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博 士 ( 工 学 ) 柏 谷 悦 章 学 位 論 文 題 名

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博 士 ( 工 学 ) 柏 谷 悦 章

学 位 論 文 題 名

高 炉 内 に お け る 炭 素 の 反 応 挙 動 に 関 す る 基 礎 的 研 究

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  高炉 製銑 法にお いて, 炭素は 主要化 学元 素とし て,鉄 ,酸素 ,水 素とともに炉内の諸反応にか か わ って い る 。 た と えば,COガスあ るい は固体 炭素と して酸 化鉄の 還元 剤とし て働き ,また , 還元 鉄に侵 入溶解 して その融 点を低 下させ て脈 石成分 の分離 を促進 し,さらには,羽口で燃焼し て熱 源とな る。多 くの 研究の 結果, これら を構 成する 個々反 応の化 学平衡は,ほば解明されたも のと 考えら れる。 しか し,巨 大な不 均一系 であ る高炉 内にお いて, 炭素の関与する反応がどの部 位で ,どの ように 相互 関連し て生ず るか, さら には, 高炉の 設計, 最適操業,自動制御に必要な 反 応 速 度 , な ど に っ い て は , 反 応 の 微 視 的 機 構 を 合 め て ほ と ん ど 解 明 さ れ て い な い 。   本論 文 で は , 高炉 内 炭 素 の 反応 挙 動 を 解 明する ため, 炭素 析出反 応,コ ークス のC02およ び H:0に よ る ガ ス 化反 応 ,触媒 として の鉄 の影響 ,など にっい て,固 体側 の物理 的性質 に即し た 反応 速度論 的解析 を行 った。 さらに ,これ らの 成果を ふまえ ,炭素 源としてのコークスの反応性 が, 高炉の プ口セ ス変 数に与 える影 響にっ いて も検討 した。

  本論 文は ,全七 章から 構成さ れてい る。

  第一 章は 序論で あり, 高炉内 の炭素 が関 与する 主な反 応を挙 げ, それらが高炉内でどのような 役割 を担っ ている かを 概括的 に述べ た。ま た, 高炉内 の各部 位・領 域において,装入物がどのよ うに 変化す るかを 一般 論とし て示す ととも に, それぞ れの領 域にお ける反応にっいて説明した。

そし て,こ れらに 基づ き,本 論文で 研究し た炭 素関連 の反応 が炉内 反応としていかに重要である かを 示し, 本論文 の目 的を明 らかに した。

  第二 章 で は ,C0か ら の 炭 素析 出 反 応 の 微視 的 機 構 を 明ら か に し た。H2共 存下 では, 還元鉄 を触 媒とし て500〜 650℃ の温度 域で ,COから 炭素が 析出 し鉱石 に付着 する。 この とき析 出した 炭素 は反応 性が高 く, 高温部 で還元 剤とし て働 くので 重要で ある。

  析出 炭素 には, 粒子状 と繊維 状の二 種類 の形態 があり ,量的 には 直径数 干Aの繊維 状炭素 が大

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炭素に は必 ず触媒 粒子が 存在し ,これ を起 点とし て成長 する。

電 子線 回 折に より, この触 媒は Fe―C と 呼ばれ る鉄を 固溶し たグ ラファ イトで あると 同定さ れ た。 さ ら に , この 触 媒 の 結 晶構造 に基づ いたCOからの 炭素析 出モ デルを 考案し ,触媒 と繊維 の結晶 方位 関係, 繊維素 の捩れ 易い性 質な どを明 らかに した。

  第 三 章 で は ,コ ー ク ス のCOエ ガス化 反応速 度を, 炭素の 結晶 性に基 づいて 解明し た。 コーク ス中の 炭素 は,装 入され てから 羽口前 で燃焼するまで,加熱にっれ結晶成長すると同時にソリュー ション 口ス 反応( 諸種の ガス化 反応の 総称 )を受 けて消 耗する 。

  本 研 究 では, まず, 炭素結 晶の 大きさ の変化 をX線回折 法を用 いて 調査し ,加熱 による 結晶成 長 は等 方 的で あるの に対し ,反応 によ る消耗 は炭素 結晶a面で 選択的 に進行 する ことを 明らか に し た。 こ れら に基づ き,CO: は炭 素網目 平面(c面 )端部 の不対 結合 炭素に 吸着し て反応 すると い う, 新 し い ガ ス化 反 応 機 構 を提 出 し た 。 こ のと き ,反 応速度 式は ,LangmuirーHinshelwood 型の速 度式 に,吸 着サイ ト率を 付加し た形 となる 。実際 の速度 解析 にあた っては ,炭素を結晶と 非結晶 に二 大別し ,その 割合が 反応温 度で 異なる として それぞ れの 速度定 数をも とめた。吸着サ イトと して の不対 結合炭 素の割 合は, 炭素 結晶の 大きさ によっ て異 なり, これが コークスの製造 履歴で 反応 性が異 なる原 因であ る。こ れら により ,コー クス中 炭素 結晶を 調べる ことで,異なっ た 種 類 の コ ー ク ス の 反 応 性 が 先 見 可 能 で あ る こ と が は じ め て 示 さ れ た 。   第四 章では ,コー クスの ガス 化反応 に対する鉄の触媒効果にっいて研究した。高炉内において,

ガス化 は還 元反応 と同時 に進行 し,1000℃以上 の高 温域で は,還 元で生 成した 鉄原子がガス化の 触媒と して 作用し ている 可能性 がある 。

  ペン タカル ボニル 鉄を用 いて コーク スに鉄 を添加 したと ころ ,結晶 成長の 等方性およびガス化 反応面 は変 化しな いが, 反応は 顕著に 加速 される ことが 知られ た。 鉄の存 在形態 と分布は触媒効 果に大 きく 影響す る。電 子顕微 鏡によ る組 織観察 からは ,反応中に灰分成分と結合した鉄tま触媒 作用を 失う ことも 明らか となっ た。速 度解 析の結 果,結 晶,非 結晶 いずれ の炭素 とも,鉄添加に よ り0コ ,C0:ガス の反応 抑制効 果が著 しく 減少す るため ガス化 反応 が促進 される ことが 明らか となっ た。

  第 五 章 で は ,コ ー ク ス のHよOガス化 反応機 構を明 らかに した 。最近 の高炉 操業で は, 微粉炭 吹 き 込 み な ど よ り , 炉 内Hz濃 度 は 数 % に も達 す る 。Hz0に よ る ガ ス化 反 応 は ,C02に く ら べ 低温で 始ま り,速 度も速 いので ,炉況 安定 性の上 からも 重要で ある 。

  C―Hよ0系 の 反 応 は 多反 応 同 時 並 発反 応 で , 反 応 機構は 複雑 である 。そこ で,ガ ス分 析法を 用いて 反応 ガスの 組成変 化を逐 次損IJ定し,反応の種類の特定と反応速度の定量を試みた。水性ガ

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ス 反 応 は , 水 性 ガ ス 反 応I(C十H20=CO十Hユ ) が 主 で あ り , 水 性 ガ ス 反 応H(C十2H20=

C02十2H2) お よ び ブド ヮ ー ル 反 応(C十C02=ニ2c0)も 同 時 に進 行 し て い る 。し か し ,こ れま で重 要 と み な され て き た 水 性ガ ス シ フ ト反 応(COよ十H2=ニCO十H20)は, ガス 化反応 が顕著 に なる温 度域で は,ほ とんど 生じナょいことが明確になった。前述の解析手法を適用した結果,水性 ガス反 応I,1Iおよ びブド ヮー ル反応 の三種 類の反 応速度 を同 時に表 わす速 度式が 導出 された。

この と き , 水 性ガ ス 反 応IIは , 吸 着 サ イト 上へのHz0分 子の二 重吸着 によ り生起 するこ とが明 らかと なった 。

  第六章 は,前 記の 研究で 得られたコークスの反応速度定数を,一次元高炉数式モデルに導入し,

高炉中 の炭素 の挙動 がどの よう に炉内 状況に 影響す るか を計算 により明らかにしたものである。

高炉の シミュ ーレー ション モデ ルとし て,熱 と物質 の微 分収支 式を還元反応とガス化反応の反応 速度だ けで解 く,シ ンプル なモ デルを 新たに 構築し た。 前章ま でに得られた反応速度定数は,実 炉内の 温度分 布,ガ ス組成 分布 をよく 再現し ,これ ら速 度定数 の工学的実用性およびモデルの妥 当性が 検証さ れた。 さらに ,こ の高炉 数式モ デルを 用い て,高 反応性コークスを使用した場合の 操業上 の問題 点を明 らかに し, その解 決策を 明らか にし た。

  第 七 章 は 総 括 で あ り , 本 研 究 で 得 ら れ た 成 果 を 要 約 し た も の で あ る 。

学位論文審査の要旨

  高炉 製 銑 法 に お いて ,炭素 はCOガ スある いは固 体炭 素とし て酸化 鉄の還 元を行 う必 要不可 欠 な元 素であ る。 炭素は また, 還元鉄 に進 入して その融 点を低 下させ て脈 石成分の分離を促進し,

さら には, 羽□ で燃焼 して熱 源とナょる。これまでの多くの研究により,これら個々の反応の化学 平衡 はほぼ 解明 されて きた。 しかし ,炭 素の関 与する 反応が ,高炉 のど の部位で,どのように相 互関 連して いる かなど は不明 であり ,高 炉の設 計,最 適操業 自動制 御に 必要な反応速度にっいて

宜 三

郎 俊

   

   

石 真

高 千

授 授

授 授

教 教

教 教

査 査

査 査

主 副

副 副

(4)

  本論文 は,高 炉内 炭素の 反応挙 動を解 明す るための基礎として,炭素析出反応,コークスのCO: およ びH:0によ る ガ ス 化 反応 , 触 媒 とし ての鉄 の影 響など にっい て,固 体側の 物理 的性質 に注 目した 新しい 視点か ら反 応速度 論的解 析を行 ったも ので ある。

  第一章 は序論 であ り,高 炉内の 炭素が 関与 する主 な反応 を挙げ ,それ らが 高炉内 でどのような 役割を 担って いるか 概括 的に述 べた。

  第二章 では,COから の炭素 析出反 応の 微視的 機構を 明らか にし た。

  す な わ ち ,析 出 炭 素 に は, 粒 子 状 と 繊維 状 の 二 種 類の 形 態 が あ り ,量 的 に は , 数十nmの 繊 維素 が 縒 り 合 わさ っ て で き た直 径 数 百nmの 繊 維 状 炭 素が 大 部 分 を 占 める こ と を 示 した。 一本 の繊維 状炭素 はそれ に含 まれる 触媒粒 子を起 点とし て成 長する 。電子 線回折 から ,この 触媒粒子 は Fe ‑C と 呼 ばれる 鉄を固 溶した グラフ ァイ トであ ると同 定され た。 著者は さらに ,この 触 媒粒 子 の 結 晶 構造 に 基 づ き ,COか ら の炭 素析出 モデ ルを提 出し, 触媒と 繊維の 結晶 方位関 係,

繊維素 の捩れ 易い性 質な どを明 らかに した。

  第 三 章 は ,コ ー ク ス のCOよ に よ る ガス化 反応 (ブド ワール 反応) 速度 を,炭 素の結 晶性に 基 づいて 解明し たもの であ る。

  ま ず , 炭 素結 晶 の大き さの変 化をX線回 折法を 用い て調査 し,加 熱によ る結晶 成長 は等方 的で あるの に対し ,反応 によ る消耗 は炭素 結晶のa面 で選択 的に進 行す ることを示した。そして,CO: が炭 素 網 目 平 面(c面 ) 端 部の 不 対 結 合 炭素 に 吸 着 し て 反応 す るとい う,新 しいガ ス化 反応機 構 を 提 出 し た 。 こ の と き , 反応 速 度 式 は ,Langmuir―Hinshelwood型 の 速 度 式 に, 吸 着 サ イ ト率を 乗じた 形とな る。 実際の 速度解 析にあ たって は, 炭素を 結晶と 非結晶 に二 大別し ,その割 合が反 応温度 で異な ると してそ れぞれ の炭素 の速度 定数 をもと めた。 吸着サ イト として の不対結 合炭素 の割合 は,炭 素結 晶の大 きさに よって 異なる ので ,これ がコー クスの 製造 履歴で 反応性が 異なる 原因と され, コー クス中 炭素結 晶の発 達の程 度を 調べる ことで ,異な った 種類の コークス の反応 性を予 知可能 であ ること が示さ れた。

  第 四 章 で は , コ ー ク ス の ガ ス 化 反 応 に 対 す る 鉄 の 触 媒 効 果 を 研 究 し た 。   高炉内 におい て, ガス化 は還元 反応と 同時 に進行 し,こ のとき 生成し た鉄 原子が ガス化の触媒 として 作用し ている 可能 性が指 摘され ている 。

  ペン夕 カルボ ニル 鉄を用 いてコ ークス に鉄 を添加 したと ころ, 結晶成 長の 等方性 およびガス化 反応面 は変化 しない が, 反応は 顕著に 加速さ れることを見いだした。また,電子顕微鏡観察から,

反応中 に灰分 成分と 結合 した鉄tま 触媒作 用を失 うこと もわか った 。詳細な速度解析から,鉄添加 によ りC0とCOユ ガ ス の吸 着 に 起 因 す る反 応 抑 制 効 果が 著 し く 減 少す る た め , ガス 化 反応が 促

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進されることを明らかにした。

  第五章は,高炉炉況の安定上重要な,コークスのH20によるガス化反応機構にっいて研究し たものである。

  Hエ0によるコークスガス化反応は,多反応同時並発型のきわめて複雑な反応として知られて いる。この解明のため,著者は精細なガス分析実験法を考案し,反応種類の特定と反応速度の定 量を行った。この結 果,水性ガス反応は,水性 ガス反応I(C十H20=CO十H:)が主であり,

水性ガス反応n cc十2HユO=C02十2Hz)およびブド ヮール反応(C十COユニニ2c0)が付随的に 進行していること,これまで重要とみなされてきた水性ガスシフト反応(C02十H:二ニCO十H:O) は,ガス化反応が顕著になる温度域では,ほとんど生じないこと,などを明確にした。著者は,

水性ガス反応I,H,およびブドヮール反応の三種類の反応速度を同時に表わす速度式をもとめ,

その速度定数を決定している。なお,水性ガス反応Hは,吸着サイト上へのH20分子の二重吸 着により生起することも同時に明らかとなった。

  第六章は,本研究では得られたコークスのガス化反応速度定数を,一次元高炉数式モデルに導 入し,高炉内の炭素の反応挙動がどのように炉内プ口セス変数に影響するかをシミュレーション によって明らかにしたものである。前記研究で得られた反応速度定数は,実炉のガス組成分布や 温度分布をよく再現し,これら速度定数の工学的実用性およびモデルの妥当性が検証された。著 者はさらに,高反応性コークスを使用した場合の操業上の問題点を明らかにし,その解決策をも 提示している。

  これを要するに,本論文は,高炉内炭素の反応に関し,基礎的実験と深い考察に基づく多くの 新知見を与えており,鉄鋼製錬工学に貢献するところ大である。

  よ っ て 著 者 は , 博 士 ( 工 学 ) の 学 位 を 授 与 さ れ る 資 格 が あ る も の と 認 め る 。

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