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絨毛膜におけろ血球発生に関すろ:研究

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絨毛膜におけろ血球発生に関すろ:研究

金沢大学医学部病理学教室渡辺研究室(渡辺四郎教授 指導)

專野生 竹  谷  喜  亭

         照んθδ7▼α吻α         (昭和29年6月15日 受附)

(本研究の要旨は,昭和28年2月第13回十全学会に発表,昭和28年4月第15回日本血液学会,

  昭和2gq…2月第16回十全学会,及び昭和29年4月第16回日本血液学会に発表・)

第1章 第2章  第1節  第2節 第3章  第1節

緒 言

研究材料及び研究方法  研究材料

 研究方法 研究成績

   海瞑絨毛膜小皮標本所見及び各造血1臓器    切片標本所見

第2節 海瞑絨毛膜,肝臓,末梢血の塗抹標本所     見

 第1項 絨毛膜塗抹標本所見  第2項 肝臓塗抹標本所見  第3項 二見末梢血塗抹標:本所見

第3節 海狽絨i毛膜小皮標本ヘモグロビン染色所     見

第4節 海狽絨毛膜小皮標本ペルオキシダーゼ反    応所見

第5節 申性赤生体染色所見

第4章研究成績総:括 第5章 考 按

 第1節 材料亜びに研究方法に関する考察  第2節 赤血球発生に関する考察   第1項 第1世代赤血球発生   第2項 第2世代赤血球発生   第3項赤面球の原基細胞とその分化   第4項 両世代赤血球の差異   第5項 赤血球の増殖法   第6項血球の破壊

 第3節 白血球発生に関する考察  第4節 骨髄亘態細胞に関する考察   第1項骨髄亘態細胞の発生   第2項骨髄亘態細胞の運動性  第5節 負喰細胞に関する考察

第6章結論

   文 献

第1章緒

 血球発生を論ずるに当り,最:も重要なことは 胎生期造血を観察することである.K611ikerの 人胎見の血球発生に関する観察を始めとし,多 数の学者が人類,或いは一定動物を材料とし,

各人独特の検索方法によって胎生造血の観察を 試み,夫々結論を与えているが,今日なお種:々 の疑:問があり必ずしも明快でない.例えば血球 原基細胞の問題,恒久性赤血球が胎見外で発生

されるか否かの問題,若し発生されるとすれば 血管内発生か,血管外発生かの問題第1世代 赤血球と第2世代赤血球との別等取り上げれば 幾多の疑問が存在し,叉現代の血液学の基礎が 一元論,二元論,三元論,及び多元論の上に立 って恰も血液学の混乱歌態を呈し,我々がどの 読を下用して良いのか聯か当惑する現状であ

る.私はこれら諸問題を幾分でも究明しようと

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考え,未だ余り検索されていない二二絨毛膜を 材料とし,生理的造血に関して系統的に詳細な 観察を途げんと意図した.〜隔れら薄膜の検索は 我々独自の小恩標本によって,造血巣の場を立 体的,包括的に観察した傍ら,絨毛膜並びに胎 見の切片標本のみならす,それら臓器の塗抹標 本をも併せ検索し,観察方法として:は全体観的

な一つの新しい立場を取らんと努めた積りであ る.個々の観察内容は赤血球発生様式に主体を 置き,血管との相互関係,分化過程,形態の概 要,各種細胞の機能面,骨髄互態細胞並びに面 喰細胞の発生能であって,前記血液学上の基本 的諸課題に対しても聯かその立場を明らかにし

ょうと思う.

第2章 研究材料及び研究方法      第1節 研 究 材料

 人類材料の適当な蒐集が可能であれは最も理想的で あるが,私の研究対象とする絨毛膜の入手は殆んど不 可能で,勢い動物材料の検:索に頼らざるを得ない.し かしそのフィロゲニテ{シュな意義は軽覗さ:るべきで はないと思う.籾て動物は海狽胎児を使用し,その大 きさ3粍から95粍迄のもの約30例につき絨毛膜に主体 を置き,同時に胎盤その他造血臓器を材料とし為.な お比較対照の意味で今迄諸家により多く検索されて来 た家鍋卵黄嚢をも使用した,

     第2節研究方法

〔1〕絨毛膜心皮標本作成法

 妊娠の有無を予め触診で確かめ,動物を背位に固定 し,腹部を剃毛し,後頭部を鈍器で一撃して気絶さ せ,直ちに腹部正中腺で開腹して子宮と一緒に胎兇を 取り出す.卵膜を損傷しないよう,且つ出来るだけ出 血を防ぎながら,極めて注意深く子宮壁から剥離iし,

加温リンゲル忌中に絨毛膜,胎盤,胎兇と共に投入 し,次に絨毛膜だけを切り離す.予め加混リンゲル話 中に浸した西洋紙上に絨毛膜を拡げ夫汝の固定液に浸 す.この際過度の外力を加えて生理的構造を乱す恐れ があるので,諸十島は出来るだけ迅速且つ鄭重に行わ ねばならない.固定は各固定液によって夫々固定時間 が異なる.例えばメメチールアルコールでは1乃至2 時間,10%申性ホルマリンでは約孚日間(絨毛膜は相 当の厚さを有するため)で完全に固定され、染色に最 適の朕態となる.固定後適当な小片となし,被蓋硝子 上に軽く拡げ,周囲の余分の水分を濾紙で吸い取り,

周辺部だけ乾燥して心心部が未だ湿潤な間に夫々の染 色を試みる.未乾燥小計標本作製には,室温,湿度等 が鏡敏に関係するため非常に熟練を要するが,これが 完全に行われた場合には極めて鮮明且つ美麗な標本を 得ることが出来る.

〔II〕染色法

 〔i〕 メイ・ギムザ染色法

 上記方法(固定:純メチールアルコール)で未乾燥 小心標本を作製し,直ちにメイ・グルユンワルド氏染 色液の2倍稀釈液を注ぎ5分間染色し3次いでこれを 捨てギムザ稀釈液(蒸溜水1ccに対しギムザ原液2滴 を加える)で約30乃至40分間染色する.水洗後充分に 周囲の水分を取り除き,無水アセトン中で完全に分別 脱水し,キシロールを3回通して透徹,バルサム封入 を行う.血球を三体として観察可能なように染色する ため,他の細胞が以上の染色で一・部犠牲になることは 止むを得ない.

 〔ii〕ヘモグロビン染色法

 10%中性ホルマリンで固定した強皮標本を下降アル コールに通し,水洗後次の試薬で染色する.

 (試薬)小刀尖の純ペンチヂンを96%アルコρル1 乃至2ccに溶解し,これに70%アルコール4乃至5cc

と3%過酸化水素0・5cc加える.

 次に50%アルコールで充分洗い3被蓋硝子から標本 が剥離しないように注意しながら水洗する.水洗後ハ リスのヘマトキシリンで核染を行う.上昇アルコール で充分睨水,キシロール透倣,バルサム封入を施す。

陽性の場合は美麗な黄褐色乃至は黒褐色を呈する.

 〔iii〕鉄ヘマトキシリン染色法

 血球を儀牲にして主に支柱組織や血管系統を観察す る目的で応用した.10%中性ホルマリンで固定後被蓋 硝子上に未乾燥の状態で貼疑し,すかさず95%アルコ ール中に投入し,以下80〜70〜50%アルコ四ルを経て 蒸溜水に至らしめる.次で1%ヘマトキシリン原液

(ヘマトキシリン1,純アルコール10,蒸溜水100.)

と2%鉄明証水溶液の略ζ同量混合液で直ちに5分聞 染色する.次に2%鉄明三二で適当に分別し,上昇ア ルコールを経て純アルコール中で充分に脱水し,キシ

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ロール透徹,バルサム封入を行う,以上の染色法によ って血管の立体的関係,血球と血管との関係,血管新 生の賦中等が詳細に観察される.

工iv〕中性赤生体染色法

 佐宝飾法を小判標本に応用するためには,種々の障 碍があり極めて困難であるが,色々な工夫によって比 較的美麗な標本を作製することが出来た.即ち滅菌濾 過した2%申性赤生理的食塩水溶液を,海員体重109 に対し0.4ccの割合で腹腔内に注射し,約6時間後 屠殺し,型の如く絨毛膜を取り出し,佐ロ氏第1固定 液に24時間固定する.家に第2固定液を通すのである が,ここでその儘入れた場合にはモリブデン酸アソモ ソの強い沈着を起し3観察に耐え難い標本と成る.そ こで第2固定液を約孚別間18。Cの艀卵器内に入れ,

モリブデン酸アソモソの沈澱を生じさせ,これを濾過 し,下に金網を敷き標本を裏返しにして18。Cの鰐卵 器内で24時間固定する.しかるときは標本に著明なモ

リブデン酸アソモソの沈着を見ることなく,且つ固定 も完全に行われる.核染,脱水,透徹は型の如く行い 観察する.

 〔v〕過酸化酵素反応  Mc. Junkin法を応用した.

 試薬:100mgのべンチヂソを25ccの80%メチP ルアルコールに溶解し,3%過酸化水素を2適加え,

これを暗所に貯え,用に臨んで1乃至2容量の蒸溜水

で薄め濾過して使用する.

 10%他性ホルマリン 固定標本に前記試薬を約5分聞 作用さぜ,約5分以上水洗ハリスのヘマトキシリソ で約1分間核型,アルコール脱水,キシロール透徹,

バルサム封入で観察する.陽性細胞は黄色或いは黄褐 色を呈する.

〔1正B 切片標本作成法

 絨毛膜,胎艦並びに胎児を10%申性ホルマリルで 固定し,パラフィン切片を作製し,主としてヘマトキ シリソ・エオジン染色を施行した,特に胎児の切片は 完至な連続切片ではないが,出来る限り多数の標本を 作製し観察した.

〔五V〕塗扶標本作成法

 載物破子の睨脂は型通り極めて嚴重に行い,胎勢末 梢血,肝臓,絨毛膜の塗抹標本を作製し,メイ・ギム ザ染色を施し検:索した.特に絨毛膜からの血球の塗抹 標本作製には,多少の工夫を要する.即ち絨毛膜を濾 紙の上に拡げ,その下に再び濾紙を敷き出来るだけ絨 毛膜の水分を除去し,次に一方の端を固定し3被蓋硝 子で固定した方から絨毛膜面を磨すると,被蓋硝子に 泥朕物が附着する.これを直ちに載物硝子に塗抹す る。この場合唯四球以外の細胞が同時に塗抹されるた め観察に幾分不便を感ずるが,血球には何ら損傷を来 たすことなく,形態学的観察には極めて有効である.

第3章研究 成績

  第1節 海狽絨毛膜小皆標本所見及び      各造血臓器切片標本所見  〔1〕身長3出山兇(1例)

 絨毛膜清絶標本メイ・ギムザ染色所見:大観 するに,一暦の血管内皮から形成される血管腔 が洞1伏に相凝り,血管網を形成し,その管腔に は甚だしい広童部があり,赤芽球を多数容れて いる像が目立つ.血管腔に充満せる血球は殆ん ど有核赤血球であり,聖別した赤血球,或いは 白血球等は認められない.これら赤芽球の形態 は略ζ第1世代の赤芽球に一致するものであ る.即ち第一に原形質が極めて張い好塩基性を 示し梢ミ穎営門であり,核は染色性に乏しくク

ロマチンの配列1伏態は.余り分明でないが,円形

或v・は星形の割合大きな濃染した核・J・体を1乃 至2個有する赤芽球,第二に更に分化し,次第 に原形質を増し,その色調は淡紅黄色を示し,

核は前記赤芽球よりも縮小しクロマチンの三態 は極めて繊細なもの,車軸歌を呈するもの,或 いは濃縮し偏在するもの等様々であるが,核小 体を認めない赤芽球,これら2種の赤芽球の聞 には移行像が余り認められない点から考え,急 激に分化し且つ多:量にヘモグロビンを有するの ではなV・かと推測される.ヒの所見は脱修した 赤血球が殆んど認められないヒとと共に,第1 世代の赤芽球の特徴に一致するものである.上 記赤芽球は集籏的に或いは散在性に存在するの であるが,ヒれらはすべて一暦の血管内皮によ

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り囲まれている.との標本内では血管内皮細胞 から血球化する像には接しなV・が,核分剖像特 に聞接核分警守に屡々遭遇する.要するにヒの 時期には,第1世代の赤芽球が多数血管内に存 在する所見を見るが,果してヒれが局所で発生 されたものか,或いは他から流れ来たものであ るかについては幾分疑問の点もある.なお材料 不足のためヘモグロビン染色等は施行しなかっ たが,上記記載のようにメイ・ギムザ染色でヘ モグロビンの多寡を推察した.

 〔II〕身長8粍胎見(2例)

 〔i〕絨毛膜二皮標本メイ・ギムザ染色所見:

弱拡大で鏡検すると,血管というよりも組織間 隙と表現するにふさわしい管腔が未成熟な血管 内皮を有して樹枝:状に分岐している.大きな血 管腔内には原始赤芽球,原始赤血球,恒久性赤 芽球,赤血球等を一部容れているが,室虚な所 が非常に多い.ヒれは標本作製中血管から血球 が流出したのではないかということを充分に考 慮に入れねばならない所見である。その血管周 囲には禰漫性に或いは島喚歌を呈する赤芽球の 集籏が一面に認められ,場所によっては二二と も形容し得るような極めて旺盛な造血集を認め る〜二とが出来る.即ち一見血管外造血を思わせ る所見であるが,張拡大でこれを精細に鏡検す ると,赤芽球の集団はすべて一暦の血管内皮に よって囲まれ,その血管は洞門に相蓮り,結局 は大きな血管と交通を成している.洞内に存在 する細胞は次の8種に区別することが出来る.

第一の細胞は前赤芽球であり,核は原形質に比 し大きくクロマチン網は比較的繊細で,赤芽球 に特有とされている不整形桿歌の核小体1乃至

3個有し,原形質は極めて張い妊塩基性で梢ζ 下学歌を呈し,稀に室胞を有している.形態は 略ζ円形若しくは卵円形であるが,狭い血管腔 内に存在するものはその状況に応じて原形質を 両端に伸しているもめ,或いは互に密着して不 規則な輪廓を示すものもある.これらの他に周 囲の血球との接触なしに遊離の状態にある前赤 芽球の胞体辺縁に,時として棍棒歌の微細な突

出物を見るととがある.との現象を直接蓮動性 と結びつけ得るか否かは一考を要する.この細 胞には直接分裂像並びに聞接分裂像共に相当数 認められる。第二には上記赤芽球より梢ζ分化 したと思われる大赤芽球の存在である.その核 は梢ζ小さく,クロマチン配列も前者程繊細さ を示さす,核小体も余り著明でないが,原形質 はなお好塩基性であり,形態は大体卵円形叉は 円形を示す.上記のような胞体辺縁の突出物は 見られない.第三には更に分化した多染性赤芽 球であり,核構造は次第に兜焼となり一部車軸 歌を呈し,勿論核小体は浩失し,原形質は帯紫 黄色即ち多染性を示す。やはりヒの段階におい ても直接及び聞接分裂像が相当認められ,興味 ある〜二とは直接分裂を示すものは分裂した核に 大小のあることである.第四には旧染性赤芽球 であり,核の胆管は多染性赤芽球のそれと田飯 同様であるが,原形質は淡紅黄色で一部は穎思 歌を示す.第五は赤血球であり,可成りの大小 不同がある.第六には原始赤芽球と考えられる ものであり,即ち核は濃縮し,原形質は極めて 大きく,メィ・ギムザ染色では他の赤芽球より も黄味が張く,ヘモグロビン染色によっても彊 陽性を示す細胞である.核は中央に存在するも の或いは偏在するもの,極端なものは辺縁に跨 っている像も認められる.第七には多核亘態細 胞である.これには更に2種:を区別しなければ ならなV・.その一つは前記前赤芽球の直接分裂 に際し胞体の分離を俘わすに多核の亘態細胞を 形成したと思われるものである.他は所謂骨髄

:亘態細胞に属するそれである.小皮標本では両 者の区別は極めて困難であるが,塗抹標本では 容易に鑑別することが出来る.前者は問題なV・

として,後者の存在は非常に異論の多い所であ るが,形態学的にも機能の面におV・ても骨髄:互 態細胞に一致するものである.細胞の大きさは 赤芽球に比較すると極めて大きく,軍門の細胞 から数個の核を有する細胞迄種々で,軍核のも のでも核の即吟は粗雑であり,早急に多核に成 るのではないかと推測される,核小体は前赤芽

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球程明瞭でなく,クロマチンの配列も平縫で染 色性に乏しい.原形質は帯紫紅色顯粒歌である が,アゾール平野は小罪標本では明瞭でなく,

好塩基性の部分も細胞の周辺部或V・は核の周囲 と一定してはいない.塗抹標本では極めて明瞭 にアゾール穎粒の歌態が観察される.第八には 貧喰細胞で上記細胞と混在して多数認められ る.貧喰されているものは赤芽球,赤血球,穎 干物等であり,多いものは赤血球を10個近く貧 喰している像も見られる.穎粒物は極めて粗大 であり藍色から緑色迄様々で,ギムザ染色で緑 色を呈するものは恐らく《モヂヂリンと考えら れる.その他円形濃染した穎下物が集団的に存 在しているのを認めるが,これらを細胞と考え ると,裸核の1伏態で集籏的な点から,勝沼38)が 0.3糎人凹凹の肝臓にお・いて見出し記載した Mikrolymρユ。{dzeUenに,叉天野5)が胎盤で襯察

したThrOmbocytellに極めて類似したものとな る.しかしとれらを一つ一つ生理的機能を持つ た独自の細胞と考えるより,やはり貧喰細胞に よって過度に撮取された顯粒物と考え度V・.即 ち貧喰細胞の原形質が膨化し,,原形質の境界が 不明瞭となってかかる所見を呈しているものと 考えた方が理解し易い.以上の各細胞が夫々集 籏的に叉は散在性に,或いは相混在して認めら れるが,:量的に見てこの標本では大赤芽球,多 染性赤芽球,正門性赤芽球赤血球が大牛を占 めており,特に同じ段階の赤芽球が集罪する傾 向が強い.次に造血集と血管との関係は,前述 したように血海と形容した:部分は余り血管内皮 の形態が明瞭でないが,他の部の赤芽球はすべ て管内に存在し,その管腔は極めて広く洞歌で ある.野守を成している血管網は大きな血管の 上方を走り,結局は大きな血管と連絡を成す.

この時期の造血には絨毛膜の部位的相異は見ら れなく,・血管分岐部等にも特有な所見,血管内 皮から血球化すると推憶される像,或いは白血 球,淋巴節等の存在は認められない.要するに 恒久性赤芽球の極めて広範な造血が血管内にお いて行われ,同時に骨髄亘態細胞の発生が多少

認められる所見である.

 〔il〕 同時期の造血臓器切片標本ヘマ、トキシ    リン・エオジン染色所見:

 (a)肝臓 毛細血管は強く拡大し,星芒細胞 は極めて明瞭であるが,肝細胞の配列は一一定せ す索歌というより肝細胞島と表現した方が適当 である.肝細胞には極めて多数の闇接分裂像が 認められる.拡大した毛細管内には比較的大型 の赤芽球,赤血球を容れているが,これは肝臓 における造血と直接関係なく他から流れて来た ものと考えられる.ヒの時期においては未だこ れが確実な造血像であると断言出来る所見は認

められなV・.

 (b)骨髄 観察した範囲内においては未だ髄 腔の形成は認められない.

 (c)皮下結合織その他 皮下組織その他の血 管内には割合大型の赤芽球,赤血球を容れてV・

るが,絨毛膜洞性赤芽球の発生歌況とは全然異 なった所見である.心臓,肺臓等の発育も不完 全であり,星芒歌の細胞が網1伏に連っており,

個々の細胞の区別は付けられな\へ  〔III〕身長15粍胎晃(3例)

 〔i〕絨毛膜小皮標本メイ・ギムザ染色所見:

前述〔II〕の所見と略ζ同様であるが,血管構 造が前者よ砺保発達している.大きな血管内 には主として赤血球を容れ,洞歌を呈する管内 には前記各段階の赤芽球が多数存在する.との 例で特記すべきことは,血管内皮から血球化す

る像に接することである.即ち血管内皮は次第 に大きさを増し,腔内に堤歌に膨隆し,原形質 は好塩基性穎粒状となり,核の構造も次第に繊 細と成り,前赤芽球に近づいて来る.しかしこ の場合考慮しなければならないことは,遊離し ている前赤芽球が血管内皮に密着しているため かかる所見を呈するのではないかということで あるが,両端に存する血管内皮との移行,或い は細胞の形態等より考え,やはり血管内皮に起 因を求めなければならない.以上の所見は極め て稀ではあるが,赤芽球の血管内発生,並びに その絨毛膜内局所産生に対して極めて重要な論

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拠を提供するものと考える.この時期において は未だ白血球,肥筋細胞等の 出現は見られな

v、.

 〔ii〕 同時期の造血臓器切片標本ヘマトキシ    リン・エオジン染色所見:

 (a)肝臓 拡大した血管腔は次第に縮小し,

肝細胞の配列も梢ζ整然と成っては来たが,未 だ索歌を示さす,小葉等の別は判然としない.

肝細胞の分剖像は前例程著明ではなV・が可成り 認められる.毛細血管内には前例と同様割合大 型の赤芽球,赤血球を容れているが,ヒれとは 別に散在性と赤芽球の小集団を認める.張拡大 で精検すると,原形質は好塩基性で核が比較的 大型のものから,次第に原形質が好酸性を示し 核が車軸歌を示すもの迄の赤芽球が数個乃至数 10個位集籏を成して存在する.これら細胞には 所々に間接分裂像が認められる.血管との関係 を追及すると,切片標本であるため余り明白な 所見は得られないが,血管外に存するもの,或 いは血管内に存在するもの等種々であり,肝臓 における恒久性赤芽球の発生は血管内か血管外 かを決定するには極めて旗重を要し,且つ難問 題と考える.白血球,骨髄巨態細胞の発生は認

められない.要するにと.の時期において初めて 赤芽球の発生が肝臓で観察される.

 (b)骨髄 既に第一・次髄腔の形成が認められ るが,未だ血球の発生は見られない.

 (c)皮下結合織その他 皮下結合織は,やは り支柱細胞のみで特別な造血像は認められな い。心臓,肺臓の発育も相当に進んで来たが未 だ不完全であり,唯気管支の発育が特に目立っ

てV、る.

 〔IV〕身長16三胎見(2例)

 絨毛膜小平標本メイ・ギムザ染色所見:

 前例と殆んど同じ所見で特記すべき所見は認 められなV・が,強い・て異なる点を挙げるならば1 大きな血管内の赤芽球の減少したことと,骨髄 三態細胞並びに貧喰細胞が梢ζ増加しているヒ とである.前赤芽球及び 胃髄亘態細胞の原形質 が突起を出している像がヒの標本では極めて著

明である.

 〔V〕身長17粍胎児(3例)

 〔i〕絨毛膜小皮標本メイ・ギムザ染色所見:

 〔III〕,〔IV〕で述べ::たと同じように極めて抄 い赤芽球の造血豫を示すが,前例で組織聞隙と 形容した,即ち大きな血管は一般に血管内皮も 明確となり,血管としての構造を次第に完備し て来てV・る.なお洞歌の形態を持つた網朕に写 る血管腔の内径は梅狭くなりつつある.非常 に細い毛細管様を示す所,叉は嚢状を呈する 所,盲端に終るもの等様々であるが,毛細管様 を示す管腔には主として赤血球が多く,嚢状を 示す所には赤芽球の集籏が張いようである.し かしこれらは場所的に特異性を認めることは出 来なV・.赤芽球は前赤芽球,大赤芽球,多染性 赤芽球,正染性赤芽球が大牛を占めるが,前例 に比すると量的には未分化な前赤芽球,大赤芽 球よりも次第に多染性赤芽球,正染性赤芽球が 多く成りつつあり,且つ各分化段階の赤芽球が より混在して:いる感が深い.特に〜二の例におい て:は,穎粒物及び赤血球等を貧憎した貧喰細胞 が密集し,或いは孤立して相当多数認められる

.骨髄亘態細胞の存在も略ζ同様であるが,未 だ白血球,肥絆細胞,淋巴節附の所在は証明さ

れなv・.

 〔ii〕 同時期の造血臓器切片標本ヘマトキシ    リン・エオジン染色所見:

 (a)絨毛膜 最:外層には円柱歌の細胞がCell an Ce11の配列を成す.とれを彊拡大で検する と,核は比較的大型でクロマチン配列は粗雑で あり核小体は認められなく,原形質は町費生で 穎粒状,室胞を有し,特に核の下方に粗大な壁 皿が認められる.との室胞歌を示すのは,恐ら くこの細胞が脂肪染色で強陽1生を示すことと併 せ考えると脂肪のためでないかと推測される.

上方は遊離縁で,大牛一嘗であるが,絨毛の多 い所は一部数暦を示す所がある.その下学には 結合織層があり,一暦の血管内皮によって囲ま れた洞1伏の管腔内には,極めて多数の赤芽球を 容れている.赤芽球の形態は小皮標本で観察し

(7)

たものと略ヒ同様であり,大型で核構造繊細で 核小体数個有する前赤芽球から,核構造殆んど 不分明で,原形質が好酸性を示す正門性赤芽球 に至る迄,集籏的に或いは混在して多数認めら れ,これに混じ核は濃縮し,原形質がこれに比

して大きく強い好酸性を呈する原始赤芽球,そ の他骨髄亘態細胞,貧喰細胞も相当数認められ

る.赤芽球は可成りの直接分裂像並びに聞接分 裂像を呈する.大きな血管はその下暦に存し,

管腔内細胞は殆んど赤血球か,さもなくば室虚 であり,上記洞門赤芽球とは極めて趣きを異に する.最:下暦には扁雫な細胞が一層に並ぶ.

 (b)胎盤 極めて複雑な構造を示し.特に胎 見側胎盤において甚だしい.即ち造栄養細胞だ けの所,或V・は合胞細胞だけの部分,叉は合胞 細胞暦とラングハンス暦との二暦迄分化した絨 毛等区々である.絨毛間腔は非常に狭く,赤血 球,白血球を多数容れている.絨毛結合織内の 血管内に一部赤芽球の七二が認められるが,前 記した絨毛膜血管内の像と比較すれば問題にな らない二丁:々たるものである.母体側の胎盤に は一部広範な二死稟が存し,大小不同の脱落膜 細胞が多数認められる.との細胞の核は明るく 核小体を1乃至数個有し,原形質は好酸性であ

り,多いものは数10個の核を有する亘態細胞を 形成する.この闇の血管内には赤血球,白血球 を多数容れているが,特別な造血像は認められ なV・.要するに二見側胎盤内で僅かな赤血球造 血を行っている所見である.

 (c)肝臓 肝臓固:有の構造は未だ示さなv・

が,可成り整然としており,毛細管腔も殆んど 正常に近V・歌態と成っている.なお肝細胞には 可成り彊い有糸分裂の像が認められる.前例に 比較すると赤芽球造血も相当多くなっている が,血管内外の歌態,赤芽球の微細な構造等は 明確でない.ヒ,の時期において特記すべきヒと は骨髄亘態細胞の存在を認めることである.

 (d)骨髄第一次髄腔形成が見られるだけで 特別に記載する所見は認められない.

 〔VI〕身長18耗胎見(2例)

 絨毛膜小皮標本メイ・ギムザ染色所見:

 前例と梢ζ異なる点は造血の極めて盛んな部 分と,梢ヒi衰えた:部分とが場所的に区別の出来

るととである.解剖学的に胎盤に近い部分即ち 絨毛の多い部分では旺盛な造血集が見られ,胎 盤を離れるに従い造血は不徹低下する.造血集 の少ない部分では血管の分化が著明で,旺盛な 部分におV・ては血管構造は未だ幼若な像を示 す,管腔内の諸細胞については特異な所見は認 められない.

 〔VII〕 身長19粍二見(1例)

 絨毛膜小皮標本メイ・ギムザ染色所見:

 との時期になると比較的急速に造血が衰え始 める.場所によって相当の差異は認められる が,初めの時期に観察された血海の如き像は殆 んど認められない.血管内赤芽球の種類,在り 方等には左程の変化は見られないが,原始赤芽 球は次第に減少の途を辿る.血管構造も可成り 整然として来たが,未だ動静脹の別等は判然と せす,走行も極めて複:雑である.血管外には血 球は:認められない.

 〔VIII〕身長20粍二見(2例)

 絨毛膜小皮標本メイ・ギムザ染色所見:

 特記すべき所見は殆んどなく前例と略ヒ同檬

である.

 〔IX)身長22粍胎見(1例)

 〔i〕絨毛膜骨皮標本メイ・ギムザ染色所見:

 先ず弱拡大で観察して気付くヒとは,赤芽球 の集籏が大きな血管の周囲に島嗅歌に存在する ヒとであり,末梢部に行くに従い造血輿は広く 認められる.同じような血管の走行,形態を示

しておりながら,場所によって造血巣に相当の 相異を認め,ある場所では殆んど赤芽球の集籏

を見なV・所もある.このヒとは前記諸所見と同 様,赤芽球が絨毛膜内で発生しているもので,

他から流れて来たものではないという証明には 極めて重要な所見の一つである.赤芽球の集団 が血管周囲に島懊歌を示すため,との例では特 に一見血管外発生を思わせるのであるが,前記 旧例と同じく強拡大で精細に検索すると,すべ

(8)

てこれら赤芽球は一暦の血管内皮によって形成 される管腔内に存在するヒとが判る.赤芽球の 形態その他は前記同檬であるが,多染性赤芽球 が量的には一番多く,実に多数の核分剖像が観 察される.この標本で特に注目すべきことは骨 髄百態細胞が著明に増加しているヒとで,形態 学的には前記したように区々であるが,屡々原 形質がアメー・バ様に突起を出している所見に遭 遇する.この所見は極めて興味あることで,次 の理由から一応蓮動性と結び付けて考え度い.

即ち骨髄巨態細胞の蓮動性に関しては色々異論 の多い所であるが,塗抹標本或V・は切片標本で アメーバ様突起を出しているため運動性ありと 論ずる学者に対し,それは機械的影響によって 然る所見を示すものであると反論している.確 かにそのヒとは充分考慮しなければならない が,私の観察している二皮標本は極めて生理的 欣態のまま固定され,かかる物理的影響は余り 問題にならす,且つ骨髄亘態細胞は極めて広V・

管腔に存し環境により原形質の輪廓が左右され るような二丁ではない.故に上記のような所見 を襯察するとき遊走性を有する細胞と考えるの が要当である.二二細胞は点々と存在するが,

前期程著明でなく漸次減少する傾向にあり,貧 喰細胞の出現歌況は赤血球造血の二丁と密接な 関係があるように思われる.一見卒面的となっ た洞状を示す管腔も,一二面上にあるのではな くて,相当の幅を持ち上下,左右に蛇行してお り,極めて複:雑な連絡を成しているヒとは顕微 鏡の焦点を上下することによって窺い知ること が出来る.

 〔ii〕 同時期の造血臓器切片標本ヘマトキシ     リン・エオジン染色所見:

 (a)絨毛膜 前記〔V〕絨毛膜所見と殆んど 二丁である.

 (b)肝臓 中心静脈も梢ヒ明瞭となり,肝細 胞はヒれを申心に索状の構造を示すが,赤芽球 の造血が急速に著明となったため極めて複雑な 像を呈する.ヘマトキシリン・エオジン染色だ けでは赤芽球の形態も余り明白でなく,所謂

Molller 60)のいう Klelne K:ernhalt五ge Zellen と

形容するのが最も適切である.これら細胞の血 管内外の厭態は,造血の盛んになったとの時期 では,なお更不明瞭となり断定出来る所見には 接しない.二等分裂の像が相当数見られ,赤芽 球の分裂か,肝細胞の分裂か区別出来ない所も あるが,概して赤芽球の方に多いようである.

ヒの期に入るとエオジン嗜好性白血球の発生も 襯察出来る.

 (c)骨髄 観察した範囲では第一次髄腔だけ で,造血開始の像は見られないが,髄腔内には 血管の新生が甚だしい.

 (d)胎盤 二二側胎盤は前例同様極めて複雑 な構造を示すが,少数の赤芽球を絨毛結合織血 管内に認めるのみでその他特別な造血像は見ら

れなv・.

 〔X〕身長25三胎免(2例)

 絨毛膜二皮標本メイ・ギムザ染色所見:

 22粍胎兇絨毛膜所見と殆んど同様であり,血 管の癸達した部分では著明に造血は減退しつつ あるが,なお末梢においては著明な赤血球発生 を観察するととが出来る.骨髄二二細胞は前例 より幾分少ないようであり,白血球,淋巴球,

肥絆細胞等の出現は認められない.

 〔XI〕身長30粍二見(1例)

 〔1〕絨毛膜二皮標本メイ・ギムザ染色所見:

 更に造血は減退し,場所によっては殆んど赤 芽球の集籏は認められない.血管構成は前記す べての例よりも成熟した三態となり,走行等も 比較的明瞭化して来ているが,造血の旺盛な場 所ではなお洞歌を呈する.一般に血管腔が漸次 狭くなりつつあるため,その条件に応じて赤芽 球の原形質が不規則な形態を取っているものが 多い.集籏を成す赤芽球は,前赤芽球,大赤芽 球が大門を占めており極めて旺盛な増殖像を示 している.多染性赤芽球,正門性赤芽球も亦と れら赤芽球と混在し,或いはとの分化段階の赤 芽球だけが多数血管内に存在する.造血集と血 管との関係について,栗原50)は脳膜の小門標本 で非常に血管分岐部を重要覗しているが,私の

(9)

標本では必ずしも特記すべき所見はないが,唯 分岐部にむいて:核分裂の盛んな所見に屡々遭遇 する.原始赤芽球は著明に減少しているが,な お所々に散在している.骨髄二二細胞の分布歌 態を検すると標本上において著い(差異が認め られる。即ち造血の消槌しかけた部位では極め て少ないが,造血の盛んな・部分では非常に多数 存在し,とれらの形態学的所見は前記同様であ る.貧弱細胞も少なくはなつ:たが,所々に大小 不同の穎粒物,赤血球等を取って観察される.

血管外・には血液細胞は認められない.

 σi〕同時期の造1血臓器切片標本ヘマトキシ     リン・エオジン染色所見:

 (a)絨毛膜 絨毛のある:部分を標本に作製し たため,絨毛の中には多数の赤芽球並びに赤血 球の集団が見られ,これらは一山の血管内皮に より形成された管腔内に存在し,これが大きな 血管との交通状態が観察される.大きな血管内 には殆んど赤血球だけが認められる.

 (b)胎盤 胎見側胎盤は,やはり極めて複雑 な構造を示す.絨毛結合織血管内に赤血球,赤 芽球が点々として認められる以外には特別な造 血集は観察されない.ヒ の標本では母体側の一 部に炎症像が見られ,多核白血球,その他細胞 の著明な浸潤が認められ,その部に前例程多く はないが,E態細胞が散見される.

 (c)肝臓 中心静脈は拡大し,内に少量の赤 血球を容れ,肝細胞はむしろ前例よりも造血が 旺盛となったため,極めて少ないような感じを 与え1配列も乱れている.ヒれに反して赤芽 球,白血球の発生共に極めて旺盛で,骨髄亘態 細胞の出現も顕著である.ヒれら血球の発生檬 式は血管外発生を推測させるような所見に屡々 遭遇するが,一概にこれを決定するヒとは未だ 早計である.

 (d)骨髄観察した範囲内では第二次髄腔の 像は認められなV・.

 ⊂X恥身長32粍胎見(1例).

 〔i〕絨毛膜二皮標本メイ・ギムザ染色所見:

 30三胎見絨毛膜二皮標本と殆んど同じ所見で

ある.

 〔ii〕 同時期の造血臓器切片標本ヘマトキシ    リン・エオジン染色所見:

 (a)絨毛膜 との時期になると洞ナ伏を呈する 管腔は著明に少なくなり,従ってとれに伴い二 段階の赤芽球も著明に減少している.ヒれ1に反 し血管外の結合織細胞が多くなり,相当の厚さ を示すようになる.場所によっては全然血管,

造血集の認めら れなN(:部分も割合に多い.

 (b)胎盤 特記すべき所見なし.

 (c)肝臓 30粍胎晃肝臓と略ζ同じ所見であ

る.

 (d)骨髄 ヒの例では第二次髄腔形成の兆し が認められる.髄腔は:極めて広くなり軟骨性化 骨の開始, それに件V・造骨細胞,破骨細胞の出 現が見られ,その聞の二葉細胞から血球化する 像が極めて少数であるが認められる。但しヒれ ら血球が赤血球系か白血球系なるかは切片標本 且つヘマトキシリン・エオジン染色だけでは余

り明白でなv・.

 〔XIII〕身長38粍胎生(2例)

 〔1〕絨毛膜小鼠標本メイ・ギムザ染色所見:

 造血集は極度に減少しているが,太い血管の 周囲,叉はその闇に点々としてなお幾分残存し ている.血管はヒれに反し非常に癸達し,一部 毛細管網を形成する.血管内には主として:赤血 球を容れているが,管腔が高歌を示す所,或い は捻珠歌を呈する所には赤芽球が多い.赤芽球 は極めて少量になったとはいえ,前赤芽球から 正染性赤芽球に至る迄の各分化段階の赤芽球が 集籏的に,或いは散在性に認められ,とれら赤 芽球には可成りの増殖像が観察される.骨髄三 態細胞並びに貧鉱細胞の存在は次第に姿を浩し つつあるが,なお少数認めるととが出来る.血 管外に組織肥絆細胞の出現を認め,管内に一部 好酸球を認めることが出来る,但し好酸球は成 熟した形態を示すものだけで,恐らくヒれは局 所で発生したと考えるより,その由来を他に求

めた方が理解し易い.        、  〔iii〕 同時期の造血臓器切片標本ヘマトキシ

(10)

リン・エオジン染色所見:

 絨毛膜,胎盤,肝臓,骨髄共に32野州見所見 と殆んど同檬である.

 〔XIV〕身長42粍下見(1例)

 〔i〕絨毛膜小皮標本メイ・ギムザ染色所見:

 赤芽球の集団は更に減少し,且つその集籏は 極めて小さく,細い血管内には…幣歌に密集して いる.血管の構造,走行は相当の成熟歌態を示 すが,未だ動,静脈の別,前毛細管,外膜位細 胞の区別等は判然としない,赤芽球の集籏は場 所的に梢ヒ特異性を示し,大きな血管の周囲に 多い 赤芽球は,やはり各分化段階のものが見 られ,相当の増殖像を示す.〜二の例で特記すべ き所見は組織野鳩細胞が多数存在することであ り,との組織肥絆細胞はすべて血管外に存し,

一部においては恰も血管を取り囲むかのように 位置を占めるもの,或いは血管に関係なく存在 するもの等種々である.組織野冊細胞の形態は 大小不同で円形若しくは卵円形を示し,顯粒は 極めて粗大で色調は梢ζ赤味が張く,核も箪 核,二野三核と色々の形態を取っている.未 だに血管外には白血球,淋巴野牛の出現は認め られなV・.骨髄巨態細胞,貧喰細胞共に:量的に:

は極めて少ないが,前記同様の形態を取って血 管内に散見される,要するに釜々造血集の減少 は顕著となり,僅かに赤1血球造血を保っている 歌態で,ヒれに反し血管の発育,組織肥肺細胞 の出現が目立っている所見である.

 〔ii〕同時期の遣血臓器切片標本ヘマトキシ     リン・エオジン染色所見:

 (a)絨毛膜 洞1伏を成す管腔は極度に少なく なっているが,所々になお・少数ではあるが赤芽 球の三野が認められる.

 (b)肝臓 ヒの例で極めて興味あることは,

毛細管が強く拡大し,その管腔内には主として 赤血球を容れ,一部赤芽球を混在するが,血管 外には強い赤芽球の集籏が著明に観察される.

今迄の例では毛細管と造血集との関係が余り明 白でなかったが,幸い毛細管の拡張があったた めその相互関係が梢ζ明瞭に窺い知ることが出

来た.ヒれら血液細胞の大野は赤芽球であるが 形態上の詳細は切片標本のみでは明瞭でない.

一部白血球,骨髄亘態細胞の発生も良く観察さ

れる.

 (c)骨髄 大腿骨を切片標本として検索し た.第二次髄腔を形成し,骨芽細胞,破骨細 胞,拡大した血管等が著明に観察され,同時に 血管外に血液細胞の癸生を認めるヒとが出来 た.ヒの血液細胞の大罪は赤血球系のようであ るが,その詳細はつまびらかでない.骨髄亘態 細胞は観察した範囲内では認められない.

 〔XV〕身長43粍国見(1例)

 〔i〕絨毛膜小子標本メイ・ギムザ染色所見:

 42粍胎見と略ζ同様な所見で,特記すべき所 見は認められない.

 tii〕 同時期の造血臓:器切片標本ヘマトキシ     リン・エオジン染色所見:

 絨毛膜,骨髄,胎盤等の所見は前例と同様で あるが,肝臓では小葉閻結合組織が梢ミ明瞭と なり,大小不同の写糊が肝細胞,:或いは細胞に は関係なく著明に認められるとと等が異なる が,造血像の所見にはi変化は認められない.

 〔XVI〕身長50粍胎見(2例)

 〔i〕絨毛膜小智標本メイ・ギムザ染色所見:

 血管は走行,構造共に整然となり,赤血球を 充満しているもの,或いは室盧な血管等色々で あり,概して動脈,堺町,前毛細管,毛細管等 の区別を付け得る状態である.而してヒれら血 管は樹枝歌に相連絡し,一部なお嚢歌を呈し極 めて管腔の広い部も認められる.血管内血球は 主として赤血球であるが,なお少数の赤芽球を 認めるととが出来,とれら赤芽球は一部集籏的 に存在する所もあるが,殆んど流血中に散在す るものが多く,且つ多染性赤芽球,及び正野 性赤芽球が大牛であり,前赤芽球,大赤芽球等 は殆んど認められない.但し赤芽球には相当の 核分剖像が散見される.:貧喰細胞は少数認めら れるが,観察した範囲内では骨髄亘態細胞は見 出すことは出来なかった.組織肥絆細胞は42粍 胎兇標本で観察した程著明でないが,血管外の

(11)

所々に認めるヒとが出来る.白血球,淋巴球等 の発生は全然認められない.

 〔ii〕 同時期の造血臓器切片標本ヘマトキシ     リン.エオジン染色所見:

 (a)絨毛膜 一部血管内に少数の赤芽球を認 めるのみで17粍乃至20三胎見頃の所見とは極め て趣きを異にする.

 (b)胎盤 胎下側胎盤は未だに極めて複雑な 構造を示すが,とれが造血集であるといい得る 所見は確認出来なV・.

 (c)肝臓 小葉の像梢ヒ明白となり,前例と 略ζ同様に極めて弧い赤血球発生が認められ,

〜これと混在して白血球,骨髄巨態細胞が散見さ れる.造血巣と血管との関係は余り明白ではな・

いが殆んど血管外において発生されているかの 如く考えられる.

 (d)骨髄 造血が次第に著明となり,その血 球種:は白血球系,赤血球系両者認められる.造 骨細胞も可成り多く認められ,血球との区別は 制然としている.破骨細胞か骨髄互態細胞か区 別は余り明瞭でないが,少数の亘態細胞を認め

ることが出来る.

 〔XVII〕身長55粍胎見(1例)

 〔1〕 絨毛膜小皮標本メイ・ギムザ染色所見:

 殆んど造血は浩槌し,赤芽球の集籏等は認め られないが,憎く僅か流血中に赤芽球を点々と 見ることが出来る.

 〔li⊃ 同時期の造血臓器切片標本ヘマトキシ     リン・エオジン染色所見:

 絨毛膜,胎盤,肝臓,骨髄共に50粍胎見と殆 んど同じ所見である.

 〔XVIH〕身長75粍胎見(1例)

 Li〕絨毛膜小骨標本メイ・ギムザ染色所見:

 造血像は完全に消失し,血管の走行,構造は 極めて整然としており,正に網の目を見るが如

き感を呈する。

 〔ii〕同時期の造血臓器切片標本ヘマトキシ     リン・エオジン染色所見:

 (a)絨毛膜 殆んど洞1伏を呈する管腔は見ら れす,且つ赤芽球も殆んど見られない.

 (b)胎盤特記すべき所見は認められない.

 (c)肝臓 前例より梢ヒ造血は衰えつつある が,逆に室胞が極めて多く認められる.

 〔XIX〕身長95粍二見(1例)

 絨毛膜小皮標本鉄ヘマトキシリン染色所見:

 造血集は勿論全然認められないが,極めて興 味深いことは血管の新生歌態が良く観察される

ととである.末梢部における毛細1血管は網歌に 回り,その所々に血管内皮細胞が既存の毛細血 管から分芽歌に枝分れを成している所見が屡々 認められ,それら血管内皮の原形質にその走行 に一致して室胞を有しながら伸びているもの,

或いは血管芽細胞として未だ血管腔形成を示さ す伸長しているもの等種々の新生様式を呈して いる.とれら新生しつつある血管には血管外膜 位細胞の存在は認められす,叉血管内皮細胞の 分裂像には接することが出来なかった.

   第2節海狸絨毛膜,肝臓,末梢       血の塗抹標本所見     第1項 絨毛膜塗抹標本所見

 8,15,16,18,22,25,26,32,39粍各胎 見の絨毛膜から前記独自の方法で塗抹標本を作 製,観察し,標本中に現われる細胞を次の8種

に区別した.

 量〕前赤芽球(Pro..Erb】.)形態は:二皮標本の 項で記載したものと略ミ同様であり,比較的大 型で原形質は幅狭く,純塩基好性を示し,添臥 顯粒状で,その核構造は極めて繊細複雑な網欣

を呈する.核小休を1乃至数個有するが,二皮 標本の場合と梢ζ異なり,中心部は明るい感じ

が強い.

li〕大赤芽球(M. Erb1.)原形質は同じく好塩 基性であるが,核構造梢ミ粗雑車軸歌となり,

核小体は消失しつつある.

 ii三〕多染性赤芽球(P. Erbl.)原形質は次第;に 血色素を含み多染性となり,核構造は更に粗荒 となり,核小体は認められない。

 iv〕正染性赤芽球(0.Erbl.)更に原形質は:黄

味を帯び赤血球特有の色調を呈し,核は縮小

し,一部車軸1伏を示す.

(12)

 v〕赤血球(Eryth.)核が浩失したもの.梢ζ 大小不同症があり,少数であるが多染性赤血球 及びジヨリー氏小体等が認められる.

 vi〕原始赤芽球(Pr五m. Erb1.)極めて大型の 赤芽球で,原形質は彊い好酸性を示し,核は濃 縮し,中央に存在するもの,叉は偏在するもの 等早々である、

 vii〕骨髄互態細胞(Megak.)軍核から10個近 くの核を有する細胞迄認められる。輩核の細胞 の原形質は梢ヒ好塩基性であるが前赤芽球に比

すれば問題にならない.核も染色性に乏しくク ロマチン配列の猷態もあまり明瞭でなく,何か 早急に多核になるのではないかという感を与え る.分化した多核の細胞の原形質は好酸性で穎 三四,内にアゾール好性の四丁が相当数認めら

れる.

 vii i〕好酸球(Eosin.:Leuk.)

 各例について800個を数え百分率を出し,表 示すれば次のようである.

Art

胎児身長  Inm.

Pro. Erb1.

M.Erb1.

P.Erb1.

0.:Erbl.

Eryth.

Prim. Erbl.

MegaK.

Eosin. Leuk.

8 15

3.05 18.50 19 50 25.25 31.20 2.50

 −1

2.75 16.50 16.75 23.25 35.75 0.75 0.50

16

1.75 12.00 16.50 20.00 46.00 1.25

18

2.50 14.75 22.50 15.CO 42.75 0.25 0.25

22

0.50 9.25 17.25 26.75 45.00 0.25

25

0.75 7.50 8.50 13.00 69.00

26

0.75 8.25 22.00 14.00 52.75

32

0.25 0.75 3.00 3.25 92.00

39

0.75 2.25 3.00 93.50

0.25

    第2項肝臓塗抹標本所見

 15,17,20,30,42,50粍各胎見肝臓塗抹 標本を作製し観察した.15粍胎見肝臓では赤血 球と一部原始赤芽球が認められるのみで恒久性 赤芽球は認められない.17粍三見標本では赤芽 球が次第に数を増し,その赤芽球の形態は大牟 恒久性赤芽球に一致し,前赤芽球から赤血球に 至る迄の各分化段階の赤芽球が多数認められ

る.30粍胎見頃より標本中に白血球が認めら れ,50粍胎見標本では好中球,好酸球,好塩基・

球が,赤芽球に比較すると極めて少数であるが 散見される。而して骨髄性の細胞も骨髄芽球,

前骨髄球,骨髄球,後骨髄球,多核白血球と各 段階のものを区別するヒとが出来る.

   第3項予見末梢血塗抹標本所見  15,18,22,30粍胎齢末梢血塗抹末標本を 観察した.各界共に赤血球が主であり,大小不 同症,多染性赤血球が著明で,ヒれに多染性赤 芽球,正染性赤芽球が少数混じ,慣習が大きく なるに従い赤芽球は漸減する.白血球は30粍胎

見標本で散見された他は殆んど認められなかっ

た.

    第3節 海瞑絨毛膜伸展標本      ヘモグロビン染色所見

 15,22,32,42粍胎見絨毛膜に:Lepehne氏 法55,によるヘモグロビン染色を施した.結果は 赤血球,赤芽球は殆んど例外なく陽性を示し,

特に原始赤芽球と考えられる大型の赤芽球は,

極めて強い黄褐色調を示し,他の赤芽球とは比 較にならない程彊陽性を示す.貧喰細胞は殆ん ど赤芽球,或いは赤血球を貧喰しているため に,〜これに一致し,叉は禰漫性に陽性であり,

骨髄亘態細胞は陰性である.

   第4節 海門絨毛膜小才標本ペル      オキシダーゼ反応所見

 22,32粍胎見絨毛膜にMc. Junkin氏法59)

を応用したが,赤芽球,骨髄百態細胞,貧喰細 胞等すべて陰性である.組織肥絆細胞,白血球 出現時期の標本を検索しなかったのでその結果 は不明である.

(13)

    第5節中性赤生体染色所見

 先きにトリパン青を使用したが,長時日を要 するため,注射期間中流産,若しくは胎晃が死 亡し目的を達することが出来なかった.故に注 入後短時聞で観察出来る中性赤を利用した.し かしヒの場合果して母体に注射した中性赤が,

胎見に完全に移行するか否か梢ぐ疑問の点があ ったが,幸い注射後屠刹迄の時間を梢く延長す ることによって良好なる成績を得ることが出来 た.結果は貧喰細胞にのみ陽性で,その中性赤

液胞は極めて粗大なものから微細な下下迄区々 であり,その在り方等には特異的なものはな く,概して粗大穎粒が多いようである.叉細胞 とは全然無関係に孤立して粗大な中性赤液胞を 認めるごとが出来るが,〜これは色々な歌況,或 いは中性赤液胞の大きさ等から判断して,恐ら く赤芽球の脱核した核が死後染色を呈したので はなかろうかと推測される.なお赤芽球,骨髄 丁丁細胞,血管内皮細胞等にはすべて陰性であ

る.

第4章研究成績総括

 海狽絨毛膜を舞台とする血球発生様式につい て系統的に観察し,第;3章研究成績で記載した 如き所見を得た.これら所見を通覧して総括的 に記述するならば,3二丁見絨毛膜では血管内 で第1世代赤芽球が主として産生されており,

次第に恒久性赤芽球の発生が加わって来る.而 して8粍胎児頃では恒久性赤芽球の産生が遙か に第1世代赤芽球の産生を凌駕する.恒久性赤 芽球の発生二二は管内発生であり,その原基細 胞の一・部は,15粍望見絨毛膜標本で観察された 如く血管内皮細胞にこれを求めなければならな い.恒久性赤芽球の発生は25粍胎門門迄極めて 旺盛であり,その後漸次減退するが,50野牛見 頃でもなお嘩かではあるが保守的造血が観察さ れる.との時期には殆んど第1世代の赤芽球は 見られない.造血の盛んな:部分は未分化な血管 構造を示し,初期には完全な洞歌を成す.造血 の消退に伴わない血管構築は次第に発達し,50 粍胎児頃において初めて動,守門の別が鑑別出 来るようになる.

 扱て私は先きに恒久性赤芽球の産生,或いは 発生と簡明に表現したのであるが,果してヒれ ら血管内に存在する赤芽球の由来を局所に求む べきか,又は他から流れ来たものとして取り扱

うべきかは極めて疑問の多V・所である.しかし 私は次の所見から絨毛膜で発生されたものと推

定する.

 i〕肝臓の赤血球発生に・先行して,上記所見の 如く絨毛膜内で極めて多数の恒久性赤芽球の発 生を血管内に認めること.

 fi〕とれら赤芽球には,前赤芽球から赤血球 に至る迄の分化過程が明瞭に観察されるヒと.

 hi〕而も各分化段階の赤芽球が集籏的に存在 する傾向が強く,ヒれら赤芽球にぱ極めて彊い 増殖像が見られること.

 iv〕未成熱な血管内には多数の赤芽球を容れ ているが,大きな血管内には赤血球が野牛であ

ること.

 v〕同じ時期で,且つ同じ血管様相を示しな がら,造血の極めて旺盛な部分,次第に消退し かける部位,殆んど造血巣を見ない所等場所的 に特異性を有するとと.

 vi〕血管内皮細胞から血球化する像が認めら れること.

 以上の所見は局所癸生を裏書きするのに,必 要にして且つ充分な条件であると考える.

 赤芽球の形態については,独自の方法で絨毛 膜から塗抹標本を作製し,詳細に観察し,とれ ら赤芽球の大牟は,3例時見を除き形態学的に 略ヒ恒久性赤芽球であるととを確認した.

 赤芽球と混在して血管内に骨髄亘態細胞を,

8粍胎見から約42粍胎見頃迄認める〜二とが出 来,その間17粍胎見乃至30粍胎見頃最:も多く観 察される.8粍胎児絨毛膜内に僅かながら既に

(14)

骨髄亘態細胞が認められるのであるが,この時 期には胎見の如何なる部位においても骨髄亘態 細胞の発生は認められなく,且つ極めて幼若な ものから数個の核を有する成熟したもの迄認め られる点から,核細胞も亦絨毛膜内で発生した ものと推測される.しかし乍ら〜これが如何なる 細胞から分化し来たものか,即ちヒの細胞の原 基細胞は何かということは,私の襯察した標本 からだけでは解答は下し得ない.なお22粍下見 で観察されたように,原形質が棍棒欣,或いは アメーバ様の突起を出しているが,〜これは一応 蓮動性と結びつけて考え度い.

 貧喰細胞の存在は,赤血球造血集に極めて:特 異的とされているが,絨毛膜にお・いても相当初 期からその出現を観察すると.とが出来,赤芽球 造血の旺盛になるにつれ,次第にその数を増 す、とれら細胞の存在はすべて血管内であり,

場所的な特異性を示さないが,主として赤芽球 の集籏と相混じて観察される.貧喰しているも のは赤芽球,赤血球,大小不同の穎粒物等であ り,極めて多く早喰:しているものは細胞の形態 が不明瞭となっている.

 次に肝臓の造血であるが,約15粍胎見頃から 開始され絨毛膜の造血が減少するに{恥(逆に旺 盛となり,胎生全期を通じて認めるヒとが出来 る.初期には恒久性赤血球の発生が主体を成 し,その後骨髄回避細胞並びに白血球の発生が 加わる.而してとれら血球の発生様式は,私の 観察した切片標本だけの成績では確定的なこと はいえないが,42粍胎児の所見,即ち幸い毛細 管が張く拡張し,血管と造血集との相:互関係が 比較的明瞭で,血管外発生を推測させる像に接 し:た.25粍胎兇頃になると急激に肝臓の造血が 著明となるが,この頃から絨毛膜では反対に急 速に造血は減少し始める.

 骨髄造血は15粍胎見頃第一次髄腔形成を見,

32粍胎見頃第二次髄腔,卸ち造血を開始する.

血球発生檬式は余りつまびらかでなV・が,肝臓 と同様血管外発生が大孚を占める.

 その他絨毛膜,肝臓,末梢血塗抹標本所見,

ヘモグロビン染色所見,ペルオキシダーゼ反応 所見,並びに生体染色所見については第3章に 胎いて総括的に記載したのでととでは省略す

る.

第5章 考  1846年K611ikerが胎生期造血問題研究の端緒

を開いて:以来,Askanazy 6)7)(1904),Maxlmow 5臼)57)58)(1907,1909,1928),Naege】i 6、)(1906),

Dandy」1) (1910), Jordan 35)(1916), sabin 78)

(1921), KnoU 43)44)45)(1930, 1932, 1949),

:Bloom 9)(1940),我が国におV・ても杉山,泉,

山田89)(1936),勝沼38)(1919),栗原49)50)(19 36),天野,萩尾,姜5)(1944),等の研究があ

り,血球の艶生は例外なく中胚板に起因する未 分化干葉組織が直接根幹となっていることは血 液学上の通念であるが,その詳細な問題につい ては各研究者の意見は極めてまちまちである.

御見外造血特に卵気嚢,胎盤造血についての観 察は比較的多いが,私の研究対象とする絨毛膜 についての記載は極めて少なく,Knoll 43)(19

30),Dandy 11)(1910)等が報告しているに過ぎ なV・.氏等は人胎見を材料とし絨毛膜におV・て 夫々赤血球造血を観察し血島,血管内発生様式

と主張している.特にDandyは血管内皮細胞 から直接血球が分化する像を記載しているが,

すべてヒれらは切片標本における観察であり,

その附図は模型的挿画で代用し,所見の記載や 読明も詳細を欠く憾みがある.私は海狸絨毛膜 を材料とし,前記研究方法によって第3章に記 載した如き研究成績を得たので,次の項に分け 色々の観点から分析的に,或いは構築的に考察

を試み度v・.

    第1節材料並びに研究方法        に関する考察

 胎生期造血研究業績が必らすしも一致を見て

(15)

いなV・理由の一つには,材料並びに研究方法の 異なるととが挙げられる.人類を材料とした場 合と,哺乳類を材料とした場合,その結果に相 異のあるヒとは勿論であり,且つ同じ哺乳類を 材料としてもその研究術式によって極めて懸離 れた結論を得るととは当然である.胎生期造血 問題の解決には,人類の材料を取り扱うのが最 も理想的であるが,その蒐集は甚だ困難であ り,特に絨毛膜の入手は殆んど不可能といわね ばならない.故に私は最:も簡軍に入手出来且 つ血球の形態が極めて人類に近V・海瞑を材料と

して検索したが,フィロゲニテイシュにも極め て曙示に富む所見を提出し得たものと思う.従 来系統的観察に極めて便利な鳥類を材料とした 研究は数多く見られるが,人類,哺乳類を材料 とした場合の観察は断片的なものが多い.との 点に留意して:各時期の多数例を未だ余り試みら れていない小皮標本に基いて,可及的系統的に 観察しようと試みた積りである.しかし標本の 入手には限度があって,血球癸生を論ずる上に 最:も大切な極く初期の絨毛膜は観察し得なかっ た.その補足を家鶏卵黄嚢に求めた訳である.

所で研究術式に対する吟味であるが,従来最も 多く用いられているのは固定切片標本である.

ヒれでは組織の縮小や変形は或る程度さけられ ないし,その立休的関係を知るべく胃管切片法 を併用しても,血球の微細な構造や位置的関係 を把え得べくもなく,その結果ある断片的な所 見から組立てられた推理的結論が多かった.そ の後下:黄嚢等の薄膜は小皮標本として観察する ヒとに成功し,造血集と血管との関係等全体の 把握にはヒの術式は極めて便利である.次いで Sabin 78)(1920)は家鶏造血について生活時観察 法(二見と卵黄嚢と共に卵黄から分離し,とれ を凹硝子の上に懸滴せしめ,家鶏胎見液を加え たL・ocke一:Lewis二二に漬るように操作し,前 後約5時間を生活させて観察する.)を考按し 更に術式上に進歩を齎らした.その闇との種の 研究には清野40)41)(1919,1928)の骨休染色,

及び勝沼3『)(1919)のオキシダーゼ反応等の業

績が与って:多大の力があった.最:近栗原50)(19 36)が人i類及び家兎の二二脊髄膜を伸展標本と して造血を観察しπことが高く評価されてい る.扱て私の研究方法は前述の通りであるが,

次のような特色を挙げるととが出来る.

 i〕絨毛膜を二皮標本として観察しπのは私 を以て嗜矢とする.

 ji〕三下標本によって立体的な組織像を完全 に握み得る.特に血球発生に極めて重要な問 題,即ち血管と造血巣との関係が良く観察され

る.

 iii〕未乾燥小皮標本にはメイ・ギムザ染色法 を直ちに応用することが出来,当教室の有馬が 先きに報告した方法を用いると極めて美麗な標 本が作製される.

 iv〕その他ヘモグロビン染色,中性赤生体染 色,過酸化酵素反応等にも応用出来る.

 v〕絨毛膜から独自の方法によって塗抹標本 を作製し,血球の形態について詳細に観察し得

た.

 vi〕他の造血臓器との関係を知るため胎見の 切片標本を併せて襯察した.

 以上の諸点から私の研究術式は他に比し損色 なく,合理的な研究方法と考える.

   第2節赤血球発生に関する考察

    第1項第1世代赤血球発生

 第1世代赤血球が下見外,例えば卵黄嚢及び 胎盤等において発生し,その発生様式は初め門 島造血であり,その後血管内造血を探るという ことは,多数の血液学者によって認められた所 である.しかし最も根本的な問題である血球原 基が先か,血管原基が先かの問題は未だ未解決 であり,特に丁田見に関する限り充分な材料が 得られないため,これを明瞭に記載したものは な\へ通常家兎(勝沼38)1919)海狸(Maxlmow 55)1928)家鶏 (Da,ntschakoff 12)1907,清野41)

1919,Sabin?8)1921)による観察を以てヒれを 補なっている.便宜上清野の見解を簡箪に記載 すると,最:初の血島形成に当って:一般紡錘歌,

且つ有突起性の間葉細胞の問に結節歌の緻密な

参照

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