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博士(工学)野呂康宏 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(工学)野呂康宏 学位論文題名

交直変換器を含む電カシステムの解析および      制御に関する研究

学位論文内容の要旨

  我が国の電力系統は、電力需要の増加に伴い大規模化・複雑化の一途をたどってきた。

一方、電カを供給する発電所は、立地・環境上の制約のために、大きな需要地からますま す遠隔地に立地されている。このような状況で電カの安定供給と予備カの確保のために、

大容量長距離送電や電力系統間を連系して電カを融通することが行われてきた。また、電 カの自由化の進展に伴い、種々の電源が市場の中で経済性を優先して電力系統に連系され 運用を行うようになると、今後は電源の偏在化や変動要因がさらに顕著になると予想され る。しかしながら送変電設備の効率的運用の観点から、新規の設備投資は抑制され、既存 の設備をより容量の限界に近い大容量で運用したり、電源の偏在や変動に応じてより柔軟 に設備を運用する必要が生じている。

  以上の電力系統の背景により、大容量の交流送電では、基幹系統の拡大と重潮流化に加 え、大きな不平衡負荷などにより、不平衡の要因が拡大の傾向にあり、これらに起因する 逆相分が機器に与える影響についても懸念されるようになってきた。そこで、近年顕在化 してきた三相不平衡現象を解明することが課題となっている。

  一方、大容量長距離送電と電力系統問の連系、柔軟な運用に対して、直流送電の適用も 考えられる。直流送電では、相差角安定度の問題がない、非同期で交流系統問を連系でき る、送電電カを高速に制御できる等の利点があるため、系統問の連系への適用が進んでい るが、その反面、交流系統へ与える影響・相互作用が強いため、従来からシステムの適用 に当たっては、過電圧解析、高調波解析、安定度解析など様々な観点からの解析を行い、

システムの仕様や制御・保護方法を決めている。直流送電の適用拡大と大容量化、および、

系統設備容量を極力有効に活用しようとする傾向に伴い、直流送電システムと交流系統と の相互作用を従来以上に把握し、対策を検討する必要が出てきている。具体的には、直流 送電システムの非整数次高調波不安定の問題、多変数制御方式の周波数制御を適用するに 際して発生したシステム構成に起因する課題,直流送電の極制御の制御性能とロパスト性 を向 上さ せる とい う課 題が あげ ら れる が、 これまで十分に検討され ていなかった。

  本研究はこれらの課題をふまえ、大容量化する交流送電、適用の拡大する直流送電に関 連して、三相不平衡の解析手法の提案と現象解明、およぴ、直流送電用の電力変換器を含 む電カシステムの解析方法および制御方法を提案することを目的として行ったものである。

  第2章では、電力系統の不平衡電流発生メカニズム解明のため、基幹系統で一般的に用 いられる2回線送電線で誘起される不平衡電圧を零相分や逆相分に分離し、いくっかの代 表的 な不 平衡 発生 パタ ーン に分 け て分 析す る手法を提案し、以下を 明らかにした。

(1)送電線で発生する不平衡の要因として、リアクタンスの不平衡による影響が大きい     こと 、2回 線運 用時には回線内の相互誘導分による影響が大きい ことを示した。

(2)提案する手法により、放射状系統やループ状系統等の系統内で発生する不平衡電圧、

    電 流 の 分 布 が 決 る メ カ ニ ズ ム を 明 ら か に で き る こ と を 示 し た 。

115

(2)

(3) あ る 程 度規 模 の 大 きな モ デ ル 系統 を 用 い て三相 不平衡 潮流計 算を行 い、発 生する 不     平 衡 電 圧 、電 流 の 分布は 上記メ カニズ ムの組 み合わ せで説 明でき ること を確認し た。

こ れ ら の 成果 は 、 送 電線 の新設 /更新 計画時 や通常の 系統運 用時に 、不平 衡分の 増大の 有 無 を 予 測 し 、 不 平 衡 を 抑 制 す る 対 策 とし て 反 映 させ る こ と がで き る も のと 期 待 す る。

  第3章 で は、 交 直 変 換装 置 の 高 調波 不 安 定 現象 の解 析を行 い、直流 送電に 用いら れる交 直 変 換 器 の非 整 数 次 高調 波不安 定現象 の発生 をアナロ グシミ ュレー タとデ ィジタ ルシミ ュ レ ー シ ョ ンで 確 認 し 、ま た 、 交 直変 換 器 の 等価 イ ン ピ ーダ ン スZmを 周 波数 走査法 によっ て 求 め 、 交流 系 統 の イン ピーダ ンスZsと で構成 される システ ムの開ル ープ伝 達関数 のベク ト ル軌跡 に着目 して安 定判別す る手法 を提案 し、こ の手法 の検討 結果として以下を示した。

(1) 提 案 す る 手法 は 安 定 限界 を 定 量 的に 把 握 で きる こ と を 示し 、 シ ミ ュレ ー タ やEMrP     シ ミュレ ーショ ンとの 比較で 妥当性 を検証 した。

(2) 交 流 系 統の イ ン ピ ーダ ン ス の 周波 数 特 性 におい て、並 列共振 周波数 が低く なると 、     非 整 数 次 の 高 調 波 不 安 定 現 象 が 発 生 し や す く な る こ と を 示 し た 。

(3) こ の 対 策と し て 、 進相 コ ン デ ンサ の 投 入 量を抑 制して 並列共 振周波 数を上 げる方 法     と 、 電 流 制御 系 仏CR)の 進み時 定数を小 さくす る方法 が有効 である ことを 確認し た。

本 研究成 果は紀 伊水道 直流送電 システ ムに適 用され 、シス テムの 安定運用に寄与している。

  第4章 で は、 直 流 連 系設 備 の 周 波数 安 定 化 制御 装置 の開発 を行い、 対象シ ステム の構成 上 の 特 徴 に 着 目 し ル ート 断 な ど によ る 単 独 系統 時 にAFCが 有効 に 動 作 する よ う に 起動 方 式 を 含 め て 制 御 シ ス テム を 構 築 した 。 さ ら に、 多 変 数 制御 方 式AFCを 適用 す る に あた ル シ ステム 構成に 起因す る課題と 対策を 検討し 、実系 統での 系統試 験により性能を検証した。

(1)中間 電圧母 線方式 の場合 の周波数 検出点は、500}【v側とする方が良いこと、およぴ、

    位 相 補 償 を 併 用 す る 方 が 安 定 性 向 上 効 果 が 大 き い こ と を 示 し た 。

(2) 設 計 時 に 省略 す る 検 出系 や 制 御 系の 遅 れ を 考慮 し た シ ステ ム の 安 定判 別 が 必 要で     あ り 、 本 研究 で 示 した周 波数応 答解析 モデル は定量 的に評 価する ために 有用であ る。

(3) 単 独 系 統に 周 波 数 偏差 を 生 じ させ る 外 乱 が発 生 し た 場合 、AFCに より 速やかに 周波     数 変 動 を 抑制 で き る こと を 系 統 連系 試 験 に より 検 証 し た。 同 時 に 、デ ィジタル シミ     ユ レ ー シ ョ ン に よ る 解 析 結 果 と の 比 較 に よ り そ の 有 効 性 も 検 証 し た 。

(4) 交 流 遮 断器 に よ る 単独 系 統 の 同期 並 入 を 迅速に 行える よう、 揃速制 御機能 を設け 、     そ の有効 性を系 統試験 で確認 した。

本 論 文 で 検 討 し た 内 容は 、 南 福 光BTBシ ス テ ム に適 用 さ れ たと 同 時 に 、シ ス テ ム 構成 あ る い は 運 用 方 法 が 類 似 の 今 後 の シ ス テ ム に も 活 か す こ と が で き る も の と 考 え る 。   第5章 で は、 直 流 送 電シ ス テ ム への 最 適 制 御手 法 適 用 につ い て 研 究を 行い 、LQG方 式の 制 御 方 法 をべ ー ス に 、直 流送電 システ ムに固 有の制約 を考慮 しつつ 新しい 制御方 法を提 案 し た 。 新 しい 制 御 装 置の 性 能 を 、直 流 送 電 に適 用 さ れ てい る 従 来 型のPI制 御のシ ミュレ ー シ ョ ン 結 果 と 比 較 し 、LQG方 式 の 制 御 装 置 の 主 な 利 点 は 以 下 で あ るこ と を 示 した 。

(1) 直 流 電 流 基準 の ス テ ップ 応 答 時 に、PI制 御を 用 い た 場合 に 現 れ る直 流 電 流 の振 動     はLQG制御 では著 しく小さ い。

(2) 短 絡 容 量 比 の 変 化 に 伴 う 直 流 電 流 応 答 の 変 化 は 従 来 型 の 制 御 に 比べ て 小 さ い。

(3)直流 送電シ ステム の潮流 反転時間 は非常 に短時 間であ る。

(4) 交 流 系 統の 故 障 が 発生 し て も シス テ ム は 不安定 になら ず、故 障除去 後速や かに初 期     状 態に復 旧する 。

以 上 の 結 果 は 、 提 案 す るLQG制 御 装 置 は 良 好 な 性 能 を 有 す る こ と を 示 し て い る 。

116ー

(3)

学位論 文審査の要旨 主査

副査 副査 副査 副査

教授 教授 教授 教授 助教授

長谷川 土谷 大西 本間 北

学 位 論 文 題 名

    淳 武士 利只 利久 裕幸

交直変換 器を含 む電カシ ステム の解析および      制御 に関す る研究

  電 力 系 統 は 、 こ れ ま で 、 電 力 需 要 の 増 加 に 伴 い 大 規 模 化 ・ 複 雑 化 し て き た 。 一 方 、 電 源 立 地 は 種 々 の 制 約 か ら 遠 隔 化 す る と と も に 電 源 の 大 容 量 化 が 進 み 、 送 電 線 の 大 容 量 長 距 離 化 を も た ら す と と に 、 電 力 系 統 間 の 連 系 に よ る 電 力 融 通 を 必 要 不 可 欠 な も の と し て き た 。 ま た 、 近 年 の 電 力 事 業 の 自 由 化 に 伴 い 、 種 々 の 電 源 が 市 場 経 済 性 を 優 先 し て 導 入 さ れ る で あ ろ う こ と か ら 、 電 源 の 偏 在 化 や 運 用 に 対 す る 不 確 定 要 因 ・ 変 動 要 因 の 増 加 が 、 今 後 一 層 顕 著 に な る で あ ろ う と 予 想 さ れ る 。 他 方 、 自 由 化 に 伴 う 競 争 環 境 下 で は 、 設 備 投 資 が 抑 制 傾 向 と な ら ざ る を 得 ず 、 既 存 設 備 の 能 カ を 最 大 限 に 引 き 出 す 得 る 設 備 運 用 、 効 率 的 な 設 備 運 用 、 不 確 定 要 因 ・ 変 動 要 因 に も 対 処 で き る 柔 軟 な 設 備 運 用 が 必 要 と な る 。   こ の よ う な 背 景 の 下 で 、 大 容 量 の 交 流 送 電 に お い て は 、 基 幹 系 統 の 拡 大 と 重 潮 流 化 に 加 え て 、 不 平 衡 負 荷 の 増 加 等 に 伴 う 不 平 衡 要 因 の 拡 大 が 顕 在 化 し て き て お り 、 三 相 不 平 衡 現 象 の 解 明 が 焦 眉 の 急 と な っ て い る 。 ま た 、 大 容 量 長 距 離 送 電 や 柔 軟 な 電 力 系 統 連 系 に お い て は 、 直 流 送 電 ・ 非 同 期 連 系 の 適 用 が 重 要 な 選 択 肢 と な る が 、 そ の 適 用 拡 大 と 大 容 量 化 に あ た っ て は 、 系 統 設 備 要 領 を 最 大 限 に 有 効 に 活 用 し よ う と す る 傾 向 の 増 大 と も 相 俟 っ て 、 交 流 系 統 ヘ 与 え る 影 響 や 相 互 作 用 に つ い て 一 層 踏 み 込 ん だ 解 明 が 必 要 と な っ て い る 。   本 論 文 は 、 こ れ ら を 踏 ま え て 、 大 容 量 化 す る 交 流 送 電 、 適 用 が 拡 大 し て い る 直 流 送 電 に 関 連 し て 、 三 相 不 平 衡 の 解 析 手 法 の 開 発 と 現 象 の 解 明 、 直 流 送 電 用 の 電 力 変 換 器 を 含 む 電 力 系 統 の 解 析 手 法 の 開 発 、 直 流 送 電 用 電 力 変 換 器 に 対 す る 新 し い 制 御 手 法 の 開 発 ・ 実 用 化 に つ い て 実 施 さ れ た 研 究 の 成 果 を ま と め た も の で あ り 、 以 下 の よ う な 顕 著 な 成 果 が 認 め ら れ る 。

  第 一 に 、 電 力 系 統 の 不 平 衡 電 流 発 生 メ カ ニ ズ ム を 解 明 す る た め に 、 基 幹 系 統 で 一 般 的 に 用 い ら れ る2回 線 送 電 線 で 誘 起 さ れ る 不 平 衡 電 圧 を 零 相 分 や 逆 相 分 に 分 離 し 、 い く っ か の 代 表 的 な 不 平 衡 発 生 パ タ ー ン に 分 け て 分 析 す る 新 手 法 を 開 発 す る と と も に 、 そ の 有 効 性 を 立 証 し て い る 。 こ の 成 果 は 、 送 電 線 の 新 設 ・

(4)

更新計画時や通常の系統運用時に、不平衡分の増大の有無を予測し、不平衡を 抑制する対策を立案する際に、極めて有用である。

   第二に、交直変換装置の高調波不安定現象の解析を行い、直流送電に用いら れる交直変換器の非整数次高調波不安定現象の発生を確認した。また、周波数 走査法により求めた交直変換器の等価インピーダンスと交流系統のインピーダ ンスとで構成されるシステムの開ループ伝達関数のべクトル軌跡に着目して安 定判別する手法を開発し、その有効性を立証している。この成果は、紀伊水道 直 流 送 電 シ ス テ ム に 活 か さ れ 、シ ス テム の 安定 運 用 に寄 与 して い る。

   第三に、直流連系設備の周波数安定化制御装置の開発を行い、対象システム の構成上の特徴に着目し、ルート断などによる単独系統時にAFC (自動周波数 制御)が有効に動作するように、起動方式を含めて制御システムを構築してい る。さら に、多変数制御方式AFC を適用するにあたってシステム構成に起因 する課題と対策を詳細に検討し、実系統での検討試験によって性能を検証して いる。こ の成果は、南福光BTB システムに適用され、期待された性能を十分 に達成している。また、システム構成あるいは運用方法が類似であるような、

今後計画 される可能 性のあるシ ステムにも 活かされることが期待できる。

   第四に、 直流送電システムヘの最適制御手法の適用にっいて検討し、LQG

方式の制御方法をべースに、直流送電システムに固有の制約を考慮した新しい

制御方法を提案している。また、新制御方法を適用した新しい制御装置の性能

を、直流送電に適用されている従来型のPI 制御とシミュレーション解析によ

り比較し 、LQG 方 式の制御装置が多くの面で優れた性能を有することを立証

している。この成果は、今後、新設・更新の計画がなされるであろう直流送電

シ ス テ ム の 制 御 装 置 に 活 か さ れ 、 実 用 化 さ れ る も の と 期 待 で き る 。

   これを要するに、著者は、大容量化する交流送電およぴ適用が拡大している

直流送電に着目して、特に交直変換器を含む電カシステムの解析およぴ制御に

関して、顕在化しその解明が求められている現象の解明、新しい解析手法の開

発、新しい制御手法の開発とその実用化、について多くの新知見を得たもので

あり、電力工学、電力系統工学、電気機器学に対して貢献するところ極めて大

なるものがある。よって著者は、北海道大学博士(工学)の学位を授与される

資格あるものと認める。

参照

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