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RC 梁供試体の鉄筋腐食促進試験における塩分浸透モニタリング

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Academic year: 2022

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RC 梁供試体の鉄筋腐食促進試験における塩分浸透モニタリング

日本工営(株) 正会員 ○末崎将司 松山公年 前田建設工業(株) 正会員 米田大樹 小原孝之

1.はじめに

コンクリート構造物の塩害は,飛来塩分や凍結防止剤から供給される塩分等により生じる劣化現象である.塩害 の対策手法や適用時期を見極め,補修効果を定量的に評価するために,効果的なモニタリング技術の開発が求めら れている中,本研究では,加速期及び劣化期に至る塩分浸透や鉄筋腐食の状況を捕捉することを目的とし,塩水浸 漬や腐食促進試験を実施し,複数のモニタリング技術の適用性について確認した.

2.実験概要

2.1 塩水浸漬・電食試験

塩害による劣化促進を模擬するため,RC 梁供試体を塩水槽に 40日間浸漬させた後,電食試験を行った.供試体下面に銅電極を 配し,塩水槽に浸漬させた上で,供試体の主鉄筋に直流電流を加 電する方法とした.

2.3 供試体と実験ケース

供試体の概要と電食試験の概要を図-1に示す.塩分浸透モニタ リングのため,供試体には「腐食センサー」及び「エクスパンシ ョンリング」(図-2)を浸漬面側から後施工した.塩害の潜伏期・

進展期における塩分浸透をモニタリングする実験ケースとして,

浸漬する塩水濃度(3%,15%)をパラメータとした2ケースの浸 漬供試体について考察する.電食供試体は,加速期以降に該当す るため,対象外とする.

2.4 計測機器について

「腐食センサー」は,細い鉄線が腐食によって切断することを 鉄線両端に生じる電位差によって検知する.電圧測定という簡単 な操作で塩分浸透状況をモニタリングできる.本実験では,鉄線 両端の電圧測定に加えて抵抗値を計測した.

「エクスパンションリング」は,近傍に設置する楔型カソード

(陰極)とエクスパンションリング(陽極)の深さ方向に分割さ れた電極(A1~A6)間の電流及び電圧(電位)を計測することで,

塩分浸透を検知する.電極(A1~A6)毎に電位を計測するため,

深さ方向における腐食開始時期と腐食状況を把握することが可能 である.

3.計測結果と数値解析結果

「腐食センサー」のモニタリング結果を図-3に示す.塩水濃度3%の浸漬供試体は,モニタリング最終日まで抵 抗値に大きな変化が生じなかった.塩水濃度15%の浸漬供試体は,浸漬面からの深さ5mmのセンサーからコンク リート内部に向かって順番に抵抗値が急増しており,コンクリート内部への塩分浸透を検知したと考えられる.図 -4に浸漬中に2回実施したEPMAのコンター図を示す.EPMAの実施時期は図-3に示した.

キーワード 塩害,モニタリング,腐食センサー,エクスパンションリング

連絡先 〒102-8539 東京都千代田区九段北 1-14-6 日本工営(株) TEL03-3238-8347

1 2 3 4

腐食センサー エクスパンションリング 図-2 センサー概要

110mm

A1 6@10mm

A2A3 A4A5

A6

用心鉄筋D10 梁供試体

直流電源装置 浸漬槽 電極(銅板)

構造用主鉄筋D19 測定装置

塩水 (-)

リード線

図-1 実験供試体と塩水浸漬・電食試験の概要

エクスパンションリング 腐食センサー

土木学会第71回年次学術講演会(平成28年9月)

‑3‑

CS7‑002

(2)

塩水3%供試体のEPMA(2回目)において,浸漬面から深さ

5mm~10mm位置の塩分濃度は 1.0%程度であるが,腐食センサ

ーでは,これを検知できていない.「腐食センサー」の深さ15mm の抵抗値に変化が見られた塩水15%供試体のEPMA(1回目)

において,塩分濃度は2.0%程度である.そのため,本実験で用 いた「腐食センサー」は,塩分濃度1.0%~2.0%の範囲に腐食環 境下の検知限界があったと考えられる.

「エクスパンションリング」のモニタリング結果を図-5に示 す.塩水3%供試体は,モニタリング最終日まで電位に変化が見 られなかった.前述したように,塩水3%供試体のEPMA(2回 目)では,深さ5mm~10mm位置における塩分濃度が1.0%程度で あり,これを検知できていない.塩水15%供試体は,深さ10mm で初期段階から電位が低下し,コンクリート内部に向かって順番 に電位が低下していく傾向が確認できた.ただし,深さ 50mm の電位は最終日まで低下せず,EPMAによる塩分濃度は0.7%程 度であった.「エクスパンションリング」も「腐食センサー」と 同様に,塩分濃度1.0%~2.0%の範囲に検知限界が存在すると考え られる.

また,図-6にDuCOM1)による浸透解析シミュレーションの結 果と,EPMA と同時期に実施した電位差滴定法による全塩分量 の測定結果とを比較した.試験結果は 230 日後には浸漬面近く の塩化物イオン量が 8.0kg/m3程度と大きな値となり,解析結果 も6.0kg/m3と同定度となったが,表面から10㎜程度以降は,試 験結果と解析結果に大きな相違がみられる.これは,本実験は W/C:70%という乾燥収縮が非常に大きくなる条件であるのに対 し,解析では乾燥収縮によるひび割れの影響を考慮していない ためと思われる.浸漬前の供試体に関する解析結果では表面に 300μ程度のひずみが発生しており,微細ひび割れが発生してい た可能性が高かった.これらの結果を受け,今後は塩害モニタリ ングにおけるひび割れ等の力学的挙動と塩分浸透の連成解析の 有効性について検討する.

4.まとめ

本研究では,コンクリート配合の調整や塩水に浸漬することに より塩害による劣化促進を模擬した.また,塩害を促進させた供

試体に対して,塩分浸透のモニタリングを行うための計測器を後施工し,計測器ごとのモニタリング結果について 分析した.その結果,浸漬面からの塩分浸透状況を定性的に捉えることができた.今後は,潜伏期・進展期(初期 段階)における腐食環境の状態を捉えるため,実構造物を対象にしたモニタリング研究を実施予定である.

5.謝辞

本研究は,モニタリングシステム技術研究組合(RAIMS)が実施した研究であり,内閣府の「SIPインフラ維 持管理・更新・マネジメント技術」の一環として国土交通省が実施する「社会インフラへのモニタリング技術の活 用推進に関する技術研究開発」委託事業研究の成果である.

参考文献 1) Maekawa, K. Ishida, T. and Kishi, T. : Multi-Scale Modeling of Structural Concrete, Talor & Francis, 2009.

‐800 

‐700 

‐600 

‐500 

‐400 

‐300 

‐200 

‐100  100 

6/15 7/15 8/14 9/13 10/13 11/12 12/12 1/11

自然電位(mV)

測定日

エクスパンションリングシステム(せん断筋なし) 塩水3%‐10mm 塩水3%‐20mm 塩水3%‐30mm 塩水3%‐40mm 塩水3%‐50mm 塩水15%‐10mm 塩水15%‐20mm 塩水15%‐30mm 塩水15%‐40mm 塩水15%‐50mm

浸漬開始 EPMA‐1 EPMA‐2

図-5 エクスパンションリングのモニタリング結果

10  100  1,000  10,000  100,000  1,000,000  10,000,000  100,000,000 

7/25 8/24 9/23 10/23 11/22 12/22 1/21

抵抗値(Ω)

測定日

腐食センサー・Ω(せん断筋なし) 塩水3%‐5mm 塩水3%‐15mm 塩水3%‐30mm 塩水15%‐5mm 塩水15%‐15mm 塩水15%‐30mm

浸漬開始 EPMA‐1 EPMA‐2

図-3 腐食センサーのモニタリング結果

浸漬面からの深さ

図-6 浸透解析結果と試験結果(230 日後)

0.0  1.0  2.0  3.0  4.0  5.0  6.0  7.0  8.0 

0 5 10 15 20 25 30 35 40

塩化物CL(kg/m3)

表面からの距離(mm)

試験結果(全塩分量)

解析結果

塩水3% 塩水15%

10mm 単位(%)

1.0%

22kg/m3

浸漬面 浸漬面

浸漬面 浸漬面 5‐10mm

50mm 15mm

図-4 EPMA の結果 土木学会第71回年次学術講演会(平成28年9月)

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参照

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