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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 医 学 ) 中 谷    純

     学位論文題名

チャネル特性のアルゴリズムと膜コレステロール によるアロステリック制御

学位論文内容の要旨

緒言

  膜は一 種の熱流 体力学的 多因子一多 相システ ムであるため、膜の場での反応の 解析は 複雑とな る。ー方 、平面膜法 は、膜の 構成分やイオンの組成などを単純化 できる 利点を有 している 。しかしな がら、そ のキネテイクス解析に関しては現在 の ところ確 立された 方法はなく 、またバ ッチクラ ンプ法で 使われるdwell解析を そのま ま平面膜 法に適用 することは 難しい。

  本 研究では 、dwel|解析 に代わり、 チャネル が膜の両 面で2個会 合したと きに オ―ブ ンすると いうグラ ミシジンの チャネル 特性を生かし、その開閉頻度に焦点 を当て 解析する 新しいア ルゴリズム を確立し た。またそこで得られた方法を用い て、膜 コレステ ロールが チャネル開 閉に与え る影響を解析し、その幾っかの生理 的意義 を明らか にしたの で報告する 。

実験方法

    平 面膜の作 成圭垂望 主ルの組 込み

  脂 質平 面 膜法 はMontalとMuellerらに よ っ て開 発 さ れた 二 分子 層 膜 法によっ た 。

  小 孔( 直 径100 pLm)を 開 け たテ フ ロン 薄膜で 水槽を仕 切り、そ の小孔よ り下 に 水 面 が 来 る よ う に 片 側 に そ れ ぞ れ50 mMと440 mM NaCI緩 衝 液(Hepes 25mMをTrisでpH7.4と な る よ う に 滴 定 し た 緩 衝 液 )1440u|を 入 れ 、そ の 上 に ヘ キ サ ン に 溶 か し た ア ゾ レク チ ン(10 mg/ml)15凵 を 滴下 す る と、 数 分 で 溶 媒が揮発 し、リン 脂質単分 子層膜が形 成される 。その後 に、両水槽の水位を吸 い 上 げ る と 、 小 孔 で 単 分 子 層 膜 が 向 き 合 い 脂 質 二 重 層 膜 が 形 成 さ れ る 。   チ ャネ ル (メ タ ノ ール に 溶 解、10 ng/ml)の 膜への組 込みは、 水相にチ ャネ ル を直接添 加(5 ‑‑15い| )したの ち膜を張る 単層展開 法によった。なお本実験 で は 系 の単 純 化の た め にイ オ ン組 成 はNaCIのみ と し、 ま た その 塩 濃 度(50 mM と440 mM)は ヤリ イ カ巨 大 神 経細 胞 の細 胞 内 外の 塩 濃度 と し 、生 理 的 に近い条 件 で行った 。

  ま た本研究 ではアン プからの 電位固定は 行わず塩 濃度の勾 配のみでチャネルを

(2)

作動させ、電位によるノイズの軽減を計った。

     実験結果

     チ望 杢/k 遽髪 鰹析 法Q 塗 試

   約 10 分 間測 定し たチ ャネ ル波形 デー タを 5 秒 間を 1 区間 とし て区分けし、各区 間毎 のイ ベン 卜数 を計 100 区 間カ ウン卜する。カウントの仕方はチャネルがオー プン した回数のみを問題とし、オ―プンしている持続時間は本研究では考慮しな い。 即ち シン グル ピー クは 1 、段 数のあるピークはそれぞれ段数に応じた回数と する 。

   次 に、 この 分布 表か ら頻 度に関 するヒストグラムを作成し、5 秒間の平均頻度 を算 出する。同様の方法で種々の条件で得られたチャートからこの平均頻度を算 出し 、以 下の チャ ネル 特性 の解析 に使 用し た。

     盪塵缶圭壷麺塵金壷鑓空二)Q 童!ヒ

   種々の温度で測定したチャネル開閉の頻度に関するヒストグラムを作成すると、

壘 度の 上昇 に応 じて、 平均 頻度 が高 頻度側にシフトし、かつその移行の様子は次 第 に対 称性 を増 す2 項 分布 の形 式に 従っ た。 このこ とは 温度 上昇 に伴い、平面膜 両 面 で の チ ャ ネ ル 分子 の会 合確率 が次 第に 上昇 して いる こと を意 味し てい る。

.次に、各温度での平均頻度を縦軸に再ブロッ卜すると、平均頻度は温度上昇に 堡 L :キ 量数関数的に増加した。このことはチャネルオープンの平均頻度(Y )は温 度 (T) に 関し 、次 の形 で表 現さ れる ことを示している(a 、らは臺・翁、。′ー―

    Y 〓a ebT   .・..   (1 )

   この よう なチ ャネル オ― プン の平 均頻度の指数関数的上昇は平面膜にコレステ ロ ー ル (O . 42 moI %) を導 入して も同 様で あっ た。 しか しな がら 膜コ レス テ口 一 ル の 導 入 に よ り 、 チ ャ ネ ル オ ― プ ン は 著 し く 抑 制 さ れ た 。    次に 、こ の指 数関数 の縦 軸を 対数 で再プロッ卜すると直線となり、そこから得 ら れ る 一 次 式 の y 切 片か ら式 (1 ) のa 、傾 きか らb が 求め られ る。 この 結果 膜に ヨ 竺ス テロ ―ル が存在 して も、 傾き は変 える が、 y 切片 は変 化さ せなかった。即 ち 膜コ レス テロ ールは 式( 1 ) のa は 変え ずに 、b の みを 変化 させ ることが明らか

     量望 杢2 ヒ濃 度g ! ヒcD 影響

   グ ラミ シジ ン濃 度を 変化 させ 同様 の解 析を 行うと、傾きが等しくy 切片のみが 変化 した 。即 ちグ ラミ シジ ンは 式( 1 )の 係数 a のみを変化させ、b には関与しな かっ た。

   以 上、 グラ ミシ ジン は式 (1 ) の係 数a のみ を、膜コレステロ―ルは係数b のみ を、 それ ぞれ 独立 に変 化さ せる こと が明 らか とな った。

     コレ ステ ロ― ´k 遼塵 変化の 影響

   膜 コレ ステ ロ―ルの濃度を変化させ同様の解析を行うと、コレステロ―ル濃度

上昇 に伴 いチ ャネルオープンの平均頻度は次第に抑制され、かつその変化はシグ

モイ ド状 とな った。このことは膜コレステロールがチャネルオーブンに対しアロ

(3)

ス テ リ ッ ク に 制 御 し て い る 可 能 性 を 示 す も の で あ る 。

  次 に こ の シ グ モ イ ド 曲 線 のH川 プ ロ ッ ト を と る と 直 線 と な り 、 こ の 傾 き とy切 片 か ら Yと コ レ ス テ ロ ー ル 濃 度(C)に 関 す る 次 の 関 係 式 が 得 ら れ る 。     Y: 3.OxC'S"

    15 5.2+C7  | (2)

  (2) 式 か ら 得 ら れ た 理 論 曲 線 は 実 験 値 と 良 く 相 関 す る ( 相 関 係 数0.97)こ と か ら 本 式 の 妥 当 性 が 証 明 さ れ る 。 ま た 、 こ の 曲 線 の 変 曲 点 で の コ レ ス テ ロ ― ル 濃 度 は 約0.42 moI% で あ っ た 。

    チ ャ ネ ル オ ― プ ン の 平 均 頻 度 の 予 測 式 の 導 出 と 検 証   先 ず 、 平 均 頻 度(Y)は 温 度 (T)に 関 し 実 験 結 果 か ら 式 (1) の よ う に 表 現 で き た 。

  次 に 温 度 を ― 定 と し て コ レ ス テ ロ ― ル 濃 度(C)を 変 化 さ せ る と 、(2)式 は そ の シ グ モ イ ド 性 か らv、kお よ びnを 定 数 と す る と 次 の よ う に 一 般 化 で き る 。     Y: VxCn

    k+ ず  .(3)

  い ま 、 あ る 一 定 温 度 (a) と 、 あ る 一 定 の グ ラ ミ シ ジ ン 濃 度 の と き の 式 (1) のaを ァ と お く と 、 式 (3) と 式 (1) は 等 し い と お く こ と が で き 、 こ の 条 件 で のbが 求 め ら れ る 。

    bヨ上Ln     。 オ轟

  (4)式を(1)式に代入し     ‥ i煮矧そ

  いま(T,a)=(a,ア)とすると式(3)となる。

  ― 方 、 式 (1) のaは グ ラ ミ シ ジ ン 濃 度(m) る。従 って(5)式は

の 関 数 で あ り 、a=ep(m)と お け

    Y〓eP(m)Ivxc 書IIそ

    i. ・T.i. ―k― → ; ; ; ; .i―  . . ・ .(6)

  と 表 現 さ れ 、 チ ャ ネ ル オ ― プ ン の 平 均 頻 度 の ― 般 式 が 誘 導 さ れ る 。   ま た こ の 式 か ら 得 ら れ る 理 論 曲 線 は 実 験 値 と よ い 相 関 ( 相 関 係 数O.95以 上 ) を 示 す こ と か ら 、 本 式 の 妥 当 性 が 証 明 さ れ る 。

結 語

1. チ ャ ネ ル オ ー ブ ン の 頻 度 分 布 を 用 い る こ と に よ り 、 チ ャ ネ ル 特 性 を 定 量 的 に   表 現 で き る ア ル ゴ リ ズ ム を 新 た に 確 立 し た 。

2. チ ャ ネ ル オ ー ブ ン の 平 均 頻 度 は 温 度 の 指 数 関 数 と し て 表 現 さ れ 、 そ の 係 数 が     チ ャ ネ ル の グ ラ ミ シ ジ ン に 、 累 乗 の 指 数 が 膜 の コ レ ス テ ロ ー ル に よ り 、 そ れ     ぞ れ 独 立 に 支 配 さ れ て い る こ と を 明 ら か に し た 。

3. チ ャ ネ ル シ グ ナ ル の 平 均 頻 度 は 膜 中 の コ レ ス テ ロ ー ル に よ り 濃 度 依 存 性 に 滅     少 し 、 そ の 変 化 の シ グ モ イ ド 性 か ら 、 コ レ ス テ ロ ― ル は チ ャ ネ ル 特 性 を ア 口

(4)

     ステリックに制御している可能性を示した。

4 .一連のパラメー夕評価実験から、反応温度、膜のコレステロ―ル、及びチャ

     ネル濃度を含んだチャネルオ―プン平均頻度を算出する理論式を提示し、そ

     こから得られる理論曲線が実験値と高い相関を示すことから、導出した理論

     式の妥当性を検証した。

(5)

学位論文審査の要旨

     学位論文題名

チャネル特性のアルゴリズムと膜コレステロール によるアロステリック制御

   膜は一種の熱流体力学的多因子―多相システムであるため、膜の場での反応 の解析は複雑となる。ー方、平面膜法は、膜の構成分やイオンの組成などを単 純化できる利点を有している。しかしながら、そのキネテイクス解析に関して は現在のところ確立された方法はなく、またパッチクランブ法で使われる dwe | | 解 析 を そ の ま ま 平 面 膜 法 に 適 用 す る こ と は 困 難 で あ る 。    本研究では、 dw elI 解析に代わり、チャネルが膜の両面で2 個会合したとき にオーブンするというグラミシジンのチャネル特性を生かし、その開閉頻度に 焦点を当て解析する新しいアルゴリズムを確立した。またそこで得られた方法 を用いて、膜コレステロールがチャネル開閉に与える影響を解析し、(1 )チ ヤネルオーブンの平均頻度は温度の指数関数として表現され、その係数がチャ ネルのグラミシジンに、累乗の指数が膜のコレステ口―ルにより、それぞれ独 立に支配されていることを明らかにした。(2 )チャネルシグナルの平均頻度 は膜中のコレステロールにより濃度依存性に滅少し、その変化のシグモイド性 から、コレステロールはチャネル特性をア口ステリックに制御している可能性 を示した。( 3 )一連のパラメー夕評価実験から、反応温度、膜のコレステロ

―ル、及びチャネル濃度を含んだチャネルオープン平均頻度を算出する理論式 を提示し、そこから得られる理論曲線が実験値と高い相関を示すことから、導 出した理論式の妥当性を検証した。

雄 夫

輝 盛

橋 野

石 菅

授 授

教 教

査 査

主 副

(6)

   公開発表に際し、吉岡教授より変曲点近傍における理論式の単純化の可能性 と全身麻酔薬におけるチャネル特性の解明について、菅野教授からはdw ell 解析法との比較、及び生理的条件での実験についての質問があった。また、主 査の石橋教授からは他のチャネル解析法と、そこから得られる情報の違いにつ いての質問があった。これらの質問に対して申請者は明快に回答を行った。

   本論文は、平面膜法における頻度解析法を創案し、膜コレステロ―ルがチャ

ネル特性をア口ステリックに制御していることを明らかにしており、チャネル

特 性 の 新 た な 知 見 を 見 い だ す こ と が で き る 研 究 と 期 待 さ れ る 。

審査員一同は、これらの成果を高く評価し、大学院課程における研鑚や取得単

位なども併せ申請者が博士(医学)の学位を受けるのに十分な資格を有するも

のと判定した。

参照

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