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【学位論文審査の要旨】

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Academic year: 2021

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【学位論文審査の要旨】

近年、東京を始めとする我が国を始めとした多くの地域に形成されている巨大都市にお いては、世界的な都市間競争への対応、人口と都市的活動の集中による需要増加への対応 などのために、大規模再開発等を通じて、多数の大規模・超高層建築物が建設されている。

これらは、巨大な建築空間を備え、多様な用途が集積したいわば「街」の様相を呈するに 至っている。このような大規模・超高層都市施設(以下「大規模タワー化・タウン化した 都市施設」という。)の整備においては、建築物の耐震性の向上や、街路や広場の整備によ って、災害に対する安全性を向上させることも企図されている。その一方で、このような 都市空間は、従来に比べて、垂直移動間が占める割合が高くなる。この結果として、救急 救命の観点からは、緊急車両が敷地に到着してから救急隊が傷病者に接触するまでの時間 が増大することが懸念される。また、我が国を始めとした多くの地域では、高齢化が進展 していることから救急需要が増大すると予想されている。このことから、巨大都市におい ては、救急隊が傷病者に接触する現場到着所要時間が延びることが予想される。この問題 に対応するにあたっては、バイスタンダー及び防災センター勤務者が自動体外式除細動器

(以下「AED」という。)を使用することが効果的であると期待されている。

以上の社会的背景を踏まえて、本論文は、大規模タワー化・タウン化した都市施設で発 生する傷病者に対対応するために、非常用エレベーター(以下「EV」という。)、緊急車両 進入口、AED、防災センターなどを都市装置という概念で捉えて、その最適な配置と運用 の工夫について、都市解析の数理モデルを用いて検討することを目的としている。

本論文で得られた成果は下記のように要約できる。

第1に、東京において最大級と目される、延床面積約 40万㎡、軒高230m 超、54階の 超高層都市施設というモデル建築物を用いて、救急隊の施設内移動時間(以下「トラベル タイム」という。)の実態を、マンハッタン距離重み付きボロノイ図によって水平移動時間 を定式化し、加えてエレベーター速度式を適用して垂直移動時間をモデル化することによ って、明らかにした。さらに、これを用いて、建築計画におけるEVの配置、救急隊進入口 の位置の検討を行い、この観点からの代表的なコアタイプの特性を明確化した。この分析 によってモデル建築物のトラベルタイムは、最小値で約19秒、中間値で約2分、最大値で 約4分かかることが判明し、救命救急の観点からは無視できないことが確認された。これ より、超高層都市施設内のトラベルタイムの分析に基づく対策の必要性が示唆された。ま た、トラベルタイムのうち5割から7割を垂直移動時間が占めることから、その簡易な短 縮方法としてEVの運用の工夫が有効であることが判明し、その都市装置としての活用可能 性が示された。

第2に、上記と同様のモデル建築物を用いて、多様な用途が混在する状況を想定して、

バイスタンダーと防災センター勤務者がAEDを使用することを前提として、床置きAED、 防災センター内AED、さらにEV内設置AEDの最適配置を算出するモデルを開発した。

このモデルは、生存成功率救命曲線、カーラー救命曲線、ドリンカー救命曲線の3種類の

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救命曲線を用いて、「全館平均救命率」を算出するものである。このモデルを用いて、代表 的なケースにおいて様々な配置計画を比較して最適配置を具体的に導出した。その結果と して、救命曲線ごとの違いは小さいこと、EV内設置AEDに有効性があること、あるいは、

防災センター勤務者のAED活用割合はAEDを床置きしていない階で高いことが示された。

また「全館平均救命率」の観点から、床置きAEDを52階、53階、54階に配置した上に、

防災センター及びEV内に各々1個の計5個のAEDを設置する最適配置は、各階にAED 1個に加えて防災センター内にAED1個の計55個のAEDを設置する組み合わせと比べて、

救命率の差は生存成功率救命曲線で0.0333 ポイント、カーラー救命曲線で0.0356ポイン ト、ドリンカー救命曲線で0.0175ポイントとなるなど、配置計画を比較検討する際に参照 可能な指標を導出できることが示された。

以上より、本論文の成果は、都市計画において下記の意義があると評価できる。すなわ ち、大規模タワー化・タウン化した都市施設においては、新たな災害ポテンシャルとして の救急救命上の課題が浮上することが明確になった。この新たな災害ポテンシャルに対応 するにあたっては、EV、緊急車両進入口、AED、防災センターといった都市装置の有機的 連携を前提として、最適配置と運用の工夫を行うことに、一定の有効性が認められること が示された。

したがって、本論文は、建築学、都市計画学の発展に寄与するところ大であると考えら れることから、博士(工学)の学位を授与するに値すると判断される。

参照

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