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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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博 士 ( 地 球 環 境 科 学 ) 高 田 修 治

    学位論文題名

Detection and cloning of X‑linked locus that escapes     DNA methylation by the RLGs‑rvi method・

(RLGS‑M法によるDNAメチル化を免れるX連鎖座位の検出とクローニング)

学位論文内容の要旨

  X染色体上には細胞の機能や個体の生存のために必須な遺伝子が多数存在するにもかか わらず、哺乳類の雌と雄の間にはその数にニ倍の差がある。このため、雌では2本のX染 色体の―方が不活性化されることにより雌雄間の〉漣鎖遺伝子量が補正されるが、X染色体 とY染色体の相同部分である偽常染色体領域は例外で、不活性化は及ばない。偽常染色体 領域はヒトでは〉(染色体短腕の遠位側とY染色体短腕の遠位側、マウスではX染色体の遠位 側とY染色体長腕の遠位側にそれぞれ存在する。X染色体の不活性化は発生の初期に起こ り、どちらのX染色体が選ばれるかは細胞によってランダムに決まる。ヒ卜ではX染色体 の偽常染色体領域外にも不活性化を免れる遺伝子がいくっか報告されているが、マウスで はそれらの相同遺伝子のうちXeア69/Sm cx, Utx,8 IF‑y以外のほとんどは不活性化を受け ている。

  X連鎖遺伝子でCpG島をもっものは、その発現とCpG島のメチル化に相関がみられる。

すなわち、活性アレルはメチル化を受けておらず、不活性アレルはメチル化を受けてい る。X染色体の不活性化を免れる機構はほとんど分かっていないが、マウスのX染色体は ヒ卜のX染色体よりもより完全に不活性化しているため、マウスの不活性化を免れる遺伝 子の同定は不活性化の機構を解析する手掛かりとなる可能性がある。そこで、本研究では

〉(染色体の不活性化を免れる遺伝子の同定を目的に、すべてのX染色体が単一の起源をも つ 〉 欧 、XO、XYマ ウ ス を 作 成 し 、 そ の ゲ ノ ム 上 の メ チ ル 化 の 違 い をRLGS‑M法

(Restriction landmark genomic scanning using methylation‑sensitive endonuclease method)によ り探索した 。RLGS‑M法はメチ ル感受性制 酵素を用い 、そ の制限部位を放射性同位元素で標識するため、ゲノム上のメチル化されていない制限部位 はDNAの二次元電気泳動によルスボットとして検出する。また、そのスポッ卜の強度は アレルの数に比例する。X染色体の不活性化を免れる遺伝子のCpG島はDNAのメチル化を 免れているものと考えられるため、〉cく、XO、XYマウスにおいてそのような遺伝子に相当 す る ス ポ ッ 卜 の 強 度 は そ れ ぞ れ 1、0.5、 0.5に な る も の と 推 測 さ れ る 。   メチル感受 性制酵素としてNotlを用いてXX、XO、XYマウスをRLGS‑M法で解析したと ころ、8っの候補 座位を検出した。その1っをク口ーニング後、周辺を含むコスミドク 口一ンを単離し部分塩基配列を決定した。RLGS‑Mで検出した座位はCpG島内にあり、そ の近傍には3っの マウスのEST (expressed sequence tag)に相同性のある配列が見い

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だされた。RTーPCRによりこの3っのESTは2っの転写単位をコ―ドしていることが確認 された。両転写単位の塩基配列はともにヒトEXLM1に有意な相同性が認められたため、

Exlmla, Exlmlbと名付けた。ヒ卜EXLM1遺伝子はX染色体の不活性化を免れるものとし て、RLGSーM法により最近同定されたものである。アミノ酸配列を推定し比較したとこ ろ、Exlmlbはヒ 卜EXLM1全体 と類 似して いた が、ExlmlaはヒトEXLM1のN末端側にの み相同性があった。ExlmlaのヒトEXLM1と相同性のない部分は齧歯類にのみ存在する 82繰り返し配列であった。B2配列はORFの31側と3'UTRに及んでおり、ポリA付加配列 はB2に由来するものであった。マウスExlmla、bに存在するヒトEXLM1相同性領域の塩 基配列を比較すると完全に一致し、この領域はサザンハイブリダイゼーションによルマウ スのゲノム中の1座位にしか存在しないことから、両者は選択的RNAスプライシングに より1つの遺伝子Ex!mアから発現されたものであると考えられた。また、日本産野生マウ ス由来の近交系統であるMSM(Mus rT7USCUIUS rnoloss,nus)と実験用マウスC3H/He(M /,domesticus)の戻し交配によって得た55頭のマウスを用いて連鎖解析を行い、X染 色体の近位側領域にマッブした。この領域はヒトのEXLMア遺伝子付近とsyntenicであっ た。以上のことからマウスExlmア遺伝子はヒ卜EXLM1遺伝子の相同遺伝子であると考え られる。

  Ex/m7遺伝子の発現はX染色体と16番染色体の相互転座であるSearle転座を持つマウ スを用いてRT‑PCR法により解析した。Searle転座を持つ雌マウスでは、正常X染色体 が必ず不活性化しているため、ゲノムに多型が存在すればExlmアがどのX染色体から発現 しているか知ることができる。そのため、日本産愛玩マウス由来の近交系JF1マウスの正 常X染色 体と 転座X染色体を同時に持つマウスを作成して検討したところ、Exlmla、 Exlmlb共に活性X染色体のみから転写されており、Exlmア遺伝子は不活性化を受けるこ とが明らかになった。マウスExlm7遺伝子のゲノム構造を解析するため、コスミドク

□一ンの塩基配列を決定した。Exlmlaを含むゲノム配列は18.5 kbあり、11個のエキソ ンからなっていた。B2配列は最後のエキソンに存在し、スプライシングによりExlmla に取り込まれたものと考えられる。プライマ一伸長法で転写開始点を解析したところ、

RLGS‑M法で検出したNotl制限部位を含むCpG島中の数個所から転写の開始が認められ た。

  マ ウスExlm7のcDNAと ヒ トEXLM1のcDNAはORFだ け で な く5IUTRに も相 同性 が見 られたが、マウスでは不活性化を受け、ヒ卜では不活性化を免れる。また、ヒトEXLM1 遺伝子でもマウスExlm7遺伝子と同様に5|UTRがGCに富んでいるため、転写開始部位が GpG島にあると考えられる。ヒトEXLMア遺伝子の構造とメチル化状態は今のところ不明 であるが、マウスExlmア遺伝子との比較により、不活性X染色体上の遺伝子が活性である か、不活性となるかを決定する塩基配列の同定が期待される。

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学位論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査

教授 教授 助教授 助教授

高木信夫 吉田廸弘 瀧谷重治 鈴木   仁

     学位論文題名

Detection and cloning of X‑linked locus that escapes     DNA methylation by the RLGS‑M method .

(RLGS‑M法によるDNAメチル化を免れるX連鎖座位の検出とクローニング)

  一般に、遺伝子量のバランスは生物にとって極めて重要な意味を持っている。最も 良く知られているヒトやマウスの例を挙げるならば、常染色体のモノソミーは着床前 に失われ、トリソミー個体は流死産や出産直後の死を引き起こす重大な影響を与え る 。し かし 、X染色 体は 例外で 、雌 で2本、 雄で1本 と2倍の差があるにも関わら ず、不都合は生じていない。性染色体とはいっても、X染色体には常染色体同様、細 胞の機能や個体の生存のために必須な遺伝子が多数存在する。哺乳類では、このため 雌の2本のX染色体の一方を不活性化することにより、雌雄間に存在する二倍のX連鎖 遺伝子量差を補正している。ただし、X染色体とY染色体の相同領域である偽常染色体 領域は例外で、不活性化はこの領域には及ばない。偽常染色体領域以外にも、ヒトで は不活性化を免れる遺伝子が多数知られているが、マウスではそれらの相同遺伝子は ほとんどが不活性化を受けており、マウスで不活性化を免れる遺伝子として知られて いるものは極めて少なぃ。不活性化センターで始まった不活性化は染色体の両端に向 かって広がり、一旦不活性化が終了するとその状態は安定に保たれ、体細胞分裂をく り返しても活性化することはないとされている。従って、不活性X染色体上に散在す る不活性化を免れる遺伝子は不活性化の機構を解明するためだけではなく、不活性化 現象の進化とぃう観点からも興味ある検討対象である。本論文はマウスの不活性X染 色体上で不活性化を免れる遺伝子をRLGS法によって検索し、あわよくば不活性化に働 く遺伝子の検出を試みたものである。結果的には不活性化関連遺伝子の同定には至ら なかったが、興味ある遺伝子のクローニングに成功した。

  CpG島をもつX連鎖遺伝子ではその発現とCpG島のメチル化に相関が見られる。不活 性アレルではメチル化され、活性アレルではメチ渺化されていない。そこで、本研究

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で はX染 色体 の 不活性 化を免れ る遺伝子 を探索す るために 、兄妹交 配を30代くり 返し XO系 統 の マウ スを利 用し、単 一起源のX染色体を 持つXX,XOXY個体のゲ ノム上の メ チ ル イ ヒ の 違kゝ をRLGS‑M(Restriction Landmark Genomic Scanning using methylation‑snsitive endonuclease method)により解析した。RLGS‑M法はメチルイ匕感受 性制 限酵素を 用い、そ の切断部 位を放射 性同位元素 で標識す るため、 ゲノム上のメチ ル 化 され て い ない 制 限部 位 はDNAの 二 次元 電 気 泳動 に よル ス ポ ット と し て検出 でき る 。 また 、 ス ポット の強度は アレルの 数に比例 する。不 活性化を 免れる遺伝 子のCpG 島 はDNAの メ チ ル化を免 れている と考えら れるので 、XX,XO.XYマ ウスでは その様な 遺 伝 子に 相 当 するス ポットの 強度はそ れぞれ10.5,0.5になる ものと推 定される。

  メチ ル 化 感受 性制限 酵素とし てNotIを用い て解析し たところ 、8個の候 補座位を検 出し た。その ひとっを クローニ ング後、 周辺を含む コスミド クローン を単離し、部分 配 列 を決 定 し た。 そ の結 果 、 この 座 位はCpG島内に あり、そ の近傍に は3個のマウ ス EST(expressed sequence tag)に相同性のある配列が見出された。これらをもとに、不活 X染 色 体上 に 存在し ながらメ チル化を 免れる遺 伝子座の クローニ ングに成功 した。

そ こ には 不 活 性化を 免れるヒ ト遺伝子EXLM1のマウス 相同遺伝 子Exlmヱが存 在し、腎 臓 で 選択 的 ス プライ シングに よると観 られる転 写単位、Exlmla,bが見出 された。推 定 さ れる ア ミ ノ酸 配 列を 比 較 した と ころ 、Exlmlbは ヒ トEXLM1に酷 似 し 、Exlmla EXLM1N末 端 側 にの み 相同 性 を 示し た 。ま た 、ExlmlaにはORF3 側と3 UTRにお よ ぷ マウ スB2配 列が認 められた 。遺伝子 は11個のエ キソンを 含み18.5 kbであ る。B2 配列 は最後の エキソン に存在し 、スプラ イシングに よりExlmlaに取 り込まれたものと 考 え られ る 。 ゲノム の多型を 用いた解 析により 、Exlmヱ遺伝 子はX染色 体の近位側 に マ ッ プさ れ 、 ヒトと は違って 不活性化 を受ける ことが判 明した。CpG島内の他の 部位 では メチル化 されてお り、当研 究では不 運にも例外 的な部分 を検出し たものと思われ る。

  以上のよ うに、本 研究では 初期の目 的に合う 遺伝子を分離することは出来なかった が、意欲 的な検索 の結果、 注目に値 する遺伝 子のクロ ーニングに到達した。ヒト相同 遺伝子と の比較に よって不 活性化の 機構を解 明する手 掛かりとなる可能性もあり、今 後の発展 を期待し たい。

  審査員一 同は、こ れらの成 果と努カ を高く評 価し、大学院課程における研鑽や単位 取得など も併せ申 請者が博 士(地球 環境科学 )の学位 を受けるのに十分な資格を有す るものと 判断した 。

参照

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