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Academic year: 2021

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北海道大学 大学院農学院 修士論文発表会,2020 年 2 月 7 日

天然アクトミオシンの加熱凝集反応における L-ヒスチジンの作用

応用生物科学専攻 食資源科学講座 応用食品科学 窪野佑

1.緒論

食肉中でミオシンの多くは天然アクトミオシン(AM)として存在し, AM の加熱ゲル化特性は食肉 製品の結着性発現に寄与する。我々はこれまでに, 1 mM KCl, 5 mM L-ヒスチジン(His)に対して 透析した His 処理 AM が, 30~70℃の加熱でゲルを形成しないことを明らかにした。しかし, His が AM の加熱特性を変化させる作用については不明であり, これが明らかになれば新たなテクスチャ の食肉製品の開発への応用が期待できる。そこで, 本研究では低塩濃度条件の AM の加熱変性・凝 集反応への His の作用を明らかにすることを目的とした。

2.方法

鶏浅胸筋から常法により調製した AM を, 対照群である高塩濃度条件(0.6 M KCl, 5 mM Tris- HCl, pH 7.5), 低塩濃度条件(1 mM KCl, 5 mM Tris-HCl, pH 7.5), および試験群の His 処理条 件の溶液に対して 48 時間透析することで得た各条件の AM を, 30~70℃で 10 分間加熱した。各条 件の加熱 AM(0.1 mg/ml)に ANS-Mg を加え, 励起波長 380 nm, 蛍光波長 475 nm における蛍光強度 を測定し, 表面疎水性とした。各条件の加熱 AM(1.0 mg/ml)の 370 nm における吸光度を濁度とし た。各条件の加熱 AM(0.1 mg/ml)の印加電圧 60 V 下における分子の移動距離を測定し, ゼータ電 位を算出した。各条件の AM(0.1 mg/ml)に対し、Rotary Shadowing 法により試料を作製し, 透過 型電子顕微鏡により観察を行った。

3.結果と考察

まず, 変性の指標である表面疎水性を測定したところ, 高塩濃度および低塩濃度条件では, 40

~50℃で大きく上昇した。一方, His 処理 AM では 40~50℃における上昇の程度が低かったことか ら, 変性が抑制されることが示唆された。次に, 凝集の指標である濁度を測定した。高塩濃度およ び低塩濃度条件では 50~70℃で大きく上昇したのに対して, His 処理 AM では対照群より有意に低 い値を示し, 凝集が抑制されることが示唆された。そこで, 分子の静電的反発力の指標であるゼー タ電位を測定したところ, 全ての加熱温度で低塩濃度条件に対して His 処理 AM は有意に高く, 両 群で加熱による変化がみられなかったことから, His の存在によって AM の静電的反発力が上昇す ることが示唆された。また, 透過型電子顕微鏡により分子の形態を観察したところ, 低塩濃度条件 では未加熱でみられた F-アクトミオシン構造が 30℃以上の加熱で消失することを, His 処理 AM で は 40℃以下で F-アクトミオシン構造が維持されることを観察した。このことから, His 処理 AM で は His の存在によってミオシン‐アクチン間の結合が維持されることが考えられた。

4.結論

低塩濃度条件の AM の加熱変性・凝集反応への His の作用を検討した結果, His の存在により, 40℃以下におけるミオシン‐アクチン間の結合が保持されることと AM 分子の静電的反発力が上昇 することが示され, AM の加熱変性・凝集反応の抑制に関わっていることが明らかとなった。

参照

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