博 士 ( 工 学 ) 池 澤 一 浩
学 位 論 文 題 名
スプラット凝固した CuInSe2 の組織改良に関する基礎的研究 学 位 論 文 内 容 の 要 旨
ク リ ー ン ェ ネ ル ギ ー 問 題 が ク 口 ー ズ ア ッ プ さ れ る よ う に な っ て か ら 久 し く 、 そ の1つ の 解 決 法 と し て 、 太 陽 電 池 の 研 究 開 発 が 盛 ん で あ る 。 特 に シ リ コ ン 太 陽 電 池 は 、 ア モ ル フ ァ ス シ リ コ ン 太 陽 電 池 を 始 め と し て 、 広 く 民 生 用 や 電 力 用 に 使 わ れ る よ う に な っ て き て い る 。 し か し な が ら 、 高 効 率 、 低 コ ス ト あ る い は 光 劣 化 の 問 題 の 観 点 か ら 化 合 物 太 陽 電 池 の 開 発 が 進 め ら れ て い る 。CuInSe2( 以 下CISと 略 す ) は そ の1つ で あ り 、 将 来20% の 効 率 が 可 能 と さ れ て い る 。CISは 現 在 ま で ス パ ッ タ リ ン グ や 蒸 着 な ど で 試 作 さ れ て い る が 、 よ り 低 コ ス 卜 の 噴 射 熱 分 解 法 も 検 討 さ れ て い る 。 本 研 究 で は よ り 簡 便 な 方 法 と し て 、 融 液 を 冷 却 板 に 噴 射 衝 突 さ せ て 急 冷 す る ス プ ラ ッ ト 凝 固 法 をCISの 作 製 に 応 用 し た 。 本 研 究 の 主 題 は 、 こ の ス プ ラ ッ ト 凝 固 法 に よ り 種 々 の 条 件 でCIS試 料 を 作 製 し 、 微 細 組 織 に 及 ぼ す 冷 却 速 度 や 組 成 の 影 響 を 検 討 す る こ と で あ る 。
本 論 文 は5章 か ら 構 成 さ れ て い る 。
第1章 で は 太 陽 電 池 やCISに 関 す る こ れ ま で の 研 究 を 概 説 し 、 さ ら に 本 研 究 の 目 的 及 び 本 論 文 の 構 成 に つ い て 述 べ た 。
第2章 で は 、 微 細 組 織 に 及 ぼ す 冷 却 速 度 の 効 果 を 述 べ た 。 ス プ ラ ッ ト 凝 固 の 噴 射 圧 カ に 依 存 し て 、 試 料 の 厚 さ と 冷 却 速 度 が 変 わ る た め 、 そ れ に 伴 う 微 細 組 織 を 判 別 す る こ と に よ り 最 適 な 噴 射 条 件 を 得 た 。 ま た 理 論 的 冷 却 速 度 を 計 算 し 、 微 細 組 織 と の 関 連 を 明 ら か に し た 。
厚 さ 約1000 hcm( 冷 却 速 度9.0 X102℃/sec)の 場 合 に は 、 試 料 上 面 は 大 き な デ ン ド ラ イ 卜 と 平 坦 面 か ら 成 っ て い た 。 厚 さ が 薄 く な る と ( 約400 ym、 冷 却 速 度1.7Xl03℃/sec)、 デ ン ド ラ イ ト と 平 坦 面 の サ イ ズ が 小 さ く な り 、 さ ら に 薄 い 試 料 ( 約100 pcm、 冷 却 速 度1.6 xi04℃/sec)で は 等 軸 晶 も 現 れ る よ う に な っ た 。 一 方 、 試 料 下 面 の 冷 却 速 度 は 大 き く(5.7 X i04〜4.7Xl05℃/sec)、 厚 さ が100〜1000 ymの 場 合 で あ っ て も 組 織 は 等 軸 晶 の み か ら 成 っ て い た 。 こ の 単 一 組 織 が 得 ら れ た の は 、 下 面 の 冷 却 速 度 が 厚 さ に ほ と ん ど 依 存 し な い た め と 判 断 し た 。
ま た 、 内 部 組 織 の 構 成 は 条 件 に 強 く 依 存 し た 。 試 料 が 厚 い 場 合 ( 約600 ym以 上 、 冷 却
速度
4.2Xl03℃
/sec以下)、
CISのマ卜リクスとCu‑In 及び
InSeの析出が存在した。試料 が薄 い場合(約
400 ym以 下、冷却速度
1.8Xl03℃
/sec以上)、
Cu‑In相に大きな変化は なかったが、
InSeの成長が抑制された。
さらに、炉冷標準試料と放冷試料についても比較検討した結果、いずれにもCu‑In 合金 及び
InSe相が存在した。このことから、噴射試料の第2 相の形成は、セレンの局部的蒸 発が原因のーっと推定した。
X
線回折から、標準試料と放冷試料には
InSeのピークが現れたが、噴射試料では確認 できないことから、スプラット凝固により
InSe相の成長は抑えられることが判明した。
結晶粒の数密度は、試料の底部及び中央部のいずれでも、冷却速度の増大とともに単調 に減 少した。こ れは冷却速 度の増大とともに核生成頻度が増大するためと推察した。
本研究の範囲で最適な凝固条件を検討した結果、試料の形状、厚さ、第
2相の含有量か ら、噴射圧力
1.5 atmが最適と判断した。
第3 章では、第
2相の除去方法の検討結果を述べた。試料中の第2 相は光活性領域の減 少をもたらすので、3 種の方法により第2 相の除去を試みた。
まず、セレン量を増加した場合、60 〜80 ato/o Se では組織に大きな変化はなく、90 at %
Seでは
Seと
CISと
CuSe2の混 合 体で あ り、 い ずれ も 均一 な 組織 を 得ら れ なか った。
次に、ストイキオヌトリー試料をアルゴン中でアニールした場合、Cu‑In とInSe 相は粗 大化したが、析出の消失は起こらなかった。
さらに、セレン雰囲気中でアニールした(セレン化)場合、温度条件に依存してCu‑In の消失が生じた。その温度依存性から、セレン化速度はセレン源温度には依存せず、試料 温度にのみ依存することが明らかになった。ただしセレン化後の試料にはポアが生じた。
こ の ポ ア は
Cu‑In析 出 の 構 成 原 子 の 拡 散 に よ り 生 成 し た も の と 推 定 し た 。
第4 章では、微細組織に及ぼす微小重カの効果を述べた。微小重力下では融液の均一性 が図られ、均一な微細組織が得られる可能性がある。また最近、アンプル中のCIS を溶融 後急冷すると、微小重カにより均一な微細組織が得られると報告されていた。しかしなが ら本研究の結果では、地上及び微小重力環境で合成した試料に明確な差は認められなかっ た。これは凝固時間が非常に短かったため、重力偏析等の現象が起きなかったものと推定 した。
第5 章では、本研究の結果を総括した。すなわち、本研究の結論は次のように要約でき
る。スプラット凝固の噴射圧カに依存して冷却速度が変わるため、結果として内部組織を
制御することが可能なことが示された。またセレン化を併用することにより、残存する第
2相を消去できることが明らかになった。
学 位 論 文 審 査 の 要 旨 主 査 教 授 大 貫 惣 明 副 査 教 授 石 井 邦 宜 副 査 教 授 高橋 平七郎 副 査 教 授 工 藤 昌 行
学 位 論 文 題 名
スプラット凝固したCuInSe2 の組織改良に関する基礎的研究
高 効 率 の 太 陽 電 池 材 料 で あ るCuInSe2(CIS)は 、 複 雑 な 状 態 図 を 持 つ 系 のた め 均 質 な 材 料を 得る こと が難 しく 、製 造法 によ り性 能が 異な ると いう問 題点 が あ る 。 現 在は スバ ッタ リン グや 蒸着 など で試 作さ れて いる が、 より低 コス ト の 製 造 法 の研 究開 発が 望ま れて いる 。本 研究 では 、融 液を 冷却 板に噴 射 衝 突 さ せ て 急 冷 す る ス プ ラ ッ ト 凝 固 法 をCISの 作 製 に 適用 し 、 微 細 組 織 に及 ぽ す 冷 却 速 度や 組成 の影 響を 詳細 に検 討す るこ とか ら、 第二 相出 現の抑 制 を 試 み た も の で あ り 、 そ の 主 要 な 成 果 は 次 の 点 に 纏 め ら れ る 。
@ス プ ラ ッ ト 凝 固 に よ る 微 細 組織 と冷 却速 度の 関係 を調 べた結 果、 材料 の厚 さと 冷 却 速 度 は 噴 射 圧 カ に 依 存し て変 化す るこ とを 明ら かに、 望ま しい 組織 と試 料 形 状 を 得 る た め の 最 適 な 噴 射 条 件 を 得 た 。
◎理 論 的 計 算 か ら 冷 却 速 度 試 算し 、ス プラ ット 凝固 時の ミク口 組織 との 関係 を明 ら か に し た 。 す な わ ち 、 冷却 速度 が小 さい 場合 はデ ンドラ イト 組織 であ るの に 対 し て 、 冷 却 速 度 が 大 きく なる と等 軸晶 に変 化す ること を見 出し た。
◎結 晶 粒 の 数 密 度 は 試 料 中 の 場所 には かか わら ず冷 却速 度のみ に依 存す るこ とを 明 ら か に し た 。 す な わ ち 、こ の数 密度 は冷 却速 度の 増大と とも に単 調に 減少 す る こ と か ら 、 核 生 成 頻 度が 増大 する こと が原 因す ると推 察し た。 この 結果 か ら 、 結 晶 粒 数 密 度 を 測 定す るこ とに より 、局 部的 領域の 冷却 速度 を知 るこ と が 可 能 と な っ た 。
@ ス プ ラ ッ ト 凝 固 し たCISの 内 部 形 成 相 を 電 子 顕 微 鏡 観 察 とX線 回 折 に よ り 調 査 し た 結 果 、 第 二 相 はCu―In相 及 びInSe相 で あ る こ と を 同 定 し た 。 ま た 、 冷 却 速 度 を 増 加 さ せ た 場 合 に は 、 第 二 相 の う ちInSe相 の 出 現 を 効 果 的 に抑 制 で き る こ と を 明 ら か に し た 。
◎ス プ ラ ッ ト 凝 固 試 料 に ふ く まれ る第 二相 の除 去を 目的 として 、溶 解に よる Seの 増 量 、Ar中 の 高 温 ア ニ ー ル 、 セ レ ン 化 の 三 種 の方 法 を 試 み 、 セ レ ン 化 によ り 第 二 相 を 効 果 的 に 除 去 する こと に成 功し た。 この 過程を ミク 口組 織と