ヒト血小板の凝集反応に対する血漿フィブロネクチ ンの意義
著者 熊走 一郎
著者別表示 Kumabashiri Ichiro
雑誌名 博士学位論文要旨 論文内容の要旨および論文審査
結果の要旨/金沢大学大学院医学研究科
巻 平成2年7月
ページ 34
発行年 1990‑07‑01
URL http://hdl.handle.net/2297/14786
医博甲第939号 平成2年3月25日 熊走一郎
ヒト血小板の凝集反応に対する血漿フィブロネクチンの意義 学位授与番号
学位授与年月日 氏名 学位論文題目
論文審査委員主査 副査
松田 竹田 小林
保祐|
亮健
内容の要旨および審査の結果の要旨
生体内での止血機構に重要な役割を果たす血小板凝集にはフィプリノゲン(Fbgn)をはじめいく つかの接着性蛋白が関与することが知られているが、その詳細については不明である。
本論文の目的は、血中に比較的豊富に存在する接着性蛋白である血漿フィプロネクチン(P-FN)
の血小板凝集における意義を検討することであり、ヒト洗浄血小板のアデノシン5,-二リン酸
(ADP)凝集に対するP-FNの影響について検討した。あらかじめADP凝集が生じること を確認した条件(Fbgnl43似g/tnl、ADP10’M)でP-FNを0-600’9/mlの範囲で添加する と、P-FNの用量依存性に二次凝集の発現は遅延し、600’9/mlの添加によりその二次凝集は完 全に抑制された。またP-FN濃度を720’9/mlと一定にしてFbgn濃度を143-920luIg/mlの範
・囲で変化させたところ、P-FNは低濃度のFbgn存在下でのADP凝集に対してより強い抑制効 果を示した。P-FNとFbgnの濃度を一定としてADP濃度を67座M-25’Mと変化させた場合 は、P-FNは低濃度のADP刺激による血小板凝集に対してより強い抑制効果を示した。p-
FNが二次凝集を抑制した条件では、放出反応も明らかに抑制されていた。しかし、いずれの実 験においてもP-FNは一次凝集にはほとんど影響を及ぼさなかった。
以上の実験結果およびP-FNとFbgnの親和性を高くした条件においても凝集抑制に変化がな かったこと、今回の実験条件では両者の親和性は非常に低いことにより、P-FNはADPによ って正常に刺激された血小板とFbgnとの結合を血小板に作用することによって阻害し、凝集を抑 制していることが示唆された。今回の実験で二次凝集が完全に抑制されたときのP-FNおよび Fbgnの濃度は血漿中濃度と比較してそれぞれ2倍、20分の1,であり生理的濃度との相違があ る。しかし、P-FNは低濃度のADP刺激にて惹起された凝集反応に対してより強い抑制効果 を示しており、また生体内において血小板が刺激として受けるADP濃度は今回の実験条件に比 べて著しく低いことより、P-FNは低濃度のADPにより刺激された血小板を凝集までいたら
しめず、凝集が過度に進展することを防ぐ調節因子としての生理作用をもつ可能性が示唆された。
以上、本研究は、血液学の分野に新しい知見をもたらした労作と評価された。
-34-