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学位論文審査の要旨

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 医 学 ) 酒 井 良 江

学 位 論 文 題 名

ホスファチジルセリン依存性抗プロトロンビン抗体の 血栓原性についての検討

学位論文内容の要旨

【背景と目的】抗リン脂質抗体症候群(antiphospholipid syndrome:APS)は,全身の動静 脈血栓症や妊娠合併症を主症状とし,抗リン脂質抗体が証明される自己免疫疾患である.抗 リン 脂質抗体(antiphospholipid antibodies:aPL)は,凝固学的検査によるループスア ンチコアグラント(lupus anticoagulant:LA)あるいは,固相酵素抗体法(enzyme−linked immunosorbent assay:ELISA)で検出される.ホスファチジルセリン依存性抗プロトロンビ ン抗体(phosphatidylserine dependent antiprothrombin antibody:aPS/PT)は,Caz゛の 存在下でりン脂質と結合したヒトプロトロンビンを認識する抗体であり,そのエピトープは プロト口ンビンがりン脂質に結合した際にあらたに表出するものであることが推定されて いる .またaPS/PTは,LAの責任抗体であること,APSの臨床症状に強い相関をもつことが 示されており,APSの病態形成において重要な役割を担うものと考えられてきた,APS患者 に お い て は ,in vitroでLAは anticoagulant と し て は た ら き , ´ 田 町vで は

procoagulant をしめすというパラドックスが存在する.しかし,aPS/PTのin vivoに おける血栓形成にたいする病理学的機序および,jロ町troにおけるループスアンチコアグ ラン トの機序 ,抗体が認識するエピトープはまだ解明されていない,aPS/PTがAPS患者の 血栓 形成傾向 におよぼす作用にっいて検討するため,aPS/PT陽性のAPS患者と健常人にお ける血栓形成マーカーと線溶亢進をあらわすマーカーを測定した.さらに,伽vi troにお けるaPS/PTのLA作用にっいて,マウスモノクローナルaP S/PTを用いてトロンピン生成に 対する効果にっいて検討した.

【対 象と方法 】APS診断基準 を満た す患者36人と127人の健常人にっいて,トロンビン生 成マーカーとして血漿中プロトロンビンフラグメン卜1+2.トロンピン―アンチトロンビン 複合体,線溶亢進マーカーとして,可溶性フアブリン,Dダイマー,フアプリン/フアブリ ン溶 解産物を 測定した.APS患者にっいては,血栓症状の出現から最短でも60月以上経過 したのちに採取した静脈血を用いて行なった,

  また,8週令のメスBal b/cマウスにヒトプ口トロンピンを免疫して得た脾臓細胞からハイ ブリドーマを作成し,マウスモノクローナル抗プロトロンビン抗体,231Dを得た.モノクロ ーナル抗体の免疫学的特徴を検討するため,ホスファチジルセリンとプロトロンビンの複合 体(PS/PT),お よびプロ トロン ビン単独に対する結合性にっきELISA法にて検討した.ま た,231DとAPS患者aPS/PTの抗原認識部位の共通性を検討するため,APS患者血漿から精製 したIgGとPS/PTの結合の,231Dの拮抗阻害作用にっいての検討をおこなった.さらに.伽 vi troでト ロンビン複合体(リン脂質,CaClz,ヒト精製活性化第V因子(FVa),ヒト活性 化第X因子(FXa),ヒト精製プロトロンビン)からトロンビンが生成される系を作成し,231D を添加によるトロンビン生成に対する効果にっいて検討した,

【結果】血漿中のトロンピン生成マーカーと線溶亢進マーカーレベルは,aPS/PT陽性患者 において,健常人と比較し基準値以上である率が有意に高かった.マウスモノクローナル抗 プロ トロビン 抗体の免疫学的特徴にっいての検討では,231DはPS/PTに強く結合し,プロ

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トロ ンビン単 独への 結合は弱 かった .エピトープの共通性にっいての検討では,固相化 PS/PTに 対す るELISAにお い て ,aPS/PT陽性APS患 者IgGのPS/PTに 対する結 合は,231D によ って35−70%抑制された.Jロぬtroにおけるトロンビン生成に対する231Dの効果につ いて の検討で は,FVaが0あるい はごく低 濃度(0.1 ng/mL)の条件においては,231Dはト ロンピン生成を濃度依存的に最大87%まで増加させた.反対に,高濃度のFVa(1.0 ng/mL) が存 在するとき,231Dはトロンビン生成を最大35%まで減少させた.FVa非存在下におい ては,FXa濃度の上昇にともなって,231Dのトロンピン生成増強効果が亢進した.FXa濃度 が上昇するにっれ,231Dのトロンビン生成抑制効果は消失した.

【考 察】aPS/PT陽 性APS患 者では ,血栓症 状を生 じていな い状態においても健常人に比 し血 漿中でト ロンビ ン生成亢 進およ び線溶亢進状態にあることから,aPS/PTの存在が由 wvoにおけるAPSの 向血栓状 態に関 与してい る可能 性が考え られた.また,231DはPS/PT を 認識し ,PS/PT上でAPS患者aPS/PTと 部分的に ェピト ープを共 有する ことから ,同抗 体がAPS患者aPS/PTと類似 の性質 を持っと 考えら れた.こ のモノクローナル抗体を用い た,トロンビン生成に対する効果にっいて検討においては,231Dのトロンビン生成抑制効 果はFVa依存 性であ ったこと から, その効果はFVaの阻害作用であることが推測された,

FVa非存在下 におけ る231Dのト 口ンビン 生成亢進 作用に っいては,231Dがプロトロンビ ンとホスファチジルセリンの親和性を高め,リン脂質表面におけるプロト口ンビン濃度を高 め ること でトロ ンビン生 成を亢進 させた 可能性が 推測さ れた.231DがFVaとFXaの濃 度 バ ランス によっ てトロン ビン生成 に対し 相反する 効果を 持ってい ること から.こ れが aPS/PTの由 ガぬり と血vivoの トロンビン生成にたいするパラドックスに関わっている可 能性が考えられた.

【結論】ホスファチジルセリン依存性抗プロト口ンピン抗体(aPS/PT)陽性抗リン脂質抗体 症候 群(APS)患者では,非血栓時においても凝固線溶亢進状態にあることを明らかにし,

同抗体がin vi voでのAPSの向血栓状態に関与している可能性を示した,ホスファチジルセ リン依存性マウスモノクローナル抗ヒトプ口ト口ンビン抗体,231Dがホスファチジルセリ ン結 合プロト ロンビ ン(PS/PT)を認識し ,PS/PT上でAPS患者aPS/PTと部分的にエピトー プを 共有することを明らかにし,同抗体がAPS患者aPS/PTと類似の性質を持っことを示し た,231Dはin vi troにおいて,活性化第V因子(FVa)非存在下においてはト口ンビン生成 を亢進させ,FVa高濃度においてはそれを抑制することを明らかにし,231DがFVaと活性化 第X因子(FXa)濃度 のバラン スによ り,トロンビン生成亢進と抑制の相反する効果を示す ことを明らかにした.

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

ホスファチジルセリン依存性抗プロトロンビン抗体の 血栓原性についての検討

【 背景と目的】抗リン脂質抗 体症候群(antiphospholipid syndrome: APS)は,全身の動静脈血栓症 や 妊娠合併症を主症状とし, 抗リン脂質抗体が証明される 自己免疫疾患である.抗リン脂質抗体 (antiphospholipid antibodies: aPL)は,凝固学的検査によるループスアンチコアグラント(lupus anticoagulant:LA)あるいは ,固相酵素抗体法(enzyme―linked immunosorbent assay: ELISA) 検 出される.ホスファチジル セリン依存性抗プロトロンビン抗体(phosphatidylserine dependent antiprothrombin antibody: aPS/PT)は,Ca2゛の存在下でりン脂質と結合したヒトプロトロンビンを認 識する抗体であり,そのエピトープはプロトロンビンがりン脂質に結合した際にあらたに表出するも の で あることが推定されている .またaPS/PTは,LAの責任 抗体であること,APSの臨床 症状に強 い 相関をもつことが示されて おり,APSの病態形成において重要な役割を担うものと考えられてき た ,APS患 者 に お い て は , 巾 ぬ り でLA anticoagulant と し て は た ら き , めwvoで は procoagulant をしめすというパラドックスが存在する.しかし,aPS/PTのmwvoにおける血栓形成 に たいする病理学的機序およ び,伽vitroにおけるループスアンチコアグラントの機序,抗体が認 識 す るエ ピト ープ は まだ 解明 され てい な い,aPS/PTがAPS患者の血栓形成傾向におよ ばす作用 に つ いて 検討 する た め,aPS/PT陽 性のAPS患者 と 健常人に おける血栓形成マーカーと 線溶亢進 を あらわすマーカーを測定し た.さらに,由vitr。におけるaPS/PTのLA作用について,マウスモノ ク ロ ー ナ ル aPS/PTを 用 い て ト ロ ン ビ ン 生 成 に 対 す る 効 果 に つ い て 検 討 し た .

【 対象と方法】APS診断基準を 満たす患者36人と127人の健 常人について,トロンビン生成マーカ ーとして血漿中プロトロンビンフラグメント1十2,トロンビン―アンチトロンビン複合体,線溶亢進マー カーとして,可溶性フィブリン,Dダイマー,フィブリン/フィブリン溶解産物を測定した.APS患者に つ い ては ,血 栓症 状 の出 現か ら最短でも60月以上経過した のちに採取した静脈血を用 いて行な った.また,8週令のメスBalb/cマウスにヒトプロトロンビンを免疫して得た脾臓細胞からハイブリドー マを作成し,マウスモノクローナル抗プロトロンビン抗体,231Dを得た.モノクローナル抗体の免疫 学的特徴を検討するため,ホスファチジルセリンとプロトロンビンの複合体(PS/PT),およびプロトロ ン ビ ン単 独に 対す る 結合 性に っきELISA法 にて 検 討した. また,231DとAPS患者aPSPTの抗原 認 識 部位 の共 通性 を 検討 する ため ,APS患 者血 漿 から 精製 したIgGとPS/PTの結合の ,231D 拮抗阻害作用についての検討をおこなった.さらに,由鹹mでトロンビン複合体(リン脂質,CaC12 ヒト精製活性化第V因子(FVa),ヒ卜活性化第X因子(FXa),ヒト精製プロトロンビン)からトロンビン が 生 成さ れる 系を 作 成し ,231Dを添加によるトロンビン生 成に対する効果について検 討した.

【 結果】血漿中のトロンビン 生成マーカーと線溶亢進マー カーレベルは,aPS/PT陽性患者におい て,健常人と比較し基準値以上である率が有意に高かった.マウスモノクローナル抗プロトロビン抗 体 の 免疫学的特徴についての検 討では,231DはPS/PTに強く 結合し,プロトロンビン単 独への結

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夫 次

隆 鎮

池 山

小 畠

授 授

教 教

査 査

主 副

(4)

合は 弱かっ た,エ ピトー プの共 通性につ いての検討では,固相化PS/PTに対するELISAにおいて,

aPS/PT

陽 性APS患 者

IgG

のPS/PTに 対す る 結 合 は,

231D

に よ っ て

35

70%

抑制 された ,励vitro にお けるト ロンビ ン生成 に対す る231Dの効 果につ いての 検討で は,FVaが

0

あるい はごく低濃度

(0.1 ng/mL)

の条件においては,231Dはトロンビン生成を濃度依存的に最大879'oまで増加させた.

反対 に,高 濃度の

FVa

(1.0 ng/mL)が存在するとき,231Dはトロンビン生成を最大35%まで減少さ せた ,FVa非存 在下に おいて は,FXa濃 度の上 昇にと もなっ て,231Dの トロン ビン生 成増強効果 が 亢 進 し た .

FXa

濃 度 が 上 昇 す る に っ れ ,

231D

の ト ロ ン ビ ン 生 成 抑 制 効 果 は 消 失 し た .

【 考 察】

aPS/PT

陽 性APS患者 では, 血栓症 状を生 じてい ない状 態にお いても 健常人に 比し血 漿 中で トロン ビン生 成亢進 および 線溶亢進 状態にあることから,aPS/PTの存在がmvivoにおけるAPS の 向 血栓 状 態 に 関与 し て い る可 能 性 が 考え られ た.ま た,231Dは

PS/PT

を認 識し,

PS/PT

上で

APS

患 者aPS/PTと 部 分 的に エ ピ ト ープ を 共 有する ことか ら,同 抗体が

APS

患者aPS/PTと類似 の 性質を持っと考えられた.このモノクローナル抗体を用いた,トロンビン生成に対する効果について 検 討 にお い て は ,231Dのトロ ンビン 生成抑制 効果は

FVa

依存 性であっ たこと から, その効 果は

FVa

の阻 害作用 である ことが 推測さ れた.

FVa

非存在 下にお ける231Dの トロン ビン生 成亢進作用 については,231Dがプロトロンビンとホスファチジルセリンの親和性を高め,リン脂質表面における プロトロンビン濃度を高めることでトロンビン生成を亢進させた可能性が推測された.231DがFVaと

FXa

の濃 度バラ ンスに よって トロン ビン生 成に対 し相反 する効果 を持っていることから,これが

aPS/PT

の 仞vitroと伽

wvo

のト ロンビン 生成にたいするパラドックスに関わっている可能性が考え られた,

【結 論】ホ スファ チジル セリン 依存性抗 プロトロンビン抗体(aPS/PT)陽性抗リン脂質抗体症候群

(APS)

患 者 で は ,非 血栓 時にお いても 凝固線 溶亢進状 態にあ ること を明ら かにし ,同抗 体が仞

VO

での

APS

の向 血栓状態 に関与 してい る可能 性を示 した, ホスフ ァチジルセリン依存性マウスモ ノクローナル抗ヒトプロトロンビン抗体,231Dがホスファチジルセリン結合プロトロンビン(PS/PT)を 認識 し,PS/PT上でAPS患 者aPS/PTと部 分的に エピト ープを 共有す ること を明ら かにし ,同抗体 が

APS

患者

aPS/PT

と 類似の性 質を持 っこと を示し た.231Dは めvitroに おいて ,活性 化第V因 子

(FVa)

非 存在下 において はトロ ンビン 生成を亢進させ,FVa高濃度においてはそれを抑制すること を明 らかに し,231Dが

FVa

と活 性化第X因子(FXa)濃 度のバ ランス により,トロンビン生成亢進と 抑制の相反する効果を示すことを明らかにした.

  

審 査員一同は、これらの成果を高く評価し,大学院課程における研鑚や取得単位なども併せ申 請 者 が 博 士 ( 医 学 ) の 学 位 を 受 け る の に 充 分 な 資 格 を 有 す る も の と 判 定 し た 。

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