博士論文審査結果の要旨
学位申請者
谷 口 知 行
主論文 1 編
Resveratrol directly targets DDX5 resulting in suppression of the mTORC1 pathway in prostate cancer.
Cell Death & Disease 27;e2211, 2016
審 査 結 果 の 要 旨
レスベラトロールについては, がん予防効果, 神経変性疾患予防効果, 肥満関連症予防効果な
どのさまざまな生理活性が知られているため, レスベラトロールの直接の結合蛋白質を同定する
研究が行われてきた. これまでに sirtuin 1, ホスホジエステラーゼなどがレスベラトロールの直接
の標的分子として発見されてきたが, これらの標的分子だけではレスベラトロールの有する多様
な生理活性を説明するには不十分であることから, 他の標的分子の存在が予測された. そこで申
請者はレスベラトロール固定化ビーズを作製し, レスベラトロールに結合する蛋白質を同定する
ことで, レスベラトロールのがんにおける新規標的蛋白質の解明を試みた.
申請者は, ホルモン非依存性のヒト前立腺がん細胞株 PC-3 の細胞抽出液からレスベラトロール
固定化ビーズを精製担体として用いて, レスベラトロール結合蛋白質を精製した. SDS-PAGE 法
によって分離し銀染色にて検出した後, ゲルから切り出した. 続いて脱染色を行い, ゲル内消化
を行った後に質量分析計を用いて解析し, DDX5 を含む 11 個の新規レスベラトロール結合蛋白質
を同定した. DDX5 は前立腺がんを含むさまざまながんで過剰発現しており, ホルモン依存性の
前立腺がんにおいてはアンドロゲン受容体の転写共役因子として機能することが知られていたが,
ホルモン非依存性の前立腺がんにおける機能は明らかになっていなかった. PC-3 細胞に対し,
レスベラトロールを添加すると, DDX5 蛋白質の量の減少が認められた. 蛋白質合成阻害剤の
シクロヘキシミド存在下で PC-3 細胞にレスベラトロールを添加しても, DDX5 蛋白質の量が減少
したことから, レスベラトロールは DDX5 蛋白質の分解を促進していることが示唆された. 申請
者は次に, DDX5 蛋白質の量が減少すると, ホルモン非依存性の前立腺がん細胞株にどのような
影響が出るのか解析した. RNA 干渉法によって DDX5 の発現を抑制したところ, レスベラトロー
ルの添加時と同様に細胞増殖抑制効果とアポトーシスの増加を認めた. また, DDX5 の発現抑制
によってもレスベラトロールの添加時と同様に, mTORC1 経路が抑制された. 続いて, レスベラ
トロールが DDX5 を標的とすることで, アポトーシスの誘導, および mTORC1 経路の抑制効果を
示すか検証した. DDX5 の発現を RNA 干渉法によりあらかじめ枯渇させた後, レスベラトロール
を 添 加 し た と こ ろ , レスベ ラトロール による細胞 増殖抑制効 果 , アポ トーシス誘導効果,
mTORC1 経路抑制効果が減弱した. 以上の実験結果より, レスベラトロールはホルモン非依存性
の前立腺がん細胞内において, DDX5 を直接標的とすることで, mTORC1 経路を抑制し, アポト
ーシスを誘導することが示唆された.
以上が本論文の要旨であるが, レスベラトロールのホルモン非依存性前立腺がんにおける新規
標的分子として DDX5 を同定し, mTORC1 経路の抑制メカニズムを明らかにした点で, 医学上価
値ある研究と認める.
平成 28 年 10 月 20 日
審査委員 教授
八木田 和 弘
㊞
審査委員 教授
矢 部 千 尋
㊞
審査委員 教授
田 代 啓
㊞