北九州市における通勤交通手段選択について
(昭和56年10月26日 原稿受付)
開発土木工学教室渡辺義則 開発土木(大学院)吉田昌弘
Modal Split of Commuter in Kitakyushu City
by Yoshinori WATANABE
Masahiro YOSHIDAIn order to clarify the modal choice behavior of commuters, a questionnaire survey was carried◎滋f◎r the c◎mm就ers in Kitakyusyuαty ln 1979. The survey results are s畑wn as follows.
(1) F◎rthe survey da垣, the disaggreg批ed mo(量el are apPlied, such as qua就ification analy−
sis−2, linear muitiple regression model and binary logit model, in order to analyze the factors
affecting the modal choice of commuters.
(2)Thαe are substa琉輌al diffα砲ce§in comm就eτtravel pattem, between car and carless
household. Then, commuters should be stratified and analyzed by car ownαship.
(3)The most important factors of modal choice for public transport c◎mmuters or car ones,
is the do◎r−t◎−door travel times.
(4)Travel cost is not Seemed to be a significant factor.
L緒言 ことにより適鯛の交瀞暇択行動を解肌ようと
試みた。
都市の住民は,個々のトリップを行なう際,その目的
及び臥の条件蹟遁飢鮫欝段及び経路遠 2・アンケー間査
ぶ。一見,ランダムに見えるこの行動も,限られた都市 アンケート調査は,昭和54年10月に図一1に示す北九州 機能の中に集積されることにより,自動車交通の偏重に 市内の ①住宅公団金田団地(小倉北区) ②片野県営
よる弊害,、公共交通機関の衰退,そして交通貧困層の発 住宅・公団住宅・マンション(小倉北区) ③住宅公団 生などの社会問題を誘起してきた。 萩原団地(八幡西区) ④北方公務員宿舎(小倉南区)
都市における通勤交通を考えた場合,通勤者が単一の の各場所で,通勤者として各世帯の世帯主を対象として 交通手段しか選択できない場合は稀であり,常になんら 個別訪問留置方式によって行なった。調査地域は,①交 かの競合する交通手段が存在するので,通勤者は利用可 通手段として,バスと路面電車が利用可能であること② 能な交通手段を相対的に評価して交通手段を決定する。 両交通機関の運転間隔や停留所までの歩行時間に大差が
しかし,従来の研究では,現在の交通手段と競合関係に ないこと,を留意して選定した。なお調査地域を北九州 ある代替の交通手段を調査者が意図的に設定することが 布内において位置づければ,金田は市街地中心部,北方 多く,個人の自由意思での選択行動を必ずしも充分に解 は市街地周辺部,片野他と萩原はその中聞に相当する。
明していない。そこで本研究では,アンケート調査で通 またアンケートの有効回収数は744であり,配布数の76.
勤者の社会経済的な特性,代替の交通手段,並びに,現 4%にあたる。アンケートの質問内容は,被調査者の個人 在の交通手段と代替の交通手段のトリップ特性の差違な 属性及び現在と代替の通勤交通手段のトリップ特性を問
どを,被調査者自身に決定してもらった結果を分析する うものであるが,質問内容の詳細は紙面の都合で割愛す
る。アンケート調査結果の一部を表一1と図一2〜4に示 す。調査地域の個人属性,トリップ特性をまとめると以 螂距
若松戸畑 , 下のようになる。
〆へ 綴、戸畑区r小倉禰 市街地中 蹴位置する金田は泄帯主の平均年齢は
ノ . 人レ兵 ① 小倉北区更区 35.4才で,比較的所得の高いホワイトカラー層が多く,
縮③萩酬〆冷②/驚難㌶:㌶遮:三灘嶽
上運転免許を所有する割合及び乗用車保有率は最も低 い。通勤のための乗用車及び公共輸送機関利用率は低く,
①金田団地②片野他③萩原団地④北方宿舎 徒歩通勤者の割合が高い。また,乗用車,公共輸送機関 図一1 アンケート調査地域 利用時の平均所要時間は短い。
構 成 比 (%)
0 50 100(%)
鑑。プ,レ 48.7 2・.・ 19.5195.』 64
40
×30
習
20
10
0
獅 73.7 25.。° 4
饗 41.6 2・.6 1・.37.313.31 .・
ぱ他 46.2 12.913.612.15.35.・・.・
静 53.6 2・.5 9.74.96.21 〜.・
専F
槙ヌ理販売舗㌶サ華スその他
図一2 地域別職業別構成
サンプル数 平均(人)
サンプル数平均(万円) O金田 153 3.15
0 金田 154 381.8
忽 虻一合く 1・
0,9
100 200 300 400 500 600 700 0 99 199 299 399 499 599 699
〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 1 2 3 4 5人以上 世帯所得 (万円) 家族数 (人)
図一3 地域別世帯所得(年収) 図一4 地域別家族数
表一1 アンケート鯛査結果
調査地域
①金田 ②片野他 ③萩原 ④北方全域
主要駅への直線距離1(km)
1.5 2.5 1.9 4.8有効回渓数 ㈱ 154{73.7) 132/65.o) 234〈7L8) 224〈§1.8) 744〈76.旬 乗用車保有率 (%)
55.2 56.8 67.1 67.4 62.9
運転免許所有率 {%)78.6 68.9 74.8
75.◎74.6
〃(2人以上)*2(%)
18.2 19.620.5 21.0 20.2
の通
@勤¥交
@通ャ手
@段
乗用車 (%)
共輸送機関*3(%)
k歩 (%)
サの鯉4 ㈱
43.5 Q7.3 Q0.8
W.446.2
R7.1P0.6
U.157.8 R2.9
Q.2V.1
52.0 S4.4
P.3 Q.351.1
R6.◎V.3
T.6 所手
v段
桾ハ
@均ヤ平
乗用車 (分)
共輸送機関 扮)
條ヤ差 (分)
22.0
R4.1 P2.122.0 R4.8
P2.827.0
?潤D4
Q3.4
41.1 U7.奪
Q5.9
29.6 T1.1 Q1.5
*1 主要駅とは①,②,④にっいては国鉄小倉駅,③については国鉄黒崎駅を示
す。*2 1世帯の中に2人以上の運転免許所有者が存在する割合。
*3 バス,路面電車,国鉄。
*4 バイク,自転車など。
市街地周辺に位置する北方は,世帯主の平均年齢は, 域ほど乗用車保有率は高い。なお,ここでは割愛したが 41.8才と他地域と比べて最も高く,公務員宿舎であるた アンケート調査結果によると,家族数が多くなるほど乗 めに専門・事務・技術職と管理職の占める割合が圧倒約 用車保有率が高くなるという傾向が認められる。
に高い。また世帯所得は他地域と比べて高く,3〜4人 ②乗用車保有率が高ければ乗用車で通勤する割合は高
家族の占める割合が高い。乗用車保有率は他地域と比べ くなる。て最も高い。通勤のための乗用車及び公共輸送機関利用 ③市街地中心部へ位置する地域ほど,通勤のための乗
率ともに高く,都心部より離れているために乗用車,公 用車利用率と公共輸送機関利用率は低く,逆に,徒歩通 共輸送機関利用時の平均所要時間も長い。 勤率は高くなる傾向がある。萩原は世帯主の平均年齢は38.3才で,職業構成は多岐
3.非集計モデルによる分析 にわたる。家族数は4人の場合が多い。また,通勤のた
めの乗用車利用率は他地域と比べて最も高い。萩原は市 アンケート調査データから,通勤者の交通手段選択に 街地中心部と周辺部のほぼ中間に位置しているためにト 影響を与える要因を数量化理論第II類,線型重回帰モデ
リップ特性も金田と北方のトリップ特性の中間的性質を ル,ロジットモデルなどの非集計モデルを用いて分析し 示す。 た。
片野他は世帯主の平均年齢は40.1才で,職業構成は多 表一2に数量化理論第II類による分析結果を示す。説明
岐にわたる。家族数は3人の場合が多い。また世帯主が 変数としては,個人属性の9要因(乗用車の保有・非保
女性である場合が18・9%ととび抜けて高く・そのために 有,性別,年齢,職業,年収,運転免許所有の有無,家 運転免許所有率は低い・また・金田と似たトリップ特性 族数,家族内運転免許所持者数,居住地域)とトリツプを示すが・公共輸送機関利用率は高い。 特性の4要因(勤務先地域,公共輸送機関利用時の時間 次に・地域別の特性を総合して以下の特徴が認められ 距離,所要時間,所要時間差)を考え,その組みあわせ
る。 について種々分析し,そして相関の高い要因,あるいは
①家族内で2人以上運転免許を所有する割合が高い地
レンジの値が非常に小さい要因を排除した結果,表一2に要 因
カテゴリー サンプル数 カテゴリーEェイト
レンジi順位)
保 有
306 一〇.7432,028
車保有 非 保 有
1771,285
(1)専門・事務
2700,013 0,073 職 業 管 理
113 一〇.051 (4)そ の 他
1000,022
勤務先 CBD 404 0,044 0,267
地 域
その他 79 一〇.233 (2)金田・片野
133 一〇.0460,063
居住地 北方・萩原
3500,017
(5)〜− S0 43 一〇.122
0,246
所要時 一39〜−30
61 一〇.135 (3)間差(分)
一29〜−10
2970,015
一9〜 82
0,111
相関比 η2
0,582
適中率
88.2%
のように定義すれば,1パラメータβは次の重回帰式に最 小二乗法を適用することにより推定される。
ノH=βz乞 (3)
次にロジットモデルは次のように表わされる。
君・「+,x;(一β2 ) (4)
島 =1−P1 (5)
パラメータβの推定には最尤推定法を用いる。すなわち
標本データ( =1……1,総数1人)が観測される確
率のlog尤度関数は次のように表わされる。エ
L=Σ[んlog Pl +(1一ん)log(1−Plゴ)] (6)
=1
これを最大とするようにパラメータβを決定する。
表一3は,線型重回帰モデル並びにロジットモデルによ る分析結果である。被説明変数は表一4で示される。説明 変数は,上記の数量化理論第II類による分析と同様の変
示す5要因(乗用車の保有・非保有,職業,居住地域, 数を用いた。ただし,数量化理論第II類において,変数 勤務先地域,所要時間差)をモデル作成時の説明変数と はすべてカテゴリー化されダミー変数で与えたのに対
して採用した。ここで,居住地域,勤務先地域はOD調 し,線型重回帰モデル,ロジットモデルにおいては所要 査等の起点,終点にあたり,所要時間差は乗用車と公共 時間差の変数は数値で与えている。この2つのモデルの 輸送機関の所要時間差である。表一2のレンジの値が示す 回帰係数の値が示すように乗用車保有の変数にかかる回
ように,乗用車の保有・非保有の要因が,交通手段選択 帰係数の値は,他の係数の値に比べて著しく大きく,こ を規定する最も重要な要因であり,続いて,勤務先地域, の変数のみでかなりの説明力を持っている。
所要時間差の要因が重要とみなされるが,職業などの個 ここで,モデルの適合性を示す指標としては,数量化 人属性の要因はあまり重要でないと考えられる。 理論第II類では相関比,線型重回帰モデルでは重相関係 二者択一選択確率モデルとして,線型重回帰モデル, 数,ロジットモデルでは尤度比を用いた。また,この3
ロジットモデルは以下のように説明される。個人iが選 つのモデルを相対的に比較する指標としては,判別がど
択肢1を選択する確率を孔,また選択肢2を選択する れだけ成功したかを示す的中率を用い,線型重回帰モデ
確率を島 とすると,線型重回帰モデルは次のように表 ルとロジットモデルを比較する指標としては,線型重回 わされる。 帰モデルが有効であるかどうかを判定する重相関係数に…{÷iτii:i1)q)忽l」ζ㌫}㌻ψ
危一1一丑、 (2) ρ2=1−L(β)/L(β) (7)
ただし, ただし・L(β)はlo9尤度関数,βは推定値,万は0であ 2 =[1,z ω, z (2)……zτ㈲](説明変数のベクトル) る。
また,
β=[β(o),β(D,β(2)…・・…・β(ん)](係数ベクトル) R2=1−S(β)/S(の (8)
であり,β(ωは定数項である。ここで,.んに関して, ただし,
S(β)一蕊(后乃、(β))・碩、(β) (9)有によって著しく異なること力洲した・実際に漂用
剖」ゴ 車保有者と非保有者との間には,交通手段選択の自由度 各モデルの適合性を比較すると適中率で見る限りでは, に明確な差異があり,交通手段の選択特性も異なる傾向 線型重回帰モデルに比べて数量化理論第II類及びロジッ を示すと考えられる。従って以後,交通手段の競合関係 トモデルの方が若干優れているようであるが,各モデル を分析する際には,乗用車の保有者と非保有者とを階層 に顕著な差は認められない。またR2値を用いて,線型重 化して考察する。回帰モデルとロジットモデルを比較しても,両者の間に 表一5に,アンケート調査より得られた通勤者の現在の 差はほとんど認められない。 交通手段と代替の交通手段の関係を示す。ここでは,交
責3鯉細肝デルと。ジッ巳デ、、 。よる 通手段の順をジンハトリップで考えている・これか 分析結果(乗用車vs,公共輸送機関) ら・乗用車保有者に関しては,現在,乗用車を利用して
いて,代替の交通手段が公共輸送機関である場合が保有 者全体の66.3%と最も多く,続いて,現在,公共輸送機 関を利用していて,代替の交通手段が乗用車である場合 が保有者全体の11.6%を占める。一方,乗用車非保有者 に関しては,現在,公共輸送機関を利用していて代替も 公共輸送機関である場合が,非保有者全体の5L5%と最 も多いことが認められる。従って,交通手段の競合関係 として,乗用車保有者については乗用車と公共輸送機関 の競合を,乗用車非保有者については公共輸送機関間の 競合を考える。説明変数
平 均 標準偏差
線型重回帰モデル ロジット
cfル
回帰係数 係 数
(車保旬 保 有
0.6343 0.4821 0.7849 6.7409
(職業)
齧蛛E事務 ヌ 理 サ の 他
◎.5579
O.2335
O.2◎660.4972 O.4235 O.4053
一〇.2353
│−
O.2099
│◎.2417
一1.6598
│1.4070
│L6944
(勤務先地域)C B D
0.1632 0.3699 0.1077 L2401
(居住地)
燗c・片野
0.7252 0.4469 一〇.0097 一〇.0445
所 要 時
ヤ差く分)
21.898813.1029
一一J.00017
一⑪.00122定 数項 0.2222 一3.9355
重相関係数
@ρ2 値
@R2 値
@的中率(%)
0.7619
O.5812 V3.4
⑪.5264
O.5843 W7.7
表一4 選択確率モデルの被説明変数 (乗用車vs. 公共輸送機関〉
被 説 明 変 数
基準変量 内 容 サンプル数
ん =1
驚0
乗用車を選択
共輸送機関を選択244 Q40
備考:式(1),(4)におけるPEは乗用車を選択する確率
4.通勤交通手段の競合関係
表一5 現在並びに代替の通勤交通手段
現 在 の
ハ勤交通手段
代 替 の
ハ勤交通手段乗用車 ロ 有
i%)
乗用車 保有
i%)
乗 用 車 公共輸送機関 66.3
0.0バ イ ク
自 転 車
7.5 0.0徒 歩
そ の 他
5.1 0.0公共輸送機関 公共輸送機関
4.◎ 5L5乗 用 車 11.6
◎.◎バ イ ク
自 転 車
0.5 5.9徒 歩
そ の 他
0.0 9.6そ の 他※
5.033.0
合 計(%)
10◎.0100.0
サンプル数
373 239 前章から,交通手段の選択特性は乗用車の保有・非保 ※ バイク,自転車,徒歩,タクシーなど4.1.乗用車保有者における競合関係 loo 現在と代替の通勤交通手段の競合関係を解明する方法
として,個々のトリップの特性を明確に組み込むことが
できる非集計モデルを用いて分析を進めるのが理想的で 芭 コある。しかし,乗用車保有者の乗用車と公共輸送機関の 三50 競合関係については,現在の交通手段が公共輸送機関で 挺 代替の交通手段が乗用車である組み合わせのサンプル数 畔 が本アンケート調査では少ないために,非集計モデルに
よる分析は行なっていない。しかし,アンケート調査結
果から,ある程度,選択特性について説明可能である。 −14−19−{4−19−14−{9{4−19−14−19]4−i9−}4−1{}1 −70 65 60−55−50−45−40−35 30−25−20−15−10−5 0 5 図一5は,乗用車利用者について,代替の公共輸送機関 所要時間差(分)
との所要時間差((歩行時間+待ち時間+乗車時間)の 図一5 所要時間差累積分布
差)の累積分布である。0を境に左側の部分が時間的に (車保有・現在車vs・代替公共輸送機関)
優位な部分であり,乗用車利用者全体の96.8%が乗用車 優位の状態にある。これから明らかなように所要時間に
100 おいては,乗用車は公共輸送機関より圧倒的に優位にあ
ることが認められる。 _ 図一6は,乗用車利用者について,代替の公共輸送機関 二 口との歩行時間差,待ち時間差,乗車時間差についての累 怒50 積分布である。これから,歩行時間,待ち時間において 鯉 は,乗用車は公共輸送機関より圧倒的に優位である。一 那 方,乗車時間においては劣位な部分の割合が高いようで
あるが,乗用車利用の場合,乗車時間だけの比較は説明
力不足であり,door・to・door travel timeである所要時間 1419141914{9{419141914191411{ll㌣
ゆ ら らら るら ヨら ヨベハ ら ら けドら ゆ ユ
を比較の対象とすべきである。 時間差(分)
図一7に公共輸送機関利用者と乗用車利用者の通勤費 図一6 歩行・待ち・乗車時間差累積分布 の自己負担額を示す。これから,通勤費用の面から見れ (車保有・現在車vs代替公共輸送機関)
ば,乗用車非保有者で,現在と代替の交通手段がともに
公共輸送機関である場合の通勤者の87%が一ヵ月の通 100
勤費用が自己負担額(通勤費用一通勤手当)で千円以内 go であるのに対し,乗用車保有者で,現在,乗用車を利用 80 している通勤者の場合,自己負担額(ガソリン代+駐車 芭70 コ 料金一通勤手当)で一ヵ月に通勤費が5千円以上かかる 三60 者が,乗用車通勤者の50%以上存在する。 饗脾50
さらに,表一6は,アンケートの質問項目において,公 蹄40 共輸送機関で通勤する場合と比べてどちらの方が通勤費がかかるかという質問を設定し,その結果を集計したも のである。これから,「乗用車の方がかかる」と答えたの は乗用車利用者全体の50.0%,「公共輸送機関の方」と答
30
20 10
えたのは18.6%である。これは費用面で公共輸送機関の 0 1 2 3 4
方が優位であることを利用者自身が意識し,かつ,現実 自己負担額(万円)に経済面である程度負担を強いられていても乗用車を利 図一7 通勤費用自己負担額累積分布
表一6 代替公共輸送機関との通勤費の比較 表一7 乗用車選択理由(公共輸送機関忌避理由)
(乗用車利用者)
どちらの方が通勤費用がかかるか 構 成 比
@(%)
乗 用 車
5◎.O s公 共 輸 送 機 関 18.6
同 じ く ら い 17.4
わ か ら な い 14.o
合 計 (%)
T ン プ ル 数
100.0
Q36用する傾向がかなり強いことを示す。
乗用車保有者が通勤交通手段として乗用車を選択する 過程は,公共輸送機関の不便さ,不快さ等による不満を 乗用車自体が持つ個別輸送機関としての利便さ,快適さ が消去し,さらにこの乗用車の魅力によって誘引される 形で行なわれると考える。アンケート調査ではこれを前
順位 項 目 %
※1
所要時間大 72.9 1,000
2
雨・風が不快 60.0 0,337 3 乗り換え難
55.10,346
4 車 内 混 雑 51.4 0,227
5乗 車 が 難
38.1 ◎ユ4◎6 運行回数が少 34.4 0,250
7時間に不正確
3◎.4 ◎.2648 駅・停留所遠い 29.6 0,156
9荷 物 あ り
29ほ0,151
10通勤費用が高い 23.9 0,235
11同伴者あり 16.6
◎.02712
始発・終便不便
14.20,117
サ ン プ ル 数 247
※ 所要時間との属性相関(φ係数)
提として表一7に示す選択理由を質問項目として設定し し,それに競合する代替の交通手段が乗用車である通勤 た。ここでは,質問はすべて公共輸送機関からの忌避と 者について考察を行なう。表一8に乗用車保有者である いう形をとり,時間,費用などに関する顕在化された動 が,公共輸送機関を利用する通勤者が乗用車を利用しな 機も質問中に取り入れている。この結果から,乗用車の い理由を示す。各項目の計量化を行なうために,単純に 選択理由において重要度の高いものは,所要時間大,雨 第一の理由のサンプル数に3を,同様に,第二,第三の
風等の不快さであり,逆に低いものは,費用高,同伴者 理由のサンプル数に2,1というウェイトを掛け,計算
あり,始発・終便の不便さである。 した結果を示す。これから,乗用車を利用しない理由と 次に,乗用車保有者であり,現在公共輸送機関を利用 して,「勤務先に駐車場がない」,「ガソリン代・駐車料金表一一8 乗用車を使用しない理由
乗用車を使用しない理由
第1摎R 第2
摎R
第3摎R
ウェイト
v
構成比 順位
車を利用すると時間がかかり過ぎる
5 34
2510.5 4
勤務先に駐車場がない
21 32
71 3◎.1 1ガソリン代・駐車料金などがかかり
゚ぎる 12 14
2
6627.8 2 駐車場から勤務先までかなり歩かな
ュてはいけない
0 14 6
2.58
家族の中に車がどうしても必要な者がいて使えない
2
2o
10 4.2 6運転するのがきらいである
12
18
3.47
渋滞でいらいらする 1 9 8
29 12.23
そ の 他
6 12
22 9.3 5合 計
48 35 23 237100.0
などがかかり過ぎる」,「渋滞でいらいらする」が上位を
100
占め,逆に,「運転するのが嫌い」,「駐車場から勤務先ま
でかなり歩かなくてはいけない」は理由としての重要度
は低い。ここで注目すべきことは,「勤務先に駐車場がな 8 い」という理由は,単に,駐車場がなければ乗用車によ 云 餐 50 るトリップが完結しないという,物理的,拘束的な理由 挺 である。一方,「ガソリン代・駐車料金などがかかり過ぎ 班 る」,「渋滞でいらいらする」は自由意思的な選択理由で
あり,選択理由としての強制力に違いが存在すると言え
0
る。 −19−14−19−14−19−14 }9]4?で{ ll〜1ψ㍗
一45−40−35−30−25−20−15−10 −5 0 5 10 15 20
所要時間差(分)
4.2. 乗用車非保有者における競合関係
図一8 所要時関差累積分布
乗騨非保儲についてはぷ合交通手段として,現 (車非保有,現在公共輸送機関vs. 代替公共輸送機関)
在公共輸送機関を利用し,代替の交通手段も公共輸送機 関である場合についてのみ考察した。図一8に,所要時間
差,図一9に,歩行・待ち・乗車時間差の累積分布を示す。 100 これから,歩行時間で62.9%,待ち時間で77.2%,乗車
時間で74.4%,所要時間(歩行時間+待ち時間+乗車時 _ き 間)で71.5%が,現在利用する公共輸送機関の方が代替 エ ペ 公共輸送機関より優位にある。また全所要時間の平均の 遷50 聾差は4.9分である。ここで所要時間に着目すれば,現在の 肥 公共輸送機関の方が所要時間で不利にもかかわらず,何 瞭 か別な理由で現在の公共輸送機関を選んでいる通勤者が
全体の30%近くいることを表わしている。乗り換え回数 o
る こハ ユ け る ハ エ
差については,表一9に示すように代替の交通手段より優 151°]51°15;°}5}°〜lllξ1㌧あ〜
時 間 差 (分)
位なのは全体の16.3%,同じのは70.7%,劣位なのは13.
・%である.従って,乗り換え回数差だけでは濯択への 図一9欝當㌶瓢竃雛布
影響力は判定できない。費用については,図一7に示すよ 代替公共輸送機関)
うに,通勤手当を考慮した場合,自己負担額で一ヵ月千
円以内が全体の87.0%を占める。従って,費用は影響力 表一10 現在公共輸送機関と代替公共輸送機関の
の弱い要因であると考えられる。表一10は現在公共輸送 比較
機関と代替公共輸送機関のトリップ特性の比較である。
結果は現在公共輸送機関が優位な方を基準にして集計し たものであるが,所要時間,時間の正確さのウェイトが 大きく,通勤費用,歩行時間,乗り換えのウェイトは小
さい。
表一9 乗り換え回数差(車非保有,現在公共輸送機 機関vs.代替公共輸送機関)
・数差
一1 0
12
構成比(%)
16.370.7
12.2 0.8累積比(%)
16.387.0 99.2 100.0
サンプル数123
順位
項 目 %
※1 所要時間が短い
88.2 1,000
2
時 間 に 正 確 82.4 0,533 3 乗 車 が 容 易 79.8 0,271 4
運行回数が多い78.2 0,323
5
車内混雑が少ない 73.10,191
6
通勤費用が少ない71.4 0,173
7
歩行時間が短い65.5
一〇.0238
乗り換えが簡単63.9 0,078
サ ン プ ル 数 119※ 所要時間との属性相関(φ係数)
次に,現在の交通手段と代替の交通手段ともに公共輸 表一11数量化理論第II類1二よる分析結果 送機関である場合の競合関係について,非集計モデルを (電車vs・バス)
用いて分析した結果を示す。ここでは,競合関係を電車 とバスの競合という比較的,機関特性の似た特定の交通 機関に代表させて分析した。表一11は数量化理論第II類
による分析結果である。被説明変数としては,電車とバ スの選択を用い,説明変数としては,正確さ,運行回数 混雑,費用,所要時間,歩行時間,乗り換え,乗車の難 易の8要因を用いた。表中のレンジの値から,所要時間 の影響力が最も大きく,次に,混雑,運行回数と続くこ とが認められる。表一12は線型重回帰モデル及びロジッ トモデルによる分析結果である。被説明変数は表一13に 示す。説明変数としては,数量化理論第II類による分析 においてレンジの値の大きい上位5変数を使用した。こ こで説明変数は,その項目が電車においてバスより有利
ならば1,そうでないならば0というダミー変数で与え
ている。これから,重回帰モデル及びロジットモデルと もに所要時間の回帰係数が他の変数に比べて著しく大き いことが認められる。各モデルの適合性については,線 型重回帰モデルとロジットモデルを比較した場合,的中率については差がなく,R2値についてはロジットモデ
ルより線型重回帰モデルの方が若干高いことが認められる。
表一12 線型重回帰モデル・ロジットモデルによる分析結果 (電車vs.バス)
要因 カテゴリー
サンプル数カテゴジー
Eェイト
レンジ i順位)
YES
40一〇.137 0,442
正 確 さ
NO
180,305
(5)YES
35一〇.188 0,473
運行回数 NO 23
0,286
(3)YES
45一〇.187 0,833
混 雑
NO
130.扇6
i2)YES
440,114 0,471
通勤費用 NO 14 一〇.357
{4)
YES
36一〇.584 1,541
所要時間
NO 22 ◎,956 (1)YES
170,001 0,001
歩行時間
NO 41一〇.000
(8)YES
25 一〇.◎77 ◎,135乗り換え
NO 330,058
(7)YES
390ユ48 0,452
乗車の難易
NO 19
一〇.304
(6)相 関 比
η2 ◎.765的 中 率
(%)91.9%
CASE 1 CASE 2 説明変数 平 均 標準偏差 重巨鳩
ロジット重回帰
ロジット回帰係数 係 数 回帰係数 係 数
正確さ
^行回数 ャ 雑 ハ勤費用 蒲v時間
0.68§7
J.6035
O.7759
O.75§6
O.6207
0.4667
O.4935
O.4207
Q.4317
O.4895
§.17◎
@0.236
@0.243
│0ぼ66
@0.566
O.266
@1.294
@0.769
│2,218
@4.212
◎.2◎3
@0.225
@0.156
^ 0.492
0.630
@0.763
│0,737
^ 3.211
定数項
一〇.036
一1.091一〇.065 一〇.827
重相関係数
@ρ2値
@R2値
I 中 率(%)
0,866
O,772 X1.9
0,626
O,689 X1.9
o,861
O,763 X1.9
0,572
O,672
X1.9
表一13選択確率モデルの 題も残されており,時間以外の変数をどれだけ取り入れ
被説明変数(電車vsバス) るかは今後の課題である。⑤分析には三種類の非集計モデルを用いたが,適合度
の点から言えば,線型重回帰モデルとロジットモデルの 二者には大差がないことが認められた。ロジットモデル には最尤推定法を使うことにより多肢選択問題を取り扱 いやすく,かつ確率的に矛盾が少ないという利点がある が,二肢選択問題に限定する場合には,シンプルな線型 重回帰モデルと比較して,非線型のロジットモデルは計5.結言 算が雛になるというデメリ・トがある・齢性におい
て有意な差が生じないならば,選択問題にあえてロジッ 本研究で得られた結果をまとめて以下に示す。 トモデルを適用することの必要性は今後の検討課題とし
①乗用車の保有・非保有により通勤者の交通手段選択
て残る。特性が著しく異なるので,通勤者をこの二つに階層化し
て分析を進める必要がある。 終りに,本研究に対して御助言を賜った本学開発土木
②通勤者の交通手段選択要因として,所要時間は他の
工学教室の佐々木昭士助教授に謝意を表します。要因と比べて強い影響力を持つ。 また,調査には本学技官今田哲弘氏を始め交通工学研
③従来から重要な選択要因として用いられてきた費用
究室の諸氏のご協力をいただいた感謝を表わします。要因についていえば,乗用車利用者においては,費用で は公共輸送機関が明らかに有利にもかかわらず乗用車を
利用する傾向が強く,また,公共輸送機関利用者におい 参 考 文 献 1)佐々木綱:都市交通計画,国民科学社.
ては・通勤費用の自己負担額が少ないために費用への認 2)運輸経済研究センタ_:地方中核都市の交通体系につい
識は低い。 ての研究調査.
④選択モデル作成時に,多くの変数を取り入れれば予 3)高田邦道 木戸伴雄他:交通調査マニュアル・鹿島出版
会.測精度を高めることができるが・同時に計算が繁雑にな 4)Th。mas A Domencich and Daniel McFadden:Urban
る。しかし,心理的要因をいかに定量化するかという問 Travel Demand, North−H・lland/American Elsevier.
被 説 明 変 数
基準変量 内 容 サンプル数
ん=1
=0
電車を選択(代替はバス)
oスを選択(代替は電車)
37
Q1 備考:式(1),(4)における孔は乗用車を選択する確率