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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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博 士 ( 理 学 ) 阿 部 光 知

    学 位 論文 題 名

    Molecular and genetic analyses

of Ll layer‑specific genes in Arabido加 ゐ 励 口Z励 刀 ロ ・

( シ ロ イ ヌナ ズ ナ のL1層 特 異 的遺 伝子 に関 する 分子 遺伝 学的 解析 )

学位論文内容の要旨

  シ 口イ ヌナ ズナ を含む高等植物の茎頂分裂組織は厳密な層構造をもつことがこれまでの 研究 から 知ら れて いる。外衣ー内体説に基づく解剖学的研究によれば、シロイヌナズナの 茎頂 分裂 組織 はLl、L2の二 層の 細胞 層か らなる 外衣 と、L3と 呼ば れる 内体 から構成され てい る。 外衣 にお いては垂層分裂だけが行われ、その結果、分裂組織の厳密な層構造が維 持さ れて いる 。地 上部 の各 器官 は全 てLl、L2、L3に 由来 する 細胞 から 構成 されており、

複雑 な形 態を 生み 出すためには各眉間の協調的な細胞分裂が必要とされてきた。こうした 成果 の多 くは 、層 間キヌラ植物を用いた研究によって得られてきたものである。他方、近 年に なり 細胞 層特 異的 な発 現を 示す ホメ オポッ クス 遺伝 子と して 、卜 ウモ 口コシのL2、 L3で 発 現 す る KN〇 TED1、 シ 口 イ ヌ ナ ズ ナ の Llで 発 現 す る MERISTEMLAYER1 (ATMLl)な ど が 報 告 さ れ て き た 。KNOTT:ED1、ATML1遺 伝 子 は 、 そ れ ぞ れ 転 写 因 子 を コー ドし てい るこ とから、厳密な層構造をもつ茎頂分裂組織の構築、維持に関わる分子レ ベル での 制御 機構 の存在が示唆される。しかしながら、これらの因子が関与する遺伝子発 現制 御機 構に 関す る解 明は ほと んど なさ れてい ない 。そ こで 、Ll層特 異的 に発現する遺 伝子に注目し、その発現制御機構を解明することを目指した。

  第 一 章 に お い て は 、Ll層 特 異 的 遺 伝 子 発 現 に 重 要な シス 配列 の同 定に つい て記 述す る 。 私 が1999年 に 報 告 し たPR〇T〇DERMAL FACT〇R1(PDFl)遺 伝 子 は 、 新 規 の プ 口 ルン ・リ ッチ 領域 を持つ細胞壁夕ンパク質をコードしていることが予想され、これまでに Ll層 並び に器 官原 基の 原表 皮組 織で 特異 的に発 現す るこ とが 確認 され てい る。また、レ ポ ー タ ー 遺 伝 子 を 用 いた 解 析 の 結 果 、PDF1遺 伝 子 のプ 口モ 一夕 ー領 域約1500bp以 内に Ll層 特異 的な 発現 制御 領域 が存 在す るこ とも判 明し た。 この こと から 、PDF1遺伝子のプ 口モ ータ ー解 析を 行い 、Ll層特 異的 な発 現に関 与す るシ ス配 列を 明ら かに することを目 指し た。 まず 、F DFIプ口モーターのdeletionseriesを作成し、形質転換シ口イヌナズナ におけるレポーター遺伝子の組織特異的発現を観察した。10種類のP DF!プ口モーターを p―餌ucr〇nj〔ぬse(GuS)遺伝子上流にっなぎ、野生型シロイヌナズナに導入した。形質転 換シ口イヌナズナにおけるレポ一夕ー遺伝子の発現解析の結果から、P.DF.2上流―260〜−

111の領 域にL1層特 異的 発現 を制 御す る配 列が 存在することが明らかになった。この領域 に存 在す る8塩基の 配列 (T.AAATGCりは 、A刪 工ヱを合めた複数のL1層特異的遺伝子のプ ロ モ ー タ ー 領 域 に も 共通し て存 在す るこ とか ら、L1boxと名 付け 更な る解 析を 行っ た。

(2)

AI丶ML1夕ンパク質を用いたEMSA (Electrophoretic Mobility Shift Assay)の結果から、

in vitroにおいてATML1がLl box配列に特異的に結合することが示された。また、この シス配列への変異の導入によって、ATML1夕ンパク質との相互作用が阻害されることも 明らかになった。Ll boxに同様の変異を導入したコンストラクトを用いて野生型シ口イ ヌナズナを形質転換したところ、形質転換植物においてはLl層特異的なレポーター遺伝 子の発現が消失した。以上の結果から、Ll boxの8塩基の配列がLl層特異的な遺伝子発 現に極めて重要であることが示唆された。

  次に 、第 二章 におい てPR〇TODERMIーFACTOR2(PDF2)遺伝子の単離と機能解析の 結果について報告する。分裂組織のアイデンティティーの転換に伴い発現が変化する遺伝 子 群の ーっ とし て、cDNAサ プトラクション法によってPDF2遺伝子を単離した。PDF2 遺伝子はその推定アミノ酸配列からHD―GL2クラスのホメオドヌインタンパク質をコー ドしていると予想され、同じ遺伝子ファミリーに属するATML1とはアミノ酸レベルで86

%の高い相同性を示した。in釘ぬhybridizationによる発現解析の結果、PDF2遺伝子は 茎頂分裂組織のLl層で特異的に発現していることが明らかになった。シ口イヌナズナに おいてLl層特異的な遺伝子発現をPDF2夕ンパク質が制御している可能性を検討するため に 、PDF1プ ロモ ーター のLl box配列とPDF2夕ンパク質を用いてEMSAを行った。その 結果、PDF2がLl層特異的な遺伝子発現に重要なシス配列に加vitroで結合することが分 かった。次に、形質転換シ口イヌナズナを作成し表現型の観察と遺伝子発現の解析を行っ た。カリフラワーモザイクウイルスの35Sプ口モーター下流にPDF2 cDNAをっないだコ ンストラクトをシ口イヌナズナに導入したところ、花の形態異常と花成遅延の二種類の表 現型が観察された。花の形態に異常を示すラインでは、走査型電子顕微鏡の観察により花 弁、萼片の表皮細胞の分化に異常が認められ、この表現型が、CO―suppressionによる PDF2のmRNAレベルの低下によって引き起こされることがノーザン解析によって示され た。興味深いことに、同様な形態の異常はATML1の過剰発現を示す形質転換シ口イヌナ ズナにおいても観察された。一方、花成遅延を示すラインでは、野生型に比べてPDF2は 強い発現を示し、血situ hybridizationによってLl層以外の組織において異所的にPDF2 が発現していることが明らかになった。最後に、これらの形質転換シ口イヌナズナにおけ るLl層特異的遺伝子の発現を解析した結果、ATML1の過剰発現によってPDF、2遺伝子の 発現が誘導されることが分かった。しかしながら、PDF、2の過剰発現ではATML1遺伝子 の誘導は認められないことから、両者の機能的な分担が存在することが予想される。以上 の 結果 から 、Ll層特異 的なHD−GL2クラスのホメオドメインタンパク質PDF2、ATML1 が表皮細胞の分化に重要な役割を果たす可能性が考えられる。

  これまでの結果から、ホメオドヌインを持つ転写因子がLl boxに結合することにより Ll層特異的遺伝子群の発現が制御されている可能性が示唆された。植物の発生、分化に 関わるホヌオドヌインタンパク質において、その標的配列を明らかにしたのは本研究が最 初である。今後、各遺伝子の機能欠失変異体の探索ならびに表現型の観察によって、シ口 イヌナズナの発生における機能の解明がされることが期待される。また、それに伴い層構 造 の 構 築 と 維持に 関す る分 子レ ベルで の制 御機 構も明 らか にな るも のと考 える 。

(3)

学位論文審査の要旨 主 査    教授    米田好文 副 査    教授    落合    廣 副査   助教授   加藤敦之

    学位論文題名

    Molecular and genetic analyses

of Ll layer‑specific genes in A7´abido加 ぬ 励ロZぬ 桝ロ・

(シロイヌナズナのL1層特異的遺伝子に関する分子遺伝学的解析)

  シロイヌナズナを含む高等植物の茎頂分裂組織は厳密な層構造をもつことがこれまでの 研究から知られている。外衣ー内体説に基づく解剖学的研究によれば、シロイヌナズナの 茎頂分裂組織はLl、L2の二層の細胞層からなる外衣と、L3と呼ばれる内体から構成され ている。そこで、Ll層特異的に発現する遺伝子に注目し、その発現制御機構を解明する ことを目指した。

  第一章においては、Ll層特異的遺伝子発現に重要なシス配列の同定について記述す る。私 が1999年に報告 したPR〇TODERMAL FACTORl (PDF1)遺伝子は 、新規のプロリ ン・リッチ領域を持つ細胞壁夕ンパク質をコードしていることが予想され、これまでに Ll層並びに器官原基の原表皮組織で特異的に発現することが確認されている。また、レ ポータ ー遺伝子を用いた解析の結果、PDF1遺伝子のプロモーター領域約1500bp以内に Ll層特異的な発現制御領域が存在することも判明した。このことから、PDF1遺伝子のプ ロモーター解析を行い、Ll層特異的な発現に関与するシス配列を明らかにすることを目 指した。まず、PDF1プロモーターのdeletion seriesを作成し、形質転換シロイヌナズナに おけるレポーター遺伝子の組織特異的発現を観察した。10種類のPDF1プロモーターを6. glucronidase (GUS)遺伝子上流にっなぎ、野生型シロイヌナズナに導入した。形質転換シ ロイヌナズナにおけるレポーター遺伝子の発現解析の結果から、PDF1上流‑260‑‑111の 領域にLl層特異的発現を制御する配列が存在することが明らかになった。この領域に存 在する8塩基 の配列(TAAATGCA)は、ATMLヱを含めた複数のLl層特異的遺伝子のプロモ ーター 領域にも共 通して存在 することか ら、Ll boxと名付 け更なる解析を行った。

ATML1夕ンパク質を用いたEMSA (Electrophoretic Mobility Shift Assay)の結果から、m vitroにおいてATML1がLl box配列に特異的に結合することが示された。また、このシス 配列への変異の導入によって、ATML1タンパク質との相互作用が阻害されることも明ら かになった。Ll boxに同様の変異を導入したコンストラクトを用いて野生型シロイヌナズ ナを形質転換したところ、形質転換植物においてはLl層特異的なレポーター遺伝子の発

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現が消失した。以上の結果から、Ll boxの8塩基の配列がLl層特異的な遺伝子発現に極め て重要であることが示唆された。

  次に、第二章においてPROTODERM己n4C丁〇R2(PDF2)遺伝子の単離と機能解析の結 果について報告する。分裂組織のアイデンテイテイーの転換に伴い発現が変化する遺伝子 群のーっとして、cDNAサブトラクション法によってP.DF2遺伝子を単離した。mF12遺伝 子はその推定アミノ酸配列からHD・GL2クラスのホメオドメインタンパク質をコードして いると予想され、同じ遺伝子フんミリーに属するAm己iとはアミノ酸レベルで86%の高 い相同性を示した。而sjと hybridizationによる発現解析の結果、PDF2遺伝子は茎頂分裂 組織のL1層で特異的に発現していることが明らかになった。シロイヌナズナにおいてL1 層特異的な遺伝子発現をPDF2夕ンパク質が制御している可能性を検討するために、PDn プロモーターのLlbox配列とPDF2タンパク質を用いてEMSAを行った。その結果、PDF2 がLl層特異的な遺伝子発現に重要なシス配列に血Wfr〇で結合することが分かった。次 に、形質転換シロイヌナズナを作成し表現型の観察と遺伝子発現の解析を行った。カリフ ラワーモザイクウイルスの35Sプロモーター下流にPDF2cDNAをっないだコンストラクト をシロイヌナズナに導入したところ、花の形態異常と花成遅延の二種類の表現型が観察さ れた。花の形態に異常を示すラインでは、走査型電子顕微鏡の観察により花弁、萼片の表 皮細胞の分化に異常が認められ、この表現型が、co.suppressionによるP.DF2のmRNAレベ ルの低下によって引き起こされることがノーザン解析によって示された。以上の結果か ら、Ll層特異的なHD・GL2クラスのホメオドメインタンノヾク質PDF2、ATML1が表皮細胞 の分化に重要な役割を果たす可能性が考えられる。

  これまでの結果から、ホメオドメインを持つ転写因子がLlboxに結合することにより Ll層特異的遺伝子群の発現が制御されている可能性が示唆された。植物の発生、分化に 関わるホメオドメインタンパク質において、その標的配列を明らかにしたのは本研究が最 初である。今後、各遺伝子の機能欠失変異体の探索ならぴに表現型の観察によって、シロ イヌナズナの発生における機能の解明がされることが期待される。また、それに伴い層構 造 の 構築 と 維 持 に関 する 分子 レベル での 制御 機構も 明ら かに なる ものと 考え る。

  よって著者は、北海道大学博士(理学)の学位を授与される資格があるものと認める。

参照

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