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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 医 学 ) 馮    奕 斌

    学 位 論 文 題 名

全 身 性 エ リ テ マ ト ー デ ス に お け るFasリ ガ ン ド の 発 現 異 常 に 関 す る 研 究

学位論文内容の要旨

I.緒言

    全 身性 工リ テマ トー デス(SLE)は自己抗体産生と全身の臓器障害を特徴とする代表的な   自己免疫疾患である。その発症には遺伝的素因、環境要因 ウイルス感染、免疫異常など 複 数因 子の 関与 が考 えら れてい るが 、そ の機 序は まだ 不明 な点 が多 い。 近年 、SLEモデ ル   マウスのJpr及びgldはそれぞれFasとFasリガンド(FasL)の遺伝子異常であることが明らかに   された。lprおよびgldマウスではFas依存性のアポトーシスが誘導されず、末梢リンパ組織   に異 常T細 胞が 蓄積 する 。ヒ トSLEのT細胞 では 、lprマウ スと 異な り、 細胞 表面 のFas密 度 は む し ろ 増 加 し て い る 。 さ ら にCD4とCD8の ナ イ ー ブ お よ び メモ リーT細胞 サブ セッ ト   もそ れぞ れFasの陽 性化 やFas密度 の亢 進が 報告 され てい る。しかも、CD4ナイーブT細胞 で は 、CD25やCD71の よ う な活 性 化 抗 原 も 発 現 し て お り 、SLEは 活 性 化T細 胞 が 容 易 に末 梢 血に て検 出さ れる 異常 な病態 であ る。 しか し、 活性 化T細 胞の 増加 がFasLの 異常 に起 因 す るFas依 存 性ア ポ ト ー シ ス の 機 能 異 常 か 否 か に つ い て は 、ま だ報 告が ない 。本 研究 で   は、限られた臨床サンプルから高感度でかつ簡便に遺伝子発現を半定量する方法を確立す   ると 共に 、SLEの末 梢血 単核 細胞(PBMC)に おけ るFasL遺伝 子な らび に蛋 白発 現に つい て

´´解析したので報告する。・

IL対 象と 方 法

1. 健 常 人16名 ,SLE38名と 慢性 関節 リウマ チ(RA) 20名 の無 作為 抽出例 を対 象と した 。 2. PBMCにおけ るFasLの 遺伝 子発 現を 解析 する ・た めに 半定 量的RT‑PCR法を 開発 した 。 す なわ ち、 ビオ チン 化プ ライ マー を用 いてFasLと 同一 のチ ュー ブ内でp‑ac tinも増幅さ せ 、両PCR産物 を6% ポリ アク リル アミ ドゲ ルにて 泳動 後、 ナイ 口ン膜にブ口ットした。

化 学発 光法 にて 検出 したX線フ イル ム上 のPCR産物 をデ ンシ トメ ーターで定量し、対数的 増 幅を 示す サイ クル にお けるFasL/p‑actin比を 求め た。

3. SLEのPBMCお よ びT細胞 サ ブ セ ッ ト に お け るFasLの 蛋 白 発 現 はFA CScanによ るフ 口 一 サト メト リ法 にて 検討 した 。

    ー257ー

(2)

IIl.結果

1.遺伝子レベルにてFasL発現を解析したところ、 以下の結果を得た。

  1) 未治 療群SLE (2.21土I.09n=16)では 健常 人(1.17土0.26)とRA(1.25土0.43)より有意に FasLの発現を増カロしてし、た(P= 0.0001,P=0.0078)。しカゝも、SLE活動´1叫:指数(SLEDAI)の高 い 症 例 ほ ど FasL遺 伝 子 の 発 現 が 亢 進 し て い た(rs二 ニ0.547 P=0.0012)0   2)プ レ ド ニ ゾ 口 ン 治 療 群SLE (0.780.52n=22)で は 未 治 療 群 よ りFasL遺 伝 子 の 発 現 が 明 ら か に 減 少 し (P0.0001) 、 さ ら に 興 味 あ . る こ と に 健 常 人 よ り も 有 意 に 減 少 し た (P= 0.0078) 。 ま た 、FasL遺 伝 子 の 発 現 量 と プ レド ニゾ 甲ン の 投与 量の 問に は有 意に 逆相 関 を示した(rs ‑0.703,P〓0.0009)0

  3) プ レ ド ニ ゾ 口 ン 治 療 に よ るFasL遺 伝 子 発 現 の 抑 制 はRAで は 観 察 さ れ な か っ た 。 2.蛋 白 レ ベ ル に てFasLの 発 現 を フ 口 ー サ イ ト メ ー タ ー で 解 析 し た と こ ろ 、 未 治 療SLE CD3抗 体 で 刺 激 し た 健 常 人 のT細 胞 サ ブ セ ッ ト で はFa sLが 検 出 さ れ た が 、 プ レ ド ニ ゾ 口 ン に て 治 療 し た SLEと 未 刺 激 健 常 人 の PBMCで はFasLは 検 出 さ れ な か っ た 。 3.健 常 人PBMCを デ キ サ メ サ ゾ ン と 共 に 培 養 す る と 、 用 量 依 存 的 に ま た 時 間 の 経 過 と 共 に、FasL遺伝子の発現 が抑制された。

IV.考 察

    本 研 究 で は 、SLEに お け るFasLの 発 現 を 遺 伝 子 お よ び 蛋 白 レ ベ ル で 解 析 し 、 そ れ とSLE 病 態 と の 関 連 性 を 検 討 し た 。

    未 治 療SLEPBMCで は 、FasLの 遺 伝 子 お よ び 蛋 白 発 現 が 有 意 に 亢 進 し て い た 。 し か   も 、FasL遺 伝 子 発 現 は 補 体 価 や 抗DNA抗 体 価 な ら び にSLE活 動 ´ は 指 数 と 有 意 に 相 関 し て お り り 、SLE活 動 性 を 反 映 す る ー つ の パ ラ メ ー タ ー と 考 え ら れ た 。in vitroの 抗CD3抗 体 刺 激 に   よ る 各T細 胞 サ ブ セ ッ ト のFas L発 現 は 、SLEに お け るFasL発 現 亢 進 がT細 胞 活 性 化 に よ る   こ と を 示 唆 し た 。 従 っ て 、 発 現 亢 進 し たFasLの 機 能 的 解 析 は 残 さ れ て い る も の の 、 少 な く   と もSLEで はFasL発 現 低 下 に よ る ア ポ ト ー シ ス 機 能 の 低 下 は な い と 考 え ら れ た 。     本 研 究 に お い て 見 出 さ れ た も う ー つ の 事 実 は 、SLEに お け る ス テ 口 イ ド の1 服 用 量 に 依 存 しFasL遺 伝 子 の 発 現 抑 制 で あ る 。 こ の 機 序 一 っ と し て 、 ス テ 口 イ ド に よ るPBMCへ の 直 接 的 抑 制 作 用 が 、in vitro実 験 結 果 か ら 推 測 さ れ た 。 し か し 、 ス テ 口 イ ド に よ る こ の よ   う な 免 疫 抑 制 作 用 は 、 活 性 化 さ れ た 自 己 反 応 性T細 胞 のFas依 存 性 ア ポ ト ー シ ス を も 抑 制   し て 、 SLE再 燃 を 誘 導 す る ク 口 ー ン を 残 存 さ せ る 可 能 性 も 考 え ら れ る 。     本 研 究 が 、SLE病 態 の さ ら な る 解 明 や 、 新 し い ス テ 口 イ ド 療 法導 入へ の足 がか りと なる こ   と を 期 待 し た い 。

(3)

学 位論文審査の要旨 主査

副査 副査

教授 教授 教授

小池 吉木 上出

学 位 論 文 題 名

隆夫    敬 利光

全 身性エリテ マトーデス におけるFasリガンド の発現異常に関する研究

  全身性エリテマトーデス(SLE)は自己抗体産生と全身の臓器障害を特徴とする代表的な 自己免疫疾患である。その発症には遺伝的素因、環境要因、ウイルス感染、免疫異常など 複数因子の関与が考えられているが、その機序はまだ不明な点が多い。近年、SLEモデル マウスのlpr及びgldはそれぞれFasとFasリガンド(FasL)の遺伝子異常であることが明らかに された。lprおよびgldマウスではFas依存性のアポトーシスが誘導されず、末梢リンパ組織 に異常T細胞が蓄積する。ヒトSLEのT細胞では、lprマウスと異なり、細胞表面のFas密 度はむしろ増加している。さらにCD4とCD8のナイーブおよびメモリーT細胞サブセット もそれぞれFasの陽性化やFas密度の亢進が報告されている。しかも、CD4ナイーブT細胞 では、CD25やCD71のような活性化抗原も発現しており、SLEは活性化T細胞が容易に末 梢血にて検出される異常な病態である。しかし、活性化T細胞の増加がFasLの異常に起因 するFas依存性アポトーシスの機能異常か否かについては、まだ報告がない。本研究で は、限られた臨床サンプルから高感度でかつ簡便に遺伝子発現を半定量する方法を確立す ると共に、SLEの末梢血単核細胞(PBMC)におけるFasL遺伝子ならぴに蛋白発現について 解析したので報告した。

  本研究では健常人16名,SLE38名と慢性関節リウマチ(RA) 20名の無作為抽出例を対象と した。方法として、PBMCにおけるF.asLの遺伝子発現を解析するために半定量的RT−PCR 法を開発した。すなわち、ビオチン化プライマーを用いてFasLと同一のチューブ内でp‑

ac tinも増幅させ、両PCR産物を6%ポリアクリルアミドゲルにて泳動後、ナイ口ン膜にブ 口ットした。化学発光法にて検出したX線フイルム上のPCR産物をデンシトメ一夕ーで定 量し、対数的増幅を示すサイクルにおけるFasL/p‑actin比を求めた。SLEのPBMCおよび T細胞サブセットにおけるFasLの蛋白発現はFACScanによるフローサトメトリ法にて検討 した。

  遺伝子レベルにてFasL発現を解析したところ、以下の結果を得た。未治療群SLE (2.21

(4)

土1.09,n=16)では健常人(1.17士0.26)とRA(1.25土0.43)より有意にFasLの発現を増加してい た(P= 0.0001,P=0.0078)。しか も、SLE活動 性指数(SLEDAI)の高い症例ほどFasL遺伝子の 発現が亢進していた(rs 0.547,P::0.0012)。プレドニゾロン治療群SLE (0.78士0.52,nニ22)で は未治療群よりFasL遺伝子の発現が明らかに減少し(Pく0.0001)、さらに興味あることに健 常 人よりも 有意に減 少した(P= 0.0078)。 また、FasL遺伝 子の発現 量とプレ ドニゾロ ンの 投与量の間には有意に逆相関を示した(rsニニ=−0.703,:0.0009)。蛋白レベルにてFasLの発現を フ ローサイ トメータ ーで解析 したところ 、.未治 療SLEと抗CD3抗 体で刺激 した健常 人のT 細 胞サブセ ットではFasLが検出さ れたが、プ レドニゾ ロンにて 治療したSLEと未刺激 健常 人 のPBMCで はFasLは 検 出 され な かっ た 。 健常 人PBMCをデ キ サ メサ ゾ ン と共 に 培養 す る と 、 用 量 依 存 的 に ま た 時 間 の 経 過 と 共 に 、FasL遺 伝 子 の 発 現 が 抑 制 さ れ た 。   本 研究 は 、SLEに お けるFasLの発現を 遺伝子およ び蛋白レ ベルで解 析し、Fas依 存性ア ポ トーシス にFasLの発現 異常が関 与するかど うかを検 索する目 的で行っ た。未治 療SLEの PBMCで は 、FasLの 遺 伝 子 お よ び 蛋 白 発現 が 有 意に 亢 進し て い た。 一 方、SLEのPBMCで は 膜 型Fasの 発 現が 亢 進 して いる ことが既に 報告され ている。 これらの 事実より 、SLEで はFas依 存性 ア ポト ー シ スの 亢 進が 示 唆 され る 。 しか も 、FasL遺 伝子発現 は補体価 や抗 DNA抗 体 価な ら びにSLE活 動性 指 数と 有 意 に相 関 し てお り 、SLE活動 性を反映 するーつ の パ ラメータ ーと考え られた。in vitroの抗CD3抗体刺 激による各T細胞サブセットのFasL発 現 は 、SLEに お けるFasL発 現 亢進がT細 胞活性化に よること を示唆し た。本研 究におい て 見 出 さ れた も うー つ の 事実 は 、SLEにおける ステ口イ ドの1日服 用量に依 存しFasL遺伝 子 の 発現抑制 である。 これはス テロイドの 新しい免 疫抑制機 序として 、SLEのりン パ球減少 と症状を改善するメカニズムのーっとも考えられる。

  本 研究が、 国内外で はSLEにおけ るFasLの遺伝子 および蛋 白発現が 有意に亢 進してい た こ ととステ ロイド治 療によりFasL遺伝子発現 の抑制の ことを初 めに見出 した。SLE病 態の さ ら な る 解 明 や 新 し い ス テ 口 イ ド 療 法 導 入 へ の 足 が か り と な る こと を 期待 し た い。

  審 査員一同 は、これ らの成果 を高く評価 し、また 研究者として誠実かつ熱心であり申請 者 が 博 士 ( 医 学 ) の 学 位 を 受 け る の に 充 分 な 資 格 を 有 す る も の と 判 定 し た 。

参照

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