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学 位 論 文 題 名

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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 学 ) 川 崎 久 郎

学 位 論 文 題 名

実験的糖尿病ラット摘出大動脈における収縮反応性の 変化に関する薬理学的研究

学位論文内容の要旨

  糖尿病患者で はその経過中に血管障害によ る合併症の頻度が高いこと は良く知られている。血 栓 症及 び動 脈硬 化性 病 変はmacroangiopathyとし て 代表 的な もの であ り 更にmicroangiopathy が腎症、網膜症 、末梢二ユーロパチ一等の主 要な原因と考えられている。この細血管床の構造的、

及び機能的変化 を形成するに至る病態生理学 的過程については殆ど解明 されていない。しかし、

その中でも血管 の収縮、拡張を調節している 神経伝達物質や循環ホルモ ンに対する血管の反応性 の変化が糖尿病 病態で生じており血管障害の 要因のーっとなり得る事が 示唆されている。しかし な がら 糖尿 病病 態に お ける 血管 反応 性の 変化が どのような機構で起こってい るのかに関しては 未だに十分な解 明はなされていない。そこで 本研究はstreptozotocin (STZ)誘発性糖尿病ラット よ り摘 出し た大 動脈 輪状標本を用い、KC1、Ca2+チャネル活性化薬、ai受容体 を初めとする各種 ア ゴニ スト 等の 血管 収 縮物 質に よる 収縮 反応を 機能的実験により対照標本と 比較検討しその収 縮反応の特性に 薬理学的解析を加えることに より、その反応性変化の機 構を明確にする事を目的 として行った。

  8週 齢 のWistar系 ラ ッ トにSTZ 45 mg/kgを 静注 し糖 尿病 を 作成 し、 対照 ラ ット には 溶媒 と し て の ク エ ン 酸 溶 液 の み を静 注 した 。そ の後8〜12週 に胸 部 大動 脈を 摘出 し 幅4mniの 輪状 標 本として人為的 に内皮を除去した後実験に供 した。なお、同時に腎静脈 より採血して血糖値を測 定 した 。標 本は95% 酸 素と5% 二酸 化炭 素の 混合 ガ スで 通気 して いる25 mlの 器 官槽 に懸 垂し た 。 栄 養 液 は 生 理 的 塩 類 溶 液(PSS)を 使 用 し 液 温 は37℃ に 維 持 し た 。 標 本 にはlgの 前負 荷 をかけ発生張カ を等尺性に測定した。

  STZ誘 発糖 尿 病ラ ット の体 重 、大 動脈 輪状 標本 重 量は 対照 群に 比し有意に 小さく血等値は著 明 に 上 昇 し て い た 。40mM K+によ る収 縮 反応 は、 糖尿 病群 で 顕著 に減 弱し て いた 。す なわ ち 40 mM K+に よ る 大 動 脈 標 本 の 収 縮 は 対 照 群 で は73土5 mg/mg wet weightに 対 し 糖 尿 病 群 で は28土4 mg/mgwet we追htで あ り こ の 差 は 統 計 的に 有意 であ っ た。KC1の濃 度反 応曲 線 で は14mM以 上 の 濃 度 で そ の 収 縮 反 応 が 有 意 に 低 下し てい た がEC50値 は両 群 問に 差を 認め な か っ た 。Ca2゛ 活 性 化 薬 で あ るB尠K8644は 通 常 のPSS(5.9mMK十 ) で は 両 群に おい て収 縮 反 応 は 認 め ら れ な か っ た 。PSSのK゛ 濃 度15mMに する と対 照 群に おい ては 全 例で 濃度 依存 性 の 収 縮 反 応 が 惹 起 さ れ た が 糖 尿 病 群 で はB糾K8644に 対す る 感受 性は 低下 し 全体 の収 縮反 応 は 有意 に低 下し てい た 。Norepinephdne(NE)お よ び51ぴdro珊 九pt細ine(5―Hr) によ り両 群において濃度 依存性の収縮反応が惹起され たがその反応性は糖尿病群 で有意に増強していた。

し か し そ のEC50値 は 両 群 間に 差 を認 めな かっ た 。Ca2+チ ャ ネル 拮抗 薬で あ る1いMmfempine 存 在下 でNEおよ び5−HTの収 縮 反応 の程 度は 両群 共 に減 弱し それ により両群 問の差は認められ な くな った 。す なわ ちmfedipineの 前処 置は 糖尿 病 群で 観察 され たNEお よび5−HTに よる 収縮

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反 応 の 増 強 を 消 失 さ せ た 。ProteinkinaseC(PKC)阻 害 薬 で ある20 nM stauroporine前処 置 に よ りNEの 最大 収縮 反応 は抑 制 され 特に 糖尿 病群 で の抑 制は 顕著 で あっ た。 また5―HTで は 300 vMまで 用い てもstaurosporine存在 下で は両 群共に有意な収縮反応を惹 起しえなかった。

Endothelinr1(ET―1) お よ びtkomboxaneA2誘 導 体 で あ るU46619の 収縮 反応 は 比較 的緩 徐 で あ り 両 群 で 濃 度 依 存 性 の 反 応 を 示 し た がET一1は1nM以 上 の 濃 度 で 、U46619は100nM以 上 の濃 度で 、い ずれ も 糖尿 病群 で有 意 に増 強し てい た。1いMmfe出pine前処 置によりETー1お よ びU46619によ る収 縮 反応 は特 に糖 尿 病群 におbゝて減弱し結果として両群 における反応は同 程 度 と な っ た 。 ま たstaurosponne前 処 置 に よ りET−1お よ びU46619の収 縮反 応 は両 群に お い て 著 明 に 抑 制 さ れ 両 群 問 で 差 を 認 め な く な っ た 。PKC活 性 化 薬 で あ るPhorb0112,13一 出butyrate(PDBDに よ る収 縮反 応は 対 照群 にお いて20〜30分で 最大 に達し プラトーになった が、一方糖尿病 群におぃゝては当初緩徐であった反応が途中で急峻に反応の増強する二相性のパ夕 一 ンを 示し た。 この 二 相性 の収 縮反 応 は糖 尿病 群に 特異 的 であ り結 果とし てPDBuの最大収縮 反 応は 糖尿 病群 で有 意 に高 くな った 。PKCを 活性 化 する 他の ホル ボ ール・エ ステルである300 nM12― くトtetradecanoylm10fbOト13りcetateも また糖尿病群においてPDBuと同様の二相性収 縮 反応 を示 した 。Ca2゛free溶 液中 ある いはmfe出pine存 在 下で は対 照群のPDBuの濃度反応曲 線は最大反応は 変化することなしに右方に 移動し、一方糖尿病群において濃度反応曲線は右方移 動すると共に最 大反応も有意に減弱し結果 として両群に差を認めなくなった。また、糖尿病群に お いて 認め られ たPDBuによ る二 相性 の 収縮 反応 はCa2+free溶液 中 あるいはmfedipine存在化 で は 消 失 し た 。20nMsta丗osponneの 前 処 置 に よ り30nMPDBuの 収 縮 反 応 は 著 明 に 減 弱 し 対照群において は一過性となり、糖尿病群 においては完全に消失した。Ca2゛free溶液中でのNE による収縮反応 は一過性の急峻な収縮とそ れに続く小さな持続性収縮を示したが、最大収縮の程 度 は両 群間 で有 意の 差 を認 めな っか た 。一 方Ca2゛free溶液中でのc甜feineによる収縮反応は NEのそれよりも 小さく一過性の収縮をのみ を示したが糖尿病群におしゝて有意に減弱していた。

ま た1いMげano出ne前 処 置に よりcaffeineの 収縮 反応 は完 全 に消 失し 、NEのそ れ は両 群で 抑 制された。

  本研究は糖尿 病ラット大動脈標本におい て(1)細胞外K゛濃度上昇あ るいはCa2゛チャネル活 性 化 薬 で あ るBayK8644に よ る 収 縮反 応 が顕 著に 減弱 して い るこ と、 (2)一 方NE、5―HT、 ETー1あ る いはU46619と ぃゝ っ たア ゴニ スト 刺激 による収縮反応は有意に増 強していること、

(3)HくCを直 接活性化するホルポール・エステルによる収縮反応もまた増強していること、(4) これらアゴニス トおよびホルポール・エス テルによる収縮反応の増強はCa2゛チャネル拮抗薬で あ るmfe出pineによ り消 失すること、(5)細胞内Ca2→貯蔵部位からのCa2゛ 放出による収縮反 応 に 関 し て はc甜dneに よ る 作 用 が 特 異 的 に 損 な わ れ て い る こ と を 明 ら か に し た 。   以上より糖尿 病ラット大動脈において脱 分極反応に伴うCa2゛チャネ ル開口による収縮反応、

細胞内貯蔵部位 からのCa2゛誘発性Ca2゛放 出による反応は減弱しているが一方種々の生理活性物 質による収縮反 応は増加したHくC活性化過 程により燐酸化されたCa2゛ チャネルを通るCa2゛流入 量の増加により 増強していることが示唆さ れた。我々は既に糖尿病ラット大動脈において内皮依 存性弛緩反応が 損なわれてぃゝることを報告しており、今回本研究で示された内因性生理活性物質 に よる 収縮 反応 の増 強 はこれと相乗的に作用し糖 尿病病態での血管病変の進 行に関与している 可能性が考えら れる。

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

実験的糖尿病ラット摘出大動脈における収縮反応性の      変化に関する薬理学的研究

   糖尿 病患者で はその経 過中に血 管障害に よる合併症 の頻度が 高いことは良く 知ら れている 。血栓症や動脈硬化性病変に加えて細小血管障害に起因する腎症、

網膜 症および 末梢ニュ ー口パチ ー等は糖 尿病患者の 「生活の 質」や予 後を決め る因 子となっ ている。 この細血 管床障害 を形成する に至る病 態生理学 的過程に つい ては解明 されてい ないが、 糖尿病病 態で生じる 血管収縮 ・拡張調 節に働く 神経 伝達物質 や循環ホ ルモンに 対する血 管の反応性 の変化が 血管障害 の要因の ーっ となり得 る事が指 摘されて いる。し かし、これ らの糖尿 病病態に おける血 管反 応性の変 化が発現 する機構 に関する 解析は十分 になされ ていない 。本研究 は、 ストレプ トゾトシ ン(STZ) 誘発性 糖尿病ラットより摘出した大動脈輪状標本 を 用 い、 KC1 、 Ca ゛ チャ ネル活性 化薬、 al 受 容体刺激 薬を初め とする各種 受容 体 ア ゴニ ス トお よ び PKC 活 性 化 物質 に よる 血 管 収縮 反 応を 対 照 標本 の それ ら と比 較検討し 、薬理学 的解析を 加えるこ とによって その反応 性変化の 機構を明 確に する事を 目的とし ている。 実験方法 として標準 的な血管 標本収縮 解析法を 用 い て い る 。 す な わ ち 、 S1245mg/kg を静 注 し た糖 尿 病Wistar 系 ラッ ト 、 お よび 、SrZ の溶媒 であるク ェン酸溶 液のみを 投与した対 照同系ラ ットから投与8

〜12 週 後に作製 した内皮 細胞除去 胸部大動 脈輪状標本 の等尺性 張カを、酸素飽 和生 理的塩類 溶液(PSS ) 中で常法 にしたがって測定している。得られれた結果 は次 のように 要約され る。すな わち、細 胞外K ゛濃度上昇による脱分極あるいは Ca2 ゛ チャ ネ ル 活性 化 薬である B りK8644 による 収縮反応 が顕著に 減弱してい る こと を認め、 一方、ノ ルエピネ フリン、 5 ―ヒドロオキシトリプタミン、エンド セ リ ン― 1 あ る いは U46619 といった アゴニス ト刺激に よる収縮 反応は有意 に増 強 し てい て 、 その 増 強は Ca2 ゛ チャ ネ ル遮 断 薬 であ るニフ ェジピンお よび PKC 阻害 薬である スタウ口 スポリン によって 消失するこ とを明ら かにした 。また、

顛 夫

盛  

  隆

野 畠

菅 北

授 授

教 教

査 査

主 副

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PKC を 直 接 活 性 化 す るホ ルポ ール エステ ルに よる 収縮 反応 は2 相性と なっ て増 強し 、こ の増 強も ニフ ェジ ピン によ り消失すること、さらに、細胞内Ca2+ 貯蔵 部位 らの Ca ゛ 放出 によ る収 縮反 応に 関してはカフェインによる作用が特異的に 損なわれていることを明らかにした。すなわち、膨大な実験から、直接的なCa2 + チャネル開口刺激による収縮および細胞内貯蔵部位からのCa2 ゛誘発性Ca2 ゛放出 によ る収 縮が 減弱 する 一方 、種 々の 生理活性物質による収縮は増加する特異な 血管 反応 性の 変化 が糖 尿病 病態 で惹 起されることを明らかにし、さらに、この 血管 収縮 反応 増強 は、 アゴ ニス ト刺 激に よる PKC 活 性化 、そ して 、これに引き 続く Ca2 ゛チ ャネ ル燐 酸化を 介す るCa2 ゛チャネル機能調節機構の変調によって Ca2 ゛流 入量を増加するによって発現すると考察している。そして、本研究で示 した 内因 性生 理活 性物 質に よる 収縮 反応の増強と申請者が既に報告している糖 尿病 血管 の内 皮依 存性 弛緩 反応 障害 が糖尿病病態での血管病変の進行に相乗的 に関 与し てい る可 能性 が考 えら れる と結論している。学位論文の公開発表に際 して 、副 査の 小池 教授 から は、 申請 者が明らかにした糖尿病病態にみられる血 管収 縮反 応増 強が 高血 糖に よる のか 、それとも、機能蛋白の糖化によるのか、

SrZ によ る糖 尿病 モデ ルで得 られ た大 動脈 収縮 反応 性異 常が 臨床 での微小血管 障害 とど の様 に関 連す るの か、 副査 の北 畠教 授か らは、 PKC 活性 薬による収縮 反応 が2 相性 にな る機 序、細 小血 管に おけ る収 縮反 応の 変化 はど うか、循環器 内科 佐久 間博 士か らは 、機 能蛋 白糖 化を抑制する薬物の効果の検討の有無、臨 床検 査医 学講座川口教授からは、糖尿病態にある血管平滑筋のCa2 ゛チャネル数 の変 化、 PKC 活性 変化 やアイ ソザ イム 変化 に関 する 文献 的考 察、 血管平滑筋収 縮蛋白の機能的および分子的変化に関する知見等の質問があったが、申請者は、

実験 結果 に基 づい て、 また 、文 献的 知識を駆使して誠実に、かつ、概ね適切に 回答し得た。

   糖 尿病 の重 篤な 合併 症で ある 血管 障害の発生基盤となり得る血管平滑筋の機

能的 変化 を明 らか にし た本 研究 は、 糖尿病による血管障害の治療もしくは予防

研 究 の 今 後 の 展 開 に 新 た な 視 点 を 設 定 す る も の と 評 価 さ れ る 。

   審 査員 一同 は、 申請 者の 豊富 な学 識に併せて、この研究が関連領域研究の進

展に 与え る成 果を 評価 し、 申請 者が 博士(医学)を受けるのに充分な資格を有

するものと判定した。

参照

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