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【学位論文審査の要旨】

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Academic year: 2021

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【学位論文審査の要旨】

1 研究の目的

ポリエチレンやポリプロピレンに代表されるポリオレフィンは、軽量で可能性に優れる 故に、高分子生産量の半分以上を占め、世界全体での生産量は依然増加傾向にある。遷移 金属触媒によるオレフィンの配位重合はその基幹技術で、従来の触媒技術では合成不可能 な、新しいオレフィン系高分子機能材料の合成と特性解析に関する研究開発が注目を集め ている。近年、全てが炭化水素の主鎖・側鎖からなる櫛型ポリマーとなる、長鎖α-オレフィ ン重合体の合成と特性解析に関する研究が注目を集めている。この種のポリマーは疎水性 の櫛型(シリンダー)構造の特異性に起因し、従来とは異なる機能発現が期待される。こ の種のポリマーは長鎖α-オレフィンの単独重合(Grafting through手法)により合成可能 と考えられるが、従来触媒では主に低分子量オリゴマーを与えることから、分子量の揃っ た超高分子量体の合成を可能とする触媒や合成手法に関する開発が必要とされた。

本博士論文では、既に 1-ヘキセンなどのα-オレフィン重合などで超高分子量体の合成を 可能としたフェノキシ配位ハーフチタノセン触媒に注目し、今迄成功例の希少な、分子量 が厳密に制御された長鎖 α-オレフィンの高重合体の合成手法の確立を目的に取り組んだ。

さらに末端官能基を有する長鎖 α-オレフィンとの共重合体を検討し、合成した櫛型ポリマ ー(ナノシリンダー)の表面修飾を可能とする新規合成法の確立に取り組んだ。

2 研究の方法と結果

本研究の目的を達成するために、既に研究室で実績のあるフェノキシ配位子を有する非 架橋型のハーフチタノセン錯体触媒に注目し、初期には既知の架橋型ハーフチタノセン触 媒や既存のメタロセン触媒も含めて、炭素鎖の長い 1-ドデセンや 1-テトラデセン、1-オク タデセンの重合反応を通じ、目的ポリマーの合成を可能とする触媒探索に取り組んだ。

メチルアルミノキサン助触媒存在下、フェノキシ配位ハーフチタノセン触媒は従来触媒 よりも高い触媒活性で高分子量ポリマーを与えた。この反応における主な連鎖移動反応は 使用する有機アルミニウム化合物とのアルキル交換ではなく、中心金属への β 水素脱離に よることも明らかにした。さらに、同チタン錯体触媒を用いて、ホウ素助触媒及び有機ア ルミニウム助触媒の存在下、ヘキサンなどの脂肪族溶媒中、-30 ºC以下の低温で重合反応を 実施することで、分子量分布の狭い、超高分子量ポリマーの合成が可能となることを明ら かにした。この反応の経時追跡により、得られるポリマーの収量と数平均分子量との間に

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比例関係が成立し、従って重合は擬リビング挙動をとること、使用する有機アルミニウム 助触媒により活性や分子量分布が依存することなどを明らかにした。この手法による条件 の最適化により、今迄不可能であった、分子量の厳密に揃った、100万を超える数平均分子 量を有する超高分子量ポリマーの合成を達成した。この反応では、低温ほど、触媒活性は 低下するものの、得られるポリマーの分子量分布が狭くなることも明らかになった。

本論文で確立した低温での重合手法を用い、長鎖 α-オレフィンと末端にオレフィン二重 結合を有する長鎖非共役ジエン(例えば1-ドデセンと1,11-ドデカジエンや、1-テトラデセ

ンと1,13-テトラデカジエン)との共重合を検討した。この共重合反応においても、低温で

実施することで、分子量分布の狭い、超高分子量体の合成が可能で、構造解析より末端官 能基(オレフィン二重結合)が保持されることを明らかにした。さらに末端水酸基を有す る長鎖オレフィンとの共重合も検討し、得られるポリマー中の水酸基を起点とするアルミ ニウム触媒による環状ラクトンの開環リビング重合により、櫛型の炭化水素主鎖・側鎖から なる疎水性シリンダーの表面に親水性ポリマーのグラフト化を達成した。この研究を通じ て得られたこの種の材料は、今迄合成が不可能で、構造の特異性に起因する機能発現が大 いに期待される。この成果を基盤とした材料開発が進展することが大いに期待される。

3 審査の結果

Pengoubol Sarntamon氏は、従来の触媒技術で合成困難な長鎖αオレフィンの高重合体、

特に鎖長の揃った炭化水素のみならなる超高分子量のポリマーナノシリンダーの精密合成 をはじめて可能とし、さらにその表面の新規修飾手法も達成している。本博士論文の成果 は学術的・実用的に興味深く、新規高分子材料として今後の展開が大いに期待される。既 に主要な成果が学術論文として受理され、国内外で開催の国際会議においてポスターでそ の成果を発表している。

以上の理由により、本研究は博士(理学)の学位に十分値するものと判定した。

4 最終試験の結果

本学の学位規則に従って最終試験を行った。公開の席上で論文内容の発表を行い、分子 物質化学専攻教員による質疑応答をもって論文および関連分野についての試験とし、合格 と判定した。

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