金 沢大 学 十 全 医 学 会 雑 誌 第1 0 5巻 第2 号 3 6 3 ‑3 8 1(1 9 9 6)
ラ ッ ト肝にお ける細 胆管増生お よ びオ バ ー ル 細 胞増 生と神経 支 配
一 病理阻 織 学 的, 免 疫 阻 織 化 学 的 検討 ‑
金 沢大 学 医学 部 医 学科 外 科 学 第一講 座 (主任:渡辺 洋字 数授) 金 沢大 学 医学 部 医 学 科病 理 学 第二講座 (主任: 中沼 安二教授)
小 泉 博 志
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小 型 胆 管の増 生は各 種 肝胆道 糸疾 患で生 ずる が, その発 生機 序や増 殖機 転に関して不明な点が多い・ ま た, これ らの小 型 胆管 増 生に果たす 局所の微 小 環軋 掛こ神 経の果たす役 割 も 全く 知られて いない・ 今 臥 こ の小型 胆 管上皮の増 殖性 病 変の 病 的意 義を細 胆 管 増 生と オパ ー ル細 胞 増 生の ラ ット モデルを用い主に病 理 魁 織 胤 細 胞 動 態お よ び神 経 分 布を中 心に検 討し た. 細 胆 管 増 生モデルは総 胆 管 結 集ラッ トを作 成し, オ バ ー ル細 胞 増 生は 3‑' メ チ ルー4 ジメ チ ル ア ミ ノ アゾベ ン ゼ ソ (3T・ m ethyl ヰ dir n ethyla min o a z obe n z e n e,3,‑M D A B) の投与によ り作 成し た・ 総 胆管 結 染 群お よ び 3‑'M D A B 群で ほ・ 7 日 日 よ り
細胆 管お よ び オバ ー ル細 胞の増生が門脈 城 辺 鹿 部に出現し・ 以後これ らの増 生域は徐々 に拡 大し, 1 4 日目以 降は拡 大し た門脈 域を架 橋 する ように増 生 域の拡 大が み られた・ そ し て, 4 2 日 冒には, いずれの モデルでもこれ らの病変のた め肝 実質が分 断さ れ 肝 硬変 様の形 態を示した. 細 胞 動 態を好銀 性 核 小 体 形成 体の凱 5 ブロ モー2,デ オ キシウ リ ジン標識 率, 増 殖細胞 核 抗原ラベ リソ ダ イソデッ ク スを用いて検 討した. その結 軋 増 生細 胞 管と オパ ー ル細 胞で, いずれの指 標 も7 日 目 で最高 値を と り以後 経 過と ともに漸 減した が,各 指 標ほ対 照 群よ りも高 値を示した・ ま た・3‑,M D A B 投与 群の方が総 胆管 結 染 群よ りも 各 指 数は持 続 的に高 値を示し た. 次に, 免 疫 染 色で神 経 線 推 分布を検討した・ プロテイ ンジ ー ン プロ ダクト 9・5 (pr otein ge n e pr odu ct 9.5,P G P 9.5) 陽性 神 経 線 維お よ びニ ュ ー ロペ プタイ ド Y(n e u r opep tide Y・ N P Y) 陽性 神経 線 維は・ 対 照 群では, 門脈 域の結 合 組織, 門 脈 壁, 肝 動脈 壁, お よ び胆 管壁 近 傍にみ られた が, 総阻管 結 集 群では・ 経 過と ともに これ らの陽性 神 経 線維の減 少 が み ら れ, 42 日目には肝 内の大 型 門脈 域のみに染 色さ れ た・ し か し, 3㌧M D A B 投 与 群では∫P G P 9・5 お よ び N P Y 陽 性神 経 線 推の減 少, 消 失な どの変化は み ら れず, 4 2 日 目 に は オパ ー ル細 胞 増 生 域に, P G P 9■5 陽 性神 経 線 椎の分布が み られ た・ 一 九
ニ ュ ー∴ロ こ/ ス ペシ フィ ックユ ノ ラ ー ゼ(n e u r o n spe cific e n ola s e, N S E) 陽 性神 経 線 維は, 対 照群では・ 門脈 域の脈管 周 囲の結合
織 内にみ ら れ た が, 総 胆 管 結 架 群や 3・一M D A B 投 与 群では′ 2 8 日 目以 降に細 胆 管増 生 域やオ バ p ル細 胞 増 生 域に N S E 陽 性神 経線 維の新 生が み ら れ た. S‑1 0 0 陽性 神経 線 維ほ, 対照 群で は, 肝 内大 型 胆 管, 隔壁 阻管レ ベル の門脈 域にみ ら れ た・ 総 胆 管 結 染 群で は, 経 過と ともに S‑1 0 0 陽性 神 経 線 維は減 少し, 消 失し た・ 3‑,M D A B 投与 群でを耳・ 門脈 域 内で ほ S‑1 0 0 陽 性 神経 線 維
の減 少, 消 失な どの変 化ほ み ら れ な か った・ サブス タン ス P (s ubsta n c e P,S P) 陽性 神 経線 維ほ′ 対 照 群で ほ・ 門脈 域の脈 管 周 囲の結 合織に み ら れ た. 総胆管 結 染 群, 3,‑M D A B 投 与 群では, S P 陽性 神経 線 維の経時 的な変 化は み ら れ な か った・ 電 顕的
にほ細 胆 管増 生 巣お よ び オバ ーリ レ細 胞 増 生 巣の細胞 間にほ 7 日 目〜4 2 日 目におい て無髄 神 経線 維が認め られ た■ 以 上の結 果よ り, ラ ット の総胆 管結 梨 群お よ び 3,‑M D A B 投 与 群では小 型〜大 型の門脈 域で の神 経 線維の分布や抗 原性に変 化 あるいは特異 な抗原 性を持つ神 経線 維に変 動があり, さ らに細 胆 管増 生 域お よ び オバ ー ル細 胞増 生 域でも, その細 胞 動 態の変 動お よ び経過
に関 連して支 配 神 経 線 軋 特にその抗 原 性の発 現に変 化が み ら れ た・ これ らの所 見は, これ ら小 型胆管 病 変 部の微 小 環境の形 成に神経 支 配が何ら かの関与を し ていること を 示す ものと考え ら れ る・ 今回の研 究によ り・ 今 後1 胆 管上皮の病 態や肝胆道 糸
疾患の発 生進 展 機 序の解 明に, 肝 内局 所の神 経線 維お よ び神 経 分 布を考 慮する必 要がある と考え ら れ た・
K ey w o rds bile ductula r prolife ratio n, 0 Val c ell,in n e r vatio n, 3,‑m ethyl‑4‑dim ethyla minoazobe n‑ z ene, bile du ct ligatio n
肝 内 小型 胆 管, 特に細 胆 管の増 生はl ヒ ト の種々の肝 胆道 糸 疾患で非特 異 的に認め られ る. その由 来, 増 殖の機 序, 細胞 動 態お よ び病理学 的 意 義に関して , 従 来 多 くの研究 報 告が な さ れ
て いるl 卜 明. ヒ トで は, これらの増 生 細 胞 管ほ その形態と形 質像
か ら既 存の胆管上皮の増 生によ るものと小 葉 辺 綾 部肝 細 胞の メ
タブラジア によ るものがある と考え ら れ ている1 0). ま た Rubin ば), 胆 管 結 如こよって起こる胆管 増 生は, 胆 管 細 胞と肝 細 胞 を渡合 するヘ リング管に由 来するので ほ なくト胆 管上皮の増生
の結 果 生ずる と報 告し ている. 3‑‑メ チ ルー4 ジメ チ ル ア ミ ノ アゾ
ベ ン ゼ ソ (3,‑m ethyl ヰd im ethyla min Q a Z Obe n z e n e, 3'‑M D A B)・
平 成8 年2 月27 日受付, 平 成8 年3 月1 9 日受 理
A b br e viatio n s : A B C, a Vidin‑biotin‑pe r O Xida s e c o mple x ; A F P, alphaMfetopr otein; AgN O Rs, a rg yr Ophilic pr otein s of the n u cle ola r o rga niz er r egio n; Brd U, 5‑br o m o‑de o xyu ridine; D A B ・ dia myn obe n zidin e tetrahydr o chlo ride ; 3,‑M D A B, 3,‑m ethylp4‑dim ethylami n o a z obe n zene ; N P Y, neur Opep tide Y ; N S E, n e utOn
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1 サ フ チ ルイソ チオシ アネ ー ト な どの肝 発 癌 物 質 投 与によって 出 現 する オパ ー ル細 胞ほその細胞 性 状ほ細 胞管に塀 似 する と さ
れてお り11 ト 1 3), 細 胆 管 増 生と同様に その発 生の由 来, 増 殖の幾
序, 細胞 動 態お よ び病 理 学 的 意義にほ細 胆 管増 生と同様不明な 部 分が多く 残さ れ ている. ま た, 細 胆 管 増 生と オパ ー ル細 胞 増 生の病 態の違いに関し ても不明な点が多 く 残されている.
さて最 近, 肝, 胆 道 系に分 布 する神 経の生理的役 割が注 目さ れ て お り, 肝 内微 小 循 環の調 節や胆 汁 分 泌な どに深 く 関与して
いる1 4 ト 2 5 )
. さ ら に肝 胆 道 糸疾 患そのもの の病 態と神 経 支 配の関 連 性 も 注 目されてお り, 特に, 神経 線 維や その分泌 物が増 殖 性 変 化や炎 症に深 く 関係していること か ら2 6 ), これ らの神 経 支 配 と肝 胆 道 疾患の発 生との関 連 性ま た肝 切 除 後の肝細 胞の再 生に 果 す 役 割 も 最近, 注 目さ れ ている叩 ). ま た, 最 近の免 疫鼠 織化 学 的手 法の発 達に よ り, 神 経 線 推の分 布と抗 原 性の変 化が光学 頗 徴 鏡 的, 電 子顕 徽 鏡 的に認 識できる ようにな り, 各 種肝 疾患 での神 経の分 布と病態 形成との関 連 性が研 究さ れ てい る2 8 )2 g )
し か し, 現 在まで の研 究で, 細 胞 管やオ パ ー ル細 胞な どの肝 内 小型 胆 管上皮の増 殖 性 病変と神 経 支 配との関 連 性につ いて は,
ほ と ん ど鮮明さ れ ていない.
そこで今回, 総 胆 管 結 梨ラッ ト で細 胞 管増 生を作 成し, ま た 3‑'M D A B 投 与に よ り オパ ー ル細 胞増 生を作 成し, これ ら 2 つ
の実験モデルを用い病理組 織学 的き 免 疫 魁織 化 学 的お よ び電 子 顕 微鏡 学 的検 討を行い, 細 胆管 増 生と オパ ー ル細 胞 増 生の病理 形 態l 細 胞 動 態, それに神 経支 配との関 連 性を検 索し た.
対 象 および 方 法
Ⅰ. 実験 動 物
1 5 0〜2 0 0g の雄 性Spr agu e‑Da wley ラッ ト(日本エ ス エ ル
シ ー , 浜 松) を用い ト以 下の全て の実 験を行っ た. な お, 実 験 開 始ま で は,
一 定の空 調 室 内で固形 飼 料 C R F‑1(日本チ ャ ー ルズ リバ ー , 厚 木) を自 由摂 食さ せ, 自 由飲 水 下に飼 育し た.
Ⅰ. 肝 内の肝 内胆 管およ び 門 脈 域の分類
肝 内胆 管を Naka n u ma ら叩の分類を多 少 修 飾し て用いた. す な わ ち, ラッ トでは肝外で総 胆 管が左 菓, 中間 葉, 右 菓, 尾 状 菓お よ び方 形 菓 枝に分 岐し肝 内に分 布 する. そこで総 胆 管の第
一次 分 枝を肝 内 大型 胆管と した. 肝 内 大型 胆 管よ り末 梢の不 明 瞭な が らも 線 維 性の胆管 壁が み ら れ肝 実質か ら離れて分 布 する 胆 管を隔 壁 胆 管と し た. 胆 管 壁はなく 門脈 域 内で肝 動 脈 枝に伴 走し肝 実 質か ら離れ て分布 する胆 管を小葉 間 胆 管と し, 肝 小 葉 辺 線 部 限 界 板の肝細 胞と門 脈 域 内を走 行 する 胆管 壁を持た な い, 横 断 面で 5,6 個の立 方 体の胆 管上皮よ り な る胆 管を細 胆 管と した. ま た, 各々の太さの胆 管を門脈 域のレ ベ ル の基 準と
し て用いた.
Ⅲ. 実 験 方 法 1 ∴実験 群の設 定 1) 総 胆 管 結 染 群
細 胆管増生モデルであり, 1 8匹の ラッ ト を用いた. 腹 部を剃 毛 後, ジュ チ ルコ⊂・‑‑テル麻 酔 下に・, イソジン ( 明 治 製菓, 東 京) で消 毒後 無 菌 的に開 腹し た. まず 肝 十二指 腸 間 膜に到 達し そこで総 胆 管を同定した. 間膜を鋭 的に切 開し ∴総 胆 管のみ を
約Ic m にわ た り十 分に露 出し遊 離した. つ いで下 部 総 胆 管を 5m m 以上の間 隔をあけ二重 結 熱し, その中 間を切 離し た. そ
の後, 2 層 縫 合で開 腹し手 術を終え た. 2) 3'‑M D A B 投与 群
オパ ー ル細 胞 増 生の モデル であり, 1 8匹のラッ トを用いた. 固 形飼 料 C R F‑1 の代わ りに, 0.0 6 % 3'‑M D A B 添 加 固 形 飼料を 自 由摂 食さ せ た.
3) 対 照 群
腹部を剃 毛 後, ジュチ ル エ ー テ ル麻 酔下に, イ ソジンで消 毒 後 無 菌 的に開腹し た. まず 肝 十二指 腸 間膜に到 達しそこで総 胆 管を同定し た. 間 膜を鋭 的に切 開し, 総 脛管のみ を約1c m にわ た り十 分に露 出し遊 離した. その後 直ちに2層 縫 合で閉腹した ものを単 開腹 手 術 群(対 應 群) と し た. 1 8匹の ラッ ト を用いた.
2 . 肝敵 織 標 本の作 成
実 験 開始 後7 日目, 1 4 日 目, 2 1 日目, 28 日臥 35 日臥 4 2 日 目に各 突抜 群の 3 匹 を ジュチル エ ー テ ル麻酔 下に屠殺した. そ の後 直ちに4 ℃の 4 % パ ラ ホ ル ム ア ルデヒド + 0.2 % グル ター ル ア ルデヒド + 0.2 % ピ クリン酸 溶 液で環 流 固 定を行い, 肝を 取り出し た. 更に4 ℃の4 % パ ラ ホ ル ム ア ルデヒド + 0.2 % ピ クリン酸 溶 液で4時 間浸 潰 固定した. 次い で, これらの肝の 一 部を型の如くパ ラフ ィ ン包嘩し, 各ブロ ック に つき1 0枚以上の 5JJm 切 片を作 成し た. 残りの肝ほ,2 0% 薫 糖 加リン酸 緩衝 生理 食塩 水 (pho sphate‑buffe r ed s alin e,P B S)(pH 7.4) に2 日間浸透 さ せ, Op tim u m c ut ting te mpe r atu f e コン パ ウンド(マイルス
・ 三共,東 京) に包 埋 後, 液 体 窒 素で直ちに凍 結し た. その後ク
ライオス タッ ト(テ ィ シ ュ
ー ・ テ ッ ク, マイルス ・ 三共, 東
京) で各ブロ ッ クよ り1 0枚 以上の 2恥m 凍結 切 片を作 成し, 使 用時ま で ‑8 0 ℃ で保 存し た.
3 . 組 織 学 的 検 討
各 実験 群のパ ラ フィ ン包 唾 切 片を, 型の如 く 脱パ ラ フ ィ ン
し, その後 H E 染 色, アザン染 色, 過ヨ ウ素 酸シ ッフ法 染色 (pe riod ic a cid Sch if f,P A S) 染 色, ゴモリの鍍 銀 染 色を行い, 光
学 顕 微鏡 下に観 察した. 4 . 細 胞 動 態の検 討
細 胞動 態の検 討のた めに, 好 銀 性 核 小 体形 成 体 (a rg yr ophilic pr otein s ofthe n u cle ola r o rga niz e r r egio n,AgN O Rs) 数, 5 ブ
ロモ 2'デオキシウ リ ジン (5‑br o mo‑de o xyu rid in e, Brd U) 標 識 率, 増 殖 期 細 胞 核 抗 原 標 識 指 数 (pr oIife r ating c ell n u cle a r
a ntige nlabelinginde x,P C N A L I) を求め た. AgN O Rs はリボ ゾ ー マ ル D N A の ル ー プ を形 成し ている構 造で∴細胞の分裂,
増 殖に関 与して いる と考え ら れて いる3 1 )、3 3 ). Brd U ほ D N A 合成 中のS 期の細 胞 核に取り込ま れ ること が知ら れ ている3佃T) P C N A は増 殖サイク ル の主にG l 後 期か ら S 期にか け て細胞 核 内に蓄 積し, D N A ポ リメ ラ ー ゼ∂の補 助 因子 と して磯 能して
いること が知ら れて いる抑〜41 ) 1) A gN O Rs 数
P loto n ら3 1)の方 法に従って染 色し た. すな わ ち, 5JJm の パ ラ フ ィ ン切 片を塾の如く 脱パ ラ フ ィ ン後∴蒸 留 水で十 分に洗 浄し た. その乱 1g/d l の蟻 酸に 2g/dl のゲラ チンを溶 解した溶液
と5 0% 硝 酸 銀 水 溶 液と を 1 :2 の割 合で混合し た反 応 液 中に切
spe cific e n ola s e; P A S, pe riodic a cid Schiff; P B S, pho sphate‑b uffer ed s alin e; P C N A , Pr Olife r atingc ell n uclea r antige n; P C N A LI, Pr Olife r ating cell n uclear a ntige n labeling inde x; P G P 9.5, anti‑hu m a n pr otein gen e pr odu ct 9.5; S P , S ubstanc e P