角膜上皮創傷治癒過程における uPAR の役割と機能 53
角膜上皮創傷治癒過程における urokinase-type
plasminogen activator receptor の役割と機能
歌 村 翔 子
近畿大学医学部 眼科学教室
The role and function of urokinase-type plasminogen activator receptor
in corneal epithelial wound healing process
Shoko Utamura
Department of Ophthalmology Kindai University Faculty of Medicine
抄 録
角膜上皮細胞の正常な修復機能は,病原体の角膜内への侵入を防ぎ,2 次的な角膜障害を予防する上で極めて重
要である.再被覆過程においては角膜上皮細胞間あるいは角膜上皮細胞細胞外基質間で種々の因子が複雑にかつ
協調的に働いている.線溶系因子は細胞外基質の発現による細胞接着と脱着に関与し,重要な働きを果たしている と考えられる.
urokinase type plasminogen activator(uPA)と高い親和性で結合する uPA receptor(uPAR)は角膜上皮創 傷治癒過程において角膜上皮細胞にその発現を認めることが報告されているが,役割については全く解明されてい ない.そこで本研究では角膜上皮創傷治癒過程における uPAR の役割を検討した.
uPA KO マウス(uPA-/-),uPA/uPAR DKO マウス(uPA-/- uPAR-/-)の角膜上皮を擦過し上皮欠損を作成
し上皮の再被覆過程を検討したところ,36時間後には uPA/uPAR DKO では上皮欠損の修復が,uPA KOに比べ 有意に遅延していた(上皮欠損面積残存率,uPA KO: 47.9±12.6%,uPA/uPAR DKO: 64.1±11.9%,p<0.05).
さらに uPAR 過剰発現角膜上皮細胞(uPARHCEC)とそのコントロール細胞(emptyHCEC)を用いた検討
を行った.フィブロネクチンプレート上でのスクラッチアッセイでは uPARHCEC(24時間後の欠損部距離,91.6
±22.4μm)は emptyHCEC(221.8±48.5μm)に比べ有意に遊走能が亢進しており,それらは抗 uPAATF 抗体 (239.3±31.1μm,290.5±34.6μm),uPAinhibitor(347.7±24.0μm,418.02±27.79μm)で抑制された(p<0.01).
MTT アッセイでは,uPARHCEC は emptyHCEC に比べ有意に増殖能が亢進していた.また免疫蛍光染色で細
胞間の gap junction でみられる connexin 43の発現が uPARHCEC で減弱していた.
uPAR の角膜上皮細胞に対する作用は複数のメカニズムが関与していると考えられた.本研究の結果からは, uPA と協調して細胞周囲の局所線溶を促進しフィブロネクチンと細胞との脱着を促進させる働きがあること,uPA との結合により角膜上皮細胞の伸展を促進させること.角膜上皮細胞の増殖能の亢進に関与していること,また gap junction を弱める作用に関与している可能性があることが明らかになった.
Key words:角膜上皮創傷治癒,角膜上皮細胞,urokinase type plasminogen activator receptor(uPAR) 近畿大医誌(Med J Kindai Univ)第44巻1・2号 53~65 2019
大阪府大阪狭山市大野東3772(〒5898511) 受付 平成30年9月6日,受理 平成30年10月2日
緒 言 角膜は眼球の最外層に位置し,角膜上皮層,角膜 実質層,角膜内皮層の3層構造で成り立っている. 各層にはそれぞれ高度に分化した細胞(角膜上皮細 胞,角膜実質細胞,角膜内皮細胞)が存在しており, 光学経路にある組織として重要な役割を果たしてい る.光を眼内に適切に送る必要があるため,光学的 に透明であることと屈折を担うための十分な屈曲を 持つことが要求される.そのため,他の組織とは異 なる様々な特徴を有している.角膜の大きな特徴と しては,無血管であること,透明であること,知覚 神経が発達していること,曲率をもった固い組織で あることなどがあげられる. 角膜上皮細胞は外界と角膜内との間のバリアー機 能として働くと同時に,角膜実質の透明性を維持す るために機能している.解剖学的に角膜上皮は5 6層の層構造を成しており,表層細胞,翼細胞,基 底細胞の3種類の細胞に分けられる.そして基底細 胞がボーマン膜に隣接した基底膜に接着している1,2. 角膜上皮は直接外界に接しているため,外界からの 傷害に対する防御能を有する必要がある.表層細胞 は tight junction により外界からの物質の侵入を防 いでいる.しかし,表層細胞は増殖能を有していな いとされており,創傷治癒過程においては重要な働 きはしていないと考えられている.そして角膜上皮 細胞の中では,基底細胞のみが増殖能力を有してい る3,4.従って,正常な角膜上皮が傷害を受けた際に は,基底細胞がその高い増殖能により速やかに上皮 修復を行う5.受傷後数時間以内に,周辺の基底細胞 が欠損部位へ伸展を開始し,1 層に被覆する6,7.そ して被覆が終わった直後から,上皮細胞は増殖を開 始し8,翼細胞,表層細胞へと分化していく.表層細 胞は,最終的には涙液に流され脱落していく.角膜 上皮細胞の turn over は12週間である9.この角 膜上皮修復過程における角膜上皮細胞の動態は,X: 基底細胞の増殖,Y:欠損周囲の細胞の欠損部への 移動,Z:眼表面からの表層細胞の脱落として広く 知られている10. 角膜上皮細胞の正常な修復機能は,病原体の角膜 内への侵入を防ぎ,2 次的な角膜障害を予防する上 で極めて重要であるが,糖尿病,栄養障害性角膜潰 瘍,脳腫瘍による三叉神経障害や,三叉神経ブロッ ク,再発性角膜上皮びらんなど種々な要因で角膜上 皮の正常な修復が行われず,角膜上皮欠損が遷延化 することがしばしばみられる11,12. 角膜上皮の再被覆過程においては,角膜上皮細胞 間あるいは角膜上皮細胞-細胞外基質(extracellular matrix: ECM)間で種々の因子が複雑にかつ協調的 に働いている.フィブロネクチンは,角膜上皮の再 被覆の過程で創部に発現し,細胞接着を促進する ECM である.西田らは角膜創傷治癒過程において, フィブロネクチンが創部に発現することを見出し た13.また,血液からフィブロネクチンを精製し, 点眼薬として角膜上皮の再被覆に効果があることを 報告した14.この点眼薬は製品化はされていないが, 現在でも臨床の場において治療に用いられている. このフィブロネクチンによる角膜上皮細胞の移動促 進のメカニズムには,細胞の接着促進と同時に細胞 とフィブロネクチンとの脱着が必要である. 当研究室の森本らは,家兎角膜を器官培養し,角 膜上皮細胞より産生される urokinase-type plasmi- nogen activator(uPA)が細胞とフィブロネクチン などを含めた基質からの解離に作用し,uPA によっ て角膜上皮細胞の移動が開始されることを報告した15. uPA は線溶系因子のひとつであり,生体内の線溶 反応に携わる蛋白質である.線溶反応とは,一般的 に血栓を溶かして分解する生理反応のことであり16, その中心的役割を行っているのは,plasminogen-plasmin system である.その中心的役割を行っているのは,plasminogen-plasmin は通常不活性の 前駆体 plasminogen として血液中に存在しており17,
plasminogen 活性化酵素(plasminogen activator) により活性化される.plasminogen activator には, tissue-type plasminogen activator(tPA)と uPA の2種類が存在する.tPA の作用は主に fibrin の除 去である.一方,uPA は種々の matrix-metallopro- teinases(MMPs)や growth factor を活性化させ ることにより,細胞周囲の蛋白分解に働く18.これ は細胞性線溶19 と呼ばれる反応であり,この反応は 線溶系因子が細胞表面の受容体に結合し,その周囲 での蛋白分解活性の発現や制御,また細胞内伝達物 質の誘導に関与する反応をいう20. 当研究室の児玉らは,uPA 遺伝子欠損マウスの角 膜上皮欠損モデルを作成し,in vivo においても uPA が角膜上皮の再被覆を促進させる作用があることを 証明した.また上皮欠損の修復過程において,uPA receptor(uPAR)が角膜上皮欠損部を伸展,移動 する角膜上皮細胞に強く発現することも報告してい る21. 近年,uPA と高い親和性で結合する uPAR は, uPA の細胞外基質分解作用の促進の他に,インテグ リンとユニット形成し細胞内シグナル伝達に関与す ること,またフィブロネクチンやビトロネクチンと 親和性があることや,癌細胞の増殖に関与している ことが報告されている.しかし,角膜上皮における uPAR の機能については報告がない.そこで,本研 歌 村 翔 子 54
究では角膜上皮創傷治癒過程における uPAR の役割 について検討した. 材料と方法 1.マ ウ ス 実験動物は,近畿大学松尾理名誉教授よりご提 供いただいた1216週齢の uPA 遺伝子欠損マウス (uPA-/-, uPA knockout, 以下 KO),uPA/uPAR
二重遺伝子欠損マウス(uPA-/-/uPAR-/-, uPA/
uPAR doubleknockout, 以下 DKO)とその野生型 マウス(uPA+/+/uPAR+/+, uPA wild type, 以下 WT)
を使用した22,23.飼育は室温22℃,湿度50%,明暗調 節環境下で固形飼料,水を自由に摂取させて行った. 本研究で行った動物実験は,近畿大学医学部動物実 験委員会の承認を受け,近畿大学医学部動物実験規 定を遵守して実施した. 2.マウス角膜上皮欠損モデルの作成
uPA KO マウス,uPA/uPAR DKO マウス,uPA WT マウスを用い,ペントバルビタール(50 mg/kg, ソムノペンチル,共立製薬,東京)にて麻酔し, 角膜上皮剥離前に0.4% 塩酸オキシブプロカイン(ベ ノキシール,参天製薬,大阪)を点眼した.その
後,実体顕微鏡(Nikon, 東京)下で角膜上皮の直径 3mm の中央部を Straight microsurgical blade (MANI Opthalmic Knife, MANI, 栃木)を用いて
剥離した.
3.細胞培養
佐々木香る先生(星ヶ丘医療センター,愛知)よ りご提供いただいた SV40 のT抗原をアデノウイル
スベクターを用いて細胞内に移入し作成したヒト不 死化角膜上皮細胞(human corneal epithelial cell, 以下 HCEC)を用いた24.杉岡ら25 の報告に基づいて,
10%fatal bovine serum(FBS, Gibco-BRL, Grand Island, NY ),gentamycin(0.8μg/ml, Sigma, St.Louis, MO, USA)を含む,Dulbecco’s modified Eagle’s medium(DMEM, Gibco)/F12(1:1)培 養液で継代培養した.また,細胞は37℃,CO25%
の条件で培養,維持した.
4.マウスの前眼部観察
uPA KO マウス,uPA/uPAR DKO マウス,uPA WT マウスそれぞれの角膜上皮欠損部の治癒過程を 時間毎にフルオレセイン染色し,実体顕微鏡下で定 期的に観察し,24,36,60,72,96,120,144,168 時間後に写真撮影を行った.これを area measure- ment Software(Arms System, 東京)に取り込み, 上皮欠損面積を計測し,角膜上皮欠損残存率(%) (角膜上皮欠損部の面積(mm2)×100/角膜上皮欠 損作成時の面積(mm2))を求めた(各群 n=12). 5.uPAR の強制発現ヒト不死化角膜上皮細胞の樹立 uPAR の角膜上皮細胞における機能を解明する目 的で,uPAR 強制発現ヒト不死化角膜上皮細胞を樹 立した.uPAR を安定発現させる HCEC を作成す るために,Epstein-Barr virus(EBV)由来の複製 起点 OriP と EBV Nuclear Antigen 1(EBNA1) 遺伝子をもつ pEBMulti-Hyg ベクター(Wako Pure Chemical Industries, Ltd, 大阪)を使用した(図1). pEBMulti-Hyg ベクターは導入されたヒト細胞内で, 安定的に複製・維持され,目的遺伝子(本例の場合
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は uPAR の遺伝子)を hygromycin B 存在下で長 期間発現させることが可能な蛋白質発現ベクター(プ ラスミド)である.pEBMulti-Hyg ベクターの mul- tiple cloning site(MCS, 表1)内の制限酵素認識 配列 XhoI と EcoRV の間に uPAR cDNA を挿入し た.ヒト線維芽細胞由来 cDNA ライブラリー(Ori- Gene Technologies, Rockville, MD, USA)から, pEBMulti-Hyg ベクターに連結させるため,表2に 示す制限酵素認識配列を両端(5’側(Forward)プ ライマーに XhoI, 3’側(Reverse)プライマーに Eco- RV)に含む uPAR cDNA(Homo sapiens plasmi- nogen activator, urokinase receptor, mRNA(cDNA clone MGC:3905 IMAGE:3617894),complete cds., GenBank accession number BC002788)のうちの uPAR 蛋白質コーディング領域である66~1073番を PCR により増幅して得た.この cDNA と,制限酵 素 XhoI および EcoRV で切断した pEBMulti-Hyg ベクターをライゲーションして uPAR 発現ベクター (以下,pEBuPAR)を構築した26.また,control
(正常対照)として,cDNA をライゲーションして いない空ベクター(以下,pEBempty)も別に調製 し た.Lipofectamine LTX( Life Technologies, Carlsbad, CA, USA)を用い HCEC に pEBuPAR, pEBempty をそれぞれトランスフェクションし, pEBuPAR, pEBempty を hygromycin B(200 g/ml)存在下で安定的に保持する HCEC(以下, uPARHCEC, emptyHCEC)をそれぞれ樹立し実 験に用いた.
6.Western blot 法による uPAR の発現の検討 作製した uPARHCEC による uPAR の発現を Western blot 法により確認した.uPARHCEC, emptyHCEC を1×105 個でプラスチック 35 mm マ
イクロプレート(Easy Grip Tissue Culture Dish, Thomas Scientific, NJ, USA)に播種し,10%FBS を含む DMEM/F12 培養液で24時間培養した.その 後,FBS(-)の DMEM/F12 培養液に交換し,同 様に24時間培養後,氷上で上清を吸引し,冷却した Dulbecco’s Phosphate Buffered Saline(PBS, Sigma, St.Louis, MO, USA)を加え,セルスクレイパー(住 友ベークライト,東京)で接着細胞を剥がし,得 られた溶解液を 1.5 ml エッペンドルフチューブ (BMbio, 東京)に入れ,3,000×g, 5 分間,4 ℃で 遠心した.上清を除去し,CellLyticTM M Cell Lysis
Reagent(Sigma, St.Louis, MO, USA)と Cocktail of Protease Inhibitor(Roche Diagnostics Coorpora- tion, Indianpolis, IN, USA)を加え,撹拌させ,氷 上で15分静置した.その後,13,000×g, 15分間,4 ℃で遠心し,上清をトータルの細胞溶解液とした. ポリアクリルアミドゲル(Invitrogen, Carlsbad, CA, USA)を用いて 250 V, 30 mA で電気泳動し, メタノール(wako, 大阪)で浸水処理をした Poly Vinilidene DiFluoride(PVDF)膜(Invirogen, Carlsbad, CA, USA)に転写した.転写した PVDF 膜を0.1% Tween 20(ICN Biomedicals, CA, USA) を含む 50 mM Tris-Buffered Saline pH 7.4(Takara, 滋賀,以下 TBST),5 %スキムミルク(Difco TM Skim Milk, Wako, 大阪)に浸し室温で60分間ブロッ 歌 村 翔 子
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表2.制限酵素認識配列(下線)を含む uPAR のプライマー塩基配列 表1.pEBMulti-Hyg ベクターの multiple cloning site(MCS) μ
キングし,TBST で洗浄した後,1 次抗体として抗 uPAR 抗体(500倍希釈)(Santa Cluz Biotechnol- ogy, Santa Cruz, CA, USA),またコントロールと して抗ヒト GAPDH 抗体(500倍希釈)(Santa Cluz Biotechnology, Santa Cruz, CA, USA)に PVDF 膜を浸し,4 ℃で一晩静置した.翌日,TBST で 洗浄し,2 次抗体として horseradish peroxidase-conjugated donkey anti-rabbit IgG antibodies(5,000 倍希釈)(GE Healthcare Bio-Sciences, 東京)に室 温で60分間反応させた.再度 TBST で洗浄後, ECLTM Western Blotting Detection Reagents(GE
Healthcare Bio-Science, 東京)で1分間反応させ, Image Reader LAS1000 system(富士フイルム, 東京)を用いて目的シグナルの検出を行った.
7.免疫蛍光染色による uPAR の発現の検討 uPARHCEC の uPAR の発現を確認するため に,免疫蛍光染色を行った.8 well chambar slide (WATSON, 東京)に uPARHCEC を1×104 個播
種し,10%FBS を含む DMEM/F12 培養液で24時 間培養後,上清を吸引し,PBS で洗浄後,20℃で冷 却した99.5%エタノール(Wako, 大阪)にて室温で 5分静置し細胞を固定した.PBS+0.3% TritonX (Wako, 大阪)で希釈した5%ヤギ抗体(Invirogen,
Carlsbad, CA, USA)で60分浸漬しブロッキングし た後,1 次抗体として抗 uPAR 抗体(500倍希釈) を入れ,室温で60分間反応させた.PBS で洗浄後, 2
次抗体として Alexa FluorTM 488 goat anti-rabbit
IgG(H+L)(500倍希釈)(Invitrogen, Carlsbad, CA, USA)+核染色のため propidium iodide(200倍 希釈)(Sigma, St.Louis, MO, USA)を入れ遮光し 60分室温で反応させ,PBS で洗浄後,カバーガラス で封入し蛍光顕微鏡(Zeiss, Göttingen, Germany) で撮影した.また,同様の実験を emptyHCEC で も行った.
8.フィブロネクチンコーティングプレートでの角 膜上皮細胞の形態の変化の検討
uPARHCEC, emptyHCEC をフィブロネクチ ンコーティング 35 mm マイクロプレート(Fibro- nectin Cellware 35 mm Dish, BD, NJ, USA)にそ れぞれ1×103 個播種し,10%FBS を含む DMEM/ F12 培養液で培養した.90分後に,確実に接着して いる細胞数を測定するために,PBS で3回洗浄後細 胞数を測定した(細胞数/視野).また,4時間後に も同様に PBS で1回洗浄後,接着している細胞を 顕微鏡で撮影した(各群 n=10). 9.スクラッチアッセイによる細胞遊走能の検討 uPARHCEC,emptyHCEC をフィブロネクチン コーティング 35 mm マイクロプレートにそれぞれ3 ×105 個,計3plate ずつ播種し,10%FBS を含む DMEM/F12 培養液で24時間培養した後,マイクロ リットルピペット先端を用いて線状に剥離し,欠損 部の距離を顕微鏡下に計測した.その後,培養液を 吸引し,1 plate には10%FBS を含む DMEM/F12 培養液,1 plate には抗 uPAATF 抗体(Sekisui Diagnostics, LLC, MA, USA)を加えた培養液,1 plate には uPAinhibitor(Santa Cluz Biotechnol- ogy, Santa Cruz, CA, USA)を加えた培養液を加え, 同様の条件下で培養し,24時間後に欠損部の距離(任 意の6か所)を顕微鏡下にて計測し,平均値を求め た(各群 n=10).また同様の実験をプラスチック 35 mm マイクロプレートにて施行した.欠損部作成 後は DMEM/F12 培養液で培養し,24時間後に同様 に欠損部の距離を顕微鏡下にて計測し,平均値を求 めた(各群 n=6). 10.MTT アッセイによる細胞増殖能の検討 細胞の増殖能をみるため,プラスチック96 well マ イクロプレート(マルチプレート 96F,住友ベー
クライト,東京)に uPARHCEC と emptyHCEC をそれぞれ5×103 個ずつ播種し,10%FBS を含む DMEM/F12 培養液で培養した.それぞれ24時間, 48時間,72時間後に取り出し,3- (4,5-Dimethyl-2-thiazolyl)-2,5-diphenyl-2H-tetrazolium Bromide (MTT 溶液,5 mg/ml, Wako, 大阪)を 20μl ずつ 加え,2時間培養した.その後,1,500×g, 5 分間, 室温で遠心後に上清を破棄し,Dimethyl Sufoxide (Wako, 大阪)を 200μl ずつ加え,5 分間シェー カーで震盪させた後に Model 680 Microplate Reader (Bio-Rad Laboratories, CA, USA)にて 540 nm で
吸光度を測定した(各群 n=4).
11.免疫蛍光染色による connexin43 の発現の検討 uPARHCEC, emptyHCEC における connexin 43の発現を検討するため,connexin 43による免疫蛍
光染色を行った.8 well chambar slide に uPAR HCEC, emptyHCEC をそれぞれ1×103 個ずつ播
種し,DMEM/F12 培養液で24時間培養した.培 地を吸引し,温めた PBS で2回洗浄し3.7%ホル ムアルデヒド(Wako, 大阪)で固定後,1 %BSA (Wako, 大阪)に30分浸漬させブロッキングし, 1 次抗体として抗 connexin 43抗体(200倍希釈) (Abcam, Stanford, CT, USA)と反応させ4℃で1 晩静置した.その後,温めた PBS で洗浄し,2 次
抗体として Alexa FluorTM 488 goat anti-rabbit IgG (H+L)(500倍希釈)を入れ遮光し,60分室温で反 応させた後,蛍光顕微鏡下で撮影した. 12.統計学的処理 結果は平均値±標準偏差(mean±SD)で示し, 統計学的有意性の判定には unpaired t-test を用い, p<0.05 で有意差ありと判定した. 結 果 1.角膜上皮欠損の治癒過程における uPA, uPAR の影響 uPAR が角膜上皮創傷治癒に及ぼす影響を検討す るため,uPA KO マウス,uPA/uPAR DKO マウス, uPA WT マウスを用いて,治癒過程における角膜上 皮欠損を経時的に観察した(図2).フルオレセイ 歌 村 翔 子
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図2.uPA WT マウス,uPA KO マウス および uPA/uPAR DKO マウスにおける角膜上皮欠損の治癒過程 uPA WT マウス,uPA KO マウス,uPA/uPAR DKO マウスにおいて角膜上皮欠損モデルを作成し, 治癒過程における欠損部の面積変化を観察した.
A:フルオレセイン染色した前眼部写真の時間毎の経過.
B:角膜上皮欠損残存率の推移を示す.角膜上皮欠損残存率(%)=角膜上皮欠損部の面積(mm2)×100/
角膜上皮欠損作成時の面積(mm2)で計算し平均値±標準偏差で表記.(†p<0.05, ††p<0.01(vs. uPA WT マウス).*p<0.05, **p<0.01(vs. uPA KO マウス)).
ン染色下に角膜を観察し,面積を測定し,角膜上皮 欠損残存率(%)を計算すると,uPA WT 群は他の 群に比べ,上皮欠損作成24時間後(uPA WT: 33.0± 13.6%,uPA KO: 80.4±4.8%,uPA/uPAR DKO
マウス: 88.3±5.2%)で有意に上皮欠損面積の減少 を認め,48時間後には上皮欠損は治癒していた. uPA KO 群では uPA/uPAR DKO 群に比べ36時間 後(uPA KO: 47.9±12.6%,uPA/uPAR DKO: 64.1 ±11.9%)に有意に上皮欠損面積の減少を認め,96 時間後には上皮欠損の治癒を認めたが,uPA/uPAR DKO 群では168時間後でも上皮欠損部位が残存して おり,著明な上皮被覆遷延を認めた. 2.uPAR の強制発現ヒト不死化角膜上皮細胞の uPAR の発現
uPARHCEC と emptyHCEC における uPAR の発現を Western blot 法で検討した.その結果, uPARHCEC では約 37 kD の位置に抗 uPAR 抗体 に反応する蛋白が検出されたが,emptyHCEC で は検出されなかった(図3A).また,抗 uPAR 抗 体による免疫蛍光染色では,uPARHCEC では uPAR の強発現を認めた(図3B). 3.フィブロネクチンコーティングプレートでの角 膜上皮細胞の形態の変化の検討 フ ィ ブ ロ ネ ク チ ン コ ー テ ィ ン グ プ レ ー ト で の uPARHCEC, emptyHCEC の形態の変化を検討 した.細胞播種後90分後に細胞数測定,4 時間後に 顕微鏡下で撮影した.90分後にプレートに接着した 細胞数を測定すると,uPARHCEC(37.1±13.3個 /視野)は emptyHCEC(14.2±7.7個/視野)に比 べ有意に接着細胞の増加を認めた(図4A).4 時 間後では,uPARHCEC では細胞はプレート上で 紡錘形になっており,emptyHCEC に比べ強い形 態変化能を認めた(図4B). 4.フィブロネクチンコーティングプレートでのス クラッチアッセイによる細胞遊走能の検討 uPAR が細胞の遊走能に与える影響の検討のため, フィブロネクチンコーティングプレートでスクラッ チアッセイを施行した.細胞を培養した後,ピペッ トで線状に剥離し距離を計測,抗 uPAATF 抗体 投与群,uPAinhibitor 投与群,非投与群とし, 24時間培養後に再度残存距離を計測した.uPAR HCEC ,emptyHCEC 共に抗 uPAATF 抗体投与 群(239.3±31.1μm, 290.5±34.6μm),uPAinhibi- tor 投与群(347.7±24.0μm, 418.02±27.79μm)で は非投与群(91.6±22.4μm, 221.8±48.5μm)に比
角膜上皮創傷治癒過程における uPAR の役割と機能 59
図3.uPAR の強制発現ヒト不死化角膜上皮細胞の uPAR の発現 A:Western blot 解析(抗 uPAR 抗体)
左レーン:emptyHCEC 右レーン:uPARHCEC
べ有意に遊走能は抑制された.また,抗 uPAATF 抗体投与群,uPAinhibitor 投与群間,コントロー
ル群それぞれで,uPARHCEC は emptyHCEC に 比べて有意に遊走能が亢進していた(図5M). 歌 村 翔 子
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図5.フィブロネクチンコーティングプレートでのスクラッチアッセイによる細胞遊走能の検討
線状剥離作成後0時間の写真(A,B,C,D,E,F)とそれに対応する作成後24時間後の写真(G,H,
I,J,K,L)(bar=100μm).それぞれの細胞(uPARHCEC:白,emptyHCEC:黒)の24時間後の残 存距離(μm)の比較を平均値±標準偏差にて表記(*p<0.05, **p<0.01).
図4.フィブロネクチンコーティングプレートでの角膜上皮細胞の形態の変化の検討
A:90分後の uPARHCEC, emptyHCEC の細胞数/視野(個)を平均値±標準偏差で表記(**p<0.01).
5.プラスチックプレートでのスクラッチアッセイ による細胞遊走能の検討 uPAR が細胞の遊走能に与える影響の検討のため, プラスチックプレートでのスクラッチアッセイを施 行した.細胞を培養した後,ピペットで線状に剥離 し距離を計測,24時間培養後に再度残存距離を計測 した(図6A).uPARHCEC(115.4±33.7μm) は emptyHCEC(247.4±54.2μm)に比べ有意に細 胞の伸展は促進されていた(図6B). 6.MTT アッセイによる細胞増殖能の検討 MTT アッセイにより uPAR が細胞の増殖能に与 える影響を検討した.細胞を培養し,24時間後,48 時間後,72時間後で吸光度を測定した.uPAR HCEC は emptyHCEC に比べ,24時間後,48時間 後,72時間後全てで増殖能は有意に亢進していた(図 7). 角膜上皮創傷治癒過程における uPAR の役割と機能 61 図7.MTT assay による細胞増殖能の検討 細胞を培養し,24時間,48時間,72時間後それぞれで吸光度を測定し増殖能を検討した.uPARHCEC (白)と emptyHCEC(黒)の吸光度を平均値±標準偏差にて表記(*p<0.05). 図6.プラスチックプレートでのスクラッチアッセイによる細胞遊走能の検討 細胞を培養した後,ピペットで線状に剥離し距離を計測.24時間培養後再度距離を計測した.
剥離後0時間の uPARHCEC ,emptyHCEC ,剥離後24時間後の uPARHCEC ,emptyHCEC (bar=100μm).
それぞれの細胞(uPARHCEC:白,emptyHCEC:黒)の24時間後の残存距離(μm)の比較を平均値±
7.免疫蛍光染色による connexin 43の発現の検討 免疫蛍光染色により uPARHCEC, emptyHCEC における connexin 43の発現を検討した.uPAR HCEC, emptyHCEC を24時間培養後,connexin 43による蛍光免疫染色をしたところ,emptyHCEC では細胞膜に局在した connexin 43の発現を認めた. 一方,uPARHCEC ではその発現は emptyHCEC に比べ減弱していた(図8). 考 察 当研究室の児玉らは,マウスの角膜を用いた免疫 組織染色で,正常では uPAR は角膜上皮にほとんど 発現していないが,角膜上皮欠損を作成すると欠損 部を伸展,移動する角膜上皮細胞に強く発現するこ とを報告した20.これは uPAR が角膜上皮創傷治癒 過程において,何らかの働きをしている可能性があ ることを意味すると考えられた.そこで,本研究で は uPAR の機能に焦点をおいて,角膜上皮創傷治癒 過程におけるその役割,機能について解明を試みた. uPA が角膜上皮の再被覆に促進的に働くことは過 去の報告により証明されていたので15,20,本研究にお ける動物実験では,uPA の促進作用が与える影響を 除外し uPAR の純粋な役割を解明することを試みた. uPA ノックアウトマウスと uPA/uPAR ダブルノッ クアウトマウスの角膜上皮欠損モデルを作成し,in vivo でその治癒速度を比較することにより uPA の 影響を除外し,uPAR の役割を検討した.その結果, uPA/uPAR ダブルノックアウトマウスは uPA ノッ クアウトマウスと比較し,有意に上皮欠損の修復遅 延を認めた.この結果からは,uPAR は uPA の非 存在下でも上皮細胞の伸展,移動に重要な働きをし ている事が明らかになった. uPAR は糖鎖修飾を含め分子量約 55 KDa の蛋 白質であり,体内の種々の細胞に発現しており, glycosyl-phosphatidylinositol-anchor で細胞膜の 外層に結合している.uPAR は3つの相同的な繰り 返しドメイン(D1, D2, D3)により構成されており, uPA は uPAR の D1 で結合する25.uPAR の特徴は,
uPA と結合することにより細胞表面の uPA 活性を 効率よく発現させるだけでなく,integrin と協調し て細胞内情報伝達を引き起こし,細胞の接着や増殖 に関与することである28,29.また,uPAR の発現は, 組織の創傷治癒過程で局所的に増加する可能性があ る30.uPAR は D2 と D3 の間で容易に切断され,
soluble uPAR となる.uPAR は肺癌,大腸癌,胃 癌などの癌組織の伸展先端部にも強く発現している ことが明らかとなっている31.
今回の検討では,フィブロネクチンコーティング プレートで細胞を培養し,4 時間後には uPAR HCEC は emptyHCEC に比べ,扁平で突起を持っ た紡錘形の細胞が多数観察された.また90分後にお ける細胞接着率も有意に亢進していた.この uPAR の細胞接着に対する機能は,細胞の接着,脱着によ る細胞の移動が行われる角膜上皮欠損後の角膜上皮 再被覆に重要な役割を果たしていると考えられた. これらの作用機序に関しては integrin が関与してい る可能性があり,今後解明する必要があると考えら れる. フィブロネクチンでコーティングされた plate の 上に細胞を播種し,uPAR が細胞の遊走に与える影 響についてスクラッチアッセイにより検討したとこ ろ,図5に示すように,24時間後において uPAR HCEC は emptyHCEC に比べ有意に遊走能を亢進 していた.この遊走能促進作用には,少なくとも二 つの機序が働いた可能性があると考えられる.一つ は uPA と uPAR が結合することにより,uPA が 歌 村 翔 子
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図8.免疫蛍光染色による connexin 43の発現の検討 A:uPARHCEC の connexin 43による蛍光免疫染色
B:uPARHCEC の位相差顕微鏡による細胞形態の観察
C:emptyHCEC の connexin 43による蛍光免疫染色
細胞周囲における局所線溶を補強させ,細胞のフィ ブロネクチンからの脱着を促進させる機序が働いた 可能性,またもう一つは uPAR に uPA の作用と関 係なく細胞増殖能や遊走能に影響を与えた可能性が 考えられる.そこで,uPA と uPAR の結合を阻害 することを試みた.uPA はN末端より Growth fac- tor like(GFD)ドメイン,Kringle ドメインおよ び Proteolytic ドメインを有している.このうち GFD ドメインで,細胞表面に存在する膜結合型の uPAR と結合し,細胞内シグナル伝達系が活性化さ れる.そして蛋白分解活性を有する Proteolytic ド メインが細胞周囲の局所線溶を担う.このように異 なる3領域が順番に配列している構造である.uPAR の uPA 結合部位である ATF(amino-terminal frag- ment)を阻害する抗 uPAATF 抗体,uPA のプロ テアーゼ活性を選択的に阻害する uPAinhibitor を 用いた阻害実験による検討では,uPARHCEC, emptyHCEC の細胞共に,抗 uPAATF 抗体, uPAinhibitor 投与群で非投与群に比べ有意に遊走 能は抑制された.この結果は児玉らの in vivo での uPA による角膜上皮再被覆促進作用の結果とよく一 致している.一方,本実験からは抗 uPAATF 抗 体投与群間,uPAinhibitor 投与群間で uPAR HCEC と emptyHCEC の細胞群との間にも遊走能 に有意な差があり,uPARHCEC は emptyHCEC に比べて遊走能が亢進していた.この結果からは, uPAR が uPA 非依存的に遊走能を亢進させている と考えられた.
そこで,uPARHCEC,emptyHCEC の細胞を 同一の個数で plate に播種し,細胞の発育状態を確 認すると,uPARHCEC は emptyHCEC に比べ confluent になる速度が速く,同一時間培養したの ち細胞密度を測定すると,細胞密度も高いことがわ かった.そこで uPARHCEC の増殖能が empty HCEC より高いという仮説をたて,MTT アッセイ により2群間の増殖能の差を検討した.図7に示す ように uPARHCEC は24,48,72時間において有 意に増殖能が高いことが明らかになった.角膜上 皮細胞の増殖を促進する因子として,epidermal growth factor receptor(EGF)は広く知られてい る.臨床の場においても EGF は角膜穿孔に対する 治療薬として使用されている.Jo らは,uPAR は EGF receptor(EGFR)と協調して増殖に関与する と報告している32.また,乳癌細胞において uPAR の過剰発現は癌細胞の幹細胞様変化を引き起こすと 報告されている33.uPAR の過剰発現が増殖能を促 進させたという我々の結果も EGF との相互作用や 形質変化と関係がある可能性があり,今後解明する 必要があると考えられた. 角膜上皮の伸展において,細胞と ECM の接着は 重要であるが,細胞細胞間の接着もまた重要である. もし角膜上皮の接着が強固であれば,細胞は動きづ らく角膜上皮欠損部に移動しにくくなる.角膜上皮 細胞の細胞間の接着には,gap junction, tight junc- tion, desmosome と adherens junction の4種類が ある34,35.gap junction は基底細胞層に存在し,tight
junction は表層細胞に,desmosome は翼細胞, adherens junction はすべての細胞層に分布してい る34.connexin は gap junction を構成する特異的
な蛋白質である.connexin の中には細胞特異的なも のもあるが,connexin 43は,上皮細胞,内皮細胞,線 維芽細胞を含む多くの細胞に発現している. 正常の家兎角膜では,connexin 43は基底細胞層に 発現している36.角膜上皮欠損を作成すると伸展し てくる基底細胞には connexin の発現は認めない37. 鈴木らは角膜上皮剥離後,上皮が完全に被覆され, 剥離3日後に connexin 43の発現が増強してくるこ とを報告している38.これらの結果は角膜上皮再被 覆の過程で欠損部周辺の細胞は未分化に脱分極して いる可能性があることを示唆しているのかもしれな い.connexin 43は細胞膜に局在することにより, ギャップ結合の機能分子となることが知られている. 本研究結果からも,uPARHCEC, emptyHCEC に おいて connexin 43は細胞膜に局在した発現を認め た.またその発現は,uPARHCEC において減弱 していた(図8).これは uPAR の発現が connexin 43の機能に関与している可能性を示唆すると考えら
れた.今後,uPAR KO マウスを用いて,in vivo に おける connexin 43の発現を検討する必要があると 考えられる. 本研究の結果から,uPAR は角膜上皮細胞の接着, 伸展,増殖に促進的に作用する働きがあることが分 かった.そしてその作用機序はひとつではなく,複 数のメカニズムが関与していると考えられた.uPA と協調して細胞周囲の局所線溶を促進しフィブロネ クチンと細胞との脱着を促進させる働きがあること, uPA との結合により,角膜上皮細胞の伸展を促進さ せること,細胞の増殖能の亢進に関与していること, また gap junction を弱める作用に関与している可能 性があることが明らかになった. 現在のところ,遷延性角膜上皮欠損は治療に難渋 することが多く,またフォーマットされた治療法は ない.さらに Stevens-Johnson 症候群や眼類天疱瘡 は角膜上皮の幹細胞の異常自体がその本態であり, 有効な治療法はない.本研究から,uPAR は角膜上 皮細胞の接着,伸展,増殖に極めて密接に関与して 角膜上皮創傷治癒過程における uPAR の役割と機能 63
いることが明らかになった.この uPAR の角膜上皮 細胞に対する作用は,現在有効な治療法がない疾患 の病態に関与するだけでなく,その治療法の開発に おいてもひとつの手がかりになる可能性があると考 えられた. 謝 辞 本稿を終えるにあたり,御指導,御校閲を賜りました近畿 大学医学部眼科学教室日下俊次教授に深甚なる謝意を表しま す.また本研究にあたり,終始直接御指導頂きました近畿大 学医学部奈良病院眼科杉岡孝二准教授,ならびに近畿大学医 学部下村嘉一名誉教授,ご協力いただいた近畿大学松尾理名 誉教授,近畿大学奈良病院眼科橋彩診療講師,近畿大学医 学部医学基盤教育部門岡田清孝准教授,近畿大学生物理工学 部吉田浩二教授に心より感謝申し上げます.本論文の一部は, 第120回日本眼科学会総会(仙台,2016年4月),The Asso- ciation for Research in Vision and Ophthalmology 2016 (Seattle, 2016年5月),第41回日本角膜学会総会(福岡,2017 年2月)において発表した.開示すべき利益相反はありません.
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