• 検索結果がありません。

博士学位論文審査結果報告書 (

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "博士学位論文審査結果報告書 ("

Copied!
5
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

1

博士学位論文審査結果報告書

(2015年 39日 提出)

1.審査委員 主査 教授 當間 克雄 印

教授 山口 隆英 印

教授 三崎 秀央 印

2.提出者氏名 郝 瑛(カクエイ)

3.論題 資源ベース理論の意義・限界と今後の発展方向

4.論文の要旨

経営戦略論研究の中心的研究課題は、「なぜ、ある企業は他の企業より優れた業績を あげることができるのか」というものであり、この課題に取り組む先行研究は 2 つの 研究アプローチに大別されている。まず第 1 の研究アプローチは、企業が参入し、活 動する産業や業界の魅力度が、企業の優れた業績の源泉であると考える諸研究群であ り、それらは市場ポジショニング視角・理論と呼ばれている。第 2 の研究アプローチ は、事業活動を通じて企業が開発、蓄積、発展させている経営 資源が、当該企業の優 れた業績の源泉であると主張する諸研究群であり、それらは資源ベース視角・ 理論と 呼ばれている。

このような 2 つの研究アプローチのうち、本研究は後者の研究アプローチ、すなわ ち企業が保有・蓄積する経営資源とその企業の競争優位の関係を明らかにしようとす る資源ベース理論に注目し、この理論の理論的、実践的な貢献と限界、および今後の 研究の発展の方向性について探求 することを目的としている 。近年、欧米では盛んに 資源ベース理論の研究がなされ、多くの研究成果が発表されているが、 本研究では、

特にその中から Barney を中心とする資源ベース理論を取り上げて、考察、検討して いる。

論文は以下の9章構成となっている。まず第 1章では、本研究の問題意識が議論されて いる。第 2 章では、企業が開発・蓄積する経営資源とその企業の競争優位の獲得・持 続との関係を明らかにする資源ベース視角という諸研究群が、 経営戦略研究の研究領 域において、どのように研究がなされ、発展してきたのかということについて、 多く の先行研究を考察し、議論を展開している。第 3章では、Barneyを中心とする資源ベ ース理論について紹介し、この研究の意義や貢献、および限界について議論を展開し

(2)

2 ている。第 4 章では、資源ベース理論の研究の発展を、「製品・産業ライフサイクル」

という概念を使って議論した Barney の最新の研究を紹介し、資源ベース理論の限界 を克服するために、近年、展開されている諸研究を紹介している 。第 5 章では、資源 ベース理論の限界を克服するための 1 つの研究の方向性として、近年注目されている

「ダイナミック・ケイパビリティ」概念を紹介し、企業の競争優位の源泉としての資 源の開発・蓄積・発展をダイナミックな視点で考慮する本研究の理論的フレームワー クを提起している。第 6 章では、サウスウエスト航空のケースを活用して、資源ベー ス理論の理論的フレームワークである VRIO 分析の問題点を考察・検討し、本研究が 提起している理論的フレームワークを用いて分析している。第 7 章では、東光機材の ケースを活用して、VRIO 分析の問題点を再確認し、本研究の理論的フレームワーク を用いて、同社の資源の開発・蓄積・発展のプロセスを分析している。 第 8 章では、

6 章と第 7 章で論じた2 つのケーススタディから得られた研究成果をもとに、本研 究の理論的フレームワークを改良し、企業の資源分析のための新たな理論的フレーム ワークを提示している。第 9 章では、本研究の理論的貢献と実践的貢献を 議論し、本 研究の限界と今後の研究の方向性を議論している。

1章 本研究の問題意識と論文の構成

2章 経営戦略研究における資源ベース視角の位置づけ 第3Barneyを中心とする資源ベース理論

4章 資源ベース理論のライフサイクル 第5章 ダイナミック・ケイパビリティ理論 第6章 サウスウエスト航空のケース

7章 東光機材のケース

8章 資源の創造・蓄積・活用プロセス 第9章 本論文の貢献と今後の課題

1章では、本研究の問題意識と研究目的が議論されている。本研究は、企業の持続的 競争優位の源泉を、当該企業が開発・蓄積・発展させる経営資源や組織能力という視点か ら分析する資源ベース理論を考察し、この理論が提唱する理論的フレームワークである VRIO 分析の意義や貢献、限界を2つのケーススタディを通じて明らかにすることを目的 としていることが議論されている。また、本研究でケーススタディという研究方法論を採 用する理由や意義について、Yin(1994)の研究を中心に議論を展開している。

2章では、企業の持続的競争優位の源泉となる経営資源の重要性に関する諸研究群を、

Barney=Clark(2007)に基づいて3つのカテゴリーに分けて紹介している。まず第 1のカ テゴリーは、資源ベース視角の基礎となる研究であり、Selznick(1957)、Ricardo(1817)、

Penrose(1959)、 Demsetz(1973) といった代表的研究がこれに当たる。第2のカテゴリー

(3)

3 は、資源ベース視角の初期研究であり、Wernerfelt(1984)、Rumelt(1984)、Barney(1986)、

Dierickx=Cool(1989)がこれに当たり、それぞれの研究を紹介している。第 3のカテゴリ

ーは、企業の競争力の構築と発展における経営資源や組織能力の重要性を強調する他の研 究であり、ここでは伊丹(1984)を紹介している。これらの諸研究群のレビューを通じて、

①経営資源と競争優位との関係に関する研究は多様な視点からなされていること、②企業 の競争優位の源泉を解明するために、資源ベース視角は有効なアプローチであること が明 らかになったと著者は主張している。

3章では、Barney=Clark(2007)に基づいて資源ベース理論の理論的前提、分析フレ ームワーク、および理論的貢献と限界を議論している。Barney=Clark(2007)が提起する 資源ベース理論では、持続的競争優位の源泉としての経営資源や組織能力の特徴(有価値 性、希尐性、模倣困難性を明らかにし、その頭文字をとって VRIO 分析という理論的フレ ームワークを提示している。また、その限界として、①同語反復であること、②静態的で あること、③有価値性や希尐性、模倣困難性を評価する基準が明確ではないことなどがあ げられることが議論されている。

4章では、Barney et al.(2011)に基づいて、資源ベース理論の理論的発展について紹 介している。そこでは、「製品・産業ライフサイクル」概念を用いて、資源ベース理論の理 論的発展動向を描写し、先行研究を生成期、成長期、成熟期という段階に位置づけて整理 し、現在の研究動向が成熟期に当たることが紹介されている。また、成熟期における資源 ベース理論の諸研究の特徴は、知識に基づく理論やダイナミック・ケイパビリティ理論な ど、多様で派生的な理論が生成できたことであることが議論されている。

5章では、Teece et al. (1997)とEisenhardt=Martin(2000)に基づいて、ダイナミッ ク・ケイパビリティ理論をレビューし、その研究成果を活かして、VRIO 分析の際に、資 源を単体で評価・検討するのではなく、事業システムと関連づけて評価・検討する必要が あるという結論を導出し、資源の開発・蓄積・発展に関する 新たな分析フレームワークを 提示している。

6章では、既に公表されているサウスウエスト航空のケースを活用して、資源ベース 理論の有効性の確認と前章で提示した新たな分析フレームワークの確認を行っている。資 源ベース理論に基づく諸研究では、その理論的支柱である VRIO 分析というフレームワー クを活用したケーススタディが殆ど行われてこなかった。その限界を克服するために、 ケ ーススタディによる VRIO 分析の有効性をチェックし、VRIO 分析の貢献と限界を明らか にしている。また、前章で提示した経営資源の開発・蓄積・発展に関わる新たな分析フレ ームワークの有効性も、ケーススタディを通じて確認している。

7章では、兵庫県三木市に立地する東光機材のケーススタディを通じて、VRIO 分 析の有効性と限界を確認している。前章同様、効果的な VRIO分析を行うためには、

資源そのものの有価値性や希尐性、模倣困難性を評価するのではなく、企業が構築し た事業システムと関連づけて評価する必要性があることが主張されている。さらに、

(4)

4 東光機材のケースを活用して、企業が持続的競争優位の源泉となる経営資源を開発、

蓄積、発展させるための独自の分析フレームワークの確認・チェックを行っている。

8章では、サウスウエスト航空と東光機材のケースを通じて構築・修正した経営資源 の開発・蓄積・発展プロセスに関する本研究のフレームワークを提案している。企業の保 有する経営資源や組織能力が、持続的競争優位の源泉となるためには、資源を単体で検討 するのではなく、事業システムと関連づけて検討する必要があり、その分析フレームワー クを提示している。また、VRIO 分析では、分析対象となる経営資源は所与のかのごとく 説明が殆どなされていないが、資源を特定化し、分析するためにも事業システムのあり方 を理解し、それと関連づけて特定化する必要があると著者は主張している。

9章では、本研究の理論的貢献と実践的貢献が議論され、今後の研究の方向性を打ち 出している。本研究の理論的貢献は、①資源ベース理論の発展を紹介し、VRIO 分析の限 界に明確したこと、②VRIO 分析の限界を改善するために、ダイナミックな視点を取り入 れて、資源の価値は単独で評価できず事業システムとともに検討する必要性があると提案 したこと、③資源を事業システムとともに検討するための独自の分析フレームワークを提 示したことの 3点にあり、実践的貢献は、①ケーススタディを通じた VRIO分析の効果的 な活用方法を提示したこと、②資源の開発・蓄積・発展プロセスという分析フレームワー クを提示することによって、持続的競争優位の源泉とな る資源の開発・蓄積・発展のあり 方を提案したことの 2点にあることが主張されている。

5.論文の評価

本研究の理論的支柱となる資源ベース理論は、経営戦略研究における 1つの重要な理論 的研究領域であり、近年、欧米において盛んに研究が展開されて、研究の発展がみられる。

しかし、日本の学界においては、理論研究は若干行われつつあるものの、実証研究に至っ ては、あまり取り組まれていないのが実情である。その意味で、取り組むのが難しいと言 われているこの研究領域の多くの先行研究(主として欧米の研究)を丹念に渉猟し、その 理論的、実践的有効性や限界を提示しているという点では、本研究は高く評価することが できる。

また、資源ベース理論の分析フレームワークである VRIO分析は、経営関連の学部およ び大学院の講義では、頻繁にその有用性が紹介されている理論的な視点であるが、特定の 企業のケースを活用して、統一感を持って分析した研究は殆どみることができない。本研 究では、既に公表されている米国サウスウエスト航空のケースと、兵庫県三木市に立地し、

小規模ながらも新事業開発に成功している東光機材のケースを活用してVRIO分析の理論 的、実践的な有効性や限界を探求している点も、本研究の大きな特徴であり、学術的にも 実務的にも評価できる点と言えよう。

さらに、2 つのケーススタディを通じて、持続的競争優位の源泉となる経営資源や組織 能力の開発・蓄積・発展に関する著者なりの分析フレームワークを提示していることも評

(5)

5 価できる点である。

しかし、本論文にも課題はある。まず第1に、前半の理論研究の論理展開、つながりに 関することである。本研究では、資源ベース理論の特徴を探るために、それ以前の研究を 資源ベース視角以前の研究、資源ベース視角に関する研究の 2つに分類し、資源ベース理 論の発展へと結びつけ、さらに資源ベース理論の発展形態であるダイナミック・ケイパビ リティ理論についても考察し、議論を展開しているが、それぞれの理論がどのように結び つき、資源ベース理論へと発展しているのか、さらに資源ベース理論からダイナミック・

ケイパビリティ理論へとどのように発展しているのか、ということが必ずしも明確かつ十 分に議論できているとは言いがたい。この点は、今後の研究の課題と言えよう。

第2に、理論的一般化の問題である。本研究では、資源ベース理論の分析フレームワー ク VRIO分析の理論的、実践的有効性と限界を明らかにするために 2つのケーススタディ を行い、事業システムと関連づけた VRIO分析のあり方を提示し、さらに企業における資 源開発・蓄積・発展の新たな分析フレームワークの提示を行っている。しかし、今回の理 論的、実践的な研究成果は、この分析限りでのことであり、特に本研究が提示している 理 論的分析枠組みは、今後も検証・チェックしていく必要がある。この点は、著者も理解し ており、より一層の実証的研究を積み上げる必要がある。

以上の2点が本研究の課題であり、今後一層の研鑽を通じて検討・解決して欲しい点で ある。しかし、これらの課題はあるものの、上で述べた本研究の経営戦略研究における理 論的、実証的貢献は非常に大きいと評価できる。

6.判定

本論文の貢献および所定の試験の成績を考慮して、本 論文の提出者が博士(経営学)の 学位を授与されるのに十分な資格をもつものと判定する。

参照

関連したドキュメント

こうした背景を元に,本論文ではモータ駆動系のパラメータ同定に関する基礎的及び応用的研究を

 介護問題研究は、介護者の負担軽減を目的とし、負担 に影響する要因やストレスを追究するが、普遍的結論を

方法 理論的妥当性および先行研究の結果に基づいて,日常生活動作を構成する7動作領域より

学位の種類 学位記番号 学位授与の日付 学位授与の要件 学位授与の題目

「心理学基礎研究の地域貢献を考える」が開かれた。フォー

これは基礎論的研究に端を発しつつ、計算機科学寄りの論理学の中で発展してきたもので ある。広義の構成主義者は、哲学思想や基礎論的な立場に縛られず、それどころかいわゆ

経済学研究科は、経済学の高等教育機関として研究者を

一般法理学の分野ほどイングランドの学問的貢献がわずか