論 文 の 要 旨
申請者 宮川 義弘 研究論文題目
甲状腺未分化癌に対する
uPA
活性依存的腫瘍溶解性センダイウイルスによ る新規治療法の検討1.
背景と目的甲状腺未分化癌は稀ではあるが非常に悪性度が高く難治性の疾患である。
手術の他に有効な治療法は無いが、急速な増大と周囲臓器への浸潤のため初 診時には既に切除不能な場合も多く、新規治療法の開発が望まれている。
Urokinase-type plasminogen activator (uPA)
は腫瘍の増殖、浸潤に関与するプ ロテアーゼの一つであり、甲状腺未分化癌においても発現が報告されている。齧歯類の呼吸器感染症起因ウイルスであるセンダイウイルスを改変し、悪性 腫瘍が発現する
uPA
活性依存的に細胞融合を誘導する腫瘍溶解性ウイルス が開発されている。今回、
uPA
活性依存性腫瘍溶解性センダイウイルスによるヒト甲状腺未分 化癌細胞株に対する治療効果をマウス移植モデルを用い前臨床的に検討し た。2.
対象と方法ヒト甲状腺未分化癌細胞
3
株(KHM-5M
、8305c
、8505c)
に対しuPA
活 性値を測定した。In vitro
においてウイルス投与後の甲状腺未分化癌細胞の 形態変化を観察し、また感染力価(multiplicity of infection 0.25
、1
、2.5
、5
、10)
毎の殺細胞効果を測定した。uPA
阻害薬plasminogen activator inhibitor-1
を投与し殺細胞効果への影響を検討した。5
週齢BALB/c
ヌードマウスの右脇腹に甲状腺未分化癌細胞KHM-5M
を
5×10
6 個移植し皮下移植モデルを作成した。治療ウイルス投与群、コントロールウイルス投与群、PBS 投与群の
3
群において、腫瘍体積が 200mm
3 以上となった日から3
日ごとに3
回それぞれ腫瘍内投与し、移植後21
日目まで観察し腫瘍体積を比較検討した。より臨床的なモデルとしてマウス甲状腺同所移植モデルを作成した(甲 状腺右葉へ KHM-5M 2.5×105 個移植)。移植後 1、4、7 日目にウイルスま
たは
PBS
を腫瘍内投与し、以後体重減少率20%
をもって犠牲死とし生存 曲線を作成した。組織学的検討として、同所移植モデルにおいてウイルス投与
48
時間後に 犠牲死させ摘出した腫瘍に対しTUNEL
染色および抗GFP
抗体免疫蛍光 染色を行った。培養細胞に対し治療ウイルスと汎カスパーゼ阻害薬Z-VAD- FMK
を投与し殺細胞効果への影響を測定した。3.
結果ヒト甲状腺未分化癌細胞株は
uPA
活性を示し、腫瘍溶解性センダイウイ ルスにより細胞融合および細胞死が誘導された。殺細胞効果はコントロール ウイルスと比較し有意に高く、力価依存的であり、uPA
阻害薬によって抑制 された。甲状腺未分化癌皮下移植モデルにおいて治療ウイルスは有意に腫瘍増大 を抑制した(
PBS
群1532.0 ± 301.6
、コントロールウイルス群2032.7 ± 313.8
、 治療ウイルス群774.6 ± 354.4 mm
3)。同所移植モデルにおいて治療ウイルス は有意に生存期間を延長した(PBS
群17.7 ± 6.3
、コントロールウイルス群17.0 ± 2.9
、治療ウイルス群41.6 ± 15.0
日)。組織学的検討では、治療ウイルス群において
TUNEL
陽性細胞が増加し、in vitro
において汎カスパーゼ阻害薬の投与は治療ウイルスの殺細胞効果を有意に抑制した。
4.
考察本研究において
uPA
活性依存的腫瘍溶解性センダイウイルスはヒト甲状 腺未分化癌細胞株に対し高い抗腫瘍効果を示し、腫瘍溶解性ウイルス療法 として初めて甲状腺未分化癌同所移植モデルを用いて生存期間を有意に延 長した。実臨床においては甲状腺は超音波ガイド下穿刺など比較的低侵襲 な手技によって投与可能であり、本ウイルスは甲状腺未分化癌に対する新 規治療として期待される。
5.
結論腫瘍溶解性センダイウイルスは甲状腺未分化癌に対する新しい治療法の一 つとなり得ると考えられる。