【学位論文審査の要旨】
原子力発電所施設、放射性物質の影響を受けた廃棄物や土壌などの保管施設,医療施設 などには重量コンクリートが遮蔽材料として使用されている。重量コンクリートの遮蔽性 能については、遮蔽性能の簡易評価方法の確立、構成材料の遮蔽性能への影響の明確化、
実際の遮蔽部材の耐久性能および耐荷性能の解明などが課題となっている。
申請者は、重量コンクリートの放射性物質の遮蔽性能に関して、各種構成材料の遮蔽性 能への影響、重量コンクリート部材の遮水性能および耐荷性能などについて明らかにして いる。
本論文は6章からなる。
第1章は序論である。本研究の背景と既往の研究を概説し、本研究の意義、目的、研究 方法などを述べた。
第2章では放射線の遮蔽性能について検討した。X線透過デジタル画像からコンクリー ト試験体の遮蔽率を評価する方法を提案し、X線の遮蔽率と部材厚さからコンクリートの 設計密度を求める計算式を示した。さらに、重量コンクリートで製造した実大試験体を用 い、携帯型X線照射装置より得られる鉄筋部およびコンクリート部のX線透過デジタル画 像から、コンクリート部の線減弱係数を推定する方法を提案した。それらの評価方法を適 用し、重量コンクリートに流動性能を付与することで、材料分離がなく、遮蔽性能も高く なることを示した。
第3章では重量コンクリートの水分移動抵抗性に影響する表層部の遮水性能について検 討した。不分離性の流動コンクリートとするために、低水結合材比で、フライアッシュや 膨張材などを使用することで、水分移動抵抗性が向上することを明らかにした。表面透水 試験より得られたコンクリート表層の水分移動抵抗性は、水結合材比や膨張材の添加によ り顕著に変化し、水結合材比が小さいほど表面透水性は小さくなること、膨張材の添加に よりさらに表面透水性は小さくなることなどを明らかにした。また、表面透水性と細孔空 隙量との相関性が高く、0.1μm 以上の細孔空隙量が多くなると透水速度は大きくなること を確認した。また、膨張材やフライアッシュを適量添加することによって、0.1μm 以上の 細孔空隙量が少なくなり、透水速度は小さくなることを示した。さらに、屋外に 3 年半曝 露した実大試験体において、重量コンクリートの水分移動抵抗性に変化がないことを示し た。
第4章では放射性物質の外部への漏えいを防止するためコンクリートの自己治癒性能に ついて検討した。膨張材の添加により、ひび割れの狭窄効果と、ひび割れ近傍に発生して いるマイクロクラックへのエトリンガイトの生成などにより透水量が低下することを明ら かにした。有機繊維はひび割れに架橋してセメント水和物を吸着するために、自己治癒に 効果的であることを示した。ひび割れ幅と透水速度の理論式より透水速度の推定が可能と なった。
第5章では実大遮蔽容器の耐荷性能を検討した。ボックスカルバート形状の試験体につ
いて耐圧試験を実施し、振動締固め条件および締固め時間などが試験体の力学的特性に与 える影響を明らかにした。
第6章は、本研究にて得られた知見を纏めるとともに今後の課題について述べている。
以上のように,本論文は重量コンクリートの放射性物質の遮蔽性能に関して、各種構 成材料の遮蔽性能への影響、重量コンクリート部材の遮水性能および耐荷性能などについ て明らかにしたものであり、工学への貢献度は高い。よって、博士(工学)の学位を授与 するに十分に値するものである。