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罪 法条競合と包括 論

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(1)

五 四

法 条 競 合 と 包 括

9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 .   9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9  

説 一 [

9 9 9 9   9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9   9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 ,

 

H

従来の罪数学説 法条競合と包括一罪の罪数論的意義 はじめに

口構成要件標準説の意義︵以上前号︶

法条競合論の再構成

H

法条競合の本質︵以上本号︶

口法条競合の現象形式

包括一罪の類型化

おわりに

︵ 二 ︶

2 ‑ 2‑189 (香法'83)

(2)

法条競合の本質

法条競合は︑数個の構成要件該当性があるにもかかわらず︑一個の刑罰法規のみが適用される場合である︒そ

この場合︑一個の刑罰法規のみが適用され︑他の刑罰法規の適用が排除されるのは︑構成要件相互の関係ない

し刑罰法規相互の関係によるとされるのが一般である︒しかし︑ここで一般的にいわれている︑構成要件相互の関係

ないし刑罰法規相互の関係とは如何なる関係か︑また︑一個の刑罰法規のみが適用され︑他の刑罰法規の適用が排除

されるのは︑如何なる根拠によるのか等について︑学説上非常に不明確な部分がある︒しかも︑このような法条競合

の本質に関する議論は︑従来多くの学説がとりあげたものとはいえない︒そこで︑以下では︑法条競合の本質につい

て若干でも言及のある学説を検討し︑その批判を通して︑法条競合の本質を明らかにしてみたい︒特に︑ここでは︑

法条競合と観念的競合とは如何なる点で区別されるのか︑また︑法条競合と包括一罪とは如何なる差異があるか︑と

いう問題が重要な課題となる︒

(l)小野清一郎・新訂刑法講義総論(昭和二三年)二六五頁、福田平•新版刑法総論(昭和五一年)ニニ四頁、香川達夫・刑法講義〔総

し て

論︺︵昭和五五年︶三八八頁︑中義勝・講述犯罪総論︵昭和五五年︶二七0頁︑平野龍一・刑法総論

1 1

0年︶四0

佐伯千初・四訂刑法講義︵総論︶︵昭和五六年︶三七四頁︑中山研一・ロ述刑法総論︵昭和五三年︶四九七頁︑藤木英雄・刑法講

義総論︵昭和五0年︶三四0頁以下︑山火正則.﹁法条競合の諸問題日﹂神奈川法学七巻一号︵昭和四六年︶四頁︑

Sc hm id ha us er , S t r a f r e c h t ,   A l i g .   Te il

̀  

2.  A u f l . ,  

19 75 , 

S .  

730; 

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̀  

De ut sc he s  S t r a f r e c h t  

2,  1 93 0,

S .  

 

523 

L i s z

t   , S

ch mi dt ,  Le hr bu ch   de s 

法条競合論の再構成

2 ‑ 2 ‑190 (香法'83)

(3)

意味する﹂場合であり︑広い概念と狭い概念︑

ま た

双方の刑罰は論理的に完全に無関係な

d e r  

e u

t r a l i t a t )  

ま ず

そし

て︑

ここでは︑窃盗罪

そこに法条競合の本質をさぐろうとする見解が

De

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2 6 .  

A u f l

. ,  

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3 2

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S t

W .

,   B

d .

  5 3 ,  

1 9 3 4

S . ,  

  3 8

.  

法条競合では︑構成要件相互の関係ないし刑罰法規相互の関係が重視されることから︑端的に︑構成要件ない

し刑罰法規そのものを抽象的に比較してその形式的関係を見出し︑

(1 ) 

ある

(2 ) 

ベーリングは︑法条競合と観念的競合の問題を︑刑罰法規相互の関係として論じており︑両者の区別のため

に︑類型相互の関係から出発する︒そして︑論理的に可能な類型相互の関係として︑排他関係ないし対立関係

( V e r

h a l t n i s   d e r   E x k l u s i v i t a t   o d e r   Gegensatzlichkeit)、結品別曲〖倖5(Verhaltnis

d e r   S p e z i a l i t a t )

︑中上止曲四保

( V e r h a l t n i s

(4 ) 

という三つの関係が示されている︒

すなわち︑排他関係ないし対立関係とは︑﹁ある類型の肯定が︑同時に必然的に︑他の類型の否定を意味し︑その逆

( 5 )  

もいえる﹂場合であり︑生と死の概念関係のように︑類型間に対立の存する場合である︒

( 6 )  

と横領罪の関係が例示されている︒このような類型の排他性によって︑

ものとなり︑従って︑この場合競合問題はそもそも生ぜず︑結局︑類型の排他性は刑罰法規の択一性

( A l t e r n a t i v i t a t )

を生ぜしめるとされている︒これに対して︑特別関係とは︑﹁ある類型の肯定が︑同時に必然的に︑他の類型の肯定を

上位概念と下位概念の関係において︑狭い概念・下位概念が︑広い概

2 ‑ 2‑191 (香法'83)

(4)

ベーリングは︑以上のように類型相互の関係を分析するのであるが︑法条競合も観念的競合も︑

場合であるとするので︑さらに両者の区別が問題となる︒この点についてベーリングは︑単に刑罰のみでなく︑類型

( 1 6 )  

自体も考慮されない場合︑すなわち︑﹁刑罰法規自体が全体として補充的である﹂場合が法条競合であり︑刑罰のみが

排除される場合︑すなわち︑構成要件的には二重に評価され︑両方の類型に支配されるが︑刑罰のみが補充的な場合

( 1 7 )  

が観念的競合であるとする︒しかし︑このようにいっても︑如何なる場合に類型自体が補充的であり︑如何なる場合

に刑罰のみが補充的であるかは︑依然として不明確である︒この点さらにベーリングは︑﹁補充性において一方の類型

( 1 8 )  

が無視されるということは︑他方の類型の観点での可罰性は︑正義にとってすでに十分であるということである﹂と

する︒すなわち︑類型自体が補充的であるかどうかは︑正義の要請が満たされるかどうかにかかっていると考えられ 性

( S

u b

s i

d i

a r

i t

a t

)

らすべての場合に︑

いずれも補充性の 念・上位概念を排除する場合︑すなわち︑﹁下位概念の肯定が︑同時に必然的に︑上位概念の肯定であるが︑その逆は

(8 )

9

) 

成立しない﹂場合である︒そして︑ここでは︑加重

11

減軽構成要件と単純な類型との関係が例示されている︒また︑

類型の特別関係によって︑下位類型の刑罰に対する上位類型の刑罰の補充性

( S

u b

s i

d i

a r

i t

a t

)

が導かれ︑下位類型の

( 1 0 )  

刑罰が問題とならないときにのみ上位類型の刑罰が適用されるといわれる︒さらに︑中立関係とは︑﹁ある類型の肯定

( 1 1 )  

が︑他の類型の肯定にも否定にもならない﹂場合である︒この場合︑類型は相互につながりがなく︑それらは対立す

( 1 2 )  

る関係にも並存する関係にも立たず︑類型はそれぞれ別物であるが対立はしないとされる︒そして︑ここでは︑器物

( 1 3 )  

損壊罪と傷害罪︑侮辱罪と脅迫罪との関係が例示されている︒ところが︑このような中立関係においても︑一個の刑

( 1 4 )  

罰のみが適用されるのであるが︑ここには法条競合の場合と観念的競合の場合の両者があるとされる︒しかも︑

一方の刑罰が補充的であるとされ︑従って︑法条競合の場合のみならず観念的競合の場合も補充

( 1 5 )  

の場合であるとされるのである︒

これ

2 ‑2 ‑192 (香法'83)

(5)

そも

そも

ベーリングの発想の独自性は︑類型相互の関係から︑刑罰法規相互の関係としての法条競合と観念的競

合を論じようとする所にあると思われるが︑排他関係ないし対立関係︑特別関係︑中立関係という類型相互の関係の

分析と︑法条競合と観念的競合との区別の問題との間に︑直接的な関連性が見出されているとはいいがたい︒そのこ

とは︑特に︑中立関係において顕著に現われている︒

合論は︑観念的競合との区別において︑不明確な部分が多い︒

とこ

ろで

U

・クルークも︑法条競合において構成要件相互の関係を重視し︑その本質を︑概念関係の分析によっ

て明らかにしようとする︒そして︑

U

・クルークは︑概念相互間に考えうる関係として︑異質

( H e t

e r o g

e n i t

a t ,

G e

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  , 

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) ︑

同一

( I d e

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̀ 

D

e c

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) ︑包摂

( S

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̀ 

E i

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l i e B

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o n )

︑ 六

又 差

( I n t

e r f e

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,

( 2 0 )  

O b

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s c

h n

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d u

n g

̀ 

 

K r

e u

z u

n g

)

という四つの関係をあげる︒

すなわち︑﹁異質﹂とは︑﹁概念Aに属する事柄は︑決して概念

B

に属さず︑その逆もいえる場合﹂であり︑窃盗罪

(§ 24 2 

S t

G B

)

と横

領罪

︵会

246

S t

G B

)

の構成要件の如く︑いかなる行為も同時に両方の構成要件には当てはまらない

( 2 1 )  

場合である︒それに対して︑﹁同一﹂とは︑﹁概念

A

に属するすべての事柄が︑概念

B

にも属し︑その逆もいえる場合﹂

であり︑これは︱つの刑法体系内では生じないが︑国際刑法などでは生じうるとされる︒また︑﹁包摂﹂とは︑﹁概

念Aに属するすべての事柄が︑概念

B

にも属するが︑その逆は成立しない場合﹂であり︑謀殺罪

( M

o r

d )

(§ 21 1 

S t

G B

)  

と故殺罪

( T

o t

s c

h l

a g

)

(§ 21 2 

S t

G B

)

との関係が例示され︑この場合︑謀殺概念に当てはまるすべての行為は︑同時

( 2 3 )  

に故殺概念にも当てはまるが︑その逆はいえないとされる︒さらに︑﹁交差﹂とは︑﹁概念

A

に属する少なくとも一っ ているようである︒しかし︑

( 1 9 )  

明らかであろう︒

いず

れに

して

も︑

ベーリングの前記のような発想による法条競 このような抽象的な基準では︑法条競合と観念的競合の区別はつきえないということは

2 ‑ 2‑193 (香法'83)

(6)

の事柄は︑概念Bにも属するが︑概念Aに属するものでも少なくとも︱つの事柄は︑同時に概念Bには属さない︒し

( 2 4 )  

かも︑概念Bに属する事柄についても︑概念Aとの関係で同じことがいえる﹂場合である︒そして︑﹁異質﹂でも︑﹁同

一﹂でも︑﹁包摂﹂でもない構成要件は︑必然的に﹁交差﹂した構成要件であり︑詐欺罪(§263

St GB )

と偽りの宣誓

( 2 5 )  

の罪

(§154

St GB )

の構成要件相互の関係が例示される︒

このように概念関係を分析した上で︑U・クルークは︑法条競合の事例として挙げられる︑特別関係︑補充関係︑

( 2 6 )  

吸収関係︑択一関係の各場合において︑どのような概念関係を有する場合が念頭におかれているかを検討した後で︑

︱つの実体法体系の中で︑同一の構成要件を規定するのは無意味であることから︑

﹁同一﹂という概念関係は︑ここでは排除されるべきであり︑結局︑刑法上の構成要件は︑相互に︑﹁交差﹂.﹁包摂﹂.

( 2 7 )  

﹁異質﹂という関係に立つことが可能である︒また︑一方では︑﹁異質﹂という概念関係は︑当該構成要件間に競合は

( 2 8 )  

生じえないことを意味しているので︑この関係は法条競合の場合には考えられず︑結局︑法条競合の概念論理的構造

( 2 9 )  

の可能性としては︑﹁交差﹂と﹁包摂﹂のみが残ることになる︒そして︑ここから︑法条競合としては︑原則としてニ

つの種類のもののみが認められ︑それは︑構成要件の﹁包摂﹂の場合である特別関係と︑構成要件の

( 3 0 )  

である補充関係であるとされている︒しかも︑U・クルークによると︑択一関係︑吸収関係という概念は︑

( 3 1 )  

法条競合の形式としては無用であるとされるのである︒

上述

のよ

うに

﹁交差﹂の場合

U・クルークは︑法条競合の本質を︑構成要件の概念論理的分析によって見出そうとし︑しかも︑

場合であることから︑ それによって法条競合の現象形式を限定しようとしたのである︒そして︑法条競合の本質を考える場合︑構成要件相互の概念論理的分析が重要な視点となること自体は否定できないであろうし︑法条競合は数個の構成要件に該当する

それは構成要件相互間に﹁包摂﹂又は﹁交差﹂の関係がある場合にしか認められないという指 次のような結論を導く︒すなわち︑

r. 

いずれも

2 ‑ 2‑194 (香法'83)

(7)

摘は︑正当であろう︒しかし︑このような関係にある構成要件は︑すべての場合に法条競合となるとは限らない︒こ

のこ

とは

U

・クルーク自身も自覚するところであり︑﹁交差﹂という概念論理的関係にあるものは︑観念的競合にも

( 3 2 )  

なりうることを認めているのである︒それにもかかわらず︑この場合の法条競合と観念的競合の区別について︑明確

な基準は提示されていない︒ただ︑

U

・クルークは︑概念論理的分析という方法のみでは不十分であり︑それ以上に︑

( 3 3 )  

目的論的観点も考慮されなければならないと指摘するに止まっている︒このように︑

U

・クルークにおいても︑構成

要件の概念論理的分析は︑法条競合と観念的競合との区別の問題に︑直接結びつくものとは考えられておらず︑それ

故に︑その法条競合論も︑観念的競合との区別において︑不明確な部分を露呈する結果となっている︒

なお︑我国においても︑小野博士は︑構成要件の諸要素を分析することによって︑構成要件の形態的類型性の有無

に着目し︑そこから法条競合と観念的競合の区別を論じようとされている︒すなわち︑﹁行為が自然的又は社会的行為

として一個のものであっても︑それが形態的類型を異にする二つの構成要件に該当する場合に︑いわゆる観念的競合

( 3 4 )  

であって︑⁝形態的に類型を同じくする二つの構成要件に該当する場合は︑いわゆる法条競合である﹂とされるの

である︒これは︑形態的類型性を媒介として︑構成要件相互の関係をとらえ︑そこに法条競合の本質を見出そうとさ

れたものということができよう︒しかし︑このような考え方に対しては︑同種類の観念的競合と同種類の実在的競合

( 3 5 )  

の数罪性が否定されることになるという批判のあることは︑前にも述べた通りである︒小野博士のいわれるように︑

構成要件相互間には︑形態的類型を同じくするものがあるのは確かであるが︑形態的類型を同じくする構成要件は︑

( 3 6 )  

すべての場合に法条競合となるとは限らず︑ここでも︑構成要件の形態的類型論と︑法条競合と観念的競合との区別

( 3 7 )  

の問題とが︑直結したものとは考えられないということができる︒

以上の検討から︑法条競合においては︑構成要件相互の関係ないし刑罰法規相互の関係が重視されるとしても︑構

2 ‑ 2 ‑195 (香法'83)

(8)

( 1 4 )  

( 1 3 )  

( 1 2 )

  ( 1 1 )  

( 8 )  

( 7 )  

( 6 )  

( 5 )  

( 4 )  

( 3 )  

( 2 )  

B e l i

n g ,  

a . a .

O   ••

S.  3 06 . 

B e l i

n g ,  

a . a .

O   ••

S.

 2

85 . 

B e l i

n g ,  

a . a .

0   •.

S.  2 85 . 

B e l i

n g ,  

a . a . O . ,  

S.  2 85 . 

( 1 0 )

l i n g

a . ,

a . O   ••

S .  

30 5.  

( 9 )

l i n g

a . ,

a . 0   •.

S.

 284 

B e l i

n g ,  

a . a .

O   ••

S.  2 83 f.  

B e l i

n g ,  

a

. O

  ••

S.  3 05 . 

B e l i

n g ,  

a . a .

O   ••

S.

 282 

B e l i

n g ,  

a . a .

O   ••

S.

 282 

B e l i

n g ,  

a . a .

O   ••

S.  2 82 ff . 

a . a . 0 . ,  

S.  1 1 0 .  

B e l i

n g ,  

a . a .

O   ••

S.

 304 

B e l i

n g ,  

a . a .

O   •.

S.

 303 

( 1 )

山火教授は︑ うとする方法によると︑

なお︑周知のようにベーリングは︑ 成要件ないし刑罰法規自体を抽象的に比較してその形式的関係を見出し︑

少なくとも︑

観念的競合との区別がつかなくなってしまうということがわかる︒

このような考え方を形式的法条競合論とよぶ︒山火・前掲論文四頁︒

この時点では構成要件を犯罪類型の輪郭と定義づけている︒

B e l i

n g ,  

それのみによって法条競合の本質をさぐろ

2‑2‑196 (香法'83)

(9)

( 2 6 )

特別関係としては︑例えば︑加重窃盗既遂罪と単純窃盗既遂罪︑強盗罪と窃盗罪ないし強要罪の関係があげられ︑

( 2 5

)   ( 2 4 )  

( 2 3 )

 

( 2 2 )

 

( 2 1 )

  ( 2 0 )  

これも﹁交差﹂の場合とされている︒それに対して︑ の場合であるとされる︒また︑補充関係として︑自動販売機の濫用ないし不正手段での入場の罪

(§ 26 5

St

GB

)

と詐欺罪

(§ 26 3

St

GB

)

との関係が例示され︑ここでは︑﹁交差﹂の関係があるとされる︒さらに︑吸収関係では︑侵入窃盗罪

(§ 24

N r 3

.  

St

GB

) 

と住居侵入罪

(§ 12

S3

tG

B)

ないし器物損壊罪

(§ 30

S3

tG

B)

択一関係は︑論者によって定義がまちまちであり︑それを︑リスト11シュミットのように窃盗罪と横領罪のような

E n t w e d e r , 2   l e r  

の関係ととらえるなら︑

. ,  

S .   4 05 ff . 

U .  

K l

u g

,  

a . a . O . ,  

S.   4 05 . 

U .   K

l u

g ,

a .  

a . 0   ••

S.  4 04 f.  

U .   K

l u

g ,

a .   a . 0   . .  

S.  4 04 . 

U .   K

l u

g ,

a .  

a . 0   ••

S.   4

04 

U .   K

l u

g ,

a .  

a . O   ••

S.   4

03 f.  

U .   K

l u

g ,

a .  

a . O   •.

S.  4 03 ff . 

( 1 9 )

山火・前掲論文九頁参照︒

( 1 8 )

l i n g

a . , a . O   . .  

S.  3 08 . 

( 1 7 )

l i n g

a . , a . O   . .  

S.   3 07 . 

( 1 6 )

l i n g

a . ,

a . O   •.

S.  3 06 . 

( 1 5 )

l i n g

a . ,

a . O   •.

S.  3 06 . 

そこには﹁異質﹂の関係があるが︑その他の定義によると︑﹁包摂﹂の場合もあるとする︒

U .

K l

u g

,  

a . a .  

2 ‑ 2 ‑197 (香法'83)

(10)

( 3 7 )

され︑罪質の同一性という基準を提示されてもいる   さらに︑小野博士は︑﹁法条競合とは︑ 尊属と他人とを殺害したときは︑観念的競合である︒

( 3 4 )

小野清一郎・犯罪構成要件の理論︵昭和二八年︶

(33)U•

K l u g a . ,  

a . O   •.

S .  

41 5.  

(32)U•

K l u g a . ,  

a . O   •.

S .  

414  (28)法条競合は、少なくとも構成要件相互に「交差」の関係がなければならないとされる。U•

K l u g ,   a . a . O . S .   ,  

40 9f . 

( 3 1 )

択一関係とされるもののうち︑﹁包摂﹂の関係にあるものは︑立法の欠陥を示している場合であり︑択一関係は︑リスト

1 1

ットのように﹁異質﹂の関係ととらえるべきであるが︑

一方の適用によって他方の適用が排除される場合﹂と

一三頁︑山火・前掲論文︱︱頁︒ それは法条競合の場合ではないとされる︒また︑吸収関係とされるものは︑

ほとんどの場合補充関係の一種と考えることができ︑吸収関係という概念自体もむだなものであるとされている︒

U . K l u g a . ,   a . O . ,  

S.  4 14 ff . 

( 3 5 )

村崎精一.﹁刑法における法条競合論﹂金沢大学法文学部論集法学篇14

( 3 6 )

小野博士は︑例えば︑殺人罪と尊属殺人罪とを形態的類型を同じくする構成要件とされるが︑この場合でも︑

成要件が本来その罪質を同じくするもので︑二つとも適用する必要はなく︑

いう概念自体も不明確であり︑また︑そのような基準を追加したとしても︑法条競合と観念的競合との区別が可能となるとは思わ

(30)U•

K l u g a . ,   a . O ・

・ S .  

414 

(29)U•

K l u g a . ,  

a . O   •.

S .  

412 

(27)U•

K l u g a . ,  

a . O   •.

S .  

41 2.  

一個の行為で自己の

一個の行為的事実に対して二個の構成要件を適用し得るかの如くであるが︑

︵小野清一郎・刑法概論︵昭和二七年︶二0七頁︶︒しかし︑罪質の同一性と

1 0

その二個の構

 

2 ‑ 2 ‑198 (香法'83)

(11)

一個の刑罰権しか発生しないことを︑結局︑他の法律が実質的意味に

おいて侵害されていないということによって説明しようとしている︒しかし︑法条競合の場合︑数個の構成要件該当 このように︑ゲールズは︑法条競合の場合︑ れない︒また︑小野博士は︑﹁観念的競合と法条競合とを分つことは︑其の道義的意味の単複に依るものであり︑道義的意味の同一なる場合には法条競合であり︑道義的意味を異にする場合が観念的競合である﹂とされ︑道義的意味の単複にも着目されている︵小野・前掲理論四0二頁︶︒しかし︑基準として不明確であることに変わりはない︒なお︑山火・前掲論文一三頁以下参照︒

法条競合の本質について︑単に構成要件ないし刑罰法規自体の抽象的・形式的関係のみに着目するのでなく︑

それ以外に何らかの実質的意義を見出そうとする見解も多い︒

まず︑ゲールズは︑法条競合の場合︑形式的には数個の構成要件の実現があるということから出発し︑さらにこれ

らの構成要件が︑真に数個の刑罰権

( S t r

a f b e

r e c h

t i g u

n g )

を具現するか︑又は︑それは外見上のものにすぎないかを

(2 ) 

問題とする︒そして︑この刑罰権にとっては︑刑罰法規の意味が決定的に重要であり︑﹁刑罰の枠

( S

t r

a f

r a

h m

e n

)

一個又は数個の刑罰法規の意味であるとよって刑法的制裁の可能性を限界づけ︑量刑のよりどころを与えることが︑

すると︑刑罰の枠は︑その構成要件に当たる態度がとにかく観念的にのみ持ちうる不法内容に対応する﹂とし︑﹁一っ

の刑罰法規が事件の不法内容を完全にくみつくすなら︑処罰において他の構成要件を考慮することは︑むだであるば

かりでなく︑許されない︒なぜなら︑他の構成要件に対応する不法内容は︑当該法規の刑罰の枠によって完全に包含

( 3 )  

されているからである﹂とする︒この意味において︑法条競合は︑一個の法律のみが真に刑罰権を含んでいる場合で

あり︑﹁刑罰権を含んでいない法律は︑単に適用されないのみならず︑そもそも実質的意味において侵害されていない﹂

( 4 )  

とされるのである︒

2‑2‑199 (香法'83)

(12)

( 5 )  

性があるのであり︑これは︑実質的意味においても数個の法律侵害があることを意味しているのではなかろうか︒そ

( 6 )  

れはさておき︑ゲールズは︑法条競合の本質を︑一方の構成要件の予定する不法内容が︑他方の構成要件の予定する

不法内容を包含していることに求めているのである︒しかも︑刑罰の枠がその不法内容に対応するものとされている

(7 ) 

ので︑法条競合は︑法定刑の重い方が︑法定刑の軽い方を包含する場合に認められることになるであろう︒しかし︑

このように考えると︑いわゆる減軽的特別関係の場合は︑法条競合とはなりえないことになるのではないか︒なぜな

ら︑この場合︑法定刑の軽い方は重い方の不法内容を包含しえないにもかかわらず︑法定刑の軽い方が適用されるか

( 8 )  

らである︒後述するように︑減軽的特別関係の場合も︑法条競合となりうるものであり︑このような場合を考えると︑

法条競合の本質を︑ゲールズのいうような不法内容の包含ととらえることは︑妥当とはいえないであろう︒

ところで︑ゲールズ以外にも︑法条競合の特徴を示すに当たって︑行為の不法内容を問題とする見解は多い︒すな

わち︑バウマンは︑法条競合を︑﹁数個の構成要件に当たるけれども︑不法内容の把握には︑

( 9 )  

ある

場合

﹂と

し︑

マウラッハ

1 1ゲッセル

11

ツイプフは︑﹁一個の行為が︑それ自体数個の構成要件に従って判断されう

( 1 0 )  

るが︑行為の不法内容を完全にくみつくすには︑これらの構成要件のうちの一個のみで︑すでに十分である場合﹂と

する

︒ま

た︑

件が

一個の構成要件で十分で

メスルも︑﹁法条競合は︑行為が数個の刑罰法規の構成要件を同時に充足しているが︑

( 1 1 )

1 2

)  

その不法内容を完全にくみつくしているということを前提とする﹂と述べている︒しかし︑ここで問題とされ

ている不法内容は︑如何なる意味のものであるかが明らかでない︒すなわち︑この不法内容は︑ゲールズと同じく︑

きる

し︑

一個の刑罰構成要

構成要件的行為が観念的にのみもちうる不法内容︑換言すれば︑構成要件に類型化された不法内容の意味とも理解で

そうではなく︑現実に行われた犯罪事実の具体的不法内容の意味にも解しうるからである︒そして︑もし︑

前者の意味で理解するなら︑軽い不法内容のものは︑重い不法内容のものを完全にくみつくすことはできないので︑

2‑2‑200 (香法'83)

(13)

なお︑我国においては︑村崎博士が︑法条競合に関して違法内容を問題とされている︒すなわち︑村崎博士による

( 1 3 )  

と︑﹁一罪と数罪を分つ統一的な指標は︑犯罪事実における﹃違法内容の一区切り﹄に求められる﹂とされ︑法条競合

において違法内容の質的同一性が認められ︑異種類の観念的競合と異種類の実在的競合において違法内容の質的同一

性が否定されるとされている︒しかし︑ここでいわれている違法内容の質的同一性という概念自体明確なものとはい

えない︒もっとも︑村崎博士は︑﹁特別関係においても︑数個の可罰的構成要件が現に相互に充足されているにもかか

わらず︑科刑を合理的ならしめるという観点からは︑一個の構成要件の充足評価が他の構成要件の違法内容の評価を

( 1 5 )  

つくして包摂しているがゆえに︑別々に数える必要が認められないだけのことである﹂とされており︑ここでは︑違

法内容の質的同一性とは︑違法内容の包摂を意味していると解せられる︒とすると︑村崎博士の見解は︑前述のドイ

ツで主張されている見解と同趣旨のものであるということができる︒そしてまた︑

( 1 6 )  

することとなるであろう︒

さらに︑法条競合の本質把握において︑不法内容のみならず︑責任内容をも考慮する見解もある︒すなわち︑イェ

シェックは︑法条競合の場合︑﹁一個の可罰行為の不法内容及び責任内容が︑当該刑罰法規の一っによって︑すでにく

( 1 7 )

1 8 )  

みつくされたものとみなされる﹂とし︑フォークラーも同趣旨のことを述べている︒また︑ 妥当とはいえない︒ まることである︒いずれにしても︑法条競合の本質を︑ 減軽的特別関係の場合を法条競合としてとらえることができなくなるという︑ゲールズに対すると同じ批判が当てはまることになるであろう︒また︑もし︑後者の意味であるとすると︑

ルド

ルフ

・シ

ュミ

ット

も︑

一個の構成要件が行為の不法内容を完全にくみ

つくしているということは︑単に法条競合にのみいえることではなく︑包括一罪をも含んだ本来的一罪全体に当ては

一個の構成要件による行為の不法内容の把握と考えることは︑

そこであげた批判もそのまま妥当

2‑2‑201 (香法'83)

(14)

ゲールズが不法内容のみに着眼するのを批判して︑﹁不法内容以外にも︑刑罰構成要件に類型化された責任内容及び危

( 1 9 )  

険性の内容も考慮されなければならない﹂とする︒しかし︑法条競合の本質を考えるとき︑不法内容以外に責任内容 をも考慮するということは︑如何なる意味をもつのか明らかではない︒少なくとも︑前述の不法内容のみに着眼する

見解に対して出された疑問点は︑それによって解消するものとはいえないであろう︒

一 方

ケーラーは︑法条競合と観念的競合との区別を︑責任の問題として論じている︒すなわち︑ケーラーは︑

ず︑﹁行為者が︑自己の行為の結果を︑複数の観点から違法なものとして表象しなければならなかったとき︑

数個の法的命令によって彼の行為が禁止されるべきであったとき︑端的にいうと︑彼に︑真に存在する数個の責任を

( 2 0 )  

負わせうるときにのみ︑立法者は犯罪の多数性を認めた﹂とする︒そして︑法条競合と観念的競合との区別について

は︑﹁数個の法的構成要件が同時に適用可能なとき︑生じうる数個の法的な結果が︑自己の行為を思い止まらせるべき

数個の法的な結果の表象︵動機︶をも行為者にひきおこさなければならない場合にのみ︑観念的競合が認められる︒

換言すると︑同時に形式的に侵害された法的構成要件が数個あるとき︑数個の責任表象

( S c h u l d v o r s t e l l u n g )

がひき

( 2 1 )  

おこされなければならなかったときに︑観念的競合となる﹂とされている︒従って︑法条競合は︑単に一個の責任表 象がひきおこされるべき場合ということになる︒しかし︑ここでいわれるような︑行為者にひきおこされるべき責任

( 2 2 )  

表象は︑如何にして数えられるのであろうか︒もし︑それが︑法的命令によってひきおこされるべきものとするなら ば︑責任を問題にする以前に︑法的命令自体の性質を問題にすべきではなかろうか︒ともかく︑法条競合と観念的競

( 2 3 )  

合とを︑責任の段階でのみ区別しようとするのは困難であると思われる︒

また︑西村教授は︑法条競合の本質に関して︑故意の充足という視点を加えて考察されている︒すなわち︑特別関

係の場合︑例えば︑自衛隊法第︱ニ︱条にいう防衛供用器物損壊罪と刑法第二六一条の器物損壊罪について︑﹁ここで

一 四

つま

り︑ ま

2‑2 ‑202 (香法'83)

(15)

解も︑妥当なものとはなりえない︒

一 五

は︑形式論理的には︑防衛供用器物損壊という概念は︑器物損壊という概念を包摂しているにもかかわらず︑法の適

••••••••

用上は︑後者は排除されている形になる︒行為者としては︑当該防衛供用器物損壊罪のほかに︑おなじ客体に対して︑

( 2 4 )  

••••

具体的な器物損壊罪の故意を有しえない場合である﹂とされる︒また︑嘱託殺人罪と通常殺人罪とに関しても︑﹁ある

客体に対して嘱託殺人罪を実行した者には︑おなじ被殺者に対して︑ほかに通常殺人罪の故意もなければ︑行為もな

( 2 5 )  

く︑したがって︑嘱託殺人罪のほかに通常殺人罪の成立する余地はない﹂ともいわれている︒このような意味におい

て︑西村教授は︑法条競合の問題を︑構成要件の充足とか︑概念論理分析以外に︑﹁具体的な状況の下で具体的な犯罪

( 2 6 )  

の故意が充足されているかどうか﹂という視点を加えることを主張されるのである︒しかし︑例えば︑防衛供用器物

損壊という概念が︑器物損壊という概念を包摂しているということは︑前者の故意があれば後者の故意も当然存在す

るということを意味しているのではないか︒西村教授が︑両概念の間に包摂の関係のあることを認めながら︑前者の

故意があれば後者の故意はありえないとされるのは︑理解できない︒この点に関連して︑西村教授は︑﹁私のいう故意

の充足とは︑単なる心理的事実にとどまるものではない︒ある罪について行為者が罪責をになうに足る要件として︑

具体的な社会的意味をもった事実を指しているのである﹂とされ︑小野博士の道義的意味の単複を論ずる見解に接近

するものとされる︒しかし︑このようにいっても︑故意の充足に関する前述の疑問は解消しない︒そもそも︑法条競

合の場合も︑犯罪成立要件をみたした数個の法律侵害が問題となるのであり︑そこでは︑当然︑数個の構成要件の故

( 2 8 )  

意は充足されていることが前提となっている︒この点において︑西村教授の法条競合論は批判されるべきである︒

結局︑法条競合の本質について︑何らかの実質的意義を見出そうとして︑違法内容あるいは責任内容に着目する見

2 ‑ 2 ‑203 (香法'83)

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