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論文 各種表面含浸材の塩分浸透および中性化に対する抑制効果

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(1)コンクリート工学年次論文集,Vol.33,No.1,2011. 論文. 各種表面含浸材の塩分浸透および中性化に対する抑制効果 坂元. 貴之*1・武若. 耕司*2・山口. 明伸*3・櫨原. 弘貴*4. 要旨:各種表面含浸材の性能の把握とその違いを確認するために,施工実績のあるけい酸塩系とシラン系を 取り上げ,それぞれを塗布したコンクリートに対する吸水試験,透気試験,塩水浸漬試験および中性化促進 試験を実施した。その結果,けい酸塩系とシラン系はもちろん,同じけい酸塩系表面含浸材であってもその 主成分によって塩分浸透抑制効果や中性化抑制効果などに違いが生じることが分かった。さらに,けい酸塩 系表面含浸材の場合,材齢 7 日の若材齢コンクリートに塗布した場合よりも十分に水和反応が進行した材齢 28 日のコンクリートに塗布した場合の方が,より高い効果が期待できることも確認された。 キーワード:けい酸塩系表面含浸材,シラン系表面含浸材,塩分浸透抑制効果,中性化抑制効果 さらにはひび割れ補修機能などの品質改善効果が得ら. 1.はじめに 近年,社会資本の適切な維持管理の重要性に対する認. れることを確認している 5)〜6)。ただし,現在実用化され. 識が高まっており,それに呼応してコンクリート構造物. ている表面含浸材は多種多様であり,特にけい酸塩系の. の耐久性向上,劣化抑制の観点から数多くの新しい補修. 場合,その主成分や配合割合,また標準とする塗布工法. 材料や各種新工法が提案され始めている。その中で近年. や塗布時期がそれぞれ異なることから,得られる効果や. 注目されている工法の一つに表面保護工法がある。土木. その程度にも相応のバラツキが生じると予想される。. 1). 学会による表面保護工法設計施工指針(案) には「所. そこで本研究では,施工実績のある表面含浸材のうち,. 定の効果を発揮する材料をコンクリート表面から含浸. けい酸塩系表面含浸材 6 種類と,シラン系表面含浸材 1. させ,コンクリート表層部の組織を改質して,コンクリ. 種類,さらに両者の複合材料 1 種類を取り上げ,それぞ. ート表層部への特殊機能の付与を実現させる工法」と定. れを塗布したコンクリートを用いて塩水浸漬試験およ. 義されており,施工が容易で経済的,しかも施工後すぐ. び促進中性化試験を実施し,各種表面含浸材の塩分浸透. にその効果が期待できることなどから,近年では実構造. および中性化に対する抑制効果との違いについて実験. 物への適用事例が増加している。. 的検討を行った。. この工法に用いられる主な材料は,けい酸塩系表面含 浸材とシラン系表面含浸材の 2 種類に大別される。シラ. 2.実験概要. ン系の場合は,コンクリート表層部に含浸させることに. 2.1. 表面含浸材の種類. より撥水層(吸水防止層)を形成することで,外部から. 本実験で用いた表面含浸材は,表−1 に示す 8 種類で. の水や塩化物イオンの浸透を抑制するものとされ,すで. あり,けい酸塩系表面含浸材である,けい酸ナトリウム. に既往の研究や施工実績も多く,塩化物イオンの浸透抑. を主成分とした A,C,F,けい酸ナトリウム・カリウム. 制効果やアルカリ骨材反応抑制効果が得られることな. を主成分とした B,D,けい酸リチウムを主成分とした L. どが報告されている. 2)〜4). に加え,シラン系+けい酸塩の複合材料である E,および. 。. 一方,けい酸塩系の場合は,コンクリート内部に浸透 表−1. し,コンクリート中に存在する Ca2+および水と反応して. 使用した表面含浸材の種類. 細孔空隙中に C-S-H 結晶を生成することでコンクリート表. 主な成分. 含浸材種類. 層部を緻密化することでコンクリートの品質を改善する. けい酸ナトリウム. A,C,F. ものであり,その改質機構はシラン系と異なる。これま. けい酸ナトリウム けい酸カリウム. B,D. すなわち含水率,水セメント比,あるいは中性化の進行. けい酸リチウム. L. 程度などによって,その品質改善効果が大きく異なるも. シラン系+けい酸塩. E. のの,適切に施工を行えば塩分浸透抑制や中性化抑制,. シラン系. S. での著者らの検討により,塗布するコンクリートの品質,. *1 鹿児島大学大学院理工学研究科海洋土木工学専攻. (正会員). *2 鹿児島大学大学院理工学研究科海洋土木工学専攻. 教授. *3 鹿児島大学大学院理工学研究科海洋土木工学専攻. 准教授. *4 福岡大学工学部社会デザイン工学科. 助教. 博士(工学). 工博. -1625-. (正会員). 博士(工学) (正会員). (正会員).

(2) 表−2. 各種表面含浸材の塗布量および塗布方法. 塗布工程. 含浸材 A. 水噴霧→. 乾燥→ (30分). 含浸材→ 2 (150g/m ). 乾燥→ (30分). 水噴霧→. 乾燥→ (30分). 含浸材→ 2 (50g/m ). 乾燥→ (30分). B. 下地処理→. 水噴霧→. 乾燥→ (30分). 含浸材→ 2 (120g/m ). 水噴霧→. 乾燥→ (6時間). 含浸材→ 2 (120g/m ). 水噴霧. C. 水噴霧→. 乾燥→ (60分). 含浸材→ 乾燥→ 水噴霧→ 2 (250g/m ) (30〜60分) (1日目). 乾燥→ (60分). 水噴霧→ (2日目). 乾燥→ (60分). 下地処理→. 水噴霧→. 含浸材→ 2 (100g/m ). 乾燥→ (30分). 水噴霧→. 水噴霧. ←乾燥 (30分). 乾燥→ (30分) ←含浸材 2 (50g/m ). 含浸材→ (0.1L/m2). 乾燥→ (15分). D. 乾燥→ (30分). E. 下地処理→. 含浸材→ 2 (200g/m ). 乾燥 (24時間). F. 下地処理→. 水噴霧→. 乾燥→ (15分). 含浸材→ (0.2L/m2). 乾燥→ (10分). L. 下地処理→. 含浸材→ 2 (200g/m ). 乾燥→ (50分). 含浸材→ 2 (200g/m ). 乾燥. S. 下地処理→. 含浸材→ 2 (200g/m ). 乾燥 (6時間). 表−3 W/C s/a W/C s/a W/C (%) s/a (%) (%) (%) (%) (%) 50 45 50 50. 45 45. 実験に用いたコンクリート配合. 表−4. 333. W W W 166 166 166. C C C 332 332 332. 単位量(㎏/m 単位量(㎏/m ))) 単位量(kg/m S S 海砂 海砂 592. 川砂 山砂 155. GG G 1052. 592 592. 155 155. 1052 1052. AE AE AE 3.32 3.32 3.32. 水噴霧 (3日目). 含浸材→ 乾燥 2 (50g/m ) (30分) ←乾燥 ←水噴霧 (30分). 水噴霧. 試験項目ごとの供試体寸法および塗布面. 試験項目. 供試体寸法(cm). 含浸面. 概要図. 塩水浸漬試験 中性化促進試験 吸水試験. 10×10×10. 打設側面 (2面). TYPE-Ⅰ. 透気試験. Φ15×5. 打設底面. TYPE-Ⅱ. シラン系表面含浸材である S とした。なお,複合系であ る E は,シラン系の撥水効果とけい酸系の表層の緻密化 の両方の効果を狙ったものである。各材料の塗布量およ. 水噴霧. エポキシ樹脂被覆 10cm. び塗布方法は,表−2 に示すように,各材料で標準と規 定されている方法に従った。 2.2. 40cm. 供試体概要. 打設側面(2面) 含浸材塗布. 本実験で使用した供試体には,セメントに普通ポルト ランドセメント(密度 3.15g/cm3),細骨材に鹿児島県肝 属郡南大隈町原沖合産の海砂(表乾密度 2.52g/cm3)と鹿. 15cm. 含浸材塗布(打設底面) エポキシ樹脂被覆. 児島県熊毛郡中種子町納官産の山砂(表乾密度. 5cm. 3. 2.62g/cm )の混合砂,粗骨材には,大分県津久見市上青 江産(表乾密度 2.71g/cm3,骨材最大寸法 20mm)を使用. TYPE-Ⅰ. 30cm. して作製し,スランプ 8±1cm,目標空気量 4±0.5%のコン. TYPE-Ⅱ. クリートを用いた。配合を表−3 に示す。 試験項目ごとの供試体寸法および表面含浸材の塗布. 図−1. 供試体概要. 面を表−4 に,各試験に用いた供試体概要を図−1 にそ れぞれ示す。試験項目としては,吸水試験,透気試験,. 円柱供試体を打設底面から 5cm 位置で切断した φ15×5cm. 塩水浸漬試験,中性化促進試験を実施した。吸水試験,. の円盤の打設底面側に表面含浸材を塗布し,その後側面. 塩水浸漬試験,中性化促進試験には,ベースとなる. をエポキシ樹脂で被覆したものを用いた。含浸材の塗布. 10×10×40cm の角柱供試体の打設側面(2 面)に表面含浸. 時期は,表面含浸材種類によって異なっているため,本. 材を塗布し,その後 10cm 間隔でカットして 10×10×10cm. 実験では,塗布開始時を材齢 7 日と 28 日で統一した。. の立方体とし,含浸材塗布面以外をエポキシ樹脂で被覆. 試験開始までの具体的な養生方法や塗布期間等を図−2. したものを用いた。また透気性試験には,φ15×30cm の. に示す。. -1626-.

(3) [材齢7日塗布] [材齢7日塗布] 湿潤養生 気中静置(2) エポキシ被覆・供試体カット 湿潤養生 → 気中静置(1) 気中静置(1) → 含浸材塗布 含浸材塗布 → 気中静置(2) → エポキシ被覆・供試体カット → → (2日間) → (5日間) → (5日間) (2日間) (7日間) (2日間) (7日間) (5日間) (2日間) (5日間) [材齢28日塗布] [材齢28日塗布]. 試験開始 試験開始. 湿潤養生 気中静置(2) エポキシ被覆・供試体カット 湿潤養生 → 気中静置(1) 気中静置(1) → 含浸材塗布 含浸材塗布 → 気中静置(2) → エポキシ被覆・供試体カット → → (23日間) → (5日間) → (5日間) (7日間) (2日間) (7日間) (5日間) (23日間) (5日間). 試験開始 試験開始. ※気中静置(1)雨水があたらない屋外 ※気中静置(1)雨水があたらない屋外 ※気中静置(2)屋内環境 ※気中静置(2)屋内環境 ※暴露試験に関してはエポキシ被覆・供試体カット後に気中静置(2)を1ヶ月行ってから試験開始した 図−2. 2.3. 試験開始までの塗布時期及び試験開始までの工程. 試験方法. 試験体の含浸面 (2面). シール面 (4面). 各試験方法の概要と測定項目および評価方法を以下 に示す。 (1)吸水試験. 20mm. 図−3 に示すように,供試体の下面が試験用容器底面 から 10mm になるようにスペイサーを配置し,隣接供試. 試験体. 体との間隔を十分に確保して試験を実施した。試験開始 時から 1,2,3,5,7,14,21,28,63 日後に,試験用. 10mm. 容器から供試体を取り出し,表面の水分を除去した後,. 図−3. 質量(Wai)を測定し,式(1)を用いて吸水率(Wa)を. 吸水・塩水浸漬試験概要. 算出した。さらに,無塗布供試体に対する塗布供試体の 吸水率の比を吸水比として算出した。なお,吸水比は各 3 体の平均値で示している。. Wa=. Wai−Wao Wao. ×100. 式(1). Wa:吸水率(%). (2)塩水浸漬試験 3%の塩化ナトリウム水溶液を用いて,図−3 に示す吸 水試験と同様な方法で浸漬試験を実施した。なお,試験. Wao:試験開始時の試験体質量(g) Wai:試験開始時から測定時における試験体質量(g). 期間中は溶液濃度が変化しないように試験容器を密封 すると伴に,30 日に 1 度,溶液交換を行い,それぞれの 見かけの塩化物イオン拡散係数を算出した。 メタル管. (3)透気性試験. 透気量測定. 透気係数測定方法は,図−4 に示す内径 15cm のメタル 管に供試体を乗せ,両者の隙間をシリコンでシールし, 試験器に設置した。その後,圧縮空気をコンプレッサー から注入してメスシリンダーを利用した水中置換法に. コンプレッサー. より透気量を測定し,式(2)により透気係数を求め,. 図1. 算出し,無塗布供試体に対する塗布供試体の透気係数比. 透気量の測定方法. 図−4. 透気係数測定方法. を求めた。 (4)中性化促進試験. K=. CO2 濃度 5%,温度 30 度,湿度 80%以上の中性化促進. Q 2P 2hr ・ 2 2 P1 −P2 A. 式(2). 環境下において,供試体の含浸材塗布面が側面になるよ. K:透気係数(cm/sec),P1:載荷圧力(N/cm2). うにして静置し,中性化促進試験を行った。促進試験開. P2:大気圧(N/cm2),h:試験体の厚さ(cm). 始 30,90,180 日後に供試体を解体し,フェノールフタ. Q:透気量(cm3/sec),A:透気面積(cm2). レイン法にて中性化深さを測定した。試験体および比較. r:気体の単位容積量(N/cm3). 用供試体の中性化深さから,中性化深さ比を算出した。. -1627-.

(4) 3. 結果および考察 3.1. 2. 材齢7日塗布 材齢28日塗布. 吸水試験 1.5. 吸水率(%). 図−5 および 6 に,材齢 7 日あるいは 28 日にそれぞ れ含浸材を塗布した場合について,吸水試験開始後 63 日を経過した時点での各種含浸材塗布供試体の吸水率 及び無塗布供試体に対する吸水比を示す。けい酸塩系含. 1 0.5. 浸材は,材齢 7 日で塗布した場合には,無塗布供試体と の間に明確な差が認められなかったが,材齢 28 日に塗. 0. 布した場合には,程度に多少の差はあるもののいずれの. 無. 図−5. 含浸材の主たる改質機構が,含浸材中の SiO2 分がコンク リート中の Ca2+イオンと水の存在下で反応し,空隙内に. ていない材齢 7 日のコンクリートでは,材齢 28 日のコ ンクリートと比べ水和反応過程で生成される Ca(OH)2 の 絶対量が未だ少なく,表面含浸材の反応に必要な Ca2+ イオンが十分にはコンクリート内に存在していなかっ. F. B. D. L. E. S. 塗布供試体及び無塗布供試体の吸水率. 2. 無塗布に対する吸水比. とにあることから,セメントの水和反応が十分に進行し. C. 含浸材種類. 場合も吸水抑制効果が認められた。これは,けい酸塩系. C-S-H 結晶を生成してコンクリート表層を緻密化するこ. A. 材齢7日塗布 材齢28日塗布. 1.5. 1. 0.5. たことが一因であると考えられた。. 0. 一方,シラン系含浸材である S の場合は,いずれの材 齢で塗布した場合においても,顕著な抑制効果が得られ. A. 図−6. C. F. B D 含浸材種類. L. E. S. 塗布供試体の無塗布供試体に対する吸水比. ていることが分かる。 塩水浸漬試験. 15. 図−7 および 8 には,それぞれ材齢 7 日あるいは 28 日 に含浸材を塗布した供試体を塩水に 12 ヵ月間浸漬した 時の各供試体中の全塩化物イオン量分布を示す。これら の結果から,程度の差はあるものの,含浸材塗布材齢あ るいは含浸材の種類の如何に関わらず,含浸材塗布供試 体中への塩化物イオン浸透量は無塗布の場合よりも少 ないことが確認された。ただし,図−7,8 のみでは,シ. 全塩化物イオン量(㎏/m3). 3.2. 10. ラン系表面含浸材 S において顕著な塩化物イオン浸透に. 0. 1. 図−7. 状況をもとに含浸材塗布コンクリートの見かけの拡散. た表面塩化物イオン濃度を他のすべての供試体の表面 塩化物イオン濃度として取り扱った。その結果を図−9 に示す。これによると,けい酸ナトリウム系含浸材 A, C,F,B,D においては,塗布材齢が含浸材の浸透抑制 効果に顕著に影響を及ぼし,コンクリート打設後から含 浸材塗布までの期間がある程度長いほど,より顕著な含 浸材の効果が現れることが明確となった。一方,含浸材 E,L,S,は,塗布材齢の塩化物イオン浸透抑制効果に. -1628-. D. L. E. 2 3 試料採取位置(㎝). 4. 5. 材齢 7 日に塗布した場合の 全塩化物イオン量. 15. 全塩化物イオン量(kg/m3). 度は同一と仮定し,無塗布供試体の塩分分布から得られ. B. 0. が出来なかった。そのため,これらの塩化物イオン浸透. ことを考慮して,すべての供試体の表面塩化物イオン濃. F. 5. 材齢が浸透抑制効果に及ぼす影響を明確には捉える事. へのフィッティングにより算出したが,浸漬試験である. A. C. S. 対する抑制効果が認められる他は,含浸材の種類や塗布. 係数を求めた。なお,拡散係数はフィックの拡散方程式. 無. 10. 無. A. C. F. B. D. L. E. S. 5. 0 0. 1. 図−8. 2 3 試料採集位置(cm). 4. 材齢 28 日に塗布した場合の 全塩化物イオン量. 5.

(5) 8E-11 材齢7日塗布 材齢28日塗布. 2.5. 透気係数(㎝/s). 塩化物イオン拡散係数 (cm2/year). 3. 2 1.5 1 0.5. 材齢7日塗布 材齢28日塗布. 6E-11 4E-11 2E-11 0. 0 無. 図−9. A. C. F B D 含浸材種類. L. E. 無. S. 材齢 7,28 日に塗布した場合の 見かけの塩化物イオン拡散係数. 図−10. A. C. F. B D L 含浸材種類. 無塗布に対する透気係数比. 含浸材の抑制効果が上記のようなコンクリート組織と の反応に直接起因するものではないことと関連がある と考えられる。 これらの傾向は,前述の吸水試験の結果と概ね対応し ており,含浸材塗布後の吸水特性によって有る程度,長 期的な塩分浸透抑制効果を予測出来ることを示唆して いる。ただし,撥水作用を持つ E や S の場合は,吸水抑 制効果と塩分浸透抑制効果が必ずしも一致していない。. 塗布供試体及び無塗布供試体の透気係数 材齢7日塗布 材齢28日塗布. 1.5 1 0.5 0 A. つまり,E のように吸水抑制効果は得られているものの 塩分浸透抑制効果は認められないケースや,S のように. 図−11. 吸水抑制効果以上の塩分抑制効果を示すケースが生じ ている。これらの評価については撥水作用を持つ表面含. C. F. B D 含浸材種類. L. 20. 材塗布供試体の透気係数及び無塗布供試体に対する透 気係数比を示す。吸水試験や塩水浸漬試験の結果と同様 に,けい酸塩系含浸材の場合,材齢 7 日よりも材齢 28. 中性化深さ(mm). それぞれ含浸材を塗布した場合について,各種表面含浸. 10 5 0. 日に塗布した方がより明確な効果が認められた。一方,. 無. シラン系含浸材 S あるいは撥水作用を持つ E の場合は, S の材齢 7 日塗布の場合を除いて,無塗布供試体よりも. 図−12. 透気係数が高くなる傾向を示した。シラン系はコンクリ. A. C. F B 含浸材種類. 1.5. が顕著に表れたことによるものと考えられる。 3.4. 中性化深さ比. れ,材齢 28 日塗布供試体のものは,この含水率の影響. E. S. 材齢7日塗布 材齢28日塗布. り,その撥水層はコンクリート内部からの水蒸気透過性 塗布供試体よりも低くなったことによるものと考えら. D. 塗布供試体及び無塗布供試体の中性化深さ. ート表層に形成する撥水層を形成する特徴をもってお に優れている。それにより,コンクリートの含水率が無. S. 材齢7日塗布 材齢28日塗布. 15. 透気性試験. E. 塗布供試体の無塗布供試体に対する 透気係数比. 浸材の改質機構を踏まえてさらに検討する必要がある。 図−10 および 11 に,材齢 7 日あるいは材齢 28 日に. S. 2. 及ぼす影響が顕著には表れていない。これは,これらの. 3.3. E. 1. 0.5. 中性化促進試験. 図−12 および 13 にはそれぞれ材齢 7 日,28 日に含浸 材を塗布した供試体を中性化促進試験装置により 12 ヵ. 0 A. 月間中性化促進した時の各供試体の中性化深さ及び無 塗布供試体に対する中性化深さ比で示したものである。 これらの結果から材齢 7 日塗布の含浸材 F を除く,けい. -1629-. 図−13. C. F. B D E S 含浸材種類 塗布供試体の無塗布供試体に対する 中性化深さ比.

(6) 酸塩系表面含浸材塗布供試体は無塗布より中性化を抑. その効果は吸水試験の結果と良く対応していることが. 制することが確認できた。ただし,材齢 7 日塗布供試体. 確認された,なお,シラン系では塗布材齢に拘わらず効. について見ると含浸材 C のように中性化の抑制効果が高. 果が得られるが,シラン系+けい酸塩系の複合材料は,. いものもあれば F のように無塗布供試体と同程度となる. 水分浸透性と塩分浸透性の傾向が必ずしも対応しない. ものが認められた。それに対し,材齢 28 日塗布供試体. ことがあり,今後,改質機構を踏まえた検討が必要と考. は,全てにおいて中性化を顕著に抑制しており,またど. えられる。. の供試体も抑制効果の割合がほぼ同程度となり,けい酸. (3). 塩系表面含浸材の中性化抑制に対する効果のバラツキ. 性について検討を行った結果,けい酸塩系表面含浸材の. が少ないことが確認できる。中性化促進試験においても,. 場合には,製品ごとのバラツキは大きいものの,材齢 7. コンクリートの水和反応過程で生成される Ca(OH)2 の絶. 日に比べて材齢 28 日に塗布した場合の方が無塗布に対. 対量がけい酸塩系表面含浸材の反応には重要であるこ. する透気係数の低下割合は大きくなる結果を示した。一. とが認められた。なお,データ数が十分とは言えないが,. 方,撥水作用のある表面含浸材の場合では,コンクリー. 効果のバラツキ程度を比較するために,けい酸塩系表面. ト表層部に撥水層が形成されることにより内部の含水. 含浸材の中性化深さ比の変動係数を求めたところ,材齢. 率が低下し,無塗布よりも透気係数は無塗布よりも大き. 7 日塗布では変動係数が 0.24(標準偏差 2.11)であった. くなる傾向にあった。. のに対し,材齢 28 日塗布では 0.20(標準偏差 1.73)と. (4). 減少する結果となった。また,吸水試験,塩水浸漬試験,. の場合には,塗布までの期間が長くなるほど,抑制効果. 透気試験でも同様の傾向が得られた。. が大きくなり,製品間のバラツキも小さくなる傾向が認. 透気性試験によって,コンクリート中の空気の透過. 中性化抑制効果については,けい酸塩系表面含浸材. 一方,撥水作用を持つ含浸材 E,S では,材齢 7 日塗. められた。一方,シラン系の場合には,透気試験結果か. 布の場合は無塗布と同程度,材齢 28 日塗布の場合は無. ら予想されるように含浸材塗布により中性化の進行が. 塗布より中性化深さがむしろ大きくなる結果となり,け. 早まる傾向があることが分かった。. い酸塩系表面含浸材を塗布した場合とは異なる傾向と なった。. 謝辞:本研究は,けい酸塩系浸透性コンクリート保護材. なお,これらの傾向は透気試験の結果と同様であるこ. 研究会との研究成果の一部について報告したものであ. とから,中性化抑制効果は透気係数によって有る程度予. る。関係者各位に謝意を表す。. 測できると考えられる。. 参考文献 1) 土木学会:表面保護工法. 設計施工指針(案). 2) 土木学会:コンクリート技術シリーズ 68,コンクリ. 4.まとめ 現状の表面含浸材の効果を把握するために施工実績. ートの表面被覆および表面改質技術研究小委員会. のあるけい酸塩系表面含浸材 6 種類,シラン系表面含浸. 報告,2006.4. 材 1 種類,さらに両者の複合材料 1 種類を加えた計 8 種. 3) 久保善司,服部篤史,栗原慎介,宮川豊章:ASR よ. 類を用いて,吸水試験,塩水浸漬試験,透気性試験,促. り劣化したコンクリート構造物のシラン系表面処. 進中性化乾燥収縮試験を実施し,各種表面含浸材の性能. 理による補修効果の検討,土木学会論文集,. 把握と効果の違いについて検討を行った結果,以下の知. No.690/V-53,pp.95-107,2001.11 4) 櫨原 弘貴,武若 耕司,山口 明伸,白澤 直:けい. 見が得られた。 (1) けい酸塩系表面含浸材によるコンクリート中への水. 酸塩系表面含浸材の浸透特性および保護性能に関. 分浸透抑制効果は,材齢 7 日で塗布した場合よりも材齢. する基礎的研究,コンクリート構造物の補修,補強,. 28 日で塗布した場合の方が顕著となることが認められ,. アップグレード論文報告集,第 8 巻,pp.77−84,2008. 製品ごとの効果のバラツキも小さくなることが確認さ. 5) 櫨原 弘貴,武若 耕司,山口 明伸,白澤 直:けい. れた。一方,シラン系+けい酸塩の複合材料,およびシ. 酸塩系表面含浸材を用いたひび割れ補修による止. ラン系表面含浸材では、塗布材齢に拘わらず、コンクリ. 水効果に関する検討,コンクリート工学年次論文集,. ートの表面に撥水層を作るために、塗布材齢の影響は必. Vol.31,No.1,pp.1933−1938,2009. ずしも大きくなく,若材齢時に塗布した場合でも高い効. 6) 櫨原 弘貴,武若 耕司,山口 明伸,白澤 直:各種. 果が得られることが確認された。. 表面含浸材の性能把握と効果の違いに関する基礎. (2). 的研究,コンクリート工学年次論文集,Vol.32,No.1,. けい酸塩系表面含浸材によるコンクリート中への. 塩分浸透抑制効果は,塗布材齢の影響が明確に認められ,. -1630-. pp.1619−1624,2010.

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