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博士(工学)長谷部 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(工学)長谷部 学位論文題名

迅速混合モデルの開発と乱流拡散流れ場への応用 学位論文内容の要旨

  近年,地球環境問題やそれに対する人類の健康問題への懸念から,乱流中における物質拡散 や化学反応現象を解明し制御することは,重要かつ緊急の研究課題となっている,このような 現象は工場などからの汚染物質の環境中への拡散や,大気中|での化学反応による汚染物質の生 成などに見られ,また,低公害で高効率な燃焼器などの工業装置の最適設計と関連して,工学 的にも重要である.しかしながら,このような問題を数値的に予測しようとした場合,いくつ かの困難に遭遇する.それは,乱流と化学反応との相互作用が重要であるため,乱流現象その ものを正しく解析する必要があること,さらに化学反応を取り扱うには反応と流れを特徴づけ る時間スケール,あるいは素反応間での時間スケールの大きな相違に起因する「スティフネス」

の問題があること,数値解法としてオイラー的な手法を用いることからくる,数値拡散誤差に よる計算の破綻の可能性などを配慮しなければならない.したがって,実用性・汎用性の高い 数値解析法は未だ確立されていないのが現状である.このような,複雑に変形する界面での現 象を精度良く解析しようとする場合には,むしろラグランジュ的手法,特に流体粒子の運動に より乱流拡散現象を直接的に表すラグランジアン粒子的手法の方がより適している.しかしな がら,ラグランジアン粒子的手法による反応性乱流解析に関する研究はあまり知られていなぃ,

そこで,粒子的手法により物質混合を記述できるような新しい数値解法を開発する必要性と乱 流 拡 散 現 象 の 確 率 的 表 現 法 と し て の 確 率 拡 散 モ デ ル の 開 発 が 望 ま れ て い る .   本研究の主目的は,これまでオイラー的な観点から成されてきた様々な流れ場への数値解析 上の問題点を指摘すること,その解決策として空間分解能に優れ,数学的取扱も容易なラグラ ンジアン粒子的特徴を有する新たな物質混合モデルである「迅速混合モデル」を提唱し,いく っかの特徴的な乱流拡散流れ場に対しその適用条件および有効性を調べるための基礎的研究を 行うことである.

  本論文は第1章から第8章までの全8章で構成されている.各章の内容は以下の通りである.

  第1章は序論であり,化学反応を伴う乱流に関する従来の実験的および数値解析的研究の紹 介と乱流拡散現象の知見およびそのモデリングについて説明するとともに本論文の目的を述べ ている,

  第2章では,従来の確率混合モデルを紹介すると共に,本研究で新たに開発した迅速混合モ デルの概念の解説,確率論的考察を行い,物質拡散過程や化学反応過程への適用方法について 述べている.迅速混合モデルとは,あるスカラーをもつ流体要素同士が,ラグランジュ的運動 によりある設定した距離以内に接近すると,直ちにスカラ―の混合が起こり,それぞれが平均 化されるというモデルである.

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  第3章では,迅速混合モデルの定量的精度とモデルを支配する任意パラメータによる特性を 評価するため,主流のない乱流拡散場における物質拡散問題のシミュレーションを行っている.

そして,得られた濃度分布を拡散方程式の厳密解である誤差関数と比較し,モデルの妥当性に ついて考察している,その結果,混合可能距離などのパラメータを適切に設定することにより,

所 定 の 拡 散 係 数 を 有 す る 物 質 拡 散 場 を 実 現 で き る こ と を 明 ら か に し て い る .   第4章では,迅速混合モデルの適用可能性を例示するため,異なる化学種を合む流体の界面 における物質拡散が重要な,大規模渦構造を特徴的に取り上げ,本モデルを用いて大規模渦が ロールアップしていく中での化学反応シミュレーションを行っている.ここで用いた化学反応 機 構はA十B→P, およ び連 鎖反 応系A十B→M(反応速度定数ki),M十B→P(反応速度定数 也)であり,乱流混合と化学反応の時間スケールの比で表されるダムケラー数に対して,流体 の運動が反応速度に及ぼす影響を生成物濃度分布などによ.り定性的に調べ,本モデルの有効性 を検討している.

  第5章では,まず既知の乱流統計量を基にした確率的手法によって統計的性質を満足するよ うな乱れ速度を生成する方法を示し,それを用いて二次元せん断層での物質拡散および化学反 応過程に対し迅速混合モデルによるシミュレーションを行っている.そして,反応速度定数や lean‑to‑richリアクタント比の影響,混合層におけるエントレインメントの非対称性による効果 を調べるためのflip条件(高速流側と低速流側の化学種を入れ替える条件)の影響のそれぞれ について,平均濃度分布,変動濃度強さ分布,濃度の確率密度関数を比較し,それらが生成物 濃度ヘ及ぼす影響についてMasutaniらの実験データに基づぃた定性的・定量的検討をし,良好 な結果を得ている,

  第6章では,迅速混合モデルを乱流境界層ヘ拡張するためのシミュレーションを行っている.

計算対称を定温加熱壁をもつ二次元チャンネル内乱流における乱流熱拡散問題とし,差分法に よって求められた温度分布と迅速混合モデルを用いて求められた温度分布とを比較し,与えら れた乱流熱拡散場を実現するための混合可能距離などの各種パラメータの設定条件を調べてい る.本章では,流体要素の乱流拡散には時間相関を考慮したランジュバンモデルを使用している.

  第7章では,迅速混合モデルの密度変化を伴う圧縮性乱流場への適用方法について述べてい る,これは,流体の運動が化学反応に及ぼす影響を探るだけでなく,反応に起因する発熱によ る密度変化の影響を流れ場に反映させるためにも重要である.ここでは,ラグランジアン粒子 法の一種としての迅速混合モデルと有限体積法による圧縮性流れ解析との組合せ方法を検討し て お り , 簡 単 な 流 れ 解 析 を 行 う こ と に よ っ て , そ の 適 用 例 を 示 し て い る ,   第8章は本論文の結論であり,本研究で得られた主要な結果および今後の展望についてまと めている,

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学 位論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査

教授 教授 教授 助教授

飯 田 木 谷 井 上 小 河原

学 位 論 文 題 名

誠一     勝 良紀 加久 治

迅 速混合 モデルの開発と乱流拡散流れ場への応用

  大気 中にお ける汚 染物質 の拡散 や化学 反応, 高効率 で低公害 な燃焼 器の最 適設計 等,乱流中に おけ る物質 拡散お よび化 学反応 現象を 精度良く 予測し ,解明 するこ とは重 要な課 題である.しか しな がら, 化学反 応過程 をも配 慮した 乱流拡散問題を数値的に正しく予測することは困難であり,

実用 性の高 い数値 解析法 は未だ 確立さ れていな ぃ,ま た,複 雑に変 形する 界面で の乱流拡散や化 学反 応との 相互作 用を精 度良く 解析す るには, 流体粒 子の運 動によ って乱 流拡散 を直接的に表現 する ラグラ ンジア ン粒子 的手法 の方が 適してい ると考 えられ ている が,こ のよう な手法により反 応性乱流を扱った研究はあまり知られていなぃ,

  本論 文は, 空間分 解能に 優れ, 数学的 取扱も 容易で あるラグ ランジ アン粒 子的特 徴を有する物 質混 合モデ ル(迅 速混合 モデル )を新 たに開発 し,化 学反応 を合む いくっ かの特 徴的乱流拡散流 れ場に対して,その適用条件および有効性を検討している,

  本論文では,以下のような結論を得ている,

  (1)ラグラ ジアン粒子的混合モデルである「迅速混合モデル」を新たに開発した.これは,流体 要素 がスカ ラ一量 の履歴 を保持 しなが ら運動を続けるため,化学反応を扱うのに適していること,

確率密度関数を容易に得ることができること等を特徴とする.

  (2)拡 散方程 式の厳 密解との 比較に より, 迅速混 合モデ ルの定 量的精度および混合可能距離など の各 パラメ ータの 依存性 を詳細 に検証 した.そ して, 本モデ ルが所 定の拡 散係数 を有する物質拡 散場を再現可能であることを明らかにした.

  (3)二次元乱流せん断層内での化学反応シミュレーションを行い,反応速度定数,'lean‑to‑richリ アク タント 比,flip条 件等が 反応生 成物濃度に及ぼす影響を調べた.そして,同様の実験データと の比 較から ,本モ デルを 用いた シミュ レーショ ンが物 理現象 を定性 的およ び定量 的に表現できる こと を示し た.ま た,本 モデル が乱流 混合の影 響によ り反応 速度が 抑制さ れる現 象を考慮できる こと,瞬間反応仮定では得られなぃ低ダムケラ一数の反応性流れを効果的に扱えることを確認した.

  (4)乱 流境界 層流れ への適用 条件を 調査す るため ,壁か らの乱 流熱拡散問題を取り上げ,その応 用に 際して の問題 点を明 らかに した, そして, モデル の改良 を行う ことに より本 モデルが所定の 乱流熱拡散場を実現できることを示した.

  (5)反応熱 などによる密度変化が流れ場ヘ及ぼす影響を考慮できるようにするため,迅速混合モ デルを圧縮性乱流拡散場に適用する方法についての基礎的研究を行った.

  以上 のよう に,本 論文は ,簡便 なラグ ランジ ュ的混 合モデル によっ て,複 雑な乱 流拡散流れ場 にお ける物 質混合 問題を 精度良 く解析 する手法 および その可 能性を 提示し ており ,各種特徴的な

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流れ場をシミユレーションすることにより,その適用条件や有用性を検討している.このことは,

流体工学,環境工学のみならず他の学問分野においても寄与するところが大きい,よって,著者 は , 北 海 道 大 学 博 士 ( 工 学 ) の 学 位 を 授 与 さ れ る 資 格 の あ る も の と 認 め る .

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参照

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