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博 士 ( 工 学 ) 宿 谷 昌 弘 学 位 論 文 題 名

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博 士 ( 工 学 ) 宿 谷 昌 弘

学 位 論 文 題 名

流 れ に 直 交 す る 単 一 超 音 波 ビ ー ム を 用 い た 相 関 血 流 計 に 関 す る 基 礎 的 研 究

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  本論文 は,従 来の超 音波ド プラ法 では計測不可能な,超音波ビ一厶に直交する流れの流 速計測 に関す る手法 を提案 し,理 論解析,計算機シミュレーション,及び実験により本手 法の基本的特性を明らかにした研究成果をまとめたものである.

  今日, 超音波 診断法 は,超 音波断 層像とぃう形態情報のみならず,血流速という機能情 報をも 無侵襲 的かっ 実時間 で取得 できることから,臨床に広く普及している.血流速の計 測には 一般に 超音波ドプラ法が用いられており,この手法を応用したカラートlプラ(実時 間2次元 血流イ メージ ング装 置)は 心腔内の血流や各臓器への血流を実時「削で2次元画像 表 示 で ぎ る こ と か ら , 心 循 環 系 の 臨 床 計 測 に は 不 可 欠 の 装 置 と な っ て い る .   しかし ,ドプ ラ法で 計測で きる流 速は原理的に超音波ビーム方向成分のみであることや 計測対象が比較的大血管の血流に限られること,ビーム人射の至適葦色囲に解剖学的な制限 がある こと等 から, 近年は ,これ らドプラ法の限界を打破し,新しい方向への展開を図る べく,2次元血 流速度 ベクト ルの推 定や,Time Domain Correlation Technique(TDCT)と いった 新しい 血流計 測法の 開発, エコ―エンハンスメント法の利用:組織血流計測など,

幅広い試みがなされてきている.

  このよ うな背 景のも と,本 研究は , 流れに直交する単一超音波ビームを用いた相関血 流計測 法 と いう新 しい血 流計測 法を提案する.本相関法が実現されれば,ビームに直交 する血 流情報 という これま でに無 い診断情報を臨床の場に提供でき,従来のビ―ム方向の 血流情 報との 併用で ,3次元 的な血 行動態 の把握に 大きく 役立っものと考えられる.また ビーム人射至適範囲の拡大や,流速ベクトル計測の司能性など,超音波計測分里子の次なる 展開への足掛かりを与えるものと期待される.

  そこで ,本論 文では ,上述 の相関 法の測定原理や測定精度,誤差軽繊効果などの堪本性 能にっいて,理論,計算機シミュレ―ション,及び実験により詳細なぁ¥折を行うとともに 本相関 法の応 用とし て血管 内血流 計測システムの試作,流速ベクトル計測法の開発を試み た 上 で , 他 計 沮T亅 法 と の 比 較 か ら 本 相 関 法 の 位 置 づ け を 行 っ て い る ,   本 論 文 は 全9章 よ り 構 成 さ れ て お り , そ の 主 な 成 果 は 次 の よ う に 要 約 さ れ る .   第 1章 の 序 論 で 憾 , 本 研 究 の 目 的 と そ の 背 景 に っ い て 述 べ て い る ,   第2章では,本相関法の測定原理にっいて理論解析を行い,散乱r本のf多重壁rと個関f系数 の関係 式を導 出して いる. 解折結 果の妥当性を確認するため,シミュレーション及び実験 を行い ,相関 係数が 散乱粒 子の移 動距離の増加に伴い単調に繊少すること,撤少率は趨音 波振動子の長さにのみ依存して,サンブリンク゛位置やサソブリング長,さらに憾出目イ超音 波パル スの中 心周波 数,パ ルス長 ,波長,散乱体密度に依存しないことを明らかにしてい る,ま た,相 関係敬 の減少 は,超 音波ビーム内の散乱体の人れ替わりよりも,むしろ各点 散乱体 までの 距離の 変化に よるエ コ―信号の位福変化に起因することを推察している.以 上のように,本章では本研究を進めるに当たって必要な基本式を麁罕沂的に導出し,その妥

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当 性を確認している.

  第3章では,本相関法の測定 パラメー夕(加算回数N,サ ンプリング長Is,バルス長lp) の 最適値を決定するために,これらパラメータと時間・空間分解能,及び流速測定キ古度の 関係 を記 述す る理 論 式を 導出 して いる . 流速測定精度が厂lp/(ls‑N)に比例することを 明 らか にし ,そ の妥 当 性を シミ ュレ ーシ ョ ン及び実際の流れを 用いた実験で確認している . こ れ に よ り , 測 定 パ ラ メ ー タ を 決 定 す る 際 の 直 接 的 か っ 有 用 な 指 針 を 得 て い る ,   第4章で は ,本 相関 法の 誤 差要 因で ある 雑音 の 影響 にっ いて 解析 するとともに,その 軽 減法 を考 案し てい る .ま ず, 雑音 をク ラ ッタ とラ ンダ ム 雑音 の2種 に分け,それぞれが 混 入し た場 合の 流速 測 定誤 差を 理論 的に 求 めている.次に,実 際の生体計測を想定し,ク ラ ッタ 及び ラン ダム 雑 音混 入時 の測 定誤 差 軽減法を考案してい る.クラッタに対しては雑 音 波形 推定 法, ラン ダ ム雑 音に 対し てはS/N推定 法 を用 いて 雑音 の影 響を軽減している. こ れら 誤差 軽減 法に っ いて は, シミ ュレ ー ション及び実際の流 れを用いた実験を行い,そ の 有効性を検証している,

  第5章で は ,超 音波ビーム人射 角の誤差により生じる流速測 定誤差(ビーム角依存誤差 ) にっ いて 理論 解析 を 行い ,実 用上 の大 き な障害となるビーム 角依存誤差を軽減する手法 を 考案 して いる .本 手 法は ,相 関係 数に 代 わり相関関数の最大 値を用いる手法であり,理 論 解析により,ビーム角誤差が20〜  30゜であっても流速 測定誤差を土lOoA以下に抑制 できる ことナょどを推察している. シミュレーション及び実験 を行い,以上の解析結果の妥 当性,

及び ビー ム角 依存 誤 差軽 減法 の有 用性 を 確認している.これ により,実際の生体計測に お い て 問 題 と な る ビ ー ム 角 設 定 誤 差 の 影 響 を 著 し く 軽 減 で き る と し て い る .   第6章で は ,本 相関 法の 一 応用 例と して 血管 内 血流 計測 シス テム を試作し,定常流や 拍 動流 の流 速分 布, 及 び流 量を 実際 に計 測 可能であることを確 認している.さらに,近年 新   しい診断法として注目され ている血管内超音波イメー ジング法ヘ本相関法を適用す ること によ り, 血管 断層 像 など の形 態情 報の み ならず,血管弾性率 や血流量等,より多くの生 体 情報 を同 時に 取得 で きる 多機 能型 超音 波 プローブが実現可能 であることを展望している .     第7章 で は, 本相関法をさら に発展させ,単一ビームによ る流速ベクトル計測法を提 案   し てい る. 本ベ クトル計測法は ,一定時間間隔を隔てて得 られた2っのRFエコー信号の 相 関関 数の ピー ク位 置 から ドプ ラ偏 移, す なわち流速の超音波 ビーム方向成分を検出する と   ともに,そのピーク値から 本相関法によってビーム直 交方向成分を検出するもので ある.

  これら測定原理にっいて理 論解析を行い,さらに移動 散乱体を用いた実験,及び実 際の流 れを 用い た実 験を 行 って ,単 一ビ ーム で 流速ベクトルを計測 可能であることを確認して い   る.両実験とも,流速ベク トルと超音波ビームとが成 す角の平均測定誤差は1〜3° 程度で あり ,流 速ベ クト ル を高 精度 に計 測で き る可能性が示されて いる.また,単一ビームに よ   る本流速ベクトル計測法の 長所として,複数ビームを 用いる従来法のように観測点 が限ら れる 等の 制約 がな く ,か っプ ロー ブの 形 状を小型化できるな どの点を考察している.さ ら に ,本 流速 ベク トル計測法の適 用により,従来の2次元流速 ベクトル分布計測に代わり ,   3次 元 流 速 ベ ク ト ル 分 布 の 計 測 も 可 能 と な る こ と を 示 唆 し て い る .   第8章で は ,超 音波 を用 い た従 来の 主な 流速 計 測法 と本 相関 法と を比較検討し,本相 関 法の位置づけを試みている. まず,主な従来法として, ドプラ法,TDCT,スペ・ソク ル法,

Transverse Doppler法を 挙げ ,そ れら の 測定原理を簡単に説 明している.次に,本相関 法   との原理的な比較検討を行 い,一見全く異なって見え るそれら計測法が,実際には 互いに 深い 関連 性を 育す る こと を述 べて いる . 特に ,本 相関 法 ,ス ペッ クル法,そしてTrans― verse Doppler法 は,いずれも超 音波ビーム方向成分を利用し て流速を計測しており,原 理 的に は同 一の 現象 を 異な った 処理 法で 観 測していること,ま た,Transverse Doppler法 は 超音 波ド プラ 法を , 本相 関法 はTDCTを そ れぞれより一般化し た手法(流速ベクトルが計 測 司) であ り,Transverse Doppler法と 本 相関法はフーリエ変 換を介して対称な関係にあ る   ことを明らかにしている,

    第9章は結諭であり,本 研究で得られた成果をまとめ ている,

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学 位 論 文審 査 の要 旨

学 位 論 文 題 名

流 れ に 直 交 す る 単 一 超 音 波 ビ ー ムを 用 いた 相 関 血 流 計 に 関 す る 基 礎的 研究

  

今 日, 超音 波診断法は ,断層像という形態情報のみならず,血流速という機能 情報をも 無 侵 襲的 に取 得できるこ とから,臨床に広く普及している.血流速の計測には一 般に超音 波 ド プラ 法が 用いられて おり,この手法を応用したカラードプラ装置のように, 心腔内等 の 血 流を 実時 間で

2

次 元画 像表 示 でき ,心 循環系の臨床計測に不可欠な装置も出 現してい る . しか し, ドプラ法で 計測できる流速は原理的に超音波ビーム方向成分のみで あること や , 計測 対象 が大血管の 血流に限られること等から,近年は,これらドプラ法の 限界を打 破 し , 新 し い 方 向 へ の 展 開 を 図 る べ く , さ ま ざ ま な 試 み が な さ れ て き て い る ・

  

こ のよ うな 背景のもと ,本研究は, 流れに直交する単一超音波ビームを用い た相関血 流 計 測法 と いう新しい 血流計測法を提案している.本相関法が実現されれぱ, ピームに 直 交 する 血流 情報という これまでに無い診断情報を取得でき,従来のピーム方向 血流情報 と の 併 用 で ,

3

次 元 的 な 血 行 動 態 の 把 握 等 に 大 き く 役 立 っ も の と 期 待 さ れ る .

  

本 論文 では ,上述の相 関法の測定原理や測定精度,誤差軽減効果などの基本特 性にっい て , 理論 ,計 算機シミュ レーション,及び実験により詳細な解析を行うとともに ,本相関 法 の応用として血管内血流計測システムの試作,流速ベクトル計測法の開発を試みている.

そ の主な成果は次のように要約される.

、 第

1

章 の 序 論 で は , 本 研 究 の 目 的 と そ の 背 景 に っ い て 述 べ て い る .

  

2

章 では ,本 相関 法の 測定 原 理に っい て理論解析を行い,散乱体移動量と相 関係数の 関 係 式を 導出 している. 解析結果の妥当性を確認するため,シミュレーション及 び実験を 行 い ,相 関係 数が散乱粒 子の移動に伴い単調に減少すること,減少率は超音波振 動子の長 さ に のみ 依存 し,エコ一 信号のサンプリング位置やサンプリング長,超音波周波 数,パル ス 長 ,散 乱体 密度など, 他の主要なパラメータには依存しないことを明らかにし ている.

  

第3章では,本相関法の測定 パラメータ(加算回数,サンプリング長,パルス長)の最適 値 を 決定 する ために,こ れらパラメータと時間・空間分解能,及び流速測定精度 の関係を 記 述 する 明解 な理論式を 導出している.また,その妥当性をシミュレーション及 び実際の 流 れを用いた実験で確認している・

  

4

章 と第

5

章で は, 本相 関法 の誤 差要 因で ある 雑音 と超 音 波ビ ーム入射角の 影響につ い て 理論 解析 を行うとと もに,それらの誤差軽減法を考案している.さらに,シ ミュレー シ ョ ン及 び実 際の流れを 用いた実験を行い,それらの有効性を検証している.雑 音に関し

―・630

之 夫

也 光

克 敏

眞 利

本 田

城 倉

山 勇

栗 朝

授 授

授 授

教 教

敦 敦

査 査

査 査

主 副

副 副

(4)

ては ,ク ラッ タと ラン ダム雑音の2種に分け,それぞれが混入し た場合の流速測定誤差,

及び誤差軽減効果を検討している.超音波ビーム入 射角に関しては,ピーム角設定誤差が

20

30

° であ って も, 流速測定誤差 は10X以下と,実用精度を確 保できることを明らかに している・

  

6

章 では ,本 相 関法 の一応用例として血管内血流計測システ ムを試作し,定常流や拍 動流の流速分布,及び流量を実際に計測して,前章 までの手法の妥当性,有効性を実用シ ステムで検証している.

  

7

章 では ,本 相 関法 をさらに発展させ,単一ビームによる流 速ベクトル計測法を提案 して いる .本 ベク トル 計測法は,一 定時間間隔を隔てて得られた2っのRFエコ一信号の相 関関数のピーク位置からドプラ偏移,すなわち流速 の超音波ビーム方向成分を検出すると ともに,そのピーク値から本相関法によってピーム 直交方向成分を検出するものである,

理論解析,及び実験を行い,単一ピームにより流速 ベクトルを計測司能であること,さら に 流 速 ベ ク ト ル の 向 き は , 誤 差

3

° 以 内 と 高 精 度 に 求 め 得 る こ と を 示 し て い る .

  

8

章 では ,従 来 の主 な超音波流速計測法と本相関法とを比較 検討し,本相関法の位置 づけを試みている.各手法の原理的共通点と相違点 に言及し,Transverse Doppler法と本 相関法はフーリエ変換を介して対称ナょ関係にあること等,各手法の対応関係を明らかにし ている・

  

第9章は結諭であり, 本研究で得られた成果をまとめている.

  

これを要するに,著者は,流れに直交する単一超 音波ビームを用いた相関血流計測法を 考案し,その基本的特性を理論的,・実験的に明らかにするとともに,医用超音波計測への 新たな応用を見いだしており,生体計測工学の進歩 に寄与するところ大なるものがある.

  

よって,著者は,北海道大学博士(工学)の学位 を授与される資格あるものと認める.

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