激箇所と皮質の場所との対応付けを行う ことによって網膜地図を推定を行う. 従来の Grating法による網膜地図推定では視覚刺激に対する応答の SN比を向上させる ために同期平均法が適用されてきた.同月

l

平均は刺激条件が一定であることを前提とする ため,実験中の眼位が変動しないよう麻酔の使用や注視させる訓練が必須である.これらは マウスにとって負担になる.また,麻酔は脳の反応を低下させるため,信号対雑音比をよく するためには長い実験時間が必要になる.一方,党醒状態には眼球運動が生じるため, 刺激 条件が変動してしまうため,同期│平均法の前提条件を満たすのが蒋易ではない.結果的に, 効率が悪く精度が低いことが問題となる.また,網膜像が様々に変化する条件で網膜地図を 推定する手法は報告されいない. 本研究では,眼球運動による網膜像の変化に対して頑健な網膜地図推定アルゴリズムを 確立することを目的とする.さらに,このアルゴリズムを党醒状態のマウスの視覚刺激実験 中のイメージングデータに適用し,網膜地図を推定することによって,木アルゴリズムの有 用↑生を評イl町τ「る.

(7)

1

.

2 本論文の構成

本論文は全6章より構成される. 第 1章では,本研究の概要と本論文の構成について述べる. 第 2章では,本研究の背景について述べる.まず,従来の視覚能力評価手法について述 べ,網膜地図を用いた評価手法の必要性について述べる.次に,従来の網膜地図推定手法に ついて述べ,その問題点を示す. 第 3章では,実験方法と解析方法について述べる.まず,実験に使用した動物と手術方法 について述べる.次に,視覚刺激と視覚野の反応の計調JI方法について述べる.最後に,マウ スの眼位の計担IJシステムとこのシステムを用いて実験中の限位の推定方法について述べる. 第 4 章では,まず提案する網膜地図推 定アルゴ‘リズムについて述べる.次に本研究でノ イズ除去に使用するGlobalSignalRegression(GSR)法について述べる. 第5章では,提案したアノレゴ、リズムを用いて網膜地図を推定した結果を述べる.まず,同 期

l

平均法の代わりに採用したGSR法により単一試行の信号対雑音比が改善されることを示 す.次に提案アルゴ‘リズムで推定した感度分布パラメータの空間分布について述べる この 結果を用し、て推定した網膜地図について説明する.最後に,眼(立を用いた網膜像補正の効果 について検討・する. 第6章は結論であり,本論文を総括する.

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2

章 網 膜 地 図 推 定 法 と そ の 問 題 点

2

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1

はじめに

現在,全盲の患者は世界に

3

9

0

0

万人と推計されており,この数は年々噌加傾向にある [16] .失われた視力を回復するために,人工網膜[1]やiPS細胞[2,] 光遺伝学[3]などの棟々 な先端的視覚再建技術の研究・開発が行われている.これらの技術の評価には動物を用いた 評価実験を行う必要がある.とくにマウスとラットは遺伝子導入が容易であり,侵襲的な実 験も可能であるため,視党再建技術の評価実験によく用いられている.これらの動物はヒ ト のような視力検査を行うことができないため, 生理学的計測によって評価する手法が必要 になる.

2

.

2

動物の視覚能力の評価手法

2.2.1既存の評価手法とその問題点 視覚再建治療を施した動物の視覚能力の評価方法には主に三つの方法が用いられている. 第一の方法は視覚誘発電位[3]である.健常な視覚系を持つ動物で、は, 視覚刺激を与える と大脳皮質視覚野に誘発電位が生じる.これを用いて視覚能力を評価する. 第二の方法は視覚運動反応[3][4]である.健常なマウスやラットに移動する縞模様を見せ ると,その縞模様を追跡するように首を振る運動が見られる.この性質ーを利用して視覚能力 を評価する. 第三の方法はシャ トノレ・アボイダンス法[2]である.床に電流を流せるようにしたケージ を2部屋に区切り,その問をマウスが行き来できるようにする.ライトが光って 5秒以内 に│持の部屋に移らないと床から電気刺激が与えられるようにしておく.この試行を繰り返 すと,健常なマウスはライトが点灯すると電気刺激が与えられる前に│鉾に逃げる行動を学 習する.この時計測される回避率や学習までに要する時間などのパラメータを用いて視覚 能力を評佃lすることができる. これらの評価手法は,動物の目が見えているかどうかの評価はできるが,視野がどの程度 回復したか,また,どれくらい細かいものが見えているかについて定量的に評価をするのは 容易でない視党再建治療をヒトに適用するためには,回復する視野範囲や解像度について 動物実験で、評価することは重要であるが,動物に学習を強いる方法では評価が困難で、ある. という問題がある.そのために3 視党能力の新しい評価手法を開発する必要があると考えら れた. 2.2.2網膜地図を用いた視覚能力の評価法の提案 大脳皮質一次視党野のニューロン動物の網膜にスポット状の刺激を与えたとき,網膜上 の刺激位置と大脳皮質一次視覚野の問には平面的な対応関係が存在し,この関係をレチノ

(9)

トピーと呼ぶ.これを可視化したものが網膜地図(レチノトピックマップ)である.マウス の右眼視野に対応する左脳一次視覚野において推定された脳網膜地図を図 1に示す. q a ﹄ U 戸 l v

5

0

-a u ζ d A 崎 司 J 司 4 4 ., 図 1 先行研究で報告されたマウスの網膜地図[6].マウスの視野を区分けした並びが上下 反転して一次視覚野に表現されている. マウスの視野の平面的な並びが,左右の並びはそのまま,上下反転して大脳皮質一次視覚野 上に表現されている.この網膜地図を推定することにより,動物の目が上下左右どの範囲ま で見えているかを定宜的に評価することが可能になる.またこの網膜地図は個体差が小さ く,個体問で平均化できることも報告されている[6].マウスの網膜地図を推定する研究を まとめたものを表 1に示す. 網膜地図はその性質上,網膜や大脳皮質ーまでの伝導路が損傷を受けるとその影響を受け て変化すると考えられる.そのため, 例えば視覚再建の処置を行ったマウスの網膜地図を解 析することによって,網膜のどの範囲の視力が再建されたか,またそれが日々どのように変 化していくのかなどについて詳しく調べることが可能になる[17].このような知見は実験動 物を用いた視覚再建技術開発の研ー究において非常に有用であると考えられる.

(10)

ト 表 1 網膜地図作成に関する先行研究一覧 著者(年) マップの 種 類 イメージング方法 ( i皮長) 計測状態 Schuettet al. IOS ケタミン+ (2002) [6) 2次元 (707nm) ウレタン麻酔 一 - 一 一 一 一 Kalatsky et al. IOS ウレタン麻酔もしくは 1 (7く元 (2003)[11) (610土10nm) ペン トパルビターノレ麻酔 Hofer et al. IOS (2006) [7) 2次元 (707nm) ハロタン麻酔 Satoet al. IOS (2008)[12) 1次元 (61Onm) ネンブタール麻酔 Keck etal. IOS (2008)[9) 2次元 (707nm) ハロタン麻酔 Polack et al. 1次 元 & VSD イソフルラン麻酔 (2012)[10) 2次元 Pisauroet al. IOS 党醒,および (2013)[13) 1次元 (530nm) イソフノレラン麻酔 カノレシウム Zhuang et al. 1次元 イメージング 党醒 (2017)[14) (GCaMP6) J uavinettet al. IOS (2017)[18] 1次元 (600士5nm) イソフノレラン麻酔 Okuhata etal. IOS (2018) [5] 2次元 (530 nm) 党醒 018, opticalintl'insicsignalimaging (内因性光信号イメージング) V8D, voltage-sensitivedye (電位感受性色素) 慢性/ 急性 急性 急性 慢性 :急性 慢性 慢性 慢性 急性 (実験後 解剖J) 慢性 慢性 網 膜 地 図 は 2次 元 的 広 が り を 持 つ 網 膜 と 大 脳 皮 質 の 対 応 関 係 を 示 す も の で あ り , MovingBar刺激を用いて推定される 1次元網膜地図と Grating刺激を用いて推定される 2 次元網膜地図の二種類がある.2次元網膜地図は図 1に示したような網膜地図であり,上 下左右の視野範囲を評価できる.1次元網膜地図の例を図 2~こ示すが p これは水平もしく は垂直方向のみを評価するものである.視野を完全に評価するためには 2次元的な構造を 評価することが望ましい.しかし, 2次元地図の推定には l次元地図より長い計百IIJ時間が必 要とされるため,目的によっては 1次元地図を採用する研究も多い.

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2 先行研究[14]で報告されたマウスの 1次元網膜地区

I

(左 :垂直方向,右 :水平方 │古J). これまで,

2

次元網膜地図の推定を行ったすべての先行研究において麻酔が使用されてい る.最もよく使用されてきたのはウレタン麻酔であるが,この麻酔は実験後に動物を回復さ せることが原則禁止されている.そのため, 脳の可塑性を調べるために必要となる,同一の 動物で、の繰り返し計測ができない.また,最近ではウレタンの皮膚がんのリスクが問題視さ れ,多くの研究機関で利用できなくなっている.次いで良く利用されてきたハロタン麻酔は, 実験後に動物を回復させることができるが,心臓血管系への抑制作用や肝障害などの副作 用が問題視され,実験胞設によっては使用が禁止されている.そのほか麻酔についても,臨 孔の拡大などの副作用がある.最近では, 麻酔下の動物は単に意識を失っているだけではな く,脳の反応も無麻酔・覚醒状態とは異なっていることが示されていることから[13,] でき るだけ,無麻酔・覚醒状態で記録することが望ましい. 無麻酔・党醒状態は実環境に近いだけでなく,視覚刺激に対する血液量信号の変化が麻酔 下に比べて大きく,より正確に網膜地図を推定できるという報告もある[13]. また無麻酔・ 党 醒状 態なら,たとえば移動する縞模慌を目で追跡する視運動性反 応 (Optokinetic Response, OKR)なども生じるため,このような反応を利用した視覚能力の 評価方法も平行して実施することが可能になるというメ リッ卜もある.

2

.

3

従来の網膜地図推定手法と問題点

2.3.1 Grating法による網膜地図推定手順 Grating法による網膜地図推定手順の概略図を図3に示す[5].まず,マウスの視 野を 6~24 に分割する(図 3A). そのうちの 1 つの領域をランダムに選び, グレーテインク、、パター

(12)

ンを提示する.各視党刺激ごとに刺激タイミングで同期平均を行う.図 3Bの波形は図 3Ab に占める関心領域(ROI)における同期平均波形である.子の波形から各視覚刺激提示箇所別 の反応の大きさを求める.このROIでは 84に強し、応答性を有していることがわかる.最 も強し、反応を誘発した刺激箇所と皮質の場所との対応付-けを行うことによって図 3C 網膜 地図が推定される.

30

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-、 . ︽ υ 、 . 凋 ゆ , 。 ( 4 、 r δ ぽ ︾ 一 司 > 4 lime(s) 図3従来法による網膜地図推定手順.(A)視覚刺激提示領域(a)と視覚野上のROIの位 置.(B) ROIにおける同期平均波形.(C)実際に推定された網膜地図

2

.

3

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2

従来の網膜地図推定法の問題点 Gl'ating法は麻酔下の動物[6][8][ll] [10] [14]や、学習により固視ができる動物を対象に開 発されたもので、実験中、 11艮球運動が生じないことを前提としている.眼球が動くと同じ視 覚刺激でも網膜の刺激される位置が変化するので、同月!平均の前提条件が満たされなくな

(13)

るためである.麻酔の使用や学習による圃視はマウスにとって負担になる.また,麻酔の使 用は脳の活動レベルが低下するという報告がある.覚醒状態のマウスを用いて推定される 網膜地図は眼球運動が生じるため同期平均法で推定を行うには効率が悪く精度が低いとい う問題がある.網膜像が変化する条件下で網膜地図を推定する手法はまだ報告されていな し¥ 簡便に視覚再建段階の評価をするためには,覚醒状態で眼位変動がある条件でも推定で きる網膜地図推定アルゴ.リズムが必要で、ある.

2

.4本研究の目的

以上より,本研究の目的を次のように設定する.まず,眼位変動に対し頑健で、高い空間分 解能を持つ網膜地図推定法を開発する.次に,無麻酔・覚醒状態のマウスを用いて視覚刺激 実験を行う.このとき得られたデータを提案法と従来法に適用し,推定された網膜地図を比 較することにより提案法の有用性を評価する.

(14)

3

章視覚野の活動とマウス眼球運動の計測方法

3

.

1

実験動

と手

本研究は東北大学動物実験専門委員会の承認のもとで行われた.実験には C57BL/6マウ ス (7・8週齢,オス)3匹を用いた.イソフルラン麻酔下で,マウスの頭皮を除去して頭蓋 骨を蕗'出させ,穿孔し,脳波記録用ステンレスビス電極を設置した.さらにその上に頭部を 無痛的に固定するための頭部固定プレートを接着した.頭部には筋電位記録用ステンレス ワイヤを設置した. 実験装置の概111各図を図4に示す.手術から回復した後 (1週間程度)、マウスの頭部アク リノレプレートを専用金具で固定し無麻酔の状態で実験ステージ上に保持し,冷却 CCD (ORCA-R2、浜松ホトニクス)を設置した落射顕微鏡(特注、エヌアンドエヌ,対物レン ズ XLFluor4x/340,NA=O.28、オリンパス)下に配置した.奥州│によって開発された網膜地 図推定システムを用いて視覚刺激実験を行った.実験中の眼位を計測するために,赤外光棟、 とCMOSカメラ, レンズを用いて実験中の瞳孔画像を撮像した.網膜地図推定実験は無麻 酔で行い, 11音期開始よりおよそ 1時間程度実施した.マウスによっては実験システムに慣 れるまで時間がかかることが考えられるため, 3日関連続して同じ実験を行った.データの 解析・可視化には

MATLAB

(

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)

を用し、た. 反射光を CCD

で収録

図4本実験の概略図

(15)

3

.

2

視覚刺激の方法(奥畑,

2018

,修士論文

[

1

7

]

)

本研究では,市販されている 27インチの液品ディスプレイを用いて視覚刺激を提示した 視覚刺激の範囲はマウスの左視野の水平方向 (azimuth

D

w

)

を00 (正面)"'1120,垂直方 向 (elevationψ) を -350"'+450とした.画面をマウスの眼の高さ (00 ) で上下に分割し、 さらに水平方向 (37.3094.60 ) で3分割│した[5].視覚刺激デ、イスプレイの空間的な配置を図 5に示す.この6領域 (81.86)の1つをランダムに選択して 0.6秒ごとにランダムに角度 が変わるグレーティングPパターン (10種類の方向)を表示することを 16回繰り返した [5] [6].1つの領域の刺激後8秒間の無刺激期間をはさんだ. 上記の刺激パターンはMATLABおよびPsychtoolbox[19][20] [21]を用いて作成した.実 際に視覚刺激として使用した視覚刺激の例を図6に示す

30

0

20

0

Q

I

5 視覚刺激の空間的配置(奥畑, 2018 ,修士論文から引用) 図 6Grating刺激の例

(16)

3

.

3

内因性光信号イメージング

(

I

O

S

I

)

3.3.1内因性光信号イメージング法の原理 網膜地図の構造を推定するためには,大脳皮質の時空間的活動を記録する必要がある.そ のために,電位(局所脳波)や磁場,光など,さまざまな信号計測法があるが,本研究では, 繰色散乱光(波長約 530nm)を用いた脳血液量イメージング法を用いることにした[22][23] 脳血液量イメージング法は神経血管カップリング現象を利用した脳活動の画像化法で,そ の原理は次のようなものである[24].神経活動が活発化すると,ネIj1経細胞内 Ca2+濃度が増 加し,それに伴い, ニューロンやグリアからJfll管拡張因子が放出される.これにより血管平 滑筋や血管内皮が弛緩し,周囲の局所脳血液量が増加する 血中ヘモグロビンは緑色光を強 く吸収するため, 一定強度の緑色光を大脳皮質に照射し,散乱光を 2次元的に観察するこ とにより局所血液量の時空間動態を計測することができる.これにより神経の時空間動態 を推定するというものである.神経活動に伴って代 謝が活発化し,血中ヘモグロビンが脱酸 素化される.ヘモグロビンには, 1吸光率の波長依存性が異なる酸素化型と脱酸素化型がある ため,散乱光強度の変化はヘモグロビンの総♀(=酸化型+還元型)と酸化・還元反応の変 化が混合したものになり,その解釈は複雑になる[25][26]. しかし,酸素化型および脱酸素 化型ヘモグロビンの等吸収波長[23]で、散乱光強度を測った場合は,神経血管カップリング由 来の変動を直接的に反映する局所血液量(すなわち,ヘモグロビンの総量)の変動を選択的 に計測できる[22][23]. この方法により,神経活動の二次的な反応としての脳血液量の変化を,イメージデータの 輝度値として収録することができる.この方法は,マウスなど頭蓋骨が却し、動物であれば経 頭蓋的に計調IJができるため比較的低侵襲であり,長期計測に適している.また,先行研究に より,脳血液量イメージング法により網膜地図を推定できることが報告されており[13,] 実 績のある方法である. 3.3.2計測手法 本研究では, "音室の中で,マウス大脳皮質の縁色反射光を搬影した.撮影には3 落射蛍光 顕微鏡(笹体,カスタム品,エヌアンドエヌ,対物レンズ XLFLUOR4X/340,NA=0.28, オリンパス),バンドパスフィノレタ (BPF525土5nm),および冷却CCDカメラ (ORCA-R2, 浜松ホ卜ニクス),画像収録用 PC(Precision workstation, Dell)を用し、た.視覚刺激が光 学系に干渉することを防ぐため,頭部プレートと対物レンズ聞を積う遮光ユニットを取り 付ーけた.およそ 5.5x 4.5m mの視野を空間分解能 168x 128画素,量子化 16bit,フレー ム間隔74.9msでイメージングした.1巨│の実験(約23分間)で28,500枚の画像を得た. 撮影用ソフトウェアとして HClmage(浜松ホトニクス)を用いた.酸素化/脱酸素化ヘモ グロビンの等吸収波長の縁色散乱光を観察するために,照明光として LED光 源( Mic-LED-530,中心波長 530nm, Prizmatix.バンドパスフィルタ,通過波長 525nm:I:10 nm, )を

(17)

用いた.イメージングの観察領域をマウスの脳アトラス[27]上に黒線で‘囲ったものを図 7に 示す.なお, 解析に用いる│傑,収録画像を8pixelX 8pixelビ、ニングし解像度を 32pixelX 42pixelに落とした.この各pixelを1個の ROI(約 135μmX 135μm)に設定した. データの解析と可視化にはMATLAB(Mathworks)を利用した. . . )t'01tl " ~ 図 7脳アトラス上に乗せた本実験で、のイメージングの観察領域

3

.4眼位の計測法

Grating刺激時の網膜像を推定するために,イメージングと同時に眼位・│瞳孔計iWJを行っ た.本研究で使用した眼位・│瞳孔計測システムは先行研究[28]を参考に奥畑によって開発さ れたものである.眼位計測には CMOSカメラ (GS3-U3-51S5M-C,FLIR)およびレンズ

(G005, T品 1RON,焦点距離60mm)を用いた撮影ソフトウェアはFlycapture2(FLIR) を用いた.カメラをマウス左目の上部に固定し,眼球が回像1:1コ心付近になるよう位置および

角度を調整した.撮影領域は 160x 160ピクセルとし,フレームレートは50fpsとした. オフライン解析のため,視覚刺激用PCから視覚刺激タイミング信号をUSB-シリアル通信

(18)

図 8 眼位・

l

瞳孔計測システムを導入した実験系 視覚刺激用 ディスプレイ イメージング 用 PC ADコンバータ 用PC 眼位・瞳孔 計測用PC 図 9 視覚刺激実験装置のブロックIjgl(奥畑,2018修士論文[17]から引用)

接続されたArduino経由でCMOSのGPIO外部入力端子に'ITLパルスとして入力し,視

覚刺激タイミングを撮像データの左上ピクセノレに埋め込んだ.網膜地図推定システムおよ び眼位・瞳孔計測システムの写真を図8に示す.また,眼位・│睦孔計調IJシステムを組み込ん

だ実験システムのブロック図を区

1

9

に示す.

CMOSカメラで撮影された眼球のイメージから視線位置を推定するためには,眼球のイ

(19)

レーションは模擬眼球およびレーザーポインタを用いて行った.はじめに,視覚刺激用ディ スプレイの9箇所に 5cm間隔で較正点を表示させた.次に水平方向・ 垂直方向に回転する ステージにレーザーポインタを取り付-け,1[泣正点をポイントし,その時の角度を記録した. その後,レーザーポインタを模擬眼球に取り替え,記録した角度に設定した模擬眼球をカメ ラで撮影した. J最影した模擬眼球の画像をについて,手動で、コン トラス トを調整し,r瞳孔音1)分が明確にな るように調整したのちエッジ検出で!睦孔を抽出した.各

u

童孔の楕円パラメータ(中心座 標 (Xi/Yi),長ilqlJ・短車Ibの長さ(LilS) ,楕円の傾きp

)

をMATLABのlsqcurvefitを用いた楕円 近似アルゴリ ズムを用いて求めた.次に楕円の短軸の延長線を求め,その交点を最小二乗法 により計算し模

J

疑眼球の回転中心座標 (XOI九)を計算した.導出した計算式を次に示す.なお Nはキャリプレーションに使用した画像の枚数,αilbiはi(εN)番目の模擬眼球画像の短ililhの 延長線を表す式Y=αiX

+

biの各ノ4ラメータである.

(

~:

)

=

(

主己

-

2

2

1

-

2

2

7

)

i

次に, 巨lïl~中心座標と各椅円パラメータを用いてそれぞ、れの回転半径riを以下の式から求 めた. ri= (Xi -Xo)2

+

(Yi

一九

)2

1

-

(

)

2

riの平均値を模擬眼球の回転半径 Rとおいた.

n

童孔中心座標および回転中心座 標,回転半径を用いてカメラ座標系における視線ベク トルごを以下の式で算出した

/ 円 , /

(Xi -XO) / R ¥

I

~x! ¥ I (Yi

)

/

R

1

C

=

1

C

1

=

1

'

"

"

- V/,

-1

a

1

4

;

/

1

J

R2ー (Xi-Xo)2 ー (Yi一九)~

)

¥ R / (2) (3) 最 後 に,キヤ リプ レ ー シ ヨ ン 時 に 記 録 し た 物体座 標 系 に お け る 視 線 ベ ク トル究= (九ilTyil九i)と,カメラ座標系における視線ベクトル

ξ

を用いて次式から変換行夢

1

1

M

を計算 した[28].

M

=

C;i

ι

ω

i

ι

C

'yi

y

!

ω

CxiTxi

I

c

xi Tyi

I

c

xi Tzi

I

CyiTxi

I

Cy

ん エ ら

Cz

Cz訂iT

.y戸i

ι

(4)

(20)

マウスの!瞳孔画像をキャリプレーションする際には,まず,模慌眼球の場合と同様の手順 でカメラ座標系における視線ベク トノレ

C

を計算した.ただし, I'iおよびRの計算方法には若 干の修正を加えた.これは,I瞳孔中心座標と回転中心座標との距離(=d)が小さい場合は 1'iの推定誤差が大きくなるという問題があるためである.そこで,dが平均+標準偏差を超 えたデータのみを取り出して求めた平均値をRとおいた.視線ベクトノレ

E

を計算後,変換行 列Mをかけることで物体座標系における視線ベクトノレ

5

を計算した.この

5

はcm単位であ るため,図10に示す座標系に単位を degreeとして変換した.角度はAzimuth(水平方向上 Elevation(垂直方向)で表現し,ともにマウスの正面を0。とした.

a

z

i

m

u

t

h

(

8

d

o

r

s

a

l

図 10 視線ベクトノレの座標期lJの定義

(21)

4

章網膜地図の推定アルゴリズム

4

.

1 感度分布関数に基づく網膜地図の推定法

c

o

r

t

e

x

B

c

(

γ

)

r

e

c

e

p

t

i

v

e

f

i

e

l

d

Xα(γ)

r

e

t

i

n

a

図 11 網 膜・一次視覚野系の単純化モデ‘ル

s

t

i

m

u

l

u

s

試行番号αの視覚刺激を提示したときの網膜から視覚野までの投射経路は図 11のように なる.大脳皮質の座標 cで測定される応答の推定値

Y

c

;

(c)が次式でモデル化できると仮定す る.

お〔の

=jRJ(

似 γ (5) ここで、 r=(θ,ψ)は網膜座標、 九(r)は 網 膜 像 ({立置rの輝度)、 Retiηαは網膜の領域、 dSは 網膜上の微小領域の面積である.座標系は図 10に示したものと同一である.本稿では、網膜 座標系を眼底と接する平面上の直交座標系で近似したこれにより計算は簡便になるが、 眼 底中心から離れるほど歪が大きくなり、誤差が噌えるという問題がある.Xα(r)は物体の形 状 と眼位から計算される.9c(r)は網膜像が皮質の活動に及ぼす範囲と強度を表す.これは直接 的な投射だけでなく皮質内の側方結合の影響も含む以下ではこれを感度分布関数と呼ぶ. ここで、は9c(r)としてガウス関数を仮定する. 9c(r)

=

花王

σ

叫(ーヒ与

!

:

i

.c---r ¥ 乙

σ

"

/

}

Ac、σcおよび μc= (ec'ψc)はパラメータである. 実験データyα(c)からパラメータを推定するには、次式で定義される誤差関数. (6)

(22)

M 仇 叫,Ilc)

三エ(以

c)一克(c))2 (7) α=1 を用い、制約付き非線形最小化問題を数値的に解く . 目的関数 f(Aoσc,μc)→m m 制約条件 Ac>0,σc

>

0,μcε Retinα ここに、Mは総試行回数である.感度分布関数の中心んを皮質上に配置することにより網膜 地図を推定する .μcの推定誤差を抑圧するため、ガウスフィノレターを適用してスムージング を行う.

4

.

2 G

l

o

ba

l

S

i

gna

l

の除去

感度分布関数を用いた網膜地図の推定では単一試行のデータからyα(c)を求めることが 必要であるため, 同期平均を用いたノイズ除去を行うことができない.そこで,同期平均に 代わるノイズ除去法として G8R(Global8ignal Regression)法[29]を採用した. flv1RIや108の信号にはglobalsignal (G8)と呼ばれる空間的に同期した低周波成分が含 まれている[12].G8は心拍ゆらぎ"[12]やH童孔変耳目JI[11]等と強し沖目関を有する.G8は脳の広い 領域で記録した 108から推定することができる脳の機能的結合の研究では、局所 108か らG8を除去する操作が広く採用されており、 G8R(G8 removalまたは regression) と 呼ばれている.これにより、同期平均を用し、ずに8N比の改善が期待できる。

(23)

5

章開発した網膜地図推定アルゴリズムの評価

5

.

1 G

l

o

b

a

l

S

i

g

n

a

l除去の効果

108

時系列から Gl

o

b

a

l

s

i

g

n

a

l

(

G

8

)

成分を除くことによるノイズ抑圧の効果を調べるた めに、視覚刺激に対する応答波形の処理結果を比較したその一例を函

1

2

に示す.従来法を 用いた場合、同期平均波形(黒い曲線)をみると、刺激開始後約2秒で最小値をとり、その 後、元のレベルに回復する様子が観察された.しかし、単一試行の応答波形(灰色の曲線) はゆらぎが大きく、応答を読み取ることは難しかった.一方、提案法

(

G8

除去)を用いた場 合、ゆらぎは残存しているものの、同期平均波形(従来法)と相似な反応が単一試行応答か ら読み取れる程度にノイズが抑圧されていることが確認できた.なお、本実験は覚醒状態で 行ったため自発的な眼球運動が生じている.視覚応答は眼位に依存するため、

G8

を除去し た応答にはI:f良位変動の影響が含まれていることに注意する必要がある. 6s A B

68

1

2

ある

R01

における視覚刺激

8

3

に対する

108

変化の波形.

(

A

)

従来法.赤し、曲 線は同期平均波形.(B)提案法

(

G

8

除去).横車111は時間,縦1MIは

R01

の応答を表す. 図 中 の 横 棒 は刺激期間を示す.視覚刺激と

R01

の 位 置 は 図

1

3

に示す.

5

.

2

感度分布パラメ

タの推定結果

G

8

除去を行った(同期平均処理を行っていない)I

08

応答と眼位補正された網膜像の「対」 からなるデータセット (M= 96)を用い、提案法で推定したマウス

1

'

"

"

'

-

'

3

の感度分布モデ、ノレ のパラメータ値の分布を図

1

3

'

"

"

'

-

'

1

5

に示す.なお, (6)式で示した反応の大きさは刺激開始ご

2

秒後から 6秒後までの平均値とした.図

1

2

の波形を取得した

R01

の{立置は図

1

3

A-D

中 の赤い

X

マークで示した.

(24)

パラメータσcのヒストグラム(図 13E)を作成したところ、 σc壬1300の範囲にデータが 集払ずしていた.σcは受容のサイズを表し、小さいほど空間選択性が高いことを意味するσ.cの 推定値が1300より大きい場合は非線形最小二乗法ルーチン

(

l

s

q

n

o

n

l

i

n

MATLAB)

に設定 したパラメータ探索範囲の上限値をとり、収束性に問題があった.一方、小さすぎる場合は ノイズに過剰に適合した可能性が考えられた.また、マウス 1と 2のいずれにおいても、 10

<

σc1300 (以下、 σc条件)を満たす領域が観察領域の中央に集していた(図 13B中 央の青い領域).さらに、マウスの脳アトラス[27]を参照すると、一次視党野と二次視覚野は、 Bregma より後方 3.5・m m、正中線より外側 2・m mあたりに中心をもっ半径 1-mmの程度 の円で覆われる範囲に分布することが分かつた.図 13Bと見比べると、 σc条件を満たす領域 はこの範囲とほぼ一致していた.以上のことから、非線形最小二乗法ルーチンの収束性に問 題がなく, 10<σc:::;1300を満たす領域は視覚野としての性質を持つと考え、これを抽出 るアンマスクを生成して網膜地図の推定に使用した. 感度分布中心の仰角(図 13D)に注目すると、赤い Xマークの近傍で、極小値(暗い青) をとり、そこから離れるに従い角度が大きくなる傾向が見られた.方位角(図 13C)の場合 は、極小値が赤い Xマークの近傍以外に、 !大j側部(正中線の横)にー箇所存在した. 赤い

X

マークで示した

ROI

について推定された網膜の感度分布を図

3

F

に示す.感度分布 はパラメータ μc

=

(Doψc)を中心(黒いXマーク)におく半径 σcの円で表現した.感度分 布の中心が刺激83の領域内にあることから、この領岐からの投射が最も強く、周辺の 82、 85および86からそれに次ぐ影響を受けていると推定されたことが分かる. 上記と同様の分布はマウス 2,3でも確認できた.

(25)

(

A

)

Ac

(8)σc

1

0

8

L

J

7

1

2

A

J

J

2

f

:

I

j

1

2

0

-

-

1

0

0

6

4

2

(

c

)

6c

(

0

)

c

1

0

0

a

R

5

0

50

~ ~ uD v-・"~I 司 I

10

o

r,.;亘工,~固'‘?周回 圃・ -50

(E)σc

(

F

)

100 1 10 1∞ n u n u n u n u n U 凋 斗 内 ζ 内 L n u 寸

CO

一 % ﹀

ω一ω

80

ω

m

州 日 F C o u

100

50

0

-50

f

-a

z

i

m

u

t

h

図 13(A)マウス 1の感度分布パラメータの推定結果.(A-D)各パラメータ値のカラーマ ップ,赤いXは図 12における ROIの位置を示す.(E)σcのヒストグラム.視覚野抽出用 の閥値を矢印で示した. (F)視覚刺激 81-86が活性化する網膜 上 の 領 域。眼位 を (αz, ev) = (56000 )に設定した。ROIの受容野を中心X,半径σの円で表した。

(26)

(

A

c

(

B

)

σ

c

I ~・ J

140 10 120 8 100 6 80 60 4 40 2 a 20

(

C

)

8

c

(

D

)

伊c

120 60 100 40 80 20 60

40 -20 20 -40

-60

(E)σ

c

100 80

1

20

m

I

l

l

-v

唱 E A 60 40 0

1

0

-

1 100 101 102 │送114(A)マウス 3の感度分布パラメータの推定結果.(A-D)各パラメータ値のカラー マップ (E)σcのヒストグラム.視党野抽出用の│調値を矢印で示した.

(27)

(A)A

c

(8)σc

10 140 120 8 100 6 80 4 60 40 2 20

(

C

)

(

J

c

(0)ψc

60 120 40 100 20 80

60 -20 40 -40 20 -60

(E)σc

100 80

1

130

60 40 20

100 101 102 図 15(A)マウス 3の感度分布パラメータの推定結果.(A-D)各パラメータ値のカラー マップ (E)σcのヒストグラム.視覚野

+

r

l

l

出用の隊

i

値を矢印で示した.

(28)

5

.

3 網膜地図の推定結果

5.3.1 提案法で推定された網膜地図 提案法により推定された方位角

(

8

c)および仰角 (ψc>の分布をスムージングして得られ た一次元網膜地図を図 17Aと17B(マウス 1)、図 18Aと18B(マウス 2),および図 19A と19B(マウス 3) に示す.いずれのマウスにおいても、方位角 (図 17A,18A, 19A)につい ては、 抽出された領域の中央付近にピーク値(左側後方約

1

2

0

度、白い点線)をとり、内外 側方向に選好角度が減少する折り返し構造がみられた.仰角については(図 17B,18B, 19B)、 吻側・ 尾側方向に展開していた.この構造は従来研究の結果と一致している. .5.3.2推定された網膜地図と従来法との比較 方位角と仰角を統合して推定した二次元網膜地│珂を阿 17C(マウス 1),

I

到18C(マウス 2) ,および図 19C (マウス 3) に示す.この網膜地図のカラーマップは図 17のものを使用 し た ま た 、 従 来 法[8]による推定結果を図 17D,図 18D,および図 19Dに示す 従来法で は、マウス 1の場合83領域は欠損し、 85領域は前後に分裂していた.マウス 2の場合、 84 および 85領域が欠損していた.マウス3の場合では, 85領域が極端に小さくなっていた. このように、 推定された網膜地図は、提案法の結果や麻酔下で測定された従来の報告と大き く異なっていた.また、 従来法では網膜地図の空間分解能が刺激画面の分割数(6分割)に制 限されている.一方、提案法では選好方位が連続的変化しており、網膜地図の空間分解能が 向上していることが確認できる.

<J.) 40 弘

2

0

<J.) "0

g o

.... . . . . , r o

2

0

同 -40 90 60 30

Azimuth (

d

e

g

l'

e

e

)

図 16提案法の網膜地図における網膜上の位置のカラーマップ表示.

(29)

(

A

)

(

}

c

巴 旬 。 ﹄ → ← 〆-

、 SO SA 51J cl) Fぢ 60 、ー〆 J

.

.

.

3

・F・4 N 20

<

r

:

m

e

d

i

a

l

十 今

l

a

t

e

r

a

l

120 100 ﹄ O -﹄ω 制 的

o a

(

C

)

(B)ψc

60 ,,-.、 40 cl) 0

U

2

0

4

3

J 回 。

Z ω

﹀ φ ︻ 同 -40

(

D

)

図 17マウス 1で推定された網膜地図の比t鮫.(A, B)方位角と仰角の等'{11r線プロット.

(

C

)

二次元網膜地図.

(

D

)

従来法.

(30)

(

A

)

D

c

m

e

d

i

a

l

l

a

t

e

r

a

l

(

C

)

120 1∞ ".-、 ω

80

5

b

Fコて 60 、_ ;

-+-"

40

S

F吋 N 20 吋

(B)ψc

(

D

)

,園、、

20

U

Fコて 、、・./ 口

.炉吋 -20 -+-" C百 〉 Q.) F・4 同 図

1

8

マウス

2

で推定された網膜地図の比較.(A,

B

)

方 位角と仰角の等高線フ。ロッ ト.

(

C

)

三次元網膜地図.

(

D

)

従 来 法.

(31)

(

A

)

(

)

c

(

B

)

ψ

c

r

n

e

d

i

a

¥

¥

a

t

er

a

¥

120

1凹 匝幽圃60 40' -r&』もq

, 』d 円 F 哩

7

〆'ー、、

F

80

与4 b.O Q.) 6日 甘

ω 20

5

1

l

Fて3 g 、、.〆 l'

-

l

t

、-〆 し「 -ーーコ

-ロ

口 -20-+F」4 ro

I

f

u

l

]

〉 -40 ~ 国

(

C

)

(

D

)

図 19マウス 3で推定された網膜地図の比較.(A, B)方位角と仰角の等高線プロッ ト.

(

C

)

二次元網膜地図.

(

D

)

従来法. /

(32)

5.3.3眼位補正の効果 限位補正の効果を検討するために,マウス 1について眼位による網膜像の補正を行わず に推定した網膜地図を図 20に示す.なお,眼イ立は

(

e

w'ψw)= (56 deg, 0 deg)に固定されて いると仮定した.実験中に記録したマウス lの眼位分布を図 20(D)に示す.これより,実 際の限位は (50deg, 15 deg)を中心に左右 80deg,上下 50deg程度の範囲で、動いていた ことがわかる.推定された網膜地図を限位補正を行った網膜地図(医

I

17)と比較すると,柄造 自体には大きな変化は見られなかった.しかし,位置ずれや形状の歪みが観察された. 今後は,眼位補正の効果を示すために, 4~5 日連続で実験を行い, 実験1:::1間での眼位補正 ありの網膜地図と限位補正なしの網膜地図の比較を行っていきたい.

(33)

(

A

)

8

c

(

B

)

中c

(

c

)

(

0

)

frames 40

50

30 3司GJ 20 40

-

-

.

.

.

:

I I ~ 30

c;-10

I

・.

.

.

.

.

.

.

I lI .;;..d 20

-30 . :0

100 80 60 40 20

Azimuth(deg) 図20 限位による網膜像の補正を行わずに推定されたマウス 1の網膜地図.

C

A

, B)方位 角と仰角の等高線プロット. (C)二次元網膜地図.(D)実験中の眼位の分布.

(34)

5

.4考察

5.4.1推定された視覚野領域と脳アトラスとの比較 提案法を用いて推定された視覚野領域がどの程度妥当であるかを評価するためにブレグ マとラムダ聞の距離を 4.25mmになるようにスケーリングしたうえで、マウスの脳アトラ スを図 20に示す.マウス 1,..,_,.3ともに, 推定された領域は視覚野とその周辺領域を含むこ とがが確認された.視覚野上のは網膜上に有限の領域に対して高い感度を有するとされて いる.σc条件はこのことをが表しているため,視覚野周辺の領域の推定がされたと考えられ る. 5.4.2二次視覚野の構造 5.3.2で述べたように、函 17や図 18の網膜地図において,方位角方向の網膜地図におい て折り返して展開している領域が存在する.さらに,図のから,今回推定された領域には二 次視覚野の領域も含まれている.以上のことから,内側に位置する網膜地図は二次視覚野に 対応する可能性が高い.これまで高次視覚野の構造は、電気生理的手法[30]やカルシウム蛍 光タンパク質・を用いた外因性光信号イメージング法[14]による報告があるものの、内因性光 信号(IOS)イメージングでは明確に視覚化したものは見当たらない.三次視党野は一次視覚 野から直接的な情報伝達を受け,その情報を処理し,より高次視覚野に伝達しているといわ れている. 今後、これが本当に二次視覚野の構造を捉えたものであるかどうか、電極を用いた電気生 理学的手法などを用いて確認する必要があるだろう. 5.4.3今回使用した視覚刺激について 今回の提案法は,刺激中の網膜像と皮質

k

の反応から網膜地図の推定を行っている.木研 究ではschulettの方法[6]を参考して視野を6箇所に分割し,そのうちにの一つの領域に視 覚刺激を提示している.この視覚刺激提示方法では,眼{立が変化したとしてもマウスの網膜 像は刺激箇所ごとにほぼ一定なものになる.より精度の高し、網膜地図の推定を行うために は様々な網膜像が投影された時の反応が必要になると考えている.今後は刺激領域を小さ くしたり,ヒトのデコーデイングに用いられるような複雑なパターン[31]を提示するなどの 改良を行いたい.

(35)

. . ~ & ..

た 口 力 十 回

-

-

:

:

l

:

I

f

:

r

1

4

j

j

i

.

.

7 3 .. ~ マウス 1 マウス 2 " 3 2 1 0 1 2 3 マウス3 図21惟定された視覚野領j戒と脳アトラス[27]との比較

(36)

1~ 耳主 命士号ふ市回目岡 本研究は,眼位変動に対し頑健で高い空間分解能を持つ 網 膜地 図 推定法を開発すること を目的として行われた. 第 1章では,本研究の概要について述べた. 第2草では,従来 の 網 膜地図推定法とその問題点について説明した.まず,動物の視覚 能 力 を 定 量化 する実験的手 法開発 の必 要性について述べ,既 存 の 評価手法の問題 点 を 明 ら か にした.さらに,視覚能力の評価に利用可能と考えられる大脳皮質ー一次視覚 野の網膜地図の 推定法に関する先行研究をまとめた.次に, 網膜地図推定手法の一つである Grating法の 推定手法について述べ,この手法の問題点を整理した. 第3章では,視覚野の活動とマウス眼球 運動の計詰llJ方法について述べた.はじめに,網膜 地図推定実験に用 いる実験動物 と 手術方法について説明した.次に, 網 膜 地図推定実験に使 用した Gratingパターンの視覚刺激について説明した.さらに,木研究で脳活動の計調IJ手 法として用いる内因性光 信 号イメージング法について,その原理と計調IJ方法について述べ た.最後に,実験中のマウスの眼位の計摂IJ方法と模擬眼球とレーザーポインタを用 いたキャ リプレーションについて述べた. 第4章では,本研究で開発した網膜地図の推定アノレゴリズムの原理について述べた.ま ず , 視 覚刺激が提示されてから大脳皮質一次視覚野で反応が生じまで、の経路をモデ、ノレ化し た.このモデルにおいて, 視覚野上のある場所におけるの反応の大きさは,その場所が網 膜 上に持つ感度の分布と網膜像との積和で表せると仮定した.また,感 度 分布の広がりは二次 元ガウス関数状であると仮定した.モデル式から導出される反応の大きさと実際の反応の 二乗誤差が最小になるように感度分布関数の各ノそラメータの推定を行うことで,網膜地図 の推定を行った.次にこの手法を採 用す る 際 に 使用した同期平均に代わるノイズ除去法と して GSR法について述べた. 第

5

章では,開発した網 膜地図推定アルゴリズムの評価について述べた.最初に,

1

0S

11寺 系列から Globalsignal (GS)成分を除くことによるノイズ抑 圧の効果を調べるために、視 覚刺激に対する応答波形 の 処理結果を比較した.その結果, 単一試行波形についてGSR前 で は明確の応答が観察できないのに対して, GSR後の波形では応答が確認できるようにな った.次に,提案法を用いて各ピクセノレごとに感度分布関数の各パラメータを推定を行った. 推定されたパラメータを用し、ることで,視 覚 野 領域の抽出が行えた.その後,感謝j分布ノぞラ メータの分布から網膜地図の推定を行い, 従来法によって推定された網膜地図との比較を 行 っ た 提 案 法 で推定された網膜地図は先行研究とと同傑の構造を有しているの大して,従 来法の網膜 地図ではそのような構造が見られなかった. 以上で,木研究の目的である,眼球運動による網膜像の変化に対して頑健な網膜地図推定 アノレゴリズムの開発は完了した.今後は限位を用いた網膜像補正の効果を示していきたい. さらに,視覚 刺激の変更や推定アルゴリズムの見直しを行うことによって,より精度の高い

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網膜地図推定アルゴリズムの開発を行っていきたい.さらに今回提案したアノレゴリズムを 盲目マウスや視覚再建マウスに適用することにより視覚能力や視覚再建段階の評価を行い たいと考えている.本研究で開発した手法が,視党再建技術の発展に貢献することを期待し て本稿の結びとしたい

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園内学会等 [1] 外川龍之介,奥畑大悟, 吉田イ有冬,~I二l 尾光之,片山統裕,視覚再建技術評価のための脳 イメージングに基づくマウス視覚能力定量化法の開発p東北大学電気通 信 研 究 所 工学 研究会分科会 生体 ・生命工学研究会,2018/12/20,仙台,国17'],口頭 [2]大11商大輝,外川龍之介,和田みなみ,吉田{有冬,中尾光之,虫明元,片山統裕,視覚刺 激がマウスの歩行運動に及ぼす影響,電子情報通信学会技術報告, NC2018-16, pp.19 -22, 2018/10/19-20,仙台 [3]外川龍之介, 奥畑大悟,吉田{有冬,中尾光之,片山統裕,眼位・!瞳孔径変動を考慮した 内因性光信号イメージングに基づく覚醒時マウス脳網膜地図の推定,生体医工学シン ポジウム,名古屋,2018/9/14・15,口頭 [4]外川龍之介,奥畑大悟, 吉田{有冬,中尾光之,片山統裕,“眼球運動に対し頑健な新しい 網膜地図推定アノレゴ、リズム':視覚科学フォーラム 2018 第 22回 研 究 会 , 大 阪 , 2018/9/5・6,口頭 [5]外川龍之介,高橋優斗,奥畑大悟,片山統裕,虫明生,中尾光之

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(42)

謝辞

本研究は東北大学大学院情報科学研究科応用情報科学専攻バイオモデリング論分野にお いて行われたものである. 本研究を行うにあたり,終始適切な御指導,ご鞭j涯を賜りました当バイオモデリング論研 究室教授の中尾光之先生に深く感謝の意を表します. また本論文をまとめるにあたり,有意義なご討論及びご助言を頂きました同大学大学院 の塩入諭教授,川又政征教授に心からお礼申し上げます. バイオモデリング論研究室の片山統裕准教授には,本研究を進めるにあたり細部にわた り御指導,御助言をいただきました.また,本論文の構成および執筆に関して御指導いただ きました.先生の研究に対する姿勢には共感できる部分が多く,先生の御指導のもとで研究 できたことを誇りに思います.ここに心より感謝の意を表します. 同研・究室秘書小出さおり様には,研究室での生活面のサポートをしていただきました.心 より感謝し、たします. 研究室で日々の生活を共にし,充実したものにしてくださった中尾研究室の諸先輩方,同 輩,および後輩の皆様に深く感謝し、たします.特に,吉田{有冬氏,奥畑大悟氏には,実験や その準備に多大なご、協力をいただきました. また,尊い命を捧げてくれた動物たちに深く感謝し,哀悼の意を表します. 最後に,私の大学生活を経済面,精神面から支えてくださいま した家族と親友に深く感謝 し,本稿の結びと致します.

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図 8 眼位・ l 瞳孔計測システムを導入した実験系 視覚刺激用 ディスプレイ イメージング用 PCAD コンバータ用PC 眼位・瞳孔 計測用 PC 図 9 視覚刺激実験装置のブロック I j g l ( 奥畑 , 2018 修士論文 [ 1 7 ] から引用 )

参照

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