• 検索結果がありません。

博 士 ( 理 学 ) 安 武 義 晃

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "博 士 ( 理 学 ) 安 武 義 晃"

Copied!
5
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

博 士 ( 理 学 ) 安 武 義 晃

     学位 論 文題 名

    Molecular evolution and highly active catalytic mechanism of the monomericlSOCitratedehydrogenaSe     StudiedbyX _ rayCrySta110graphy

     (単 量 体型 イソ クエ ン酸 脱 水素 酵素 の分 子 進化および      高活 性 機構 に関 する 構造 学 的研 究)

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  イソクエン酸脱水素酵素(IDH)は,クエン酸回路の律速段階であるイソクエン酸からQケト グルタル酸への酸化的脱炭酸化反応を触媒し,その多くが多量体で機能を発現する,これまでに 大腸菌由来の二量体型IDHに関して多くの結晶構造が報告され,その活性部位がサブュニツ卜 界面に存在し,両方のサブユニットからの残基が基質および補因子認識に関与することが明らか にされている.一方,多量体型IDHとの間に一次構造相同性を持たなぃ単量体型IDHが数種の 真正細菌からのみ見っかった,興味深いことに,単量体型IDHは多量体型IDHと比較して非常 に高い活性を発現する,本研究では,単量体型IDHの基質―Mr12゛複合体,およびNADP十複合体 の最初の結晶構造を示し,その構造情報から,本酵素の極めて特徴的な分子進化の過程,および 触媒反応高活性化の構造学的基盤を明らかにした,以下に論文の内容に沿った要旨を示す.

  単量体型IDHは,窒素固定細菌Azotobacter vinelandiiから直接単離し,基質およびMnの存在 下で結晶化を行った.しかしながら得られた結晶は非常に壊れ易く,構造解析のために必要な重 原子誘導体の調製は極めて困難であったため,補因子であるMnの異常分散シグナルを利用した 多 波長異常分散(MAD)法により,1.95A分解能での構造解析に成功した.単量体型IDHのフ オールディングは,明らかにニ量体型IDHと共通なトポロジーから成り,二量体型IDHのひと つのサブュニット全体と,もう一方のサブユニットの部分構造とが融合することで成り立ってい た.このような特異な構造を形成することで,サブュニツ卜界面に存在する二量体型IDHの活 性部位と相同な活性部位構造を,単量体構造の中に持つことを可能にしていた.また,単量体型 IDHの大ドメインは,ふたっの相同な構造モチーフが繰り返すことにより成り立っており,立 体構造をもとにアミノ酸配列のアライメントを行った所,これらの構造モチーフ間で部分的な残 基の保存が見られた.っまり単量体型IDHの立体構造は,遺伝子の部分的重複によって生まれ たと結諭付けられる.両IDH間に活性残基以外に一次構造の相同性がほとんど見られないのは,

遺伝子の部分重複の後,単量体型IDHが熱力学的に安定なフオールディングを再び取り戻すた     ―288―

(2)

め,度重なる変異や 挿入,欠失を受け入れてきた 結果であるだろう,一般に蛋白質は単量体から 多量体へと進化する とされ,ドメイン・スワッピ ングによる分子進化仮説によって支持されてい る. これ に 対し て単 量体 型IDHは ,構 造 的に ニ量 体型IDHの特 徴を よ く備えており,また ニ量 体型IDHの広 範囲 に 渡る サブ ュニ ット 界 面を ,ドメイン界面 に置き換えて保存しているこ とか ら, 明ら か に二 量体 型IDHか ら進 化し て きた と考えられる, このような分子進化経路はこ れま で に 提 唱 さ れ て お ら ず , 単 量 体 か ら 多 量 体 へ と 向 か う 分 子 進 化 と 対 照 的 で あ る .   次 に, 単 量体 型IDHが 高活 性で ある 理 由を 構造学的に明ら かにするため,NADP゛複合体 の構 造 解析 を 行っ た. 構造 解析 の 結果 ,単 量体 型IDHのNADP+認 識様 式 がニ 量体 型IDHと 大き く異 なっていることが明 らかになった.これは基質認 識残基がほぼ完璧に保存されているのとは異な り,NADP゛ 特異 性が 進化の過程で 独立に獲得されたことを示 唆している.本構造解析で最 も注 目す べき 事 実は ,NADP゛のニコチ ンアミドリボースと酵素と の間にいくっかの水素結合が 形成 され てい た こと であ る.大腸菌由 来の二量体型IDH―NADP+複 合体構造では,このニコチン アミ ドリ ボー ス 部位 は完 全にディスオ ーダーしていることが既に 示されている.これは,単量 体型 IDHのニ コチ ンア ミ ドを 認識 して いるAsn85―Ser87に あ たる 残基 がニ 量体型IDHには存在 しな いためと考えられる .また,今回解析したNADP゛複合体の構造を先に解析した基質・Mn2゛複合体 の構 造に 重 ね合 わせ ,想定される 初期ES複合体のモデルを構 築したところ,NADP゛の反応 点と イソクエン酸の2位炭 素問のジオメトリーが,一 般的にヒドリド転移反応が起 こるとされる範囲 内に 位置 で きる こと が確 か めら れた .す なわ ちこれは,基質 とNADP+は共に,互いが存在 しな い状 態で あ って もヒ ドリ ド 転移 可能 な状 態で 酵 素に 結合 し, 待機 で きることを示してい る,

NADP゛と 酵 素問 の相 互作 用 が必 要以 上に 増え ることは,NADPHと酵素問の親和性も増すた め,

代謝 回転 数 を上 げる ため に は好 まし くな ぃだ ろう,単量体型IDHに見られるニコチンアミ ドリ ボース部位の固定は ,必要最小限の相互作用によ り,飛躍的な機能の高性能化を実現している天 然酵素の興味深い戦 略と言える.ニコチンアミド 固定の役割を果たすループ領域は,遺伝子の部 分 重 複 に よ り 二 量 体 か ら 単 量 体 へ と 進 化 し た 過 程 で 獲 得 さ れ た と 考 え ら れ る .   本 学位 論 文で は, 構造 解 析の 手法 に関 して も詳細に記述し た.単量体型IDHの構造解析 は,

天 然 の 補 因 子Mnと の 複 合 体 結 晶 を 用 い ,Mnの 異 常 分 散を 利用 し たMAD法を 用 いて 行っ た.

MnのK殻 吸 収 端 は 波 長 約1.9Aと低 エネ ルギ ー領 域 に存 在す るた め ,X線 の吸 収 が大 きく ,結 晶の放射線損傷が顕 著となり,誤差の少なぃ回折 データ収集が困難となる.本解析では,プログ ラムSCALAを 用い た 波長 間の 相対 スケ ー リン グ, およ び ディ テク ター (x,y)とイメー ジ(z) 方向での三次元スケ ーリングを行い,この誤差を 最大限に取り除いた,さらに別の晶系に属する 結 晶の デ ータ との 問で 結晶 間 電子 密度 平均 化法 を 行い 構造 決定 に 成功 した .Mnを用 い たMAD 法 の成 功 は本 研究 が最 初で あ る. 本研 究は ,Mnを 用い たMAD法 が生 体高 分子 結 晶学 の分 野に おいて十分に現実的 手法であることを示したもの である,

289

(3)

学位 論文審 査の要旨 主査

副査 副査 副査

教授 教授 助教授 助教授

田中 新田 佐々木 渡邉

    勲 勝利 直樹 信久

     学位論文題名

    Molecular evolution and highly active catalytic mechanlsm of the monomerlCiSOCitratedehydrogenaSe     StudiedbyX ‐ rayCrySta110graphy

     (単量体型イソクエン酸脱水素酵素の分子進化および      高活性機構に関する構造学的研究)

イ ソ ク エ ン 酸 脱 水 素 酵 素(IDH)は , ク エ ン 酸 回 路 の 律 速 段 階 で あ る イ ソ ク エ ン 酸 か らQケ ト グ ル タ ル 酸 ー の 酸 化 的 脱 炭 酸 化 反 応 を 触 媒 す る . こ れ ま で に 大 腸 菌 由 来 の 二 量 体 型IDHに 関 し て 多 く の 結 晶 構 造 が 報 告 さ れ , そ の 活 性 部 位 が サ ブ ュ ニ ッ ト 界 面 に 存 在 し , 両 方 の サ ブ ユ ニ ッ ト か ら の 残 基 が 基 質 お よ び 補 因 子 認 識 に 関 与 す る こ と が 明 ら か に さ れ て い る , 一 方 , 二 量 体 型IDHと の 間 に 一 次 構 造 の 相 同 性 を 持 た な い 単 量 体 型IDHが 数 種 の 真 正 細 菌 か ら 見 っ か っ て い る . 興 味 深 い こ と に , 単 量 体 型IDHは 二 量 体 型IDHと 比 較 し て 非 常 に 高 い 活 性 を も つ . 本 研 究 は, 単 量 体型IDHの 基 質 ―Mri2゛複 合 体 ,お よ びNADP゛複 合 体 の最 初 の 結 晶 構 造 を 示 し , そ の 構 造 情 報 か ら , 本酵 素 の 極め て 特 徴的 な 分 子進 化 の 過程 , お よ び 触 媒 反 応 高 活 性 化 の 構 造 学 的 基 盤 を 明 ら か に し た も の で あ る .   単 量 体 型IDHの 構 造 解 析 は , 補 因 子 で あ るMnの 異 常 分 散 シ グ ナ ル を 利 用 し た 多 波 長 異 常 分 散(MAD)法 に よ り ,1.95A分 解 能 で 行 わ れ た . 解 析 の 結 果 , 単 量 体 型IDHの フ オ ー ル デ ィ ン グ は , 二 量 体 型IDHと 共 通 な ト ポ ロ ジ ー か ら 成 り , 分 子 は , 二 量 体 型IDHの ひ と つ の サ ブ ュ ニ ッ ト に , も う 一 方 の サ ブ ユ ニ ッ ト が 部 分 的 に 融 合 す る こ と で 成 り 立 っ て い た . こ の よ う な 特 異 な 構 造 を 形 成 す る こ と で , サ ブ ュ ニ ッ ト 界 面 に 存 在 す る 二 量 体 型IDHの 活 性 部 位 と 相 同 な 活 性 部 位 構 造 を 単 量 体 構 造 の 中 に 持 っ こ と を 可 能 に し て い た . ま た , 単 量 体 型IDHの 大 ド メ イ ン は , ふ た っ の 相 同 な 構 造 モ チ ー フ が 繰 り 返 す こ と に よ り 成 り 立 っ て お り , 立 体 構 造 を も と に ア ミ ノ 酸 配 列 の ア ラ イ メ ン ト を 行 っ た 所 , こ れ ら の 構 造 モ チ ー フ 間 で 部 分 的 な 残 基 の 保 存 が 見 ら れ た . こ う し た 事 実 か ら ,単 量 体 型IDH     ―290−

(4)

の 立体 構造 は,遺 伝子 の部 分的 重複 によ って 生ま れたと結論付けられ,また,

両 IDH 間 に活性 残基 以外 に一 次構 造の 相同 性が ほと んど 見ら れな いのは ,遺 伝 子 の 部分 重複 の後 ,単 量体 型IDH が熱 力学 的に 安定 なフ オー ルデ ィング を再 び 取 り戻 すた め,度 重な る変 異や 挿入 ,欠 失を 受け 入れてきた結果であると考え ら れ た . 単 量 体 型 IDH は , 構 造 的 に 二量体 型IDH の 特徴 をよ く備 えてお り, ま た 二 量体 型IDH の広 範囲 に渡 るサ ブュ ニッ ト界 面を ,ド メイ ン界 面に置 き換 え て 保 存し てい るこ とか ら, 明ら かに 二量体 型IDH か ら進 化し てき たと考 えら れ た .こ のよ うな分 子進 化経 路は これ まで に提 唱さ れておらず,単量体から多量 体へと向かう分子進化と対照的である.

   次に,単量体型IDH が高活性である理由を構造学的に明らかにするため,NADP ゛ 複合体の構造解析が行われた結果,単量体型IDH のNADP ゛認識様式が二量体型IDH と 大き く異 なって いる こと が明 らか にな った ,こ れは基質認識残基がほぼ完璧 に保存されているのとは対照的であり,NADP ゛特異性が進化の過程で独立に獲得 されたことを示唆している.本構造解析で最も注目すべき事実は,NADP ゛のニコ チ ンア ミド リボー スと 酵素 との 間に いく っか の水 素結合が形成されていたこと である.大腸菌由来の二量体型IDH ーNADP+ 複合体構造では,このニコチンアミド リ ボー ス部 位は完 全に ディ スオ ーダ ーし てい るこ とが既に示されている.これ は , 単量 体型 IDH の ニコ チン アミ ドを 認識 して いる Asn85 ーSer87 にあた る残 基 が 二量 体型 IDH に は存 在しないためと考えられる.また,NADP ゛複合体の構造を 基質―Mr12 ゛複合体の構造に重ね合わせ,想定される初期ES 複合体のモデルを構築 し たと ころ ,NADP ゛の 反応点とイソクエン酸の2 位炭素間のジオメトリーが,一 般 的に ヒド リド転 移反 応が 起こ ると され る範 囲内 に位置できることが確かめら れ た. すな わちこ れは ,基質とNADP+ は共に,互いが存在しない状態であっても ヒ ドリ ド転 移可能 な状 態で 酵素 に結 合し ,待 機で きることを示している.単量 体 型 IDH に見ら れる ニコ チン アミ ドリ ボー ス部 位の 固定 は, 必要 最小限 の相 互 作 用に より ,飛躍 的な 機能 の高 性能 化を 実現 して いる天然酵素の興味深い戦略 と 言え る. ニコチ ンア ミド 固定 の役 割を 果た すル ープ領域は,遺伝子の部分重 複 に よ り 二 量 体 か ら 単 量 体へ と 進 化 し た 過 程 で 獲 得 さ れ た と 考 え ら れ る .    単 量体 型IDH の構 造解 析は ,天 然の 補因 子Mn との 複合 体結 晶を 用い, Mn の 異 常 分 散 を 利 用 し た MAD 法 を 用 い て 行 わ れ た が , Mn の K 殻 吸 収 端 は 波 長 約 1.9A と 低エ ネル ギー領 域に 存在するため,X 線の吸収が大きく,結晶の放射線損傷が 顕 著と なり ,誤差 の少 ない 回折 デー タ収 集が 困難 となる.本解析では,波長間 の 相対 スケ ーリン グ, 三次 元ス ケー リン グな どに より,この誤差を最大限に取 り 除き ,さ らに別 の晶 系に 属す る結 晶の デー タと の間で結晶問電子密度平均化 法を行い構造決定に成功したものである.

   以 上 , 本 研 究は , Mn を 用い たMAD 法 を適用 する こと によ り, 単量 体型 IDH の

基質― Mn2 ゛複合体,およびNADP ゛複合体の立体構造を解明し,同酵素の分子進化

(5)

と活性について詳細に研究したものである,本研究が生物科学に及ぼす貢献に

は多大なものがあると考えられ,よって審査員一同は申請者が博士(理学)の

学位を得る十分の資格があるものと認めた.

参照

関連したドキュメント

第 9 章では、本研究の理論的貢献と実践的貢献が議論され、今後の研究の方向性を打ち

  

とされているとt まいえ,日本教員養成史研究における独創性と拓野性,そして新たな学問的貢献 は多大なものがある。.

  

  

モデルの構築,計測技術の開発を行うとともに,この成果を基にして新しい精錬プロセスの開

素鋼の新規な防食技術を開発したものであり、腐食防食工学および金属表面処理工学に 貢献するところ大なるものがある。.

これを要するに、著者は、高冷却速度の凝固法をCIS の合成に適用し、冷却 速度と微細組織の関係を検討することから、新知見を得たものであり、材料 工学お よび ェネ ルギ ー工学 の発