天 然 に お け る
234U :238∪梅 本 春 次
岡山大学温泉研究所 化学部門
は じ め に
ウランの同位体 としては質量数227か ら240迄 ,全て の質量数 に対 して一つ宛の核種が知 られてお り, この中 天然 における存在が知 られてい るのは23壬U,235U,235U であって,234Uは.238Uの壊変生成物である. ウラン系 列の壊変系列の一部は第 1図の通 りであって, 234Uは 23Su か ら1回のα壊変 と2回のβ壊変の結果生成 し,
nlUO)I) α,γ> znTh(UX
l )
415'×109y'
〆
/ 2411d'2347nPa(UX
巳
)1.18m.I.T.(06㍍)
y
a,2 3
4U(UTI)‑ 2.48×105y.γ α,γ
→ ‑230Th(I
o
) p >214Ra‑ 8,0×104y. 1620y. 第 1 図天然 においては238U との放射平衡 に相当す る量だけ存 在す る.原子数比で示 した之等核種の存在比 (同位体組 成)は234U:235U:23BU‑0.0056:0.7205:99.2739で あ り,
この比は永い間全ての天然物質 について一定であるとさ れていた.
ところが CHERDYNTSEV andCHALOV(1955)が 234U が濃縮 されてい る例 をschroeckingerite中 に見 出 し, StarikS(1958),BARANOVS:(1958),CHALOV(1959), SYROMYATNIKOV(1960),TliURBER(1962), HILLS (1963), RosHOLT、等(1963), 阪上等(1964)及 び梅本 (1964)が各種の ウラン鉱物及 び其の他の鉱物や岩石か ら の抽 出液,サンゴ礁,天然水 について234U:23BU(放射能 氏 )を求め,放射平衡 にある時の 1とい う値はか えって 稀である事が明 らか に された. これ らの測定結果は可成 り精度 に違いがあ り,比の値その ものは可成 り大 きい誤
差 を伴 う場合があるが,1とい う値は稀であるとい う事 は確か と考 えられ る.
次に 235U:238Uは地球上は勿論,限石 について も一定 で あ る と され ていたが,CHERDYNTSEV等 (1960)は 235Uが過剰 にある場合 を見出 した とし,これを超 ウラン 元 素の壊変 によって出来た235Uのため と考 えた. しか し247cmの半減期の再測定 と超 ウラン元素の宇宙存在度 か ら推定 して必ず しも肯定出来ない事であ り,247cmそ の ものの未発見は この考 えを裏書 きしてお り追試の必要 が あると考 えられる.
この様な ウランの同位体存在比 に関す る過去10年間の 研究について,測定法 (方法 によって精度が著 しく異 る)
と内容 を次 に紹介す る.
1 234U:2粥Uの測定法
ト1α放射能測定と β放射能測定による方法 この方法は古 く行われた方法で (CHERDYNTSEV等, 1955;CHALOV,1959;SYROMYATNIKOV, 1960),放射 化学的に精製 したUのα放射能 とβ放射能の測定 を行 うのである.即 ちα放射能は234Uと23SU(235Uによる放 射能は これ らの和の2%程度であるか ら重要ではない)に よる もので,234Thと2380が放射平衡 に達 して後のβ放射 能は23弓Uと平衡 にある234Th及 び234mPa(231Thによる β放射能は これ らの29乙程度であ り,半 減 期が短い)に よる放射能である.即 ちα放射能は234Uと238Uによ り, β放射能は23SUによって与 えられ るので,334U:238U比
を求める事が出来 るが,234Thは弱 エネルギー β線放射 体で あるか ら,β線測定の精度 を上 げるには可成 りの努 力 を必要 とす る.CfIALOVは この方法の統 計 誤 差 を求 め測定 値につけ加 えてい るが,誤差 はj=6‑ 10%である.
1‑2 α放射能測定 とウランの重量測定による方法 上記の方法のβ放射能測定の精 度が 悪 い ので,238U を重量法で求めた ウランの量か ら算 出 して β測 定 を避 けた方法である(STARIK等, 1958),即 ち一定量の ウラ ンによるα放 射 能 を測 定 し,標 準 との 比 較 によって
58 梅 本
2話4U:238U を求 める. この方法は改良 と称せ られ て い る が,重量法によって定量出来 る程度の ウランを取扱 うと い う極 めて稀な場合 にしか利用 出来ないのである.
しか し,著者の言葉 を修正 して, ウラン塁を定量す る とすれば微量の ウランを農光法等で定量出来,広 く利用 出来 る.
1‑3 質量分析計による方法
如何なる由来の ウランも全て235U:23SU は一定 として, 第 1表
春 次
質 琶分析計で23AU:235U を測定 して,23JU:23BUと同等 と 見なす方法である(RosHOLT等,1963).考 え方 として は尤 もな方法であるが,質量数が大 きくお互に質量数が 1Lか違わない同位体で しか も存在比が140倍 も違い両 核種 とも同位体存在比が1%以下 とあっては仲々苦 しい 方法 と考 えられ る.次に述べ るα線 スペ ク トロメ トリー と比べて少量の試料ですめば有難いわけである (明記 さ れていないが,表面 イオン化法によると推定 され る).
鉱 物 名 ∃年 代 童声 元 丁 . ㌻ 献
Pitchblendeore r Harz schroeckingerite iQuaternary
l 1 〝
3.1 1 〟
1
Naturalwater r ; 1.11土 0. 0 2
V.V.CHERDYNTSEV(1955)
V .I.BARANOV etal.(1958)
〟
〟
第2表 二次鉱物 中の234U:23SU 物 】 234U:238U 産 状 ] 鉱
酸 化 槽
Autunite Torbernite
Zeunerite
Pitchblende (baritevein)
(0.67±0.07), (0.87士0.09), (0.84士0.09), 0.97士0.10, 0.92士0.09, 1.03土0.07, 0.95士0.07, 0■98±0.06, i.02i=0.09, 1.00士0.06,
(0.95士0.07), (0.56士0.08),
≡;thcrhObelCeknidnegerite 膚1.01士0.05, 与接 (三・・三三≡:昔
Baritevein
0.87士0.09, 0.98土0.05, 0.99士0.09, 0.86士0.10, 0.97士0.07, 0.87土0,07, 0.98±0.10,
0.96±0.08, 1.06士0.07, (0.85土0.10), 1.08士0.06, 1.01士0.07, 0.95士0.08,
0.85士0.10, 1.06士0.07,
0.78士0.08, 1.16j=0.10, 1.03士0.07, 0.97±0,07,
( )を附 した ものはα線 スペ ク トロメ トリーを も行 った試料
1‑4 α線スペク トロ メータによる方 法
上述の特定の場合 を除い ては全て この方法を用いて 測定が行われてい るが,局 知 の通 りα線 スペ ク トロメ ータ‑はα線検出部 と波高 分析器 よ り成 ってお り.α 線検出部に電離画を用いた 場合 とシ リコン半導体 を用 いた場合 とが ある.前者 は 後者 に比べ極めて僅かに分 解能が劣 る反面,27r測定が 出来 ,前者 よ りも計数効率 が良い.何 れの場合 も良好 な波高分析器 を用いれば満 足すべ きスペ ク トルが得 ら れ る.一回の測定による比 の値の誤差は
土3%
に出来る.
2 231DU:238Uの測定法
2‑1 質量分析計によ る方法 国体用又は気体用何 れの 装 置を用いた場合で も後二 者の何れによるよ りも遥か に精度良 く測定が出来 る常 識的な方法である.
2‑2 中性子照射の核 分裂片を測定す る方法 (IsABA‑
EV等,1960) 電離画を用いたα線 スペ ク トロメ‑タ‑につい てα
綾が感 じない様にデ スク リ ミネー
してPo‑Be中 日音 源か らの申牲 鉱 子 をパ ラフィンで熱 中性子 として
頂射 し,生 じた核分裂片 を計数 L Uraninite て, α計数 と比較 して比 を求 め る. Bm。nerlte
2‑3 α線スペク トロメータ
‑を用いる方法 上記の方法 を[)i,lL'して測定佃 を 求 めた例が あるが (ClはRDYNTS‑ EV等,1961), 何 として も精度の 点 では極 めて悪い方法で ある.
3 天然における234U:23にU の測定値
234U:23日U(放射能比)が 1とは 異 ってい る事が1955年CHERDY‑
NTSEV(1955)によってschroecki‑ ngerite中の ウランについ て 見 出
され,3.7とい う値が与 えられた.
其 の後各種天然試料 中の値が測定 され,STARIK等(1958)及 びBAI RANOV等(1958)の債を第1表に 示す.
尚おCliALOV(1959)は ウラン
第 3表
強 放 射 性 鉱 物
59
変 質 し た 放 射 性 鉱 物 Pitchblende
〟
TllOritc
Chalcopyrite
Bornite
1.015土0.003 1.042±0.006 0
.
976士0.007輝 水 鉛 鉱
Z;aei7itirsakli.Kiitkahustan i董≡§§o董§…§…5L
i ramnes:;aaucasia †喜…§喜董蔓§享 skarn pegmatoid*
quartzvein*
硫 化 鉱 物
;t■J :: ttて:I:≡
の二次鉱物 について測定 し第2宏 一 ̲‑ 〟ー の様な値 を得 てい る.測定法はα Cinnabar 放射能 とβ放射能 を測定す る方法 Aragonite
を採用 したので,或 る ものはα線
れ る.
3‑1 各種試料の23iu:235U CHERDYNTSEV等(1961)は各 種 の鉱物 について234U:238Uを測 定 し第3表 の様な結果 を得 てい る が,一次鉱物 について 1よ り大 き い値 を得てお り,鉱化液で ある熱 水溶液中で 234Uが 過 剰 で, 第4
Ironoxides
水銀, アンチモン鉱床 中の鉱物 1.50
±
0.
16 1.30士0.03 1.02 士0.02スペ ク トロメ トリーでの測定 も行
妻妾 薫 ≡…喜H T=;r=gn;teeStttiittee i
て特異な ものではないか と考 えら ;r。wn ir.n Oxider Ironoxide
Calcite
Calcitepegmatit
e
Magnetite Calcite
Marble Cassiterite
〟
areTtee:Lap。。ir !;霊 ≡:::;
P j1.00士0.04
Armenia 言0.94士0.06
F王霊 …≡::::8
MiddleAsia
〟
Armenia
Kazakhstan
〟
0 . 8
74士0.008 1,02士0.02 0.97士0.05 1.05士0.02 1.01±0.01 1.08 ±0.04 1.00土0.031.00 ±0.01 0.94土0.01
pegmatitevein*
〟
′′
′′
′′
・ ′ *
*
一次鉱物 で234U:23⇒U> 1
60 梅 本
紀 の鉱 化作用が活発であった と推論 してい る.素直に受 入 れ るには試料の採取 された地域の地質や鉱床の状態 を 知 らされないままでは無理の様に考 えられる.
IsABAEV等(1960)は一産地のschroeckingeriteにつ いて測定 を行い0.98j=0.02,1.06±0.02,3.08士0.03と い う値 を得,同一産地の鉱物で も値の一定 していない事 を知 った.尚お或 る花 尚岩地帯の29の天然水中の234U:
238Uを求 め,1よ り小 さい場合は2試料で半数は3以上 の値を示 し,最高値は7,8で あった.即 ち天然水では1 よ り大 きい場合が普通 と考 えられ る.又飲料水中で1よ
り大 きい値をHTLL(1962)及 びHILLandCROOKALL (1963)が示 している.阪上(1964)は温泉水について測 定 し,1‑1.8の値を得てい る.梅本(1964)は東郷鉱山 の坑内水について1.2‑1.6とい う値 を与 えた.海水の 測定値は極めて少 く,1.14(MooRE等,1964).黒海の 1.15(KAZACflEVSKII等,1964),アゾフ海の1.20(KAZA‑
cHEVKII等,1964), 相模湾の1.17‑1.18(UMEMOTO, 1965)が知 られてい る.ソ連の河 川 水 で は1.12‑1.29 (平均1.20)で,火成岩が供給源になってい る山の川 で は.若干,高い傾向にある(KAZACHEVSKTI等,1964). ロシア平原の泉の値は1.03‑1.36とな ってい る(KAZA‑
cHEVSKTr,1964).
312 ウラン鉱床における234U:238U
CHERDYNTSEV等(1964)はVyatka河(Volga河の支 疏)の河岸段丘上にあるKIROV地方の泥炭地 に お い て 234Th,230Th,232Th,228Thと共に234U:23SUを測定 した.
ここでは砂 ,粘土,石灰岩か ら成 る基質の上に泥炭層が あ り,その上を第4紀層がおおってい る.泥炭の上層で は1.35‑1.59で下層では1.70‑1.79で 下 に拡 ってい る鉱層では 1.51‑1.67で中間の値を示 してい る.尚お 基盤では1よ り小 さい.泥炭地の水は1.48‑1.78で泥 炭に近 く,第4紀層及び基盤の水は 1.12‑1.30である.
即 ち泥炭の値 とその水 とは同 じ値 を示 してい る.
RosHOLT等(1963)ーは米国西部の28の ウラン鉱 山か ら砂岩中の黒色の ウラン鉱 石 を集めて,234U:235Uを測 定 し,表面水 で酸化 されてい る鉱石では0.71‑0.989で 全て1よ り小 さく,比較的酸化 されてい な い 鉱 石 で は 0.60‑1.41とい う巾広い範囲の値を得てい る.
RosHOLT等(1964)二は更に二WyomingのShirlyBasin における巻バン型構造 (第2図)の ウラン鉱床の数断面 について垂直又は水平方向に系統的に試料 を取 り測定 を 行 った結果
1)巻バ ン型の緑や前方側では0.93‑0.78 2)石灰石 を含む砂岩の部分では僅かに 1よ り小 3)非変質砂岩に近い変質砂岩では1.0‑1.7
春 次
6m 第2図 巻 バン型構造
4)巻バ ン型の上下 の変質 していない砂岩 で は 1.0か ら のはずれはほんのわづかであるとい う各断面に共通な状 態が見 られた.
同 じ試料についてDooLEY等(1964)は230Th,231Pa を も定量 して,その結果 を次の様にま とめてい る (第3 図参照).
1)巻バ ン型の上下の非変質砂岩は230Th:231Paは低 く, 2340:235Uは1に近い
2)変質砂岩は230Th:231Paの値が鉱石や非変質砂岩よ り 高 い
3)鉱石試料については (第4図参照)
a)巻バ ン型の前方側では280Th過剰の方が231Pa過剰 よ り大 きい
b)巻バ ン型の縁では231Pa過剰の方が230Th過剰よ り 大 きい
3トa)に疑問を持 った筆者が図に示 して見 たのが第4 図であるが,少 々賛成 し兼ね る観察である. これは兎 も
莞
0 D.2 04 0.6 t).8 1.0 第3図 230Th/231Paと234U/235Uの関係
O A断面 xli断面 ● C断面
1.之 1.I )一U aadu
角 として この結果か ら変質砂岩 と非変質砂岩の墳界に垂 直な方向に巻バン型の前面の方向へ ウランが移動 しつつ あると結論 している.
梅本(1964)はむしろ移動 して行 くウランでは234U:
238Uは大 きくなると推定 して,人形峠並びに東郷鉱山で 地質学的に又鉱物学的に系統的に出来た と考 えられ る鉱 物又は鉱石試料について測定 した結果は必ず しもそ うな っていないが,最初に沈澱 したウランではほぼ 1に近い 値であると推定 している(第4表).
u O5 10 15 231po
2コ5U 第4図 230Th/284Uと231Pa/235Uの関係
● 巻バン型構造の前面のウラン鉱 △ 変質砂岩 +巻バン型構造の緑のウラン鉱 □ 変質砂岩非 現在迄に知 られている234U:238Uの測定例 を列挙 した が,若い堆積性の ウラン鉱物や ウランを含む鉱物並 びに 天然水では この値が 1とい う放射平衡にある場合は極め て少 く,色々な条件下の試料について更に多 くの値が系 統的に集積 されるべ きであると考 えられ る.
4 234U:23きUの異常値の現われる原因 上述の様に この異常値の現われ方に関 して特に取上げ られる様な規則性 と名づけられるものは見出されない.
とい う事はウランが極めて動 き易い上に異常値を与 える 原因が複雑に組み合わ されているか らであろ う. ここで 異常値を与 える原因 となる可能性のある現象を考 えて見
よう.
4・1α壊変の際の反跳現象
238Uがα壊変 して234Thになる場合に反跳現象 が 起 り,234Thは結晶格子か ら外れた位置 で 更 に壊 変 して 234mPaを経て234Uとなる.したがって結晶が生成 す る
時23RUと共存 した234Uは23年Uと共に結晶格子 に入 っ てい るが,結晶生成後に出来た234Uはそ うでは な い の で,ウランを含む鉱物の抽出が起 る際にはその時の条件 によって これ ら二榎類の234Uの抽出され万, 言いか え ると新 しく出来た234Uと238Uの抽出され方が違 う筈で ある.即 ち抽出液中では234U:23BUが大 きくなる様に抽 出が行われ る筈である(BARANOV等,1958;CHALOV, 1959;CHERDYNTSEV等,1961;KosHELEV等,1961;
RosHOLT等,1963;梅本,1964).
第4表 系統的な生成過程 を経て出来たと考 えられる鉱 石の∂値
不 変 端: 酸 化 帯
方 面
麻 畑 210(12 ‑LB(16.1458j.=\60).、 C9‑‑ A(】 623の..82a905u(1土6約t:u.710n.5.)0i02t5)e1
‑0.30圭)一.朗
押 合 A5(12.8)‑>lOle(0.36) lola(0.49)) 101b(0.85)
、 1‑20.l4b.3土(約0.4406)
巾 津 河 (1.2)
( )内は U含量
210:木の組織 を持つ炭質物
B:木の組織を持つβ‑uranOphane A:その劉 目を充填す るβ‑uranophane C:β‑uranophaneの皮殻部 に附着するautunite A5:KSI‑230‑Mのuraniniteを含むIignite lOle:炭化木,ningyoite,coffinite lola:珪化木,carnotite,autunite lOlb:粘土, 〝 〝
101b′:10lbのcarnotiteを集めた もの 中津河:富鉱帯の鉱石,ningyoite
(234U/238U)sample
(234U/23bU)standard‑ 1] x lOO%
これを確かめるためにウラン鉱物を含む各種試料の抽 出実験が行われ,STARTK等(1958),はウラニナイ ト, ピッチブレン ドの強力な抽 出の場合には234Uと238Uの 分別抽出は起 らないが,弱 くしか も短時間の抽出の際に 分別抽 出の起 る事を知 った.BARANOV等(1958)は ウ ラニナイ ト,ウラン黒,石灰岩,凝灰岩についての抽出 実験 を行い,分別抽出の起 る事を知 り, この原因をこれ ら同位体の結晶構造への結 びつ きの違い と共に岩石 ・鉱 物 の受 けた地質条件に帰 している.SYROMYATN】KOV 等(1962)はフッ素 リン灰石及び含 ジルコニウム ・リン 酸塩鉱 (共に含 ウラン)と共に数種類の岩石の抽出実 験 を行い,抽 出液中では前者は比の値が1.8‑ 2・5とな り 堆積岩か らの抽出液の場合 と同様で,後 者 は2.5‑ 5.7
となった. これは鉱石中の ウランが t)ン顧塩の沈澱 と同
62 梅 本 時生成的に存在す ると共 に,沈積変質 と交代作用の後 に 続いて起 った熱水過程の結果沈積 してい る場合 もあると 解釈 してい る.尤 もこれは熱水過程 の結果沈積 した ウラ ンは移動性 ウランの234U :2粥Uが大 きい と仮定 しての解 釈で ある.即 ち分散状態 にあればある程抽 出液 中の比の 値が大 きい とい う考 え方 で ある.
RosHOLT等(1962)は反跳現象 に伴 って壊変 によって 出来た234Uは還元環境で も酸化 きれた状態 にあ り,23BU や既存 の234U とは結晶中の異 った位置 にあるのは勿論, 化学結合 も異 ってい るために反跳現象 の結果 出来た21',4U が2BBUと異 った挙動 をす ると推論 してい る.
これ らの実験 は反跳現象が234U と23BU の分別の重要 な原因で あって, これ に種 々の地質条件が加わ る事 によ って,分別の起 り具合が違 って来 る事 を指摘 してい る.
趣 の変 った実験 を紹 介 し よ う. ピ ッ チ ブ レ ン ドを 800oCで僅か に昇華 させ ると (著量の昇華 は1000oC以 上),昇華 して出て来た ウランでは234U :238Uが3.2士0・9 にな った とい う実験(STARTK等,1958)も亦一部 の234U の結晶へ の結 びつ きの弱 きを物語 る もので ある.
4・2 同位体交換
SYROMYATNrKOV(1960)は岩石や鉱物 中の ウラン と ウランを含 む溶液の間の同位体交換が起 るか どうか を知 るための実験 を行 った.(編集者 は 「面 白い問題だが,同 位体比の測定 に誤差が大 きい」 と証 をつ けてい る.α‑
β法)
一定量の試料 をガラス管 に入れ , ウランを含 む溶液 を 通す実験 を行い,次の様な考察 を行 った.
第
ン
抽率
ラ%クの
出申ラ塗り:.'・..I試のン
料
ピッチブレン ド 混 合 試 料T 1
7.二
仝 3
仝 4
仝 5
仝 6
一 次 ウ ラ ン 鉱 鉄 ト ー ル 石 カ ツ レ ン 石 モ ナ ズ 石
005∠UつJ1
7
.5 3.75 1.87 0.94 0.40 2.90 0.06 0.30春 次
試料通過前 と通過後の溶液中の ウラン濃度 をCo
,
C lとし,通過前が '・4U :23BUをA。,水 を通 した時の通過後 の比 をA′とす れば,交換 が起 らなか った と仮定 した 時 の
Aeomp‑(Cl‑Co)
A′ +
CoAo Cl(
∴ ,'‥
∴ ‑こ ) と実験の結果得 た Ac印 と比較すれば,交換率はB‑空 き × 10070 =Aexp≦ Aco‑p
B,‑祭 × 100rb :Ae‑≧ Acon‑p
とな り,同位体交換 は‑次反応式 にしたが うので,平衡 に達 した時のBをB∞,t時間の時のBをBlとす ると
Bl‑B∞(1‑ekl)
とな る.
β £
‑ 1/2月∞の時の Jを r とし半分だ け交換 が 行われ るに要す る時間 (坂 に ここで半交換期 とい う事 に す る)で ある.実験結果は第5表 の通 りで ある.この結 果 同位体交換が起 り, ピッチブ レン ド及 び混合試料では 交換平衡 に達す るには ウラン含量の低 い場合程 時間がか か るとい う事 を知 った.T
は ウラン含量 にほぼ逆比例す る.絹お交換 にあづか るのは可溶性の ウラン粒子のみ と5 表 ウラン濃度 mg/ml
溶 液 中 巨 液 中 (Co) 】 (C l)
4 7
751225/LU45701723‑2つJ/hUつ︼11l▲000000000000000000077543517557008′hU40ノ20qノ0ノ01100000100100000000000
05つJRU父U受U00OOOO820ノ0055555557000
2.3 11.05±0.1
≡:5,日 ・.;≡::;; 3.1 t2.3j=0.2 3.1 ≡1.2 士0.12 3.1 ∃2.4 土0.2
050470ノ4∩フ00ノOqノー5
3.1 t3.0士0.1
00042300570011007・124000122
0cc71
23′bOノ35∠U0Oり・14100 22
300 ≧ ? r ?
試料 は全てU234/U235‑1,溶液中(17oNa2CO3)ではA.‑3.1±0.1
,*
C。‑0.107の時 に換算 した値,T ピッチブレン ドと岩石の混合物,A'‑1士0・1(全 ての実験),**Tl/2は半分だ け交換が行われ るに要す る時間,
考 えれば,カツレン石等の他の鉱物の拙.rrr.率の低い草か ら, これ らの交換率の低い事を説明IErl来 る草を知 った.
この現象は天然水中の ウランと接触す る鉱物小の ウラ ンとの間の23iU:23RUの違いが平均化される方向に働 く わけであるか ら,むしろ異7封把の現われるのを阻止す る 原因 と考 えた方が良いであろう.
したがって同位体交換 によって一般 にニ3iU:23RUが1 よ り大 きい天然水では この比が小 さくな る様になる場合 が多いであろ う.
4‑3 ウラン,プロ トアクチニウム, トリウムの 化学的性質の遠い
前述の様に 234Uは231Uか ら234Th,23h'〜Paを経て生ず るので
, 拙
Fi175ミ行われている間に トリウム,プロ トアク チニウムとウランの化学的な性質の違いのために,23汚U とそれか ら出来た:3iUとは結果的に冥 った位置に移動 し て行 く可能性がある.しか し21'・4Th,2三jmpaは半減期が夫 々24.1日,i.175分 であるか ら,抽出され万によって化 学的性質の分別に対す る寄与の程度が異 るわけである.即 ち トリウム,プロ トアクチニウムが抽出されないで, ウランのみが抽出 されしか も速やかに取除かれて (又 は 同時に抽出されて も其の後分離 されて)234Th,2347nPaを 経て出来 る234Uが抽出除去 されたウランの後を追いかけ ない様な条件下 にあれば, この化学的性質の違い も重要 な問題 となるであろ う.しか し天然でかか る条件に近い 状態が広範 に又広域中随所に見 られると期待す るのは無 理であろ う.しか も短時間に23弓Uか ら234Th,234'nPaを 経て出来 る234Uの原子数は巳粥Uと放射平衡にある234U の原子数 に比 して無視.llj来 る程度である.洋弓お上述 した 抽出に関 しては,ウランが酸化状態 にあるか還元状態に あるか,岩石や鉱物中で ウランが如何なる結合状態で存 在す るか
,
抽出の役割を演ず る水の化学的性質や温度其 の他の物理的条件が関与す るわけである.RosHOLT等 (1963,1964)及びDooLEY等(1964)は この化 学 的 な 性質をも取上げて,234U:23SUの分布の説明を試 み て い る.しか し,現在の ところ複雑な諸要因を考慮に入れた 実験的研究は見 られない.4‑4 同位体効果
放射能の有無を問わず,同位体の問の僅かな物理化学 的な性質の違いによって同位体の分別が起 る,即 ち同位 体効果が2/34Uと己3qUの間に も起 る筈である.又2no5Uと 23'Uの問に も起 り, この現象を利用 して235Uの 濃 縮 が 行われている.しか し天然 における235U:235Uの測定結 果は地殻及び隈石について もこの比は一定で1:138とさ れてい る.したがって ウランの同位体に関 しては同位体
効果は同位体分別の薫要な役割を演 じていない と考 えて 差支 えない.
4‑5 Anneclling
反跳現象 によって反跳 した原子又は原子団は通常の も のよ り反跳のエネルギーに相当す るだけ高いエネルギー を持 っていて,これをホット ア トムと言 うが,ホッ ト・
ア トム化学の領域で知 られているannealingは反跳 によ る同位体分別の足を引張 る方向に働 くと考 えられる.即 ちannealingは反跳によって結晶格子か ら外れた位置に ある原子又は原子団が次第 に結晶格子の しか るべ き位置 にお さまる現象である. この現象はここで考 えている問 題で も当然考 えに入れ らるべ きであって,岩石や鉱物の 結晶生成後23BUの壊変の結果出来た234Uが必ず しも全 て結晶格子の正常の位置か ら外れていて抽 出され易いと は限 らない事にな り234U:23日Uの分別を阻止す る方向に 働 く筈である.しか し天然 におけるウランの同位体を取 扱 った研究で この現象が考慮に入れ られた り,又はこの 現象を対象にした研究は現在迄は知 られていない.
4‑6 反跳合成
反跳を受 けた原子が持 っている運動のエネルギ‑が変 換 されてホッ ト・ア トムが生れ,化学反応を起 こして複 雑な結果を生 む可静 性が考 えられる.実験的に検討 され ていないのは勿論,実験的に究明す るために も困難が予 想 される.
5 234U:238Uを利用 した年代測定法
一般 に循環 している水では234U:238Uは 1よ り大 きい 事が知 られているので,堆積によって出来た岩石や鉱物 が生成後何 らの変化 も受 けないし又annealingも無視出 来 る程度だった と仮定すれば,年 と共に234U:23SUは小 さくな り,250万年で平衡 に達 しこの比は1となる.こ の事を利用 して堆積 した時の年代の測定が行 えるわけで ある.又海底の堆積速度 を測定す るのに利 用 され るIo (2・引〕Th)法では234U:235Uは海水中では1であると仮 定
して計算 されているので,補正の必要があるし,むしろ 230Th:234Uにお きか えるとい う事 も考 えられ る.又 排 水 きれない湖における水の滞留時間の測定 に利用 された 例がある.
5・1 化石サンゴの年代測定
THURBER(1962)はユニウエ トックのサンゴを垂直 に 数試料取 って, 海水中の ウランの234U:238Uは長期間一 定で1.15であった と仮定 して,夫々の試料中の234U:
2BqUを刺定 し
,1 4
C法及びU‑Ra法による年代の測定64 楠 木
結果 と比較 して 数10万年代の測定がE̲F'.来 る草 を明 らか にした (第6表参照). この計算 には次の式 を用いる.
(2B4U/238U)
t ‑
1‑ [(234U/238U).
‑ 1]ejt 但 し,(234U/238U)tは生成後 t年経 った時の234U:23SU比,(234U/23eU)Oは/‑1三成当時の比の値,Aは2=14U の壊変定数
234U:23弓Uは海水中では 1よ り著 しく大 きくはない と考 えられ(1.1‑I.2),実験誤差 が1%で あった として も 234U/23SU‑1の1070近い誤差 とな り,求 め られた年代
に大 きな誤差が伴 う事 になる.したが って実験誤差 を小 さくす る様 に努力す る事 と海洋における比の値 (一定値 に近いであろ う)を求 める事が急務 と考 える (測定例は 殆ん どない).
5‑2 石灰岩の年代測定
Miami附近の ジ状石灰岩 とサンゴ礁 の試料 を注 意 深 く採集 して,Io法の代 りに2uOTh/234U比 によって年 代 測定 を行 った例がある(OsMOND等,1965).考 え方 は 海底堆積の速度 を測定す る場合 と全 く同 じであ り,生成 時 に入った230Thは無視 出来 る程度 として計算 を進めた.
現 世の ものは1‑17×103年で,最新世の化石では130×
103年 とい う結果 を得 た.又 !J三成 当 時 の234U:23BUを 1,15と仮定すれば130〉(103年 経てば 1.10となるべ き であるが,測定値は 1.12で良い一 致 を示 してい る.即 ち十分注意 して試料の採取 を行 えば この方法は十分有効 である事 を知 った.しか し生成時期が同一 と考 えられ る 層か ら時々異常値が出て来 る.困難な事ではあるが仮定 が成立す る事 を確かめる必要がある一万,105年 の 範 囲 に用い られ るとい う魅力があるので,発展 させ るべ き方 法 と考 えられ る.
5・3 湖水の滞留時間の測定
CHALOV等(1964)はキルギス共和国のIssyk‑Kul湖 とChatyr‑Kul湖 (何れ も排水 して行 こない)で浬水の 滞留時間を測定 した.即 ち一定速度で(234U/23BU)Oの比 を持 った ウランがt年間供給 された とす るとその時の湖
春 次
水 申の ウランの比
( 2 宍 4 U
/23
Ru)
′は("4U/23SU)
i ‑
1‑[(234U/23SU)0‑ 1] 」烹 工但 し,Aは234Uの壊変定数
となる.(2r34U/23SU)Oを求め るために流入す る河川 の 流 童, ウラン濃度, 234U:238Uを測定 し(234U/23BU)Eを求 め るために湖水 を季節 を変 え又深 さを変 えて測定 した.
夫々多数の測定値か ら平均値を求 めて上式 に入れた.(湖 水の値は季節変化,深 さによる変化は無視 出来 る.)この 結果得た滞留時間はCl法 によって求 めた135×103年 と い うIssyk‑Kul湖 の値 と良い一致 を示 している.
Chatyr‑Kul湖 ではCl法の値はないが,(1.7士0.7)×106
年 とい う値を この方法で求 めた,この方法を用いればC1 法の場合の様 に面倒な湖水量の測定 は不必要で,流入水 の水量や塩類量の変化 を考 えに入れないですむ.しか し 系内での ウランの堆積が無視 出来 るか どうか確かめてか か る必要が あ り,沈積す る場合はその量 を考慮す る必要 の起 る場合 もあろ う.
5・4 第4紀層についての研究例
CHERDYNTSEV等(1963)はウラン及 び トリウ ム系 列 の平衡関係 を利用す る年代測定法 について応用の諸条件 を考 えた上,第 4紀層 の研究に通用す るために天然水, 化石骨,化石土嚢,淡水性軟体動物の殻 の ウランの同位 価 (234U,2㍍U)と トリウムの同位体(228Th,230Th,232Th, 234Th)を定量 し,234U/238U,230Th/238U,228Th/232Thの 比か ら求めた夫々の層の年代の喰違いや不合理か ら, ウ ラン, トリウム, ラジウムの移動の状態 を推論 してい る.
234U:23BUを利用す る年代測定の例 を挙 げ たが, この 方法 について考 えて見 ると
1)数10万年〜数100万年 とい う現在測定法の欠 けてい る 年代 を測定出来 る.
2)同位体の測定であるか ら,化学的な分離 を行 う際, 収率が問題 にな らない.
とい う様な利点のある反面, 第 6表
票警護警 Ecac窒 ! 昌 ラ義 r14C年代
m ∃ % . ppm
E
年 234U:238。 t芸4U:2387℃【 年
*
234U:238U‑1.15として補正 した値1)ウランが化学的に非常 に移動 し/}T7Jtr性質 を持 っ て い る上に,移動の際 これ ら同位体の分別が起 る.
2)ウランの沈積当時の同位体比 を推定す る必 要 が あ る が推定す る事 自体が仲々困難な場合が多い.
3)測定誤差が大 きく,現在の ところ飛躍的に測 定 精 度 を向上 させ得 る可能性が乏 しい.
とい った様な困難がある.しか し数10万年代の測定が行 えるとい う絶大な強 みが あるので, この方法が適用出来 ると考 えられ る対象 について推定のためのデータ‑を集 積す ると共 に,分肌の起 る諸原因の寄与の程度 を明 らか にして, この方法を発rifさせ るべ きであろ う.
* * *
終 りに文献の一部 を見せて頂いた金沢大学阪上正信教 授 に感謝いた します.
* * *
引 用 文 献
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