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角膜上皮創傷治癒過程における urokinase-type plasminogen activator receptor の役割と機能

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博 士 学 位 論 文

角膜上皮創傷治癒過程における

urokinase-type plasminogen activator receptor の

役割と機能

近 畿 大 学 大 学 院

医 学 研 究 科 医 学 系 専 攻

角膜上皮創傷治癒過程における

urokinase-type plasminogen activator receptor

(2)

博 士 学 位 論 文

角膜上皮創傷治癒過程における

urokinase-type plasminogen activator receptor の

役割と機能

平 成 30 年 11 月

医 学 研 究 科 医 学 系 専 攻

近 畿 大 学 大 学 院

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角膜上皮創傷治癒過程における

urokinase-type plasminogen activator receptor の役割と機能

近畿大学医学部 眼科学教室 歌 村 翔 子 (指導:日下 俊次 教授)

The role and function of urokinase-type plasminogen activator receptor in corneal epithelial wound healing process. Shoko Utamura

Department of Ophthalmology, Kindai University Faculty of Medicine (Director : Prof.Shunji Kusaka)

抄  録

 角膜上皮細胞の正常な修復機能は,病原体の角膜内への侵入を防ぎ,2 次的な角膜障害を予防する上で極め て重要である.再被覆過程においては角膜上皮細胞間あるいは角膜上皮細胞−細胞外基質間で種々の因子が複 雑にかつ協調的に働いている.線溶系因子は細胞外基質の発現による細胞接着と脱着に関与し,重要な働きを 果たしていると考えられる.

 urokinase type plasminogen activator (uPA) と高い親和性で結合する uPA receptor (uPAR) は角膜上皮創 傷治癒過程において角膜上皮細胞にその発現を認めることが報告されているが,役割については全く解明され ていない.そこで本研究では角膜上皮創傷治癒過程における uPAR の役割を検討した.

 uPA KO マウス (uPA−/−),uPA/uPAR DKO マウス (uPA−/− uPAR−/−) の角膜上皮を擦過し上皮欠損を

作成し上皮の再被覆過程を検討したところ,36 時間後には uPA/uPAR DKO では上皮欠損の修復が,uPA KO に比べ有意に遅延していた (上皮欠損面積残存率,uPAKO:47.9±12.6%,uPA/uPAR DKO:64.1± 11.9%,p < 0.05).

 さらに uPAR 過剰発現角膜上皮細胞 (uPAR-HCEC) とそのコントロール細胞(empty-HCEC) を用いた 検討を行った.フィブロネクチンプレート上でのスクラッチアッセイでは uPAR-HCEC (24 時間後の欠損部 距離,91.6±22.4μm) は empty-HCEC (221.8±48.5μm) に比べ有意に遊走能が亢進しており,それらは抗 uPA-ATF 抗体 (239.3±31.1μm,290.5±34.6μm),uPA-inhibitor (347.7±24.0μm,418.02±27.79μm) で抑制 された (p < 0.01).MTT アッセイでは,uPAR-HCEC は empty-HCEC に比べ有意に増殖能が亢進していた. また免疫蛍光染色で細胞間の gap junction でみられる connexin 43 の発現が uPAR-HCEC で減弱していた.  uPAR の角膜上皮細胞に対する作用は複数のメカニズムが関与していると考えられた.本研究の結果からは, uPA と協調して細胞周囲の局所線溶を促進しフィブロネクチンと細胞との脱着を促進させる働きがあること, uPA との結合により角膜上皮細胞の伸展を促進させること.角膜上皮細胞の増殖能の亢進に関与しているこ と,また gap junction を弱める作用に関与している可能性があることが明らかになった.

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緒  言  角膜は眼球の最外層に位置し,角膜上皮層,角膜実質層,角膜内皮層の 3 層構造で成り立っている.各層に はそれぞれ高度に分化した細胞 (角膜上皮細胞,角膜実質細胞,角膜内皮細胞) が存在しており,光学経路に ある組織として重要な役割を果たしている.光を眼内に適切に送る必要があるため,光学的に透明であること と屈折を担うための十分な屈曲を持つことが要求される.そのため,他の組織とは異なる様々な特徴を有して いる.角膜の大きな特徴としては,無血管であること,透明であること,知覚神経が発達していること,曲率 をもった固い組織であることなどがあげられる.  角膜上皮細胞は外界と角膜内との間のバリアー機能として働くと同時に,角膜実質の透明性を維持するため に機能している.解剖学的に角膜上皮は 5−6 層の層構造を成しており,表層細胞,翼細胞,基底細胞の 3 種 類の細胞に分けられる.そして基底細胞がボーマン膜に隣接した基底膜に接着している1, 2.角膜上皮は直接 外界に接しているため,外界からの傷害に対する防御能を有する必要がある.表層細胞は tight junction によ り外界からの物質の侵入を防いでいる.しかし,表層細胞は増殖能を有していないとされており,創傷治癒過 程においては重要な働きはしていないと考えられている.そして角膜上皮細胞の中では,基底細胞のみが増 殖能力を有している3, 4.従って,正常な角膜上皮が傷害を受けた際には,基底細胞がその高い増殖能により 速やかに上皮修復を行う5.受傷後数時間以内に,周辺の基底細胞が欠損部位へ伸展を開始し,1 層に被覆す る6, 7.そして被覆が終わった直後から,上皮細胞は増殖を開始し8,翼細胞,表層細胞へと分化していく.表 層細胞は,最終的には涙液に流され脱落していく.角膜上皮細胞の turn over は 1−2 週間である9.この角膜 上皮修復過程における角膜上皮細胞の動態は,X:基底細胞の増殖,Y:欠損周囲の細胞の欠損部への移動,Z: 眼表面からの表層細胞の脱落として広く知られている10.  角膜上皮細胞の正常な修復機能は,病原体の角膜内への侵入を防ぎ,2 次的な角膜障害を予防する上で極め て重要であるが,糖尿病,栄養障害性角膜潰瘍,脳腫瘍による三叉神経障害や,三叉神経ブロック,再発性角 膜上皮びらんなど種々な要因で角膜上皮の正常な修復が行われず,角膜上皮欠損が遷延化することがしばしば みられる11, 12  角膜上皮の再被覆過程においては,角膜上皮細胞間あるいは角膜上皮細胞−細胞外基質 (extracellular matrix:ECM) 間で種々の因子が複雑にかつ協調的に働いている.フィブロネクチンは,角膜上皮の再被覆 の過程で創部に発現し,細胞接着を促進する ECM である.西田らは角膜創傷治癒過程において,フィブロネ クチンが創部に発現することを見出した13.また,血液からフィブロネクチンを精製し,点眼薬として角膜上 皮の再被覆に効果があることを報告した14.この点眼薬は製品化はされていないが,現在でも臨床の場におい て治療に用いられている.このフィブロネクチンによる角膜上皮細胞の移動促進のメカニズムには,細胞の接 着促進と同時に細胞とフィブロネクチンとの脱着が必要である.  当研究室の森本らは,家兎角膜を器官培養し,角膜上皮細胞より産生される urokinase-type plasminogen activator (uPA) が細胞とフィブロネクチンなどを含めた基質からの解離に作用し,uPA によって角膜上皮細 胞の移動が開始されることを報告した15

 uPA は線溶系因子のひとつであり,生体内の線溶反応に携わる蛋白質である.線溶反応とは,一般的に 血栓を溶かして分解する生理反応のことであり16,その中心的役割を行っているのは,plasminogen-plasmin

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system である.plasmin は通常不活性の前駆体 plasminogen として血液中に存在しており17,plasminogen 活

性化酵素 (plasminogen activator) により活性化される.plasminogen activator には,tissue-type plasminogen activator (tPA) と uPA の 2 種類が存在する.tPA の作用は主に fibrin の除去である.一方,uPA は種々の matrix-metalloproteinases (MMPs) や growth factor を活性化させることにより,細胞周囲の蛋白分解に働 く18.これは細胞性線溶19と呼ばれる反応であり,この反応は線溶系因子が細胞表面の受容体に結合し,そ

の周囲での蛋白分解活性の発現や制御,また細胞内伝達物質の誘導に関与する反応をいう20.

 当研究室の児玉らは,uPA 遺伝子欠損マウスの角膜上皮欠損モデルを作成し,in vivo においても uPA が角 膜上皮の再被覆を促進させる作用があることを証明した.また上皮欠損の修復過程において,uPA receptor (uPAR) が角膜上皮欠損部を伸展,移動する角膜上皮細胞に強く発現することも報告している21

 近年,uPA と高い親和性で結合する uPAR は,uPA の細胞外基質分解作用の促進の他に,インテグリンと ユニット形成し細胞内シグナル伝達に関与すること,またフィブロネクチンやビトロネクチンと親和性がある ことや,癌細胞の増殖に関与していることが報告されている.しかし,角膜上皮における uPAR の機能につ いては報告がない.そこで,本研究では角膜上皮創傷治癒過程における uPAR の役割について検討した. 材料と方法 1.マウス  実験動物は,近畿大学松尾理名誉教授よりご提供いただいた 12−16 週齢の uPA 遺伝子欠損マウス (uPA−/−, uPA knockout, 以下 KO),uPA/uPAR 二重遺伝子欠損マウス (uPA−/−/uPAR−/−, uPA/uPAR

doubleknockout,以下 DKO)とその野生型マウス (uPA+/+/uPAR+/+, uPA wild type,以下 WT) を使用し

た22, 23.飼育は室温 22℃,湿度 50%,明暗調節環境下で固形飼料,水を自由に摂取させて行った.本研究で

行った動物実験は,近畿大学医学部動物実験委員会の承認を受け,近畿大学医学部動物実験規定を遵守して実 施した.

2.マウス角膜上皮欠損モデルの作成

 uPAKO マウス,uPA/uPAR DKO マウス,uPA WT マウスを用い, ペントバルビタール (50 mg/kg,ソ ムノペンチル ®,共立製薬,東京) にて麻酔し,角膜上皮剥離前に 0.4% 塩酸オキシブプロカイン (ベノキシー ル ®,参天製薬,大阪) を点眼した.その後,実体顕微鏡 (Nikon,東京) 下で角膜上皮の直径 3mm の中央部 を Straight microsurgical blade (MANI® Opthalmic Knife, MANI,栃木) を用いて剥離した.

3.細胞培養

 佐々木香る先生 (星ヶ丘医療センター,愛知) よりご提供いただいた SV40 の T 抗原をアデノウイルスベク ターを用いて細胞内に移入し作成したヒト不死化角膜上皮細胞 (human corneal epithelial cell,以下 HCEC) を用いた24.杉岡ら25の報告に基づいて,10% fatal bovine serum (FBS, Gibco-BRL, Grand Island, NY),

gentamycin (0.8μg/ml, Sigma, St. Louis, MO, USA) を含む, Dulbecco’s modified Eagle’s medium (DMEM, Gibco) /F12 (1:1) 培養液で継代培養した.また,細胞は 37℃,CO2 5% の条件で培養,維持した.

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4.マウスの前眼部観察

 uPAKO マウス,uPA/uPAR DKO マウス,uPA WT マウスそれぞれの角膜上皮欠損部の治癒過程を時間 毎にフルオレセイン染色し,実体顕微鏡下で定期的に観察し, 24,36,60,72,96,120,144,168 時間後に 写真撮影を行った.これを area measurement Software (Arms System,東京) に取り込み,上皮欠損面積を 計測し,角膜上皮欠損残存率 (%) (角膜上皮欠損部の面積 (mm2) ×100 /角膜上皮欠損作成時の面積 (mm2))

を求めた (各群 n=12).

5.uPAR の強制発現ヒト不死化角膜上皮細胞の樹立

 uPAR の角膜上皮細胞における機能を解明する目的で,uPAR 強制発現ヒト不死化角膜上皮細胞を樹立した. uPAR を安定発現させる HCEC を作成するために,Epstein-Barr virus(EBV)由来の複製起点 OriP と EBV Nuclear Antigen 1 (EBNA1) 遺伝子をもつ pEBMulti-Hyg ベクター (Wako Pure Chemical Industries, Ltd, 大阪) を使用した (図 1).pEBMulti-Hyg ベクターは導入されたヒト細胞内で,安定的に複製・維持され,目 的遺伝子 (本例の場合は uPAR の遺伝子) を hygromycin B 存在下で長期間発現させることが可能な蛋白質発 現ベクター (プラスミド) である.pEBMulti-Hyg ベクターの multiple cloning site (MCS,表 1) 内の制限酵 素認識配列 XhoI と EcoRV の間に uPAR cDNA を挿入した.ヒト線維芽細胞由来 cDNA ライブラリー (Ori-Gene Technologies,Rockville,MD,USA) から,pEBMulti-Hyg ベクターに連結させるため,表 2 に示す 制限酵素認識配列を両端 (5’側 (Forward) プライマーに XhoI,3’側 (Reverse) プライマーに EcoRV) に含 む uPAR cDNA (Homo sapiens plasminogen activator, urokinase receptor, mRNA (cDNA clone MGC:3905 IMAGE:3617894),complete cds. , GenBank accession number BC002788) のうちの uPAR 蛋白質コーディン グ領域である 66 ~ 1073 番を PCR により増幅して得た.この cDNA と,制限酵素 XhoI および EcoRV で切 断した pEBMulti-Hyg ベクターをライゲーションして uPAR 発現ベクター (以下,pEB-uPAR) を構築した26

また,control (正常対照) として,cDNA をライゲーションしていない空ベクター (以下,pEB-empty) も別 に調製した.Lipofectamine LTX (Life Technologies, Carlsbad, CA, USA) を用い HCEC に pEB-uPAR,pEB-empty をそれぞれトランスフェクションし,pEB-uPAR, pEB-pEB-uPAR,pEB-empty を hygromycin B (200 μg/ml) 存在下で 安定的に保持する HCEC (以下,uPAR-HCEC, empty-HCEC) をそれぞれ樹立し実験に用いた.

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6.Western blot 法による uPAR の発現の検討

 作製した uPAR-HCEC による uPAR の発現を Western blot 法により確認した.uPAR-HCEC, empty-HCEC を 1×105個でプラスチック 35 mm マイクロプレート (Easy Grip Tissue Culture Dish®, Thomas Scientific,

NJ, USA) に播種し,10% FBS を含む DMEM/F12 培養液で 24 時間培養した.その後, FBS (-) の DMEM/ F12 培養液に交換し,同様に 24 時間培養後,氷上で上清を吸引し,冷却した Dulbecco’s Phosphate Buffered Saline (PBS, Sigma, St. Louis, MO, USA) を加え, セルスクレイパー (住友ベークライト,東京) で接着細胞を 剥がし,得られた溶解液を 1.5 ml エッペンドルフチューブ (BMbio,東京) に入れ,3,000×g, 5 分間,4℃で 遠心した.上清を除去し,CellLyticTM M Cell Lysis Reagent (Sigma, St. Louis, MO, USA) と Cocktail of

Pro-tease Inhibitor (Roche Diagnostics Coorporation, Indianpolis, IN, USA) を加え,撹拌させ,氷上で 15 分静置 した.その後,13,000×g,15 分間,4℃で遠心し,上清をトータルの細胞溶解液とした.ポリアクリルアミド ゲル (Invitrogen, Carlsbad, CA, USA) を用いて 250V,30mA で電気泳動し,メタノール (wako,大阪) で浸 水処理をした Poly Vinilidene DiFluoride (PVDF) 膜 (Invirogen, Carlsbad, CA, USA) に転写した.転写した PVDF 膜を 0.1% Tween 20 (ICN Biomedicals, CA, USA) を含む 50 mM Tris-Buffered Saline pH 7.4 (Takara, 滋賀,以下 TBS-T),5 % スキムミルク (Difco TM Skim Milk, Wako,大阪) に浸し室温で 60 分間ブロッキ ングし,TBS-T で洗浄した後,1 次抗体として抗 uPAR 抗体 (500 倍希釈) (Santa Cluz Biotechnology, Santa

表2.制限酵素認識配列 ( 下線 ) を含む uPAR のプライマー塩基配列

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Cruz, CA, USA),またコントロールとして抗ヒト GAPDH 抗体 (500 倍希釈) (Santa Cluz Biotechnology, Santa Cruz, CA, USA) に PVDF 膜を浸し,4℃で一晩静置した.翌日,TBS-T で洗浄し,2 次抗体として horserad-ish peroxidase-conjugated donkey anti-rabbit IgG antibodies (5000 倍希釈) (GE Healthcare Bio-Sciences,東 京) に室温で 60 分間反応させた.再度 TBS-T で洗浄後, ECLTM Western Blotting Detection Reagents (GE

Healthcare Bio-Science,東京) で 1 分間反応させ,Image Reader LAS-1000 system (富士フイルム,東京) を 用いて目的シグナルの検出を行った.

7.免疫蛍光染色による uPAR の発現の検討

 uPAR-HCEC の uPAR の発現を確認するために,免疫蛍光染色を行った.8 well chambar slide (WATSON, 東京) に uPAR-HCEC を 1×104個播種し,10 % FBS を含む DMEM/F12 培養液で 24 時間培養後,上清を吸

引し, PBS で洗浄後, 20℃で冷却した 99.5% エタノール (Wako,大阪) にて室温で 5 分静置し細胞を固定した. PBS + 0.3% TritonX (Wako,大阪) で希釈した 5% ヤギ抗体 (Invirogen, Carlsbad, CA, USA) で 60 分浸漬 しブロッキングした後,1 次抗体として抗 uPAR 抗体 (500 倍希釈) を入れ,室温で 60 分間反応させた.PBS で洗浄後, 2 次抗体として Alexa FluorTM 488 goat anti-rabbit IgG (H+L) (500 倍希釈) (Invitrogen, Carlsbad,

CA,USA) +核染色のため propidium iodide (200 倍希釈) (Sigma, St. Louis, MO, USA) を入れ遮光し 60 分 室温で反応させ,PBS で洗浄後,カバーガラスで封入し蛍光顕微鏡 (Zeiss, Göttingen, Germany) で撮影した. また,同様の実験を empty-HCEC でも行った.

8.フィブロネクチンコーティングプレートでの角膜上皮細胞の形態の変化の検討

 uPAR-HCEC, empty-HCEC をフィブロネクチンコーティング 35mm マイクロプレート(Fibronectin Cell-ware 35mm Dish®,BD,NJ,USA) にそれぞれ 1×103個播種し,10% FBS を含む DMEM/F12 培養液で培

養した.90 分後に,確実に接着している細胞数を測定するために,PBS で 3 回洗浄後細胞数を測定した (細 胞数 / 視野).また,4 時間後にも同様に PBS で 1 回洗浄後,接着している細胞を顕微鏡で撮影した (各群 n=10). 9.スクラッチアッセイによる細胞遊走能の検討  uPAR-HCEC, empty-HCECをフィブロネクチンコーティング35mm マイクロプレートにそれぞれ3×105個, 計 3 plate ずつ播種し,10% FBS を含む DMEM/F12 培養液で 24 時間培養した後,マイクロリットルピペッ ト先端を用いて線状に剥離し,欠損部の距離を顕微鏡下に計測した.その後,培養液を吸引し,1 plate には 10% FBS を含む DMEM/F12 培養液,1 plate には抗 uPA-ATF 抗体 (Sekisui Diagnostics, LLC, MA, USA) を加えた培養液,1 plate には uPA-inhibitor (Santa Cluz Biotechnology, Santa Cruz, CA, USA) を加えた培養 液を加え,同様の条件下で培養し,24 時間後に欠損部の距離 (任意の 6 か所) を顕微鏡下にて計測し,平均値 を求めた (各群 n=10).また同様の実験をプラスチック 35mm マイクロプレートにて施行した.欠損部作成 後は DMEM/F12 培養液で培養し,24 時間後に同様に欠損部の距離を顕微鏡下にて計測し,平均値を求めた (各 群 n=6).

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10.MTT アッセイによる細胞増殖能の検討

 細胞の増殖能をみるため,プラスチック 96 well マイクロプレート (マルチプレート 96F®,住友ベークライ

ト,東京) に uPAR-HCEC と empty-HCEC をそれぞれ 5×103個ずつ播種し,10% FBS を含む DMEM/F12

培養液で培養した.それぞれ 24 時間,48 時間,72 時間後に取り出し,3-(4, 5-Dimethyl-2-thiazolyl)-2, 5-diphe-nyl-2H-tetrazolium Bromide (MTT 溶液,5mg/ml,Wako,大阪) を 20μl ずつ加え,2時間培養した.その後,1,500 × g,5 分間,室温で遠心後に上清を破棄し, Dimethyl Sufoxide (Wako,大阪) を 200μl ずつ加え,5 分間シェー カーで震盪させた後に Model 680 Microplate Reader (Bio-Rad Laboratories, CA, USA) にて 540nm で吸光度 を測定した (各群 n=4).

11.免疫蛍光染色による connexin43 の発現の検討

 uPAR-HCEC, empty-HCEC における connexin 43 の発現を検討するため,connexin 43 による免疫蛍光染色 を行った.8 well chambar slide に uPAR-HCEC, empty-HCEC をそれぞれ 1×103個ずつ播種し, DMEM/F12

培養液で 24 時間培養した.培地を吸引し, 温めた PBS で 2 回洗浄し 3.7% ホルムアルデヒド (Wako,大阪) で固定後,1% BSA (Wako,大阪) に 30 分浸漬させブロッキングし,1 次抗体として抗 connexin 43 抗体 (200 倍希釈) (Abcam, Stanford, CT, USA) と反応させ 4℃で 1 晩静置した.その後,温めた PBS で洗浄し,2 次抗 体として Alexa FluorTM 488 goat anti-rabbit IgG (H+L) (500 倍希釈) を入れ遮光し, 60 分室温で反応させた

後,蛍光顕微鏡下で撮影した. 12.統計学的処理

 結果は平均値 ± 標準偏差 (mean±SD) で示し,統計学的有意性の判定には unpaired t-test を用い,p < 0.05 で有意差ありと判定した.

結  果

1.角膜上皮欠損の治癒過程における uPA,uPAR の影響

 uPAR が角膜上皮創傷治癒に及ぼす影響を検討するため, uPAKO マウス, uPA/uPARDKO マウス, uPA WT マウスを用いて, 治癒過程における角膜上皮欠損を経時的に観察した (図 2).フルオレセイン染色下に角 膜を観察し,面積を測定し,角膜上皮欠損残存率 (%) を計算すると,uPA WT 群は他の群に比べ, 上皮欠損 作成 24 時間後 (uPA WT:33.0±13.6%,uPAKO:80.4±4.8%, uPA/uPARDKO マウス:88.3±5.2%) で有意 に上皮欠損面積の減少を認め, 48 時間後には上皮欠損は治癒していた.uPAKO 群では uPA/uPARDKO 群 に比べ 36 時間後 (uPAKO:47.9±12.6%,uPA/uPAR DKO:64.1±11.9%) に有意に上皮欠損面積の減少を認 め,96 時間後には上皮欠損の治癒を認めたが,uPA/uPARDKO 群では 168 時間後でも上皮欠損部位が残存 しており, 著明な上皮被覆遷延を認めた.

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図 2. uPA WT マウス,uPA KO マウス および uPA/uPAR DKO マウスにおける角膜上皮欠損の 治癒過程

uPA WT マウス,uPA KO マウス,uPA/uPAR DKO マウスにおいて角膜上皮欠損モデル を作成し,治癒過程における欠損部の面積変化を観察した.

A:フルオレセイン染色した前眼部写真の時間毎の経過.

B: 角膜上皮欠損残存率の推移を示す.角膜上皮欠損残存率 (%) = 角膜上皮欠損部の面積 (mm2) ×100/ 角膜上皮欠損作成時の面積 (mm2) で計算し平均値 ± 標準偏差で表記. (†p < 0.05,††p < 0.01 (vs.uPA WTマウス).*p < 0.05,**p < 0.01 (vs.uPA KOマウス) ).

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2.uPAR の強制発現ヒト不死化角膜上皮細胞の uPAR の発現

 HCEC と empty-HCEC における uPAR の発現を Western blot 法で検討した.その結果, uPAR-HCEC では約 37kD の位置に抗 uPAR 抗体に反応する蛋白が検出されたが,empty-uPAR-HCEC では検出されなかっ た (図 3 A).また,抗 uPAR 抗体による免疫蛍光染色では,uPAR-HCEC では uPAR の強発現を認めた (図 3 B).

3.フィブロネクチンコーティングプレートでの角膜上皮細胞の形態の変化の検討

 フィブロネクチンコーティングプレートでの uPAR-HCEC, empty-HCEC の形態の変化を検討した.細胞播 種後 90 分後に細胞数測定,4 時間後に顕微鏡下で撮影した.90 分後にプレートに接着した細胞数を測定すると, uPAR-HCEC (37.1±13.3 個 / 視野) は empty-HCEC (14.2±7.7 個 / 視野) に比べ有意に接着細胞の増加を認め た (図 4 A).4 時間後では,uPAR-HCEC では細胞はプレート上で紡錘形になっており,empty-HCEC に比 べ強い形態変化能を認めた (図 4 B).

図3. uPAR の強制発現ヒト不死化角膜上皮細胞の uPAR の発現 A:Western blot 解析 (抗 uPAR 抗体)

左レーン : empty-HCEC 右レーン : uPAR-HCEC

(13)

4.フィブロネクチンコーティングプレートでのスクラッチアッセイによる細胞遊走能の検討

 uPAR が細胞の遊走能に与える影響の検討のため,フィブロネクチンコーティングプレートでスクラッチ アッセイを施行した.細胞を培養した後,ピペットで線状に剥離し距離を計測,抗 uPA-ATF 抗体投与群, uPA-inhibitor 投与群, 非投与群とし,24 時間培養後に再度残存距離を計測した.uPAR-HCEC, empty-HCEC 共に抗 uPA-ATF 抗体投与群 (239.3±31.1μm,290.5±34.6μm), uPA-inhibitor 投与群 (347.7±24.0μm,418.02 ± 27.79μm) では非投与群 (91.6±22.4μm,221.8±48.5μm) に比べ有意に遊走能は抑制された.また, 抗 uPA-ATF 抗体投与群, uPA-inhibitor 投与群間,コントロール群それぞれで,uPAR-HCEC は empty-HCEC に比べて有意に遊走能が亢進していた (図 5 M).

図 4. フィブロネクチンコーティングプレートでの角膜上皮細胞の形態の変化の検討

A: 90 分後の uPAR-HCEC, empty-HCEC の細胞数 / 視野 (個) を平均値 ± 標準偏差で表 記 (**p < 0.01).

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5.プラスチックプレートでのスクラッチアッセイによる細胞遊走能の検討  uPAR が細胞の遊走能に与える影響の検討のため,プラスチックプレートでのスクラッチアッセイを施行し た.細胞を培養した後,ピペットで線状に剥離し距離を計測,24 時間培養後に再度残存距離を計測した (図 6 A).uPAR-HCEC (115.4±33.7μm) は empty-HCEC (247.4±54.2μm) に比べ有意に細胞の伸展は促進されて いた  (図 6 B). 図 6.プラスチックプレートでのスクラッチアッセイによる細胞遊走能の検討 細胞を培養した後,ピペットで線状に剥離し距離を計測 .24 時間培養後再度距離を計測した. 剥離後 0 時間の uPAR-HCEC (A),empty-HCEC (B),剥離後 24 時間後の uPAR-HCEC (C), empty-HCEC (D) (bar= 100 μm).

それぞれの細胞 (uPAR-HCEC: 白,empty-HCEC: 黒) の 24 時間後の残存距離 (μm) の比較を 図 5. フィブロネクチンコーティングプレートでのスクラッチアッセイによる細胞遊走能の検討

線状剥離作成後 0 時間の写真 (A,B,C,D,E,F) とそれに対応する作成後 24 時間後の写真 (G, H,I,J,K,L) (bar= 100 μm).それぞれの細胞 (uPAR-HCEC: 白,empty-HCEC: 黒) の 24 時間後の残存距離 (μm) の比較を平均値 ± 標準偏差にて表記 (*p < 0.05,**p < 0.01) (M).

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6.MTT アッセイによる細胞増殖能の検討

 MTT アッセイにより uPAR が細胞の増殖能に与える影響を検討した.細胞を培養し,24 時間後,48 時間 後,72 時間後で吸光度を測定した.uPAR-HCEC は empty-HCEC に比べ,24 時間後,48 時間後,72 時間後 全てで増殖能は有意に亢進していた (図 7).

7.免疫蛍光染色による connexin 43 の発現の検討

 免疫蛍光染色により uPAR-HCEC, empty-HCEC における connexin 43 の発現を検討した.uPAR-HCEC, empty-HCEC を 24 時間培養後,connexin 43 による蛍光免疫染色をしたところ,empty-HCEC では細胞膜に 局在した connexin 43 の発現を認めた.一方,uPAR-HCEC ではその発現は empty-HCEC に比べ減弱してい た (図 8). 図 8.免疫蛍光染色による connexin 43 の発現の検討 A:uPAR-HCEC の connexin 43 による蛍光免疫染色 B:uPAR-HCEC の位相差顕微鏡による細胞形態の観察 C:empty-HCEC の connexin 43 による蛍光免疫染色 D:empty-HCEC の位相差顕微鏡による細胞形態の観察 (bar= 100 μm) 図 7. MTT assay による細胞増殖能の検討 細胞を培養し,24 時間,48 時間,72 時間後それぞれで吸光度を測定し増殖能を検討した. uPAR-HCEC (白) と empty-HCEC (黒) の吸光度を平均値 ± 標準偏差にて表記 (*p < 0.05 ).

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考  察  当研究室の児玉らは,マウスの角膜を用いた免疫組織染色で,正常では uPAR は角膜上皮にほとんど発現 していないが,角膜上皮欠損を作成すると欠損部を伸展,移動する角膜上皮細胞に強く発現することを報告し た20. これは uPAR が角膜上皮創傷治癒過程において,何らかの働きをしている可能性があることを意味する と考えられた.そこで,本研究では uPAR の機能に焦点をおいて,角膜上皮創傷治癒過程におけるその役割, 機能について解明を試みた.  uPA が角膜上皮の再被覆に促進的に働くことは過去の報告により証明されていたので15, 20,本研究におけ

る動物実験では,uPA の促進作用が与える影響を除外し uPAR の純粋な役割を解明することを試みた.uPA ノックアウトマウスと uPA/uPAR ダブルノックアウトマウスの角膜上皮欠損モデルを作成し,in vivo でその 治癒速度を比較することにより uPA の影響を除外し,uPAR の役割を検討した.その結果,uPA/uPAR ダブ ルノックアウトマウスは uPA ノックアウトマウスと比較し,有意に上皮欠損の修復遅延を認めた.この結果 からは,uPAR は uPA の非存在下でも上皮細胞の伸展,移動に重要な働きをしている事が明らかになった.  uPAR は糖鎖修飾を含め分子量約 55 KDa の蛋白質であり,体内の種々の細胞に発現しており,glyco-syl-phosphatidylinositol-anchor で細胞膜の外層に結合している.uPAR は 3 つの相同的な繰り返しドメイン (D1,D2,D3) により構成されており,uPA は uPAR の D1 で結合する25.uPAR の特徴は,uPA と結合す

ることにより細胞表面の uPA 活性を効率よく発現させるだけでなく,integrin と協調して細胞内情報伝達を 引き起こし,細胞の接着や増殖に関与することである28, 29.また,uPAR の発現は,組織の創傷治癒過程で局

所的に増加する可能性がある30.uPAR は D2 と D3 の間で容易に切断され,soluble uPAR となる.uPAR は肺癌,

大腸癌,胃癌などの癌組織の伸展先端部にも強く発現していることが明らかとなっている31  今回の検討では,フィブロネクチンコーティングプレートで細胞を培養し,4 時間後には uPAR-HCEC は empty-HCEC に比べ,扁平で突起を持った紡錘形の細胞が多数観察された.また 90 分後における細胞接着率 も有意に亢進していた.この uPAR の細胞接着に対する機能は,細胞の接着,脱着による細胞の移動が行わ れる角膜上皮欠損後の角膜上皮再被覆に重要な役割を果たしていると考えられた.これらの作用機序に関して は integrin が関与している可能性があり,今後解明する必要があると考えられる.  フィブロネクチンでコーティングされた plate の上に細胞を播種し,uPAR が細胞の遊走に与える影響につ いてスクラッチアッセイにより検討したところ,図 5 に示すように,24 時間後において uPAR-HCEC は emp-ty-HCEC に比べ有意に遊走能を亢進していた.この遊走能促進作用には,少なくとも二つの機序が働いた可 能性があると考えられる.一つは uPA と uPAR が結合することにより,uPA が細胞周囲における局所線溶を 補強させ,細胞のフィブロネクチンからの脱着を促進させる機序が働いた可能性,またもう一つは uPAR に uPA の作用と関係なく細胞増殖能や遊走能に影響を与えた可能性が考えられる.そこで,uPA と uPAR の結 合を阻害することを試みた.uPA は N 末端より Growth factor like (GFD) ドメイン,Kringle ドメインおよ び Proteolytic ドメインを有している.このうち GFD ドメインで,細胞表面に存在する膜結合型の uPAR と結 合し,細胞内シグナル伝達系が活性化される.そして蛋白分解活性を有する Proteolytic ドメインが細胞周囲 の局所線溶を担う.このように異なる3領域が順番に配列している構造である.uPAR の uPA 結合部位であ る ATF (amino-terminal fragment) を阻害する抗 uPA-ATF 抗体,uPA のプロテアーゼ活性を選択的に阻害

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する uPA-inhibitor を用いた阻害実験による検討では,uPAR-HCEC, empty-HCEC の細胞共に,抗 uPA-ATF 抗体,uPA-inhibitor 投与群で非投与群に比べ有意に遊走能は抑制された.この結果は児玉らの in vivo での uPA による角膜上皮再被覆促進作用の結果とよく一致している.一方,本実験からは抗 uPA-ATF 抗体投与 群間,uPA-inhibitor 投与群間で uPAR-HCEC と empty-HCEC の細胞群との間にも遊走能に有意な差があり, uPAR-HCEC は empty-HCEC に比べて遊走能が亢進していた.この結果からは,uPAR が uPA 非依存的に遊 走能を亢進させていると考えられた.

 そこで,uPAR-HCEC, empty-HCEC の細胞を同一の個数で plate に播種し,細胞の発育状態を確認すると, uPAR-HCEC は empty-HCEC に比べ confluent になる速度が速く,同一時間培養したのち細胞密度を測定する と,細胞密度も高いことがわかった.そこで uPAR-HCEC の増殖能が empty-HCEC より高いという仮説をた て,MTT アッセイにより 2 群間の増殖能の差を検討した.図 7 に示すように uPAR-HCEC は 24,48,72 時 間において有意に増殖能が高いことが明らかになった.角膜上皮細胞の増殖を促進する因子として,epider-mal growth factor receptor (EGF) は広く知られている.臨床の場においても EGF は角膜穿孔に対する治療 薬として使用されている.Jo らは,uPAR は EGF receptor (EGFR) と協調して増殖に関与すると報告してい る32.また,乳癌細胞において uPAR の過剰発現は癌細胞の幹細胞様変化を引き起こすと報告されている33

uPAR の過剰発現が増殖能を促進させたという我々の結果も EGF との相互作用や形質変化と関係がある可能 性があり,今後解明する必要があると考えられた.

 角膜上皮の伸展において,細胞と ECM の接着は重要であるが,細胞 - 細胞間の接着もまた重要である.も し角膜上皮の接着が強固であれば,細胞は動きづらく角膜上皮欠損部に移動しにくくなる.角膜上皮細胞の 細胞間の接着には,gap junction,tight junction,desmosome と adherens junction の 4 種類がある34, 35.gap

junction は基底細胞層に存在し,tight junction は表層細胞に,desmosome は翼細胞,adherens junction はす べての細胞層に分布している34.connexin は gap junction を構成する特異的な蛋白質である.connexin の中

には細胞特異的なものもあるが,connexin 43 は,上皮細胞,内皮細胞,線維芽細胞を含む多くの細胞に発現 している.  正常の家兎角膜では,connexin 43 は基底細胞層に発現している36.角膜上皮欠損を作成すると伸展してく る基底細胞には connexin の発現は認めない37.鈴木らは角膜上皮剥離後,上皮が完全に被覆され,剥離 3 日 後に connexin 43 の発現が増強してくることを報告している38.これらの結果は角膜上皮再被覆の過程で欠損 部周辺の細胞は未分化に脱分極している可能性があることを示唆しているのかもしれない.connexin 43 は細 胞膜に局在することにより,ギャップ結合の機能分子となることが知られている.本研究結果からも,uPAR-HCEC, empty-HCEC において connexin 43 は細胞膜に局在した発現を認めた.またその発現は,uPAR-HCEC において減弱していた (図 8).これは uPAR の発現が connexin 43 の機能に関与している可能性を示唆すると 考えられた.今後,uPAR KO マウスを用いて,in vivo における connexin 43 の発現を検討する必要があると 考えられる.

 本研究の結果から,uPAR は角膜上皮細胞の接着,伸展,増殖に促進的に作用する働きがあることが分かっ た.そしてその作用機序はひとつではなく,複数のメカニズムが関与していると考えられた.uPA と協調し て細胞周囲の局所線溶を促進しフィブロネクチンと細胞との脱着を促進させる働きがあること,uPA との結

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合により,角膜上皮細胞の伸展を促進させること,細胞の増殖能の亢進に関与していること,また gap junc-tion を弱める作用に関与している可能性があることが明らかになった.  現在のところ,遷延性角膜上皮欠損は治療に難渋することが多く,またフォーマットされた治療法はない. さらに Stevens-Johnson 症候群や眼類天疱瘡は角膜上皮の幹細胞の異常自体がその本態であり,有効な治療法 はない.本研究から,uPAR は角膜上皮細胞の接着,伸展,増殖に極めて密接に関与していることが明らかに なった.この uPAR の角膜上皮細胞に対する作用は,現在有効な治療法がない疾患の病態に関与するだけで なく,その治療法の開発においてもひとつの手がかりになる可能性があると考えられた. 謝  辞  本稿を終えるにあたり,御指導,御校閲を賜りました近畿大学医学部眼科学教室日下俊次教授に深甚なる謝 意を表します.また本研究にあたり,終始直接御指導頂きました近畿大学医学部奈良病院眼科杉岡孝二准教 授,ならびに近畿大学医学部下村嘉一名誉教授,ご協力いただいた近畿大学松尾理名誉教授,近畿大学奈良病 院眼科髙橋彩診療講師,近畿大学医学部医学基盤教育部門岡田清孝准教授,近畿大学生物理工学部吉田浩二教 授に心より感謝申し上げます.本論文の一部は,第 120 回日本眼科学会総会 (仙台,2016 年 4 月),The Asso-ciation for Research in Vision and Ophthalmology 2016 (Seattle,2016年5月),第41回日本角膜学会総会 (福岡, 2017 年 2 月) において発表した.開示すべき利益相反はありません.

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