博士(工学)王 暁昌 学位論文題名
A Fundamental Study of Fluidized Pellet Bed Technique for High Rate Solid/Liquid Separation in Water Treatment
(ペレット流動層による高速固液分離法に関する基礎的研究)
学 位 論 文 内 容 の 要 旨
アジア,アフリカと南米の諸国には,数g/ゼ程度以上の高濁度河川を水源とする地域が少な くない。通常の急速ろ過法tまこのような高濁度を直接に対処できず,前沈殿により濁度の大半を 除き,残った部分を急速ろ過システムで処理することは現在に唯一の処理方式である。しかしな がら,このような方式は,巨大な沈澱池の建設と膨大な量の汚泥を処理するため,広い土地を必 要とし,普遍的に採用できる高効率の方式ではない。そこで,高濁度を対処する新しい浄水技術 として,ペレット流動層による高速固液分離システムを提案する。この方式では数g/¢乃至数 十g/セの高濁度水に対し前処理を要せず,僅か5〜6分間で固液分離を行い,直ちに急速ろ過 池ヘ導入できるような上澄水が得られる。更に,分離したぺレット汚泥の含水率は70%台まで減 じ,簡単に重力脱水できる。この処理方式の導入によって,高濁度水処理の効率化,処理施設の 小型化,浄水場の敷地の減少等が期待できる。
無機凝集剤と有機ポリマーの合理的な使用と適切な攪拌を加えることにより,高密度かつ大径 のペレットを形成させることが,このプ口セスを運用する鍵である。このようなペレットの集塊 過程は従来のフロック形成過程と根本的に異なり,ペレット凝集法にっいて現在の理論で解明で きない点が多い。そのため,プ口セスの制御法とシステムの設計方針がまだ確立されていない。
そこで,筆者は過去に行ったペレット流動層による高濁度水処理の実用的な研究を発展させ,こ の処理プ口セスの制御方法,ペレットの集塊機構,プ口セスの動力学等の基礎的問題にっいて実 験と理論的研究を行った。
さまざまの操作条件で実験を行った結果,良好な処理効果が得られる(すなわち,安定な流動 層の成立,高密度ペレットの形成,清浄な処理水の取得の三要件が満たせる)操作条件を明らか にした。初期粒子としての粘土・アルミニウム微フロックを流動層に導入する際の粒子のランダ ムな成長を防ぐこと,流動層中の大きな集塊物の表面に次々と付着してくる初期粒子の不整形な
付 着 成長 を妨げ ること は,ペ レッ ト流動 層操作 の鍵で ある。 適切 な注薬 と攪拌 条件の 下で ,l02 Nl04 mgnオ ー ダ ー の 高 濁 度 水 を30〜70cm/minの 高 い 空 筒 上 昇 流 速 で 処 理 す る こ とが で き る。
良好 な処理 結果 を得る ため, できる だけ 少ない 量のア ルミニ ウムと しか るべき量のポリマ―の 組 合 せを 選ぶこ とが重 要であ る。 さまざ まな原 水濁度 に応じ て2種類の 凝集 剤を適 切に組 み合わ せて 使う方 法の法 則性 にっい て検討 を行っ た。ペ レッ ト流動 層によ り粘土 懸濁 液を処理する際,
粒子 のゼ一 夕電位 が―20mv位にな るよ うにア ルミニ ウム凝 集剤 を注入 すれば 良い。この時にアル ミニ ウムの 注入率 は従 来のフ 口ック 形成操 作(ゼ ー夕 電位が ーlomvに なるよ うに制御)の%のみ であ る。こ のこと は, ペレッ ト流動 層の場 合にア ルミ ニウム とポル マーを 併用 するので,架橋作 用を すべて ポリマ ―に 委ねて ,ポリ マーを 合めて のへ テ口集 塊が可 能な範 囲に までアルミニウム によ り粒子 の荷電 を中 和して おけば 良いと 考えら れる 。また ,ゼ一 夕電位 の測 定によって最適ア ル ミ ニ ウ ム 注 入 率 (ALT比 ) を 決 定 す る 上 , ポ リ マ ― 注 入 率 (PT比 ) をPT比 がALT比 の 1/2(PT二二ALT/2) となる ように 求める と良 い。ペ レッ卜 凝集に 際して はア ルミニウムとポリ マ ー が荷 電中和 と架橋 用の一 対の 薬剤と して作 用する ので,2者 の最適 注入 率は濁 度に応 じて同 様な 割合で 変化す ると 考えら れる。
流動 層中で 形成 したぺ レット の密度 が粒 径と関 係なく ,ほぼ 一定で ある ことは本プ口セスの重 要な 特徴で ある。 そこ で,こ のよう な性質 を持っ ぺレ ットの 集塊機 構にっ いて 検討した。フ口ッ キュ レ一夕 一中で ラン ダムな 衝突合 一によ る従来 のフ 口ック 形成は 段階的 に進 行すると考えられ る。 ここで ,集塊 を一 段上る 際に一 定割合の空隙を新たに内包するようになる。その結果,フ口ッ クの 成長に っれて 粒子 の有効 密度は 粒径の 負の指 数関 係で減 少して いく。 密度 が高く且つ成長の 度合 と関係 がない 集塊 物を形 成させ るルー トは, 初期 粒子か ら大き い粒子 まで の集塊の段階を最 少 に する か , 毎 段 階で 内 包 す る 空 隙を 最 低 限 に する か の2っ が挙 げ ら れ る。前 者はoneーby― one型 の 集 塊 機 構, 後 者 はSyneresis型 の 集塊 機 構 で 進 行す る 。 異 な る 操作方 式で 形成し たペ レ ッ トの 粒 径 一 密 度関 係 を 調 べ た 結果 , 初 期 粒 子が1っ ま た1つ (one−by―0ne) と既 成粒子 表 面 に層 状 に 付 着 する 方 式 で生 成した ぺレ ットは 密度が 比較的 高く且 つ粒 径と関 係がな い。ペ レ ッ ト 流 動 層 操 作 の 場 合 にoneーby―oneが 主 要 な 集 塊 機 構 と し て 働 く と 考 え ら れ る 。 ペレ ット流 動層 の動力 学的研 究の第 一歩 として ,層内 におけ る固体 粒子 の挙動にっいて検討し た。 メチリ ンブル ーで カオリ ン粒子 を染色 して粒 子の 動きを 可視化 する実 験を 行い,流動層に流 入す るカオ リン粒 子の 流動層 内の滞 留時間 分布を 把握 した。 初期粒 子が既 存粒 子の表面ヘ付着し て生 ずるペ レット 形成 ,せん 断流に よる過 剰成長 粒子 の破壊 ,破壊 によっ て生 じた小粒子が上昇
水 流に 伴われ て上 層への 移行の3っ の過程 は同時 に進 行し, 流動層 の定常 状態は それ らの過 程の 動 的な平 衡の結 果であ る。 このこ とによ り,流 入初期 粒子 濃度に よって 流動層縦方向のぺレット 粒 径プロ フアル の相違 がよ く解釈 できる 。
層 内で固 形粒子 の挙 動を表 現する ため, 流動 層にお ける物 質収支 式を導 いた。式に合まれる各 項 はぺレ ットの 成長速 度, ペレッ トの破 壊速度 ,ペレ ット 断片の 移行に よる各粒径のぺレット個 数 の増加 速度と 関連す る。 それぞ れの項 を検討 した結 果, 流動層 におけ るぺレット凝集プ口セス を 記述す る動力 学式が 得ら れた。 さまざ まの実 験によ って 式中の 未知関 数,常数,係数等を探索 し ,数式 モデル による プ口 セスの シミュ レーシ ョン計 算を 行った 。いく っかの条件下の計算で求 め たぺレ ット粒 径のプ 口フ ィルは 実測値とほぼ一致しており,提案したモデルの妥当性を示した。
ま た,固 液分離 効果を 示す 流動層 から分 離装置 に越流 する ペレッ トの粒 径分布が計算により求め ら れ,原 水濁度 による 処理 効果の 差異が 見いだ された 。流 動層高 さの処 理効果へ与える影響を計 算 によっ て検討 し,深 すぎ る流動 層は良 好な水 質を得 るた めの固 液分離 には不利であり,原水濁 度 に 応 じ て処 理 粒 子 の 除去 が十分 できる 範囲内 で比 較的低 い高さ の流動 層が望 まし いこと が分 か った。
ペ レット 流動層 技術 の応用 範囲を 更に拡 大す ること を試み ,高濃 度の有 機着色物質が濁度と共 存 して いる2成分 系の処 理実 験を行 った。 色度が 存在 すると アルミ ニウム による 凝集 の機構 が濁 度 の み の 系と 異 な り , 弱酸 性 領 域 のpH5.Oでコ ロ イドを 等電点 付近 まで荷 電中和 させる こと が 必 要とな る。こ のよう に選 んだ最 適アル ミニウ ム注入 量と 適切な ポリマ ー注入量の下で,色度が 100度か ら1000度 ま で の 高い値 の場合 にも ,濁質 がほば 同程度 の数 値(mg/セと して) 以上共 存 す れ ば ,30cm/minと い う高 い 上 昇 流 速 でペ レ ッ ト 流 動層 に よ る 高 速凝 集固 液分離 ができ た。
そ の際, 凝集可 能な色 度成 分にっ いては ほば全 部除去 され ,濁度 成分に っいてはほぼ完全な除去 が 得られ た。ま た,生 成し た2成 分ペ レット の有効 密度は0. 02か ら0.lg/甜程度であり,排除 さ れたペ レット を微細 な網 目の上 に短時 間放置 するこ との みで含 水率が90%以下まで簡単に脱水 さ れた。 自然の 原水中 に存 在する 色度は 本実験 の条件 のよ うに高 い場合 は少ないので,相当量以 上 の濁質 と共存 するよ うな 系の色 度成分 は,ほ とんど の場 合にぺ レット 流動層で高速処理するこ と ができ る。
ペ レット 流動層 法は 比較的 に広い 範囲の 水源 に応用 できる 新しい 処理法 である。特に高濃度の 懸 濁液を 処理す る際, 本シ ステム の導入 により 固液分 離効 率の飛 躍的向 上,浄水場の建設費用の 節 約,薬 品消耗 の低減 等が 期待で きる。
学位論文審査の要旨
黄 河 の数十g/ £以上 の濃度 にも 達する 超高濁 度の水 や, アジア ・アフ リカ・ 南米等 の熱 帯の 河 川 におけ る数百mg/セ にも及 ぶ高 濁度水 や時に は高い 濃度 の腐植 質を共 存する 高濁水 を, 従来 の浄 水法に よって 処理す るに は多く の困難 があり ,効 率の高 い適切 な処理 プロセスの出現が望ま れて いた。 本研究 は,こ のよ うな高 濁度の 水に対 処す る新し い浄水 技術と してペレット流動層に よる 高速固 液分離 システ ムを 提案し ,その適切ナょ操作条件を検討し,作動機構を明らかにし,プ 口セ スの動 力学モ デルを 提案 する一 連の実 験的, 理論 的検討 を行い ,新プ 口セスを設計し運用す るた めの基 礎を作 ったも ので ある。
ここ で提案 され たペレ ット流 動層分 離操作 は, 凝集に よる微 フ口ッ ク生 成,流動層におけるペ レッ ト形成 ,分離 槽にお ける 清澄分 離と汚 泥堆積 の3段階か ら成 る。
まず ,ペレ ット 流動層 分離操 作を適 切に行 うた めの凝 集とペ レット 形成 条件が検討された。ア ルミ ニウム 凝集剤 による 粘土 系懸濁 質の凝 集を, ゼー ター電 位を従 来のフ 口ック形成に比して大 幅に 低い―20mvの値 に調整 し,微 フ口 ック群 をフ口 ック形 成のた めの 準安定 領域に保持したまま 流動 層下部 に流入 させ, 瞬時 に高分 子凝集 剤を注 入す ること によっ て高密 度のぺレットを流動層 内 に 形成さ せ得る ことを 明ら かにし た。す なわち ,分子 量lO Dの オーダ ーの非 イオン 性, 弱ア ニオ ン性の ポリマ ーを添 加凝 集剤の 形程度 の重量 比で 用いる ことに よって ,流動層に存在してい る ペ レッ ト 粒 子 の 表面 に1っま た1っと微 フロッ クを付 着さ せ高密 度のぺ レット の成長 を促 す。
ペレ ットの 不整形 な成長 を防 止し同 心球的 な成長 を促 すため に,G値が30S・ ・程度の適切な攪拌 を 加 える 。 こ の よ うな 条 件 で成長 した 数mmにも 及ぷ大 きな 径を持 っぺレ ットは 密度が 従来 のフ ロ ッ クに比 して1桁以 上大き く,微 フ口 ックの 最密充 填が行 われた 集塊 となる 。その 結果,10゜
〜10゜mg/ ゼオ ー ダ ― の 高濁 度水の 分離操 作を30〜70cm/minと いう従 来のプ 口セス より も1桁 も高 い速度 で運転 する事 に成 功した 。この 際の処 理水 の濁度 は数mg/ セ以 下であり従来法に比し て大 幅に改 善され ている 。
また ,高い 色度 が共存 してい る高濁 系にっ いて の研究 をも行 い,ア ルミ ニウム凝集剤の注入率 を 等 電点で 微フロ ックが 生成 するよ うに定 め,添 加アル ミニ ウム量 のKのポリ マーを 導入す るこ
仁 男
壽
憲 哲
信
保 桑
中
丹 高
田
授 授
授
教 教
教
査 査
査
主 副
副
と に よっ て , 高 濁 度と 色 度 が 共 存し て い る 系 にっ い て も30cm7minと いう 高い 分離速 度を得 る 事 に 成功 し た 。 こ のよ う な 操 作 が成 立 す る 条 件は 濁度と 色度の 比が2:1以 下であ ること を明ら か にした 。また ,こ の操作 におい て凝集 剤の 必要量 は色度 によっ てのみ 定ま り,pH5.Oとい う色 度系 に対す る最適 条件が この 操作で も最適pHであ り,共 存する10゜〜10 mg/£に及ぶ濁質成分 の存 在は注 薬条件 にほと んど 関係し ないこ とを明 らかに し, この現 象を凝 集した色度フロックが 粘土 等の粗 懸濁度 に架橋 して 微フ口 ックを 形成す る機構 で説 明した 。
これ らの検 討の結 果, 本ペレ ット流 動層高 速分 離法は 極めて 広範な 原水条 件に対応できる汎用 性の 高い操 作であ ること が明 らかと なった 。一方 ,生成 した ペレッ トは流 動層上部から分離槽に 越流 し,自 由沈降 によっ て高 速に分 離され 槽底に 堆積す るの で,間 欠的な 排泥によって系外に取 り出 され, 気中で の単な る重 力脱水 のみで90%以 下の含 水率の スラッ ジとな り濃縮操作等を必要 とし ナょい 。
最後 に,こ のよう なペ レット 流動層 におけ る同 心球的 なペレ ット生 成と破 壊の動力学的過程を ペレ ット粒 子群の 滞留時 間分 布を求 めるト レーサ ー実験 によ り考察 し,流 動層中のペレット粒子 群の 成長と 破壊過 程を考 慮し て物質 収支を 記述す る動力 学式 を提案 し,シ ミュレーションにより 実験 過程を 再現し ,その 正確 な記述 に成功 した。 その結 果, この新 しいプ 口セスを定式化して表 現す ること が可能 となり ,理 論式に より操 作を設 計する こと や様々 な外的 条件に対して適切な操 作条 件を定 めるこ とが可 能と なった 。
これ を要す るに, 著者 は従来 極めて 処理が 困難 であっ た高濁 水や色 度を伴 う高濁水の処理に対 して 画期的 な流動 層分離 プ口 セスを提案し,その操作条件と設計過程を明らかにしたものであり,
衛生 工学, 水処理 工学の 進歩 に寄与 するこ と大で あり, 博士 (工学 )の学 位を授与される充分な 資格 がある ものと 認める 。