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博 士 ( 工 学 ) 住 谷 泰 人 学 位 論 文 題 名

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     博 士 ( 工 学 ) 住 谷 泰 人

学 位 論 文 題 名

航 空 通 信 シ ス テ ム の 伝 送 特 性 の 改 善 に 関す る 研 究 学 位 論 文 内 容 の要 旨

  航空 機 が安 全か つ 円滑 に運 航 する ため に 、管 制官 に よる 交通 整理を中心と した航空交通管制が 行 われ て いる 。航 空交 通管制では、航空専 用の通信、航法、 監視の各システム やこれらを円滑に管 理する 航空交通管理から構成されるCNS/.ATM (Communication, Navigation and Surveillance/ Air Tra伍c Management)シス テム に より 、管 制 官と パイ ロ ット 間で 情報交換が行 われている。航空機 が 全世 界 的に 運航 す る上 では 国 際的 調整 が 必要 なた め 、こ のシ ステムは国際 民間航空機関(ICAO) に よる 国 際標 準や 勧 告方 式に 従 い、 国際 的 な統 一が 図 られ てい る。近年、航 空交通需要の増加に 伴 って 航 空機 の運 航数 も増加しており、将 来的に航空通信量 も増加する可能性 があるため、航空用 通信シ ステムにおける対 応が重要である。

  本論 文 は、 航空 交通 管制システムのうち 、特に航空通信シ ステムの伝送特性 についての改善を研 究 対象 と して 、著 者が これまでに実施した 航空衛星通信シス テムの伝送特性の 解析と将来予測及び プ ロト コ ルに 依存 する 問題の改善策の検討 とともに、将来の 航空用通信システ ムに適用される可能 性 の あ る ア ン テ ナ シ ス テ ム に よ る 検 討 に つ い て の 研 究 を ま と め た も の で あ る 。   第1章は序論 であり、研究の背景 と本論文の概要に ついて述べる。

  第2章 では 航 空交 通管 制 シス テム の 概要 と共に、特にその 中でも着目した航 空通信システムの役 割や動 向、及び将来の航 空通信システムの 概要について説明す る。

  第3章から第5章までは 、著者の研究成果 を記している。

  3章 で は 、 航 空 通 信 シ ス テ ム の う ち運 輸 多目 的衛 星(MTSAT (Multi‑functional Transport Satellite))や インマルサットに代 表される静止衛星 を利用した既存の 航空衛星通信システ ムに着目 し 、航 空 通信 量の 増加 に伴う影響を求める ため、伝送特性を 解析した結果を示 す。具体的には、実 際 に航 空 機が 管制 機関 に通知した交通情報 を利用して通信利 用状況を統計分析 し、この分析結果を ICAOの 国 際規 格に 沿 った 数値 解 析シ ミュ レ ータ のパ ラ メー タに 適用して、伝 送特性の一種である 伝 送遅 延 時間 を示 した 。さらに、この結果 と実際の通信利用 状況に基づき、シ ミュレータの妥当性 ととも に、シミュレータ を利用した将来予 測を行った。

  交通 情 報の 統計 分 析に より 、 時間 帯毎 の 通信 中の 航 空機 数を 示した。また 、交通情報が、定期 的 に航 空 機か ら送 信さ れる位置情報の報告 通信であるADS (Automatic Dependent Surveillance) ポ ート だ けで はな く、 航空会社の運航管理 用の通信や、パイ ロットと管制官を 結ぶ他のデータリン ク 通信 等 、複 数種 の 通信 内容 で 構成 され て いる こと を 示し た。 さ らに 、ADSレポ ー トの送信間隔 と 受信 間 隔は とも に各 時間帯の平均値の指 数分布曲線に従う ことや、他の複数 種の通信の伝送間隔 も 各時 間 帯の 平均 値の 指数分布曲線に従う 可能性が高いこと を示した。これら の分析結果をもとに シ ミュ レ ータ のパ ラ メー タを 決 定し 、地 上局と衛 星各1基を 経由した航空機の 航空衛星通信システ ム にお け る伝 送遅 延時 間の分布をシミュレ ーションにより求 めた。この結果、 伝送遅延時間分布が 実 測デ ー タの 傾向 に 近い こと を 示し た。 また将来 、年率3パ ーセントで航空交 通量が増加した場合

191 ‑

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の伝送 遅延時 間の予 測結 果とし て、2018年まで は現在 とほば 同様 の伝送 遅延時間で規定を満足し、

通信性 能への 影響が 少な いこと を明ら かにし た。

  4章 では 、 航 空 衛 星 通信 シ ス テ ム のプ ロト コルに 基づ き改善 すべき 課題と して、 ログ オンス トーム 現象を 研究対 象と し、こ の現象 の再現 と複数 の解 決策を 提案す る。ログオンストーム現象と は、多 数の航 空機が デー 夕通信の前段階の通信接続(ログオン)済み状態下で、通信路に不具合が発 生して 接続が 断たれ た場 合に、 ログオ ン済み の航空 機全 てが一 度に再 度ログオン処理を開始し、通 信性能 が劣化 する現 象で ある。 この現 象が起 こると 、全 ての航 空機の ログオ ン完 了まで に30分〜1 時間以 上経過 し、デ ー夕 通信に 大きな 遅延を 及ばす 。

  具体的 には、 先の シミュ レータ を改造 する ことで 、ログ オンス トーム 現象をシミュレーションに より示 した。 また、 地上 側の設 備で航 空機の 通信チ ャネ ルの選 択確率 を不均一にさせた改善策とロ グオン の伝送 速度の 向上 策、ロ グオン のチャ ネル数 の増 加策の3つ の解決 策をロ グオン スト ーム現 象の場 合と共 に、シ ミュ レーシ ョンで 比較検 討した 。こ の結果 、どの 解決策もログオンストーム現 象を改 善させ るが、 地上 側の設 備で航 空機の 通信チ ャネ ルの選 択確率 を不均一にさせる改善策が、

航空機 上の改 修が要 らず 、効果 的であ り、500機の 航空 機の例 で、ロ グオン ストー ム現 象と比 較し て 、 再 ロ グ オ ン の 所 要 時 間 を1/3程 度 以 下 に 改 善 で き る こ と を 明 ら か に し た 。   第5章では 、航空 分野にMIMO (MultipleーInput Multiple‑Output)ア ンテナ シス テムを 適用する 可能 性 に 着 目 した 電 波伝搬 解析に つい て検討 する。ICAOは、 汎用通 信技術 を応 用した 将来の 航空 用通 信 シ ス テ ムの 検 討結果 として 、3つの候 補を まとめ ている 。この うち、Lバ ンドに おけ る航空 用 デ ー タ リ ン ク シス テ ム と 空 港面 利 用 を 想 定し た 航 空 用WiMAXシ ステ ム の2つ の候 補 は 、 特 性 上、 回 折 や 反 射等 に 基 づ く 多重 波 に よ り 性 能向 上 さ せ るMIMOアン テナシ ステ ムを利 用する 可能 性があ る。こ のため 、航 空機単 独で影 響評価 でき、 空港 周辺の 建物や 空港面等に基づくマルチパス や周囲 の無線 通信シ ステ ムの影 響がな いよう 、電波 無響 室に航 空機模 型を設置し、航空機模型のプ ロペラ 、翼等 の構造 物の 影響に 関して 電波伝 搬実験 を行 った。

  具体的 には、 電波 吸収材 を模型 の一部 に設 置し、 模型上 で反射 、回折 する多重波を解析した。実 験解析 の結果 、航空 機と 地上の アンテ ナの位 置関係 によ り、尾 翼、プ ロペラ、主翼等の反射箇所が 変化す ること を示し た。 さらに 、銅製 の平面 反射体 を航 空機と 地上の アンテナの間で直接波を妨げ なぃ位 置に設 置した 結果 、銅板 の反射 による 多重波 は航 空機自 身から の多重波よりも大きく、位相 の変動 も反射 体を設 置し ない場 合より 大きい ことを 明ら かにし た。以 上のように、航空機の機体か らの 複 数 の 反 射波 の 入射が 認めら れた が、空 間多重 による 伝送速 度の 向上が 可能か どうか は確 認 でき な か っ た 。こ の ため、 今後は 空間 多重に よる伝 送速度 の向上 につ いて解 析する ことが 課題 で ある。

  第6章では 、航空 通信シ ステ ムの動 向や本 論文に おけ る解析 結果を もとに 、研究 対象 の将来 につ いて展 望した 。

  第7章は結 論であ り、本 研究 で得ら れた成 果を要 約し ている 。

‑ 192

(3)

学 位 論 文 審 査 の要 旨

学位論文題名

航 空 通 信 シ ス テ ム の 伝 送 特 性 の 改 善に 関 す る 研究

  

航空交通管制により、航空機は安全、かつ、円滑に運航が可能となっている。このよう な管制は地上の管制官が、航空機専用のシステムを用いて、航空機上のパイロットと情報 交換しながらなされている。航空機専用システムは、航空用に設けられた通信、航法、監 視の各システムや、これらを円滑に管理する航空交通管理により構成されている。このう ち、通信システムは、主として地上の管制機関と上空の航空機の間での音声やデータの伝 送に利用されている。近年では、航空交通需要の増加に伴い、航空機の運航数が増加して い る 。 こ の よ う な 運 航数 の 増 加は 、 航 空通 信 量の 増 加 を伴 う 可能 性 が ある 。

  

本論文は、航空通信システムの伝送特性の改善を目的として、その解析と将来予測、及 び、プロトコルに依存する問題の改善策の検討とともに、将来の航空通信システムに適用 される可能性のあるマルチアンテナシステムについての研究をまとめたものであり、全体 は7章から構成されている。

  

1

章 は 序 論 で あ り 、 研 究 背 景 と 論 文 概 要 に つ い て 述 べ て い る 。

  

第2章では、航空交通管制システムの役割や動向、将来必要となるシステムの概要につ いて説明している。

  

第3章では、静止衛星を利用した既存の航空衛星通信システムに着目し、航空通信量の 増加に伴う影響を求めるため、伝送特性を解析した結果を示している。具体的には、実際 に航空機が管制機関に通知した交通情報を利用して通信利用状況を統計分析し、その分析 結果を国際民間航空機関の国際規格に沿った数値解析シミュレータのパラメータに適用し て、伝送遅延時間を示した。その結果、伝送遅延時間分布が実測データの傾向に近いこと が示された。また将来、年率3パーセントで航空交通量が増加した場合の伝送遅延時間の

193

孝 一

雄 則

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予測結果として、2018年までは現在とほば同様の伝送遅延時間で規定を満足し、通信性 能への影響が少ないことを明らかにした。

  

4

章では、航空衛星通信システムのプロトコルに基づきログオンストーム現象を研究 対象とし、この現象の再現と複数の解決策を提案している。ログオンストーム現象とは、

通信路に不具合が発生して接続が断たれた場合に、航空機全てが一度に再度ログオン処理 を開始し、全ての航空機のログオン完了までに30分〜1時間以上を経過し、デー夕通信 に大きな遅延を及ばす現象を言う。本研究では、先のシミュレータを改造することで、ロ グオンストーム現象をシミュレーションにより示し、地上側の設備で航空機の通信チャネ ルの選択確率を不均一にさせる改善策が、航空機上の改修が要らず、効果的であることを 示している。具体的には、

500

機の航空機の例で、ログオンストーム現象と比較して、再 ロ グ オ ン の 所 要 時 間 を

1/3

程 度 以 下 に 改 善 で き る こ と を 明 ら か に し た 。

  

5

章では、飛行中の航空機にMIMO (Multiple‑Input Multiple‑Outl?ut)多重伝送を適 用する可能性に着目した電波伝搬解析について検討している。飛行中の航空機の場合、

MIMO

伝送に必要となる多重波は航空機胴体、翼、プロペラからの反射波と回折波であ る。このようなrvnMO伝搬チャネル測定のため、電波無響室に航空機模型を設置し、ネッ トワークアナライザを用いて電波伝搬実験を行った。実験解析の結果、航空機と地上のア ンテナの位置関係により、尾翼、プロペラ、主翼等の反射箇所が変化することを示した。

しかし、反射波の強度が大きくなぃため、空間多重による伝送速度の向上が可能かどうか は 確 認 で き な か っ た 。 こ の 点 に 関 す る 考 察 が 今 後 の 研 究 課 題 で あ る 。

  

6

章 で は 、 航 空 通 信 シ ス テ ム の 将 来 に つ い て 展 望 し て い る 。

  

7

章 は 結 論 で あ り 、 本 研 究 で 得 ら れ た 成 果 を 要 約 し て い る 。

  

これを要するに著者は、航空通信システムにおける、ログオンストームの軽減策を提案 するとともに、rvnMO伝搬の基礎的実験検討を行ったものであり、航空通信システムの特 性改善に貢献するところ大なるものがある。よって、著者は北海道大学博士(工学)の学 位を授与される資格あるものと認める。

194 ‑

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