セメントペーストプレコート鉄筋の
付着,ひびわれ特性
(昭和48年10月20日 原稿受理)
開発土木教室渡辺 明
〃 出 光 隆
開発土木大学院十河茂幸
Bond Properties of the Cement Paste Precoated Reinforcing Bar
By Akira WATANABE Takashi IDEMITSU Shigeyuki SOGO
During the construction work of reinforced concrete structure,10ts of joints are needed, involving construction joints, where the reinforcing bar extended from the concrete surface are exposed to corrosion and sometimes the bar might be corroded seriously. Therefore, before placing the next concrete, it is often obliged to take ofE the rust of the surface of the bar.
The authors tried to coat the exposed surface of the bar by cernent paste and studied how it prevented the steel corrosion, how it affected on the bonding perfor・
mance and the cracking behavior etc.
As the results of the study, they made clear that the method can be used practically and is very effective against steel corrosion.
されるため発錆が特に著しい)。例えば,北九州 1・ ま え が き 工業地帯ではこの傾向が認められ,打継目のコン 鉄筋コンクリート構造は,配筋,型枠組立など クリートを打設する前に鉄筋表面の錆を落とす作 の作業工程やコンクリートの硬化速度などの関連 業を余儀なくされることが多い。鉄筋とコンクリ で,段階的に施工されるのが普通である。そこ 一トとの間の付着強度が低下することを懸念して で,鉄筋コンクリート工事では必ず打継目が必要 の配慮であるが,このような作業は鉄筋量の多い
となってくる。また,近年,現場での省力化を図 現場では軽視し難く,かなりの労力と時間を必要 る目的でプレハブ構造が急増しつつあるが,この とし,工事の進捗を妨げ経済的損失が大きい。
場合でもプレキャストのはり,柱,スラブなどの そこで筆者らは,この錆を防ぐ一方法として,
現場継手が必要で,その継手方法に関し各方面で 打継目に突出した鉄筋表面にあらかじめセメント 研究が進められている。 ペーストを塗布する方法を試み,その効果,問題 一般に継手部の鉄筋は突出しておくので,外気 点を探ってみた。ちなみに本法を セメントペー
に曝す期間が永いと,発錆が避けられず,特にそ ストプレコート防錆法 と呼ぶことにする。
の際の環境条件が悪い場合には,錆の進行が速い 筆者らは本法の問題点を明らかにすべく,水セ
と報告されている(鉄筋を曲げたりねじったりし メント比を種々変えたセメントペーストをプレコ
た部分,すなわち加工部では安定な酸化被膜が壊 一トした鉄筋とそれをしない鉄筋を用いて両引き
試験押抜き試験などを実施し,付着特性,ひび 求めるとともに,供試体端部で鉄筋の引抜き量も われ特性などを調べてみた。本文はその結果報告 同時に測定し,後者では供試体の上下の端部で鉄 である。 筋の押抜き量を測定し,それらの結果から,各鉄
2付着ひびわれ試験について 筋の鰭特臨ひびわれ離を比劇てみた・
鉄筋とコンクリートとの付着強度試験には,引 3 使用コンクリートならびに鉄筋
抜き試験両引き試験そしてはり試験などがあ 本実験に用いたコンクリートの配合を表一1 り,それぞれ特徴を有するから,目的に応じた試 に,また,在縮強度,引張強度,弾性係数,ボア 験を行なわなければならないことはいうまでもな ソン比などを表一2に示す。なお,使用セメント い。 は普通ボルトランドセメントで比重314,砂は 我国ではまだ付着強度の標準試験方法が規格化 海砂で比重2.56,F. M.2.80,砕石は硬質砂岩
されていないので・各国で採用されている方法, で比重2.70,F.M.6.80であった。
例えばASTMの方法, BSの方法等を採用して
いるが,現在躰コンクリート会議日本土木 表一1コンクリートの示方配合
学会などで標準化の作業をすすめつつある。1)
周知のごとく鉄筋コソクリートは非常にすぐれ
た複合材料であり,引張に弱いコンクリートを鉄 最大寸法
筋が徽い・酸に弱い鉄筋をアルカ唖のコソク 〔mm〕
リートが保護する形で両者が協力して外力に抵抗
20 9 4.5 53 46 168 320 805 996 2 している。したがって鉄筋コンクリートを構成す
る各要素すなわち,鉄筋とコンクリートが良好で
表一2 コンクリートの強度特性など なければならぬことはもちろん,両者をつなぎ,
力を伝達する付着性が極めて重要な問題となる。 圧縮強度σ28 273kg/cm2 また・一般1こ醐の許容応力度が錨自身の強度 引張強度・− 2・・4k・/・二「一 で決められずコンクリートのひびわれ幅(通常 弾性係数 12・・ユ×ユ・・k・元m・一 の場合α2mm)で決定されている世界的情勢の一一 、ソン比「 ・.・「一
一一 −一 一
単位 量〔kg〕
粗骨材の
ナ大寸法 kmm〕
スランフ゜〔cm〕 空気量〔%〕 杢㌶ト比〔%〕 細骨材率〔%〕
水
メント
セ 細
@骨
@材
粗骨材 5ゾ㍑し
もとでは,ひびわれが広く分散し,個々のひびわ
れ幅が小さいことが肝要で,いわゆるひびわれ特 本実験に用いた鉄筋は異形丸鋼D19, D 25,
性の問題も同様に重要である。2) D32と普通丸鋼φ19の4種類である。まず,予 日本では東海道新幹線や名神高速道路などの工 備試験としてセメントペーストの濃度を種々変え 事あたりから異形鉄筋の使用が急増し,それまで て鉄筋に塗布してみた結果,水セメント比を小さ の丸鋼偏重の体質を改善したが,異形鉄筋はその くすると塗りむらができ,大きくすると付着し難 付着強度が著しく大きく,しかもひびわれ分散能 くなることがわかった。ここでは,ハケを使って が極めて優れており,これが近年の鉄筋コンクリ 鉄筋に塗布したが,水セメント比60%程度のも 一ト工事に貢献した功績は大きい。 のがその作業性,仕立上り両面で良好であった。
以上の見地から本研究では付着強度試験およ したがって鉄筋のプレコート用セメントペースト
び,ひびわれ試験の実施を計画し,打継目の鉄筋 は,両引き試験の場合は,D19に対し水セメン
にプレコートすることが付着特性,ひびわれ特性 ト比50,60,70%の3種類を,他の鉄筋に対し
にどのように影響するかを調べることを重点目標 ては水セメント比60%のものを用いた。押抜き
とした。 試験ではすべて水セメント比60%のセメントペ
本実験では,両引き試験ならびに押抜き試験を 一ストを用いて行なった。なお,比較のため各々
行ない,前者では引張応力とひびわれ幅の関係を の鉄筋について,プレコートをしないものについ
ても試験を行なった、 載荷端 鉄筋 4. 供試体および型枠
41両引き試験用供試体 荷・⇒
供試体の寸法,形状を図一1に示す。写真一1 は供試体作製用型枠である。鉄筋を鉛直かつ断面
中心を通るように型枠に配置し,コンクリートを 1 5 早伽,.・
棒状バイブレータでつめながら打設した、なお供 図一2 押抜き試験用供試体 試体は鉄筋各種につき3本ずつ作製した、
荷1王
⇔
ハ
二:::二=二_一 ⇒
25 100 25
o 11 単伽cm 図一1 両引き試験用供試体
≡i
写真一1 両引き試験用型枠
写真一2 押抜き試験用型枠 5. 試 験 方 法
5.1 両引き試験方法
鉄筋コンクリート部材では,鉄筋の付着が良好 でかつ引張側コンクリートに生ずるひびわれ幅が なるべく小さいものが好ましいことを前記した。
両引き試験では鉄筋およびコンクリートともに引
4.2 押抜き試験用供試体 張応力が働き,一般のRCはりの引張部分をかな
供試体作製用型枠を写真一2に示す.鉄筋が押 りよく再現しており,この意味で同試験法は鉄筋
抜き面と垂直になるように特に配慮し,鉄筋を水 およびコンクリートのひびわれ特性を簡単に示し
平に固定し,棒状バィブレータを用いてコンクリ うる一つの方法といえる.すなわち,断面の一辺
一トを打設した.供試体の寸法,形状などを図一 が10〜20cm程度の四角柱供試体の中心に鉄筋
2に示す。なお供試体は両引き供試体同様各鉄筋 を埋め込み,両端を突出させておき,これを両引
種別に3本ずつ作製した、 きする方法3)で,供試体の長さは十分長いものと
する。本実験における供試体の寸法,形状は図一 5.2押抜き試験方法
1に示すとおりである。なお試験はコンクリート 図一2に示すとおり,15×15×15cmのコンク 材令28日にて行なった。 リートの中央に垂直に鉄筋を埋め込み,その突出 (1) 引抜き量測定法 長を両端約1cmとし,一端から加圧し両端の押 引抜き量測定装置を図一3に示す。これはコン 抜き量を測定する方法である。供試体を試験機に
クリートと鉄筋との引抜き量を4つのダイヤルゲ セヅトしたところを図一4に示す。この状態から 一ジによって読取り,それらを平均し測定誤差を 載荷を開始する。すなわち供試体の鉄筋上部より なるべく小さくするように工夫された装置であ 500kgきざみに圧縮荷重を加えていき,各荷重 る。コンクリート供試体にダイヤルゲージを固定 段階ごとに上部および下部での鉄筋とコンクリー した鉄枠を取りつけ,埋込み鉄筋端にゲージ接点 トとのずれを測定した。この際,上部押抜き量は をタッチさせ,その接触面にはガラス板を貼りつ 4つのダイヤルゲージを用いて測定し,それらの けた。なお,1/100mmダイヤルゲージを使用し 平均値とした。なお,本実験はコンクリート材令 た。 28日にて行なった。
o
荷重
締め付けネン 固定リンク 調整ネジ 調整ネジ カラス板
ダ,ヤルゲージ 鉄筋 ≡1ド1・ ダ他ゲー・
り ゆ シ
マグ不ットベース
[ 鉄枠 。ll。
ダイヤルゲージ 供試体
UP 図一4押抜き試麟置
図一3 引抜き量測定装置
6. 試験結果および考察
引張荷重は200kgきざみに段階的に上げてい 6.1両引き試験結果および考察 き,各段階ごとに引抜き量を読みとり,引張荷重 (1) 付着特性
と引抜き量との関係を調べた。 引抜き量と引張力との関係につき同一条件の3 (2) ひびわれ幅測定方法 本ずつ試験した結果を図一5,6,7,8,9に示 コソクリートのひずみを測るために,供試体の す。図一5〜9より鉄筋の引抜き量δ一〇.05mm 軸方向に等間隔に5枚のストレィンゲージを貼布 およびδ一〇・1mmに対する鉄筋応力度を求め,
して,各点のひずみを測定し,その値の急変によ この平均をまとめて表一3に示す。図一5〜9か って,肉眼では発見し難い微細なひびわれの発生 らわかるように各供試体別のバラツキは小さく を正確に探知し,それらのひびわれの幅を顕微鏡 表一3の平均値は十分信頼できるものと考えられ 式クラックメータを用いて測定した。なお,この る。これより次のような結果を得る。
クラックメータの最・」・目盛は0.025mmである。 鉄筋の径やその表面形状が変化すると任意の引
載荷は200kgきざみに行ない,各段階でのひ 抜き量に対する鉄筋応力度は表一3に示すごとく
びわれ幅,ひびわれ間隔などを実測した。なお, 当然異なるが,鉄筋径が同じ場合はセメントペー
ひびわれ幅の測定は終始同一箇所とした。 スト塗布の有無,その濃度の変化などによる付着
引
・荷 張6
重
(ton)
○:供試体No 1
●:供試体No 2 θ:供試体No 3
(プレコートなし) (60%プレコート)
5 10 0 5 10
引抜き量(1/100mm) 引抜き量(1/100mm)
図一5
引
張6
一荷 重
ton)
4
○:供試体No 1
●:供試体No 2 θ:供試体No 3 2
D19−50 D19−70
0 5 10 0 5 10
引抜き量(1/100mm) 引抜き量(1/100mm)
図一6
引
張6 荷
重.
(ton)
4
2
.一
@ 一十一一
干
lo:供試体Nol
l●:供試体No 2 θ1供試体No 3
1
−「…
lD25
(プレコートなし)
1
−■ u一
D25−60 0 5 10 0 5 10
引抜き量(1/100m血) 引抜き量(1/100mm)
図一7
15 − ・
引 覆1・
引抜き量(1/100mm) 引抜き量(1/100mm)
図一8
引 張 荷
(ton) 重4
ゾ/声
一 ノ/ 〆
捻。
(プレコートなし)
00510152
引抜き量(1/100mm) 引抜き量(1/100mm)
図一9
表一3 引抜き量と鉄筋応力度 特性の差異はほとんど認められない。
鉄 筋
D19
D25 D32
φ19
セメント ペースト のW/C
(%)
0 50 60 70 0 60 0 60 0 60
(2) ひびわれ特性
響度1篇;る㌻欝鷺雰r㌶鴎
750 ユ070 880 880 910 1040 900 810 620 640
ユ850 い。そのため載荷時にコンクリートにわずかなが 2080 @ らもモーメントが働き,また当然偏心はかぶり
翻 にも影乳てくるから,ひびわれ幅はその辮を
1920 2040
受けることになる。また,コンクリートの品質の ばらつきから,ある箇所のひびわれが特に大きく なることもあり得る。よって,ひびわれ幅と荷重
㌫ の関係醐べる場輪それらの影響を考慮し,
最大ひびわれ幅を用いないで,全ひびわれの平均 1230 @ ひびわれ幅を用いることにした。
1260 鉄筋応力度(σ、)と平均ひびわれ幅(ε)の関
係を図一10,11,12,13に示す。次にそれぞれ 強度τ。との関係は次式のようになる。
の広一ε舗からε=α1m叫〔2mmに対 。一竺.色 (、)
する鉄筋応力度を求めて表一4に不す。これによ 仰 τ・
ると,セメントペーストを塗布することによっ θ:ひびわれ間隔 て,D25使用の場合のみσ、の値が若干小さくな ・4、:鉄筋断面積
っているが,D19, D32,φ19使用においては 〃:周長
ほとんど差が認められない。 ρ:鉄 筋 比
鉄筋コンクリート部材の引張ひびわれの間隔な σ・:コンクリートの引張強度 らびに幅などについては,周知のとおりSaliger τ。:付着強度
の研究4)がある。
Saligerの理論によればひびわれ間隔θと付着
15 表一4 ひびわれ幅と鉄筋応力度 鉄
鉄 筋 セメント ペースト (%)
鉄筋励度(kg/・m・) 籠12
Dユ9
0 50 60 70
・一α・mm l・一・2mm 皇
1010 930 930 860
ユ880 σ,g
ユ440 (kg/mm2)
1880
1830 6
D25 60 0 860 710 2210 17ユ0 D32 60 0 730 740 2530 2510
φ19
0
U0
720 T90
1240 P060
!/
//
〆づ / !/
/ //
/ //
、げ.ダ / //
/ //
〃ダ
, 3=3プレ・パ 3 H なし
庄二竜プレコ_ト
∠トーr△ (60%)
0.10 0.20 平均ひびわれ幅ε(mm)
図一11 鉄筋応力度とひびわれ幅(D25の場合)
25 鉄 筋20 応 力 度 15
(kg/m㎡)
10
5
合二8プ・・一ト
ムー一「△ (60%)
●一一一●
←■プレコートなし
▲→
17.5
籠14.0 勇 度10.5
σs (kg/mm2)
7.0
3.5
1/l dφ李 / /
φφ
1 / 1 ノ
φφ4
! ノ ! / z / / / / ! /
膨φ
ノ ソ ノ/!/
翰=フレコ☆
曾二Bプレコート
ムーマム (60%)
0.10 α20 α10 0.20
平均ひびわれ幅ε(mm) 平均ひびわれ幅ε(mm)
図一10 鉄筋応力度とひびわれ(D19の場合) 図一12 鉄筋応力度とひびわれ幅(D 32の場合)
鉄 籠20
皇
σ、15
(kg/mm2)
1,
●一一● 1
ト■プレコートなし
㌫二毛プ・・一ト(6・%)ノ
力度を求めて表一6に掲げる。同表によると特に D25の場合にセメントペーストプレコート鉄筋 ではプレコートしていない鉄筋と比べて平均付着 応力度がかなり小さくなっている。しかし,D19 の場合は大差なく,D32ではむしろ前者が後者 より若干大きいことがわわる。
7
ク〃 魏
量6〃/寸
P5桝〆 α10 α20 α30 (t・n)
平均ひびわれ幅、(。m) 4 図一13 鉄筋応力度とひびわれ幅(φ19の場合)
3 いま,異形鉄筋では引張荷重が3tonの時,普
通丸鋼では引張荷重が1tonの時について実測ひ 2 −一一一下部押抜き量 一上部押抜き量 びわれ間隔より(1)式を用いて付着強度を求め
てみると表一5のようになる・なおこの場合の付 1 ㌃:㌃;二胤)
着強度は各鉄筋3本の実測データの平均により求
めたものである。 5 10
押抜き量(1/100mm)
表一5 ひびわれ本数と付着強度 図一14 押抜き荷重と押抜き量(D19の場合)
鉄 筋
D19
D25 D32
φ19
プレコート (%)
0 50 60 70 0 60 0 60 0 60
付着強度
(kg/cm2)
79.7 95.8 85,7 83,9 60.6 64,1
55.3 48.9 33.4 38.0
ひびわれ 本 数
4・7 抜 5.7 き 5.0 荷6 5.0 重
一 押7
4.6 P5 5.0 (t・n)
4
〆 ! 〃 〃/ ノ
〃/ ノク/
、,
^ダ
/ ///
1//
1!/
㎡
∫/
6.0 5.0
1.3 1.7
3
2
6・2 押抜き試験結果および考察 1 ●▲■プレコートなし 押抜き荷重(ρ)と上部および下部の押抜き量 o△ロプレコート(60%)
(δ)の関係を図一14・1516に示す。また・P− 5 10 δ曲線からそれぞれの上部押抜き量δ一〇・1mm, 押抜き量(1/100mm)
下部押抜き量δ一〇.05mmに対する平均付着応 図一15押抜き荷重と押抜き量(D 25の場合)
押 抜 荷 き6
重 P5
(t・n)
4 3
2
1// / /
/!! /
;・//
9 、
P,
/ /