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血液カタラーゼの不能働化に関する研究

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(1)

血液カタラーゼの不能働化に関する研究

第H報 不能働化の防止と再能働化について

金沢大学医学部第一生理学敏室(主任斎藤幸一郎教授)

野  村    博

  王7か08屠2Voη協侃   (昭和30年10月14日受附)

緒  前報1、において諸種の条件下における血液カ

タラーゼの不能働化に関する若干の実験所見を 報告した.従来よりカタラーゼの不能働化はエ

タノールその他数種の脂肪族化合物によって阻 止されることが報告されている2)3).

 著者は前報1)の実験と同じく溶血溶液及び馬

血液より精製した結晶カタラーゼの溶液を用 い,そのカタラーゼの不能熔化を阻止する諸種 薬物を検索した.叉一たん不能働化したカタラ ーゼがこれら薬物及び親水性膠質(第1報1)参 照)により面影働化される新知見を得た.これ

らの実験成績をここに報告する.

亙.各種有機溶剤による血液カタラーゼの不能四二抑制について  カタラーゼ溶液として血液の稀薄な溶血溶

液,各種:動植物組織の抽出液,叉は麦芽の浮游 液を用いる場合,これらの液を直叙に放置すれ ば常温においてもカタラーゼが可成り急速に不 能働化していくことは従来から知られている2)

3)4)3)6)7)8)9).これに対し高山2),Marks 3)等は

その不能働化はメタノール,エタノール,プロ パノール,ブタノール,アセトン,エーテル,

アセトアルデヒド,ホルムアルデヒドなる脂肪

族化合物により抑制されることを報告した.

 著者は今酵素液としては第1報1)に示した馬 血液から作った結晶カタラーゼ。)の稀薄な溶液 及び人の血液の稀薄な溶血溶液を用い,これち を25。Cに保存した場合におこるカタラーゼの 不能働化の経過と,その不能働化に対する上記 脂肪族化合物のみならず更に多くの脂溶性有機 溶剤の影響を調べた.

実 験  酵素液として人の血液の稀薄な溶血溶液を用いる場 合には,皮膚穿刺により得られる血液を0・03ccピペ ットに採り,これを…欠に示す通り各種有機溶剤の濃度 を異にした水溶液で1000倍に稀釈溶血して30ccとな し,25。C恒温槽中に保存して7時間に亘ってそのカ

タラーゼ10)能を測定11)した,

 馬血液から作った結晶カタラーゼ10)については,前 報1)の如く人の血液と略ヒ等価のカタラーゼ能(以 下

方 法

C・A・と略す)を有する溶液を作り,これを上記皮膚 穿刺血の場合と三襟に処理した.

 有機溶剤の水溶液は水溶性のものは10倍の段階に稀 釈した水溶液を作り,難溶性のものはこれを蒸鯉水と 混和振零して飽和せしめ,これを10倍の段階に稀釈し た水溶液を用いた.

 試料として人の血液の稀薄な溶血溶液を用いる場 合,そのC・A・は溶血直後(1分後)の値を,結晶力

(2)

タラーゼの稀薄な溶液を用いる場合は稀釈直後(15秒 後)の値を夫々100とし,以後の測定値はこれに対す

る百分率で現わした.

 なおその際C・A・測定に及ぼす有機溶剤の濃度が問 題になる12)13).しかし今著者の研究しようとするの

は,同一試料についてそのC・A・が時閣の経過とと もに,如何なる割合に変動するかを観察するのである から,有機溶剤の濃度は終始一一定なる故その影響は無 回して差支えない.

実 験  10%,1%,0.1%,0.01%ρ,0.001%,0.000

1%エタノール及び対照として蒸鯛水で人血液 及び結晶カタラーゼ溶液を夫々1000倍に稀釈

(溶血)し,25。Cに保存した場合のカタラーゼ

成 績

の不能白化の過程を第1図a・bに示した.縦軸 にはC.A.保持率を,横軸には時問の経過を示

 した.

  即ち入の血液を用いた場合には稀釈液中にエ 第1図a) エタノーールによるカタラーゼの不能働化抑制図 (溶血溶液)

CA

(%)

100 go 80

/0

60 50 40 ヨ0

20

       0,1%工タノ}ル

 噌命一つ』・一一一伽一一冒一・一一・一・一開一一ド』廊一 謂・晟・器∵・隅一屯 (100%)

雷\巴__       o 鴇蜜4舜字ノール

 ヘ       ヘ  へ       

 資      卜一一一一一一一_____

  \       8}一一一一一一一一脚→曹0,001% エタノー レ

  、

  、、      (742%)

   b、、

   一 :園一、一..._一.一.    。.。oo1。。,、.,レ

       『覗駒一喚軸一}陣一一一卿一一一一      (40.2%)

       対  照僑G2%)

o 1 騨咄闇占_r岡_』監

2 5 4 幽己 潤冨一■嗣騨■一5 r(時)

CA

(%)

1GO go 80 70 60 50 40 50 20

b)同 上(結晶カタラーゼ)

響=監7二7‡===‡こ=こここ===ここ=;ご轍1

、、蒐Ar

  \

(891%)

      01%エタノール 團一 }一一 @    750%)

      対  照〔71,5%)

o 1 2 55

タノールが10%,1%,0.1%,0.01%存在す ればそのC.A.は7時間にわたり,殆んど完全 に保持され,0.001%にては第7時二目のC.A.

保持塞は74.2%となる.0.0001%にては初期に おいてのみカタラーゼの不能働化防止に有効で あるが,後期セこは対照の不能働化曲線と略セー一

7(時)

致し,第7時間目のC.A.保持率は約4096であ

った.

 試料に結晶カタラーゼ溶液を用いた場合に は,エタノールが10%存在すればはC.A.7時 間にわたり略ヒ完全に保持され,1%にては7 時嘱目における。.A.保持率89%,0.1%,及

【154コ

(3)

びそれ以下の濃度のエタノールでは対照の不能 働化曲線と略ミー致し,C,A.保持率は71%前 後であった.

 以上のエタノールの濃度をいろいろに変えた 場合の第7時闇目におけるC.A.保持率を比較 して,エタノールのカタラーゼの不能働化抑制 に最も有効にして最:も低い濃度(便宜上これを 最:大有効濃度と名付けた),友び不能働化を幾 分でも抑制し得る最:も低い濃度(最小有効濃度)

を求めた.試料に入の溶血溶液を用いた場合,

前者は0.01%(C.A.保持率99.4%を100%と見 徹した),後者は0.00ユ%である.

 結晶カタラーゼ溶液では前者は10%,後者は

1.0%である.

ついでその他の有機溶剤を用いた場合でもエ タノールを用いた場合と同様にカタラーゼの不 能忌詞を防止する傾向が見られた.従ってこれ

らの有機溶剤について上と同様に最大有効濃度 及び最小有効濃度を求め,それを第1表に示し た.その表から試料に人の血液を用いた場合工 第1表 各種有機溶剤によるカタラーゼの不能働化抑制

カタラーゼの種類

   \有効濃度

有機溶剤名

       \

人の溶血溶液カタラーゼ

馳瀦晶カタラぜ]

照 (蒸饒水)

最禰濃略翻十全訓最大有効醐藩構耀

(4・・3%)i ll (7・・3%)1

エ タ ノ 一・ルC2H50H

メ・タノ ールCH30H

0.1%   (100%)

0.01%    (99.4%)

0.1%   (100%)

0.01%    (97.5%)

0・001%

0・eoユ%

{10%

1

(97・3%)

10% (85・6%)

1%

ユ%

プ・パノールC・H・・Hl・% (10・%)}0・0・刎・0% (97・5%)1・%

ブタ・一ルC・H・・H 堰E・% (1・・%)1…%」・% (83・4%)い%

ア・ルアル・一ルC・H…剰飽和 (1・0%)10・・%li 1% (82%)い%

アセ・ン(CH・);C・1・・% (100%)10・0・%1・0% (98・8刎1%

アセトアルデヒドCH・CH・ P…%(92・9%)1・…1%1

/ /

一一テル(C・恥・陣和

(92・9%)1・/1e・飽和1陣和 (100刎1/1・飽和

石油ベンヂン

1飽和(39・・%鯛1/[1飽和(69%欄1/

ベ ン ゾ F ルC うH6

1飽和(4・・2%無訓/i斜光(73・5%鯛1/

・ル十一ルqH・CH・陣和

98・9%11/1・飽和1陶(63・5%欄1/

キシ・一ルq・H・(CH・)・陣和 御・2%1飽和、i鞠(7・・4%無効)1/

二・・べ埋ンC・H・N・・陣和

四塩化炭素CCI4

66・3%1鞠陣和(66・・%鱒)1/

クロロホルムCC13H

陣和(38・・%綱)1/1陣和(62・2%無識/

融和 …%し1/…飽和 飽和 (82・4%)11/1・飽和

アニリンC・H・NH・1/・・鰍39・・%顯[/

/ /

ピ  リ  ヂ  ンC5H5N 1・・1%(38・・%無効)r/

/ /

石油エーテル

陣和(3撫刎/ / /

二硫化炭素CS2

陣和(0%有毒)

/ / ∠

註 括弧内は第7時閻目におけるC・A、保持率を示す.

(4)

タノール,メタノール,プロパノール,ブタノ ール,アミルアルコール,アセトン,クロロホ ルムは直る濃度以上に加えられた場合には,7 時闇にわたり殆んど完全にC.A.を保持するこ とが出来,トルオール,エーテル,アセトアル デヒドでは90%以上に,キシロール,ニトロベ ンゼンでは70%程度にC.A.を保持することが

出来た.

 ベンゾール,石油ベンジン,四塩化炭素,ア ニリン,ピリヂン,石油エーテルはカタラーゼ の不能働化を殆んど阻止する作用はなく,対照 と略ζ同じC.A.保持率(40%前後)を示した.

ただ二硫化炭素のみ毒性あり,C.A.保持率は 0%であった.

 結晶カタラーゼの溶液を用いた場合は,人の 溶血溶液の場合に比して,得られた最大及び最

小有効濃度の値には再現性に梢ミ乏しかった が,これらを第1表に示した.即ちエタノー ル,メタノール,プロパノール,ブタノール,

アミルアルコール,アセトン,エーテル,クロ ロホルムはカタラーゼの不能同化を抑制し得た が,それら有機溶剤の濃度は前記の入の溶血溶 液を用いた場合に比し,一般に著しく高くなっ ていることは注印こ値する.ベンゾール,石油 ベンゼン,トルオール,キシロール,ニトロベ ンゼン,四塩化炭素等は殆んど効力がなかっ

た.

 第1表に挙げられた有機溶剤のうち.カタラ ーゼの不能働化を彊力に抑制するものは,クロ

・ホルムを除きすべてその構造式中にCH3一を 有することは注目に値:する.

II.各種有機溶剤並びに膠質による血液カタラーゼの再能働化について  人の血液の稀薄な溶血溶液を放置して,その

カタラーゼが或る程度不能働化した所え,エタ ノールを添加した二二る程度C.A.が上昇し た,即ちカタラーゼの三二等化が認められた.

従来の文献上にはカタラーゼの再地厚化に関す る記載は見当らない.著者はこの再能働化作用 をその他の有機溶剤についてもその有無を検 し,叉その再自働化の経過が如何ようであるか 観察した.

 叉前報1)において結晶カタラーゼ溶液にてそ のカタラーゼの不能働化を抑制した二・三親水 性膠質についても,カタラーゼを再能働化させ 得るか否かを検査した.

 この場合カタラーゼ溶液として,人の溶.血溶 液と馬血液から作った結晶カタラーゼの溶液を 用いた場合とで,著しい差異を認めたので各々 を別々に述べることにした.

      A.人の溶血溶液を用いた場合

1)或る程度不能働化したカタラーゼの再能働化について

       実 験  先ず人の血液を蒸暉麗で1000倍に稀釈した溶血溶液 を,25。Cに約1時間放置し,そのカタラーゼを或る 程度不能働化せしめる.その溶液に次に示す如く各種 有機溶剤又は親水性膠質を混合振盧し,25。C恒温槽 申に保存しつつ,臨時5時間に亘ってC・A・を測定し

た.

 有機溶剤は前章の実験にて,人の溶血溶液のC.A.

方 法

を7時間に亘り90%以上に保持したエタノPル,メタ  ノール,プロパノール,ブタノール,アミルアルコー ル,アセトン,アセトアルデヒド,エーテル,トルオ  ール,クロロホルムを選び,それらをカタラーゼの不

能働化抑制に対する最大有効濃度(第1表参照)にな る如く,前記のカタラーゼの治る程度不能働化した溶 液と混合した.

【156】

(5)

 即ち先ず10%エタノール,100%ブタノ門ルを夫々 0・03cc,3・Occずつ試験管にとり,これに前記のカタラ

Pゼを或る程度不能働化させた溶血澄液を夫々29.97 cc,27・Occ加え有機溶剤の濃度を夫.々目的の0.0エ%,

10%のになる如くした.溢水に難溶性のアミルアルコ Pル,エーテル,トリオ・一ル,クロロホルムは夫々5

%,10%,1%,1%の割になる如く加え,張力に振盟

混合した.

 ついで親水性膠質としてはゲラチソ,塞天,アラビ ヤゴムを用い,予め2%の溶液を作っておき,それに 9倍一町の前記のカタラーゼを不能働化させた溶液を 混合した.2%ゲラチン,一天溶液は冷却するとゲル 1伏になるから溜いうちに操作した.

実 験 成績

 人の溶血溶液を25。Cに約1時闇放置し,そ  させた時に,エタノールを0・01%の割に混合 のC・A・を溶血直後に比し68.7%迄に不能働化  し,その直後から5時闇にわたり逐次C・A・を       第2表人の溶血溶液のカタラーゼの再能黒化の表

      (括弧内は再能六六率を示す)

\ c・A・

混論質名\\

エ タ ノ 一 ル   (0・01%)

c・A・(%)

泓直訓泓酬3・分後

68.7

68.7

メタ

i。鋪ルr68・7

フ。 ロ ノ{ ノ F一 ル・

  (1・0%)

ブ タ ノ 一 ル   (10%)

アミルアルコpル   (飽和)・

ア  セ  ト  ン   (10%)

アセトアルデヒド   (0・1%)

エ  一  テ  ル   (飽和)

ト ル オ 一 ル   (飽和)

68.7

68.7

68.7

68.7

68.7

68.7

68.7

69.0

(0・96)

69,8

(3・6)

ク ロ ロ ホルム   (飽和)

ゲ  ラ チ  ン   (0・2%)

(0・2%) ア ラ ビヤゴム   (0・2%)

68.7

(0)

67.9

(一2・6)

 61.6

(一22・7)

7ユ.7

(9・6)

69.5

(2・6)

71.7

(9・6)

75.0

(20・2)

68.7 68.7

(0)

53.2

60.4

55.7

61.6

(17・9)

73.4

(32・8)

55.7

(0)

59.5

84.9

(5エ・8)

75.6

(22・0)

85.9

(55・0)

85.9

(55・0)

74.9

(19・8)

74.2

(17・6)

75.6

(22・0)

 65.2

(一11・2)

74.8

(19・5)

77.6

(28・4)

65.0

(25・6)

68.2

(19・7)

54.1

(一3・6)

2時醐5時間後

47.0

92.5

(71・1)

77.2

(27・2)

85.2

.(52・7)

81.0

(39・4)

77.7

(28・8)

83.1

(46・0)

75.6

(22・0)

78.2

(30・4)

87.2

(59・1)

76.3

(24・3)

59.1

(34・0)

61.3

(2・3)

 50.0

(一エ2・9)

43.2

90.6

(70・0)

90.0

(68・1)

88.6

(63・6)

90・7

(70・4)

83.2

(46・4)

93.5

(79・3)

74.9

(19・8)

87.5

(60・1)

87.2

(59・1)

78.3

(30・7)

53.6

(1・0)

57.6

(一7・1)

 41.3

(一32・5)

(6)

第2図人の溶血溶液カタラーゼの再能芸化図

CA

・6)

100 go 80 ro 60 50 一40 50 20

冷、_一つ筆三一=芒糞{雄途1

 ノノ       ノノ

       ロゑロ必肇4二∠派閥・一一一一 一一つク ル珊…

↑       、.

       3

,昆

       対照(785%}

0  50「  1 2 5(時}

測定した.即ち混合直後のC.A.69.0%,30分 後84.9%,2時間後92.5%,5時闇後90.6%

となり,カタラーゼは明らかに再臨働化され た.これを第2表,第2図に示した.今C.A・

がa%からb%迄に再能働化された場合の豊能 働化率㍍鳶×1・・%を求めるならば,第2表 の数値からエタノール混合直前のC.A.68.7

%,直後のC.A.69.0%であるから,直後の再 演働化率は岳1≡1器×1・・%一・.96%にな る.このようにして30分後,2時間後,5時間 後の再能動化率を求めるならば夫々51.8%,

71・1%,70.0%となる.この値 を:第2表の括弧 内に示した.

 即ちエタノールによるカタラーゼξ):再能働化 は,エタノール混合後最:初の30分闇に著しく促 進され,その後2時面目迄には徐々に進行し,

その後5時聞目迄は殆んど準衡歌態にあった.

 その他の有機溶剤によってもカタラーゼの智 能働化は認められ,それらの経過はエタノール による再能働化とは多少の差異はあったが,比 較的相似た傾向を示すことを認めた.それらを 第2表,第2図に示した.

 ついでゲラチンについて同様に試みたが,そ の混合直後に早くもC.A.上昇し再能働化率 7.9%であり,30分後,2時間後と次第にC.A.

上昇し夫々の再能働化率25.6%,34.0%で,そ の後は徐々に不能働化し始め,5時闇後には略 ζ混合直前のC.A.に迄戻った.(第2表)

 その他塞天にもカタラーゼの再能応化作用の あることを認めたが,その作用はゲラチンに比 して劣っている.アラビヤゴムでは再能紅雨は 認められなかった.

2)力女ラーゼの不能司馬度とその後のエタノールによる再三働化について

実験方法及び実験成績  人の血液の稀薄な溶血溶液を25。Cに保存す

ればそのカタラーゼ能は徐々に減少する.(第;

3図実線)その不能働化の経過申10分後から6 時間にわたり,その溶血溶液を数回取出し,そ の都度エタノールを0.01%の割になる如く加 え,よく振盛し250Cに保存してそのカタラー ゼの再能働化される過程を観察した.それを第

3図に示した。

 カタラーゼは不能働化の極く初期にはエタノ ールにより殆んど完全に再能働化された.又6 時間内の如何なる時期においてもよく再能働化 され,その経過は第2図の経過と同型となり,

エタノール添加後2〜3時間で一定となる.叉 第7時間目のC.A.値は不能働化の時聞の短い

【158】

(7)

第3図エタノールによる人の溶血溶液カタラーゼの再出縞織図

CA

〔%)

100 go

80 70

60 50

40 50 20

 づドなロ  か  ロリのロをしロコ

    ノロ         ノ       ノ

 ノ  &     /      /σ        !

 ユ       げ      ノ

 ・ 工  ↑    !    /

   9 歩   圭   。↑ 灘、%、

   ,L  で     9     ヲ

       ル       I      l       ル      ル

0  50   1 2

もの程高く,叉再能働化率は1時闇後にエタノ ールを混入した場合に最も高く50・9%を示し,

それを頂点としてそれより早くても叉逞くて も,次第に再能働化率は低くなる傾向があっ

た.

 この成績にかんがみ,人の溶血溶液を数日間 室温に放置し,C.A.の完全に失われた後にエ タノールを加えたが,カタラーゼの再能難球は 認められなかった.

 従来の文献中には,エタノール等の有機溶剤 は活性カタラーゼに作用して,その活性を更に 増大せしめるという報告14)がある.著者はこれ

4 6 7(時}

をこの機会に追試した.

 即ち人の血液を稀釈溶血して0.01%の割合に エタノールを加えるか,:或いは0.01%エタノー ルで稀釈溶血し,逐次C.A.を測定した.その 結果エタノールによるC.A.の増大は全然認め られなかった.先人の認めたカタラーゼ活性の 増大は恐らく用いた酵素が既に或る程度不能働 化していたためと考えられる.至る程度不能働 化したカタラーゼは,よくエタノールによって 再能働化されることは,繰返えし述べた所であ

る.

:B.馬血液から作った結晶カタラーゼ溶液を用いた場合

1) 自然に不能働化したカタラーゼの再能働化について 案験方法及び実験成績

 結晶カタラーゼ溶液(人の血液と等しいC・

A.を有する)をエ000倍に稀釈した溶液におい て,そのカタラーゼの不能働化は,人の溶血溶 液の場合に比し著しく謡い.それを一昼夜室温 に放置し,そのC.A.が一所直後に比し40乃至 60%まで不能働化した溶液を用いた.その溶液 に第1表に示した如く各種有機溶剤を混入振盟

したが,この場合には殆んどカタラーゼの再能 働化は認められなかρた.

 叉二・三の親水性膠質を0.2%の割に加えて 見た.この場合僅かに再能働化を認めることも 稀にはあったが(再落忌化率2%以下),多くの 場合再能働化は認められなかった.

2)人工的に不能働化したカタラーゼの再能働化について 以上の成績の如く有機溶剤,膠質によるカタ

ラーゼの再能働化は,酵素液として人の溶血溶

液を用いた場合に限られ,馬血液の結晶カタラ ーゼ溶液を用いた場合には認められなかった.

(8)

しかしこれは,動物の種の差でないことは,馬 の溶血溶液を用いた場合には,人の溶血溶液の 場合と同様エタノールによるカタラーゼの再能 働化が認められたことから明らかである.

 しかして酵素液としての溶血溶液と結晶カタ ラーゼ溶液との不能働化に関する相異は,前者

に含まれるヘモグロビンがカタラーゼの不能働 化を促進する点であった1).従って結石カタラ ーゼ溶液において,酸化還元色素,ヘモグロビ ンその他を加え人工的にカタラーゼの不能働化 を促進させた後にエタノール,ゲラチン等を加 え,:再下働化がおこるかどうかを見た.

      実験方法及び実験成績       し

先ず10−5M2.6ヂクロール・フェノールィン  1000倍に稀釈し,25。Cに約1時間放置すると ドブエノール溶液にて結晶カタラーゼの溶液を  そのC.A.は最初のC.A・に比し33.6%迄に不       第3表結晶カタラーゼの丁丁二化の表

       (括弧内は再能霊化率)

カタラーゼ不能 働化促進物名

 物名

C.A.

2.6ヂクロールフ エノール イソドフエノール

アスコルビン酸

ヘモグロビン

酸(クエン酸)

熱 (60。C)

\、

エ タ ノ 一 ル

ゲ  ラ チ  ン

拷4;ル海山

ヘモグロビン

⊇募甥つ齢

エ タ ノ P ル

ゲ  ラ チ ン

エ タ ノ 一 ル

ゲ  ラ チ  ソ

エ タ ノ 一 ル

ゲ  ラ  チ  ソ

エ タ ノ 一 ル

ゲ  ラ チ  ン

。・A・(%)

    混入直両混入直後

33.6

33.6

33.6

33.6

33.6

33.6

50.2

46.1

43.0

43.0

60.2

32.0

(一2・4)

64.7

(46・8)

50.0

(26・2)

33.6

(o)

30.0

(一5・4)

48.4

〔一3・2)

52.5

(1L9)

40.8

(一3・9)

48.2

(9・1、

58.6

(一4・0)

30分後

61.6

(42・1)

66.5

(49・6)

78.3

(67・4)

63.2

(44・6)

72.8

(45・4)

1時間後

64.3

54.5

55.5

18.0

65.7

(48・4)

68.2

(52・1)

77.8

(66・6)

 20.0

(一20・5)

69.2

(53・7)

81.0

(61・8)

89.5194.4

(80・5)1(89・7)

67.9

(43・7)

47.2

(7・4、

65.8

(14・1)

61.2    78.7

(一8。7) (40.3)

52.1

(一5・3)

55.5

(C)

52.8

(一3・7)

67.0

(25・9)

72.3

(51・4)

47。2

(7・4)

64.2

(10・0)

81.0

(46・8)

50.8

(一8.1)

62.1

(14・8)

2時聞後

14.0

69.0

(53・3)

69.2

(53・4)

77.0

(65・4)

5時閥後

14.0

69.6

(54・2)

71.8

(57・6)

79.9

(69・8)

18.oI18.0

(一23・5)1(一23・5)

70.5

(55・6)

71.8

(50・6)

45.2

(3・9)

60.2

(0)

81.0

(46・8)

 51.4

(一7・48)

61.5

(13・5)

71.6

(57・2)

78.6

(57・0)

84.8

(71・9)

66.2

(40・7)

41.2

(一3・2)

63.2

(7・5)

85.5

(59・4)

 49.7

(一10・5)

62.5

(15・7)

【玉60】

(9)

第4図 結晶カタラーゼの再能掛化図

CA

(%)

100

go 80 70

60 50 40 50

−20 10

 0

 戸一一一一…一一一一一一一一一〇霧ζ協一 咽%

∠,,髪一三モ… 讐瀧一」二帽二=τ・霧点心タノール(72%

7ノ舘

/      ,,

↑一\一\

混   』・〜._▲_,_._._._.一・一・▲ヘモグロビン(18%)

対 照(140%)

o 1 2 5(時)

能働化した.これにエタノールを0・01%の割に 混入し,逐次5時間にわたりC.A.を測定し,

それを第3表,第4図に示した.

 即ちエタノール混入直後にはC.A.は一時的 に僅か乍ら下降しC.A.32.0%,30分後には著 しく上昇し6L6%,1時間後65.7%,2時間後 69.0%と徐々に上昇し,以後は殆んど平衡を保 ち5時間後は69.6%であった.これを再能島台 率で示すならぽ直後一2.4%,30分後42・1%,

1時間後48.4%,2時間後53.3%,5時聞後 54.2%となり,第2図に示した人の溶血溶液に おけるカタラーゼの再能働化の経過と殆んど同

じ型であった.

 次に上記の方法で部分的に不能働化した結晶 カタラーゼ溶液にゲラチンを0.2%の割に加え て見たが,エタノールの場合と多少異なり,混 入直後にカタラーゼは著しく再能働化され,C A.64.7%(再能働化率46.8%)となった.しか

し30分後66.5%(再能働化率46.8%),1時間後 68.2%(52」%),2時間後69.2%(53,4%),

5時間後71.8%(57.6%)となり,エタノール による場合と略ヒ似た経過をとった。

 その他エタノール0.01%,ゲラチン0.2%の 割に同時に混合した場合には,夫々を箪独に混 入した場合に比して,より強い:再能働化が認め られた.

 :叉:Keilin&Hartree 15)三法により結晶にて 得たヘモグロビン(この方法にて得たヘモグロ ビンはカタラーゼを含むことが最:も少ないこと を当教室の関口が報告16)した)の水溶液(光電 比色法により血液の100倍稀釈濃度にした)を

io%の割に,前記のカタラーゼの不能働化した 溶液に混入したが,ヘモグロビンにはカタラー ゼの再能働化作用はなかった.

 ついでヘモグロビン水溶液(前記濃度)を10

%に,エタノールを0.01%の割に同時に混入し たが,カタラーゼの二二二化は見られた.この 経過はエタノールを軍独に加えた時と略ミ同じ であった.(第3表,第4図)

 ついでカタラーゼをヘモグロビン(血液の10 00倍稀釈濃度溶液:にて結晶カタラーゼ溶液を10 00倍に稀釈した),アスコルビン酸(10−4M溶 液),0.05:Nクエン酸,熱(60。C)を加え人ユニ 的に速かに或る程度不能働化させ,しかる後に エタノール叉はゲラチンを加えて見た.熱で不 能働化したものに対して,エタノールは全く効 果はないが,その他の場合にはつねにカタラー ゼの丁丁働化されるのを認めた.(第3表)

 即ちカタラーゼの再能働化には,溶血溶液に おける如くヘモグロビンの存在が特異的に必要 なものでなく,カタラーゼを速かに或る程度不 能働化させた場合に限り,その後の処置により

(10)

再能油化が認められることを,本実験により明 らかにすることが出来た.

考  前哨及び本報においてカタラーゼの不能働化 及び再能事化の現象を諸種の条件の下に観察し 若干の新知見を得たが,これら諸現象の本態に 関して適確な結論を得るにはなお程遠い段階に

止った.

 回報に述べた実験成績より,カタラーゼの不 能働化過程は少なくともその一部は可三等であ り,一部は不可逆的であると推論できる.前者 は諸種:の有機溶剤や親水性膠質によって再能異 化の方向に促進されるが,後者はこれらの影響 を受けないものと考えられる.:顎脚能働化を促 す有機溶剤及び親水性膠質は何れもカタラーゼ の不能働化を防止する作用を示すからこの両作 用は本質的には同一のものと考えられる.吾々 はカタラーゼの不能岸里及び再能働化について 次の模式を考えて見た.

    酸化ヘモグロビン     酸化還元色素

  Ca(tive   ;==土    C1na ・t一一→Cへw・t

      有機溶剤       親水性膠質

 活性カタラーゼ礁。diw)が第1段の可逆的不 能丁零により不活性カタラーゼ(C,。aのとなり,

これが更に第2段の不可逆的不能働化を受けて C/i。aCもとなる.第2段の反応速度は比較的小さ

く,第1段の不能馴化がヘモグロビンなどで促 進される場合にはC.。餌を生じ,これが有機溶 剤や親水性膠質によって容易に再能働化される

と考える.

 従来カタラーゼの酵素反応速度を研究する 際,屡々稀薄な溶血溶液が試料として用いられ ている.これには当然酸化ヘモグロビンが共存 するから,酵素の不能聖母は著しく促進される 可能性があり注意を要する点である.

総  人の溶血溶液及び馬の血液から作った結晶カ

タラーゼ溶液について,それらのカタラーゼの 不能働化に及ぼす各種:の有機溶剤の:影響を検す ると共に,不能働化したカタラーゼに対するこ れら薬物並びに親水性膠質の再能働化作用を検

し,次の成績を得た.

 1)人血の稀薄な溶血溶液のカタラーゼの不 能働化は,エタノール,メタノール,プロパノ

ール乳ブタノール,アミルアルコール,エーア ル,アセトン,トルオール,クロロホルム,ア セトアルデヒドは一定濃度で弧力に抑制され る.ニトロベンゼン,キシロールも梢ヒ効力は 劣るが有効であった.

 結晶カタラーゼの溶液でも,エタノール,メ タノール,プロパノール,ブタノール,アミル アルコール,アセトン,エーテル,クロロホル ムは酵素の不能働化を抑制するが,一般に著し

く高濃度を要した.

 2) 入血の稀薄な溶血溶液において,挙る程 度不能働化したカタラーゼは,エタノール,メ タノール,プロパノール,ブタノール,アミル アルコール,エーテル,アセトン,トルオール,

クロロホルム,アセトアルデヒド及びゲラチン,

塞天によって再能働化された.

 の 人血の稀薄な溶血溶液において,そのカ タラーゼの不能働化経過中のいろいろな時期 に,エタノールを作用させて再能働化を観察し た.しかしエタノールは活性のカタラーゼに作 用して,更にその活性度を増大せしめる能力は なく,叉完全に不能働化したカタラーゼに対し ても再能働化能力はなかった.

 4)結晶カタラーゼの溶液においては,その カタラーゼが自然に不能働化した場合は,前記 の有機溶剤,親水性膠質により再能働化されな い.これに反し人工的操作即ち酸化還元色素,

アスコルビン酸,ヘモグロビン,酸により,そ

【162】

(11)

のカタラーゼを 速かに 或る程度 不能働化 させた場合にはエタノール,ゲラチン等によリ カタラーゼの再能働化されるのを認めた.

 欄筆するにあたり終始御懇篤なる御指導亜びに御校 閲を賜わった恩師斎藤敢授に深謝する.

      文 1)野村博:十全医学会維誌,第57巻,第11号,

138(1955).2)S.Takayama 3 Acta Schol.

Med. Kioto, vol.8,437.(工925). 3)G. W.

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(1926).    5、」,WiUiams : ∫. General.

physio1. voL 11,309(1928).  6)G. W.

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Chem., voL 107,623(1934).  9)『=代巖:

   、

京都府立医誌,第27巻,No・2,445(1939)・

10)野村 博:十全医学会雑誌,第57巻,第11号,

135(1955). U)斎藤幸一郎3医学と生物学,

第14巻,第1.号.(昭和24年). 12)B。Chan−

ee: Acta Chem. Scand, vol.1,236(1947).

13)RChance: 」. Biol. Chem., voL 82,643

&649(1950).  14)菊地源造:福岡医科大

学鮭誌, voL 23, 158 (1930)・        15) 1).

Ke浦n轟E. F. Hartree: :Proc. R.oy。 Soc.

:B.117,1(1935).   16)関口晃:十全医 学会雑誌,第55巻,第9号,(昭和23年).

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