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博 士 ( 工 学 ) 馬 渕 勝 美

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Academic year: 2021

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博 士 ( 工 学 ) 馬 渕 勝 美

学 位 論 文 題 名

吸 収 式 冷 凍 機 の 防 食 技 術 に 関 す る 研 究 学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  エネルギー消費の増大に伴う炭酸ガスの増加や産業,生活の高度化に伴うフロン使用量の増加により,

温暖化やオゾン層破壊などの地球規模での環境破壊が問題となっている。そのためエネルギーの有効利用 技術の開発および丿ンフロン機器の開発が重要課題となっている。これに伴い,地下鉄,河川,下水等の 排熱を蓄熱槽に蓄え,それを熟源として地域冷暖房を行う排熱エネルギー総合利用マク口システムが検討 され,一部新宿副都心などに適用されている。この地域冷暖房をはじめビル,空港等の空調システムとし て,吸収式冷凍機が脚光を浴び,この需要が急速に伸びている。吸収式冷凍機はフロンを使用しないLiBr と水を使用した密閉系となっており,しかも蒸気等の排熟を利用することができるため,環境に与える影 響は非常に小さい。しかし,その動作条件は広範囲な温度および濃度のLiBrを使用する環境であり,また 種々の材料を使用しているために,以下に示すような問題を生じる。

    (1)LiBr水溶液は腐食性が高いにもかかわらず,経済性の観点から主として構成材料に炭素鋼が使用 されているために,腐食によるトラプルが多い。著しい腐食が生じた場合,構造材料としての損傷に加え て , 多量 の ガ スが ( そ のほ と ん どが 水 素 ガ ス) 発 生 する ため に,冷凍 機の性 能が低下 する。

  (2) 銅 系材 料 と 構成 材 料 であ る炭素 鋼との異 種金属 間腐食は 詳細に は検討さ れていな い。

    (3)高温再生器および熱交換器においてはLiBrは約21mol kg.1の高濃度となるが,この濃度は室温で の飽和溶解度を超えている。そのため停止時にはLiBr濃度を低下させる希釈運転が,また逆に起動時には 濃縮運転をおこなっている。しかし吸収式冷凍機が希釈運転をする前に停止した場合,装置内部でLiBrが 凝固して再起動できなくなる。またこのような凝固が生じると,その部分でのインヒビターの欠乏(イン ヒ ビ タ ー は 溶 液 側 に 移 行 ) を 生 じ , 孔 食 等 の 局 部 腐 食 を 生 じ る 原 因 と な る 。   この様な背景から,本研究におぃては,インヒビターによる防食方法に関して検討するとともに,その 防食機構を解明すること,インヒビターの消耗量を低下させる高耐食性表面処理法を開発すること,銅系 材料と炭素鋼の異種金属間腐食に関して検討することおよび高溶解性のLiBrLiNO/KCl混合吸収液の腐食 特陸を検討することを計画した。本論文は,7章から構成されており,各章の概要は以下のとおりである。

  第1章「緒論」においては,まず吸収式冷凍機の動作機構,動作条件についてふれ,腐食の問題が多く 存在することを示した。次いで,L毋r水溶液中における腐食挙動および今までに検討されたインヒビター による腐食抑制について論じた。また現状の吸収式冷凍機における腐食抑制技術の不充分な点を指摘し,

本研究の目的と意義を明らかにした。

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(2)

  第2章「 濃厚LiBr水溶 液中における炭素鋼の腐食挙 動」では,吸収式冷凍機の 効率向上を目的とした高 温再生器の 動作温度の高温化を目的に,473KまでのLiBr水溶液中に おける炭素鋼の腐食挙動とそ の抑制方 法を検討し た。インヒビターが存在しな いLiBr水溶液中における炭 素鋼の腐食量は,LiBrの濃度 の増加と ともに腐食 量が増加することを明らかに した。LiOHを添加すると,LiBr濃度が10mol kg.1以下ではぃずれ の温度でも 腐食量は十分小さくなったが,多くの場合孔食が発生した。一方,LiBr濃度が17.3mol kg 1以上 で はLiOHに よる 腐 食抑制 は不十分で,LiOHのみでは 腐食を十分抑制できないこと を明らかにし,第2元素 と して 酸素 酸塩 を 添加 する こと を 考え た。LiOHと併 用する酸素酸塩としては,473Kでもモリブデン酸塩 が 最 も 優 れ た 腐 食 抑 制 効 果 を 示 し , 動 作 条 件 の 高 温 化 が 可 能 で あ る こ と を 明 ら か に し た 。   第3章「高 温濃厚LiBr水溶液中におけ るLiN03,Li2M00。およびLiN03/Li2M00。混合インヒビターによる炭 素鋼の腐食 抑制機構」では,LiN03/Li2M00。混合インヒビターの腐食挙動を検討するとともに,M00。2・に よ る腐 食抑 制機 構 に関 して 検討 し た。Li2M004とLiN03を併用することにより, ガス発生量および腐食量 ともに低減 することができることを明ら かにした。また酸化物/溶液界面ではM00ユ2.の吸着によルカチオ ン透過性を 示すために,耐食性が優れて いると推定した。

  第4章「 大気 酸化 処理 による高温濃厚LiBr水溶液中 における炭素鋼の腐食抑制 作用」では,大気酸化処 理によるプ レフイルミングを施した鉄鋼 材料の高温LiBr水溶液中に おける耐食性を評価した。673K以上で プ レフ イル ミン グ する こと によ り ,腐 食を 約1/10程 度 に低 減す るこ とが で きる こと を明 ら かにした。

LiOH共 存下 では , 腐食 量は イン ヒ ビタ ーで あるM00。2.の 有無 に依 存しないこ と,またLiOHが0.12mol kg. ̄以上 あれば,腐食量はその濃度に 依存しないことを確認した。従って,プレフイルミング皮膜が健全 で あれ ば, アル カ リ以 外の イン ヒ ビタ ーは 必要でな いことを明らかにした。573Kでプレフイルミングし た場合には ,皮膜の欠陥が原因で腐食量 がばらつくが,M00ユ2゛が共存していればそれが皮膜の欠陥部を補 修すること により腐食を低減することを 明らかにした。

  第5章「高 温濃厚LiBr水溶液中におけ る炭素鋼とロウ材との異種金 属間腐食」では,高温濃厚LiBr水溶液 中における 炭素鋼と各種ロウ材との異種 金属間腐食に関して検討し た。Niロウを炭素鋼の接合に 使用した 場 合,383Kにお い て炭 素鋼 側に 著 しい 腐食 を生じる ことを明らかにした。銅系 口ウ材を炭素鋼の接合に 使 用し た場 合に は ,ロウ 材の腐食が加速されること を明らかにした。70/30キュ プロニッケルは,検討し たロウ材の 中ではぃずれの温度において も最も耐食性が高いが,炭素鋼側に局部腐食を生じさせるために,

薄板の接合 には適さないこと確認した。

  第6章「 高温 濃厚LiBrLiNOパCl水 溶液 中に おける 鉄鋼材料の腐食挙動」では,LiBr/LiN03/Ka/LiOH 混合吸収液 中における炭素鋼およびステ ンレス鋼の腐食挙動に及ぼ す温度,Li:M00。およびLiN03の影響

( 炭素 鋼の み) に 関して 検討した。混合吸収液中に おいては,炭素鋼に関しては 腐食量は小さいが,433 K以 上 で100〃m程度 の深 い 孔食 が生 成す るた め に, 使用 する こ とは 困難 であ る。 ま たSUS304,SUS316L お よびSUS430は463Kま での 温度 範 囲で 不動 態化し, しかも孔食等の局部腐食は 見られないことから,ス テンレス鋼 は,混合吸収剤中で使用する ことができることを明らか にした。

  第7章は, 全体の総括である。

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(3)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

吸収式冷凍機の防食技術に関する研究

  工 ネ ル ギ ー 消 費 の 増 大 に 伴 う 炭 酸 ガ ス の 増 加 や 産 業 ・ 生 活 の 高 度 化 に 伴 う フ 口 ン 使 用 量 の 増 加 に よ り 、 温 暖 化 や オ ゾ ン 層 破 壊 な ど の 地 球 規 模 で の 環 境 破 壊 が 問 題 と な っ て お り 、 エ ネ ル ギ ー の 有 効 利 用 技 術 の 開 発 お よ び ノ ン フ 口 ン 機 器 の 開 発 が 重 要 課 題 と な っ て い る 。 こ の 技 術 開 発 の 一 環 と し て 、 地 下 鉄 ・ 河 川 ・ 下 水 等 か ら の 排 熱 を 熱 源 と し て 地 域 冷 暖 房 を 行 う 排 熱 エ ネ ル ギ ー 総 合 利 用 マ ク 口 シ ス テ ム が 検 討 さ れ て お り 、 一 部 新 宿 副 都 心 な ど に 適 用 さ れ て い る 。 こ の 地 域 冷 暖 房を は じ めピ ル ・ 空港 等 の 空調 シ ス テム と し て、

吸 収 式 冷 凍 機 が 脚 光 を 浴 び 、 こ の 需 要 が 急 速 に 伸 び て い る 。 吸 収 式 冷 凍 機 は フ 口 ン を 使 用 し な い 密 閉 系 で あ り 、 し か も 蒸 気 等 の 排 熱 を 利 用 す る こ と が で き る の で 、 環 境 に 与 え る 影 響 は 非 常 に 小 さ い 。 し か し 、 そ の 動 作条 件 は 広範 囲 な 温度 領 域 を含 み 、 高濃 度 のLiBr 溶 液 を 使 用 す る の で 、 以 下 の 腐 食 問 題 を 生 じ る 。

(1)LiBr水 溶 液 は 腐 食 性 が 高 い に も か か わ ら ず 、 経 済 性 の 観 点 か ら 主 と し て 構 成 材 料 に 炭 素 鋼 が 使 用 さ れ て い る た め に 、 腐 食 に よ る ト ラ プ ル が 多 い 。 著 し い 腐 食 が 生 じ た 場 合 、 構 造 材 料 と し て の 損 傷 に 加 え て 、 多 量 の ガ ス が ( そ の ほ と ん ど が 水 素 ガ ス ) 発 生 す る た め に 冷 凍 機 の 性 能 が 低 下 す る 。

(2) 銅 系 材 料 と 構 成 材 料 で あ る 炭 素 鋼 と の ガ ル パ ニ ッ ク 腐 食 は 詳 細 に は 検 討 さ れ て い な い 。

(3) 高 温 再 生 器 お よ び 熱 交 換 器 に お い て はLiBrは 約21mol kg−1の 高 濃 度 と な る が 、 こ の 濃 度 は 室 温 で の 飽 和 溶 解 度 を 超 え て い る 。 そ の た め 停 止 時 に はLiBr濃 度 を 低 下 さ せ る 希 釈 運 転 を 、 ま た 逆 に 起 動 時 に は 濃 縮 運 転 を 行 っ て い る 。 し か し 吸 収 式 冷 凍 機 が 希 釈 運 転 を す る 前 に 停 止 し た 場 合 、 装 置 内 部 でLiBrが 凝 固 し 、 そ の 部 分 で の イ ン ヒ ピ タ ー の 欠 乏 ( イ ン ヒ ピ タ ー は 溶 液 側 に 移 行 ) の た め 、 孔 食 等 の 局 部 腐 食 を 生 じ る 原 因 と な る 。   本 研 究 は , 吸 収 式 冷 凍 機 の 作 動 条 件 に お け る 炭 素 鋼 の 腐 食 機 構 を 調 べ る と と も に 、 イ ン ヒ ピ タ ー に よ る 防 食 技 術 の 開 発 を 目 的 と し 、 イ ン ヒ ピ タ ー の 消 耗 量 を 低 下 さ せ る 高 耐 食 性 表 面 処 理 の 開 発 、 ガ ル バ こ ッ ク 腐 食 を 引 き 起 こ さ な い 銅 系 口 ウ 材 の 選 定 、 高 溶 解 性

明 浩

夫 明

英 眞

敏 俊

橋 尾

田 塚

高 瀬

成 大

授 授

授 授

教 教

教 教

査 査

査 査

主 副

副 副

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LiBr/LiN03/KC1 溶液における防食技術の開発と材料選定を行っており、吸収式冷凍 機の信頼性向上のための研究をまとめたものである。

   第 1 章 は 緒 論 で あ り 、 本 研 究 の 背 景 と 、 目 的 が 述 べ ら れ て い る 。    第 2 章においては、吸収式冷凍機の効率向上を目的とした高温再生器の動作温度の高 温化を目的に、 473K までのLiBr 水溶液中における炭素鋼の腐食挙動とその抑制方法 を検討した結果について述べている。LiBr 水溶液中における炭素鋼の腐食は、インヒピ ターとしてLiOH を添加することにより抑制されるが、その効果は十分でなく、これに モリブデン酸塩を加えると極めて優れた腐食抑制効果が得られることを見出し、動作条 件の高温化が可能であることを明らかにしている。

   第3 章においては、 LiN03/Li2M004 混合インヒピター系における炭素鋼の腐食挙動 を検討するとともに、M0042 ―による腐食抑制機構に関して検討した結果について述べて いる。Li2M004 と LiN03 を併用することにより、ガス発生量および腐食量ともに低減す ることができることを見出すとともに、モリブデン酸塩の腐食抑制効果は、酸化物/溶 液界面におけるM0042 −の吸着により生ずる皮膜カチオン透過性に起因することを推定 している。

   第4 章においては、大気酸化処理によるプレフィルミングを施した鉄鋼材料の高温 LiBr 水溶液中における耐食性を評価した。673K 以上でプレフィルミングすることによ り,腐食を約1/10 程度に低減することができることを見出すとともに、 LiOH 共存下 では,腐食量はインヒピターであるM0042 ―の有無に依存せず、プレフィルミング皮膜 が健全であれば、アルカリ以外のインヒビターは必要でないことを明らかにしている。

   第5 章においては,高温濃厚 LiBr 水溶液中における炭素鋼と各種口ウ材との異種金 属間ガルバニック腐食に関して検討した結果について述べている。Ni 口ウを炭素鋼の接 合に使用した場合には、炭素鋼側に著しい腐食がおきるが、銅系口ウ材の場合には,口 ウ材の腐食が加速されることを見出している。また、 70/30 キュプロニッケルは,検 討したロウ材の中ではいずれの温度においても最も耐食性が高く、ロウ材として使用可 能であるが、炭素鋼側に若干の局部腐食を生じさせるため、薄板の接合には注意を要す ることを提言している。

   第 6 章 に お いて は 、 高 溶 解性 溶液 として 開発 され たLiBr/LiN03/KCl/LiOH 混合 吸収液中における炭素鋼およびステンレス鋼の腐食挙動に及ぽす温度、Li2M004 および LiN03 濃度の影響に関して検討した結果について述べている。炭素鋼の場合には、433K 以上で深い孔食が生成し、この混合溶液系での使用は困難であることを見出した。また SUS304, SUS316L およ びSUS430 の ステ ンレ ス鋼 の場合 には 、463K まで の温 度範囲 で不動態化して腐食量が小さく、しかも孔食も見られないことを明らかにし、ステンレ ス鋼の混合吸収溶液中での使用の可能性を示唆している。

第7 章は,全体の総括である。

   これを要するに、著者は、LiBr を用いる吸収式冷凍機の作動条件における炭素鋼の腐

食機構を明らかにするとともに、混合インヒピターの添加および高温酸化処理により炭

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素鋼の新規な防食技術を開発したものであり、腐食防食工学および金属表面処理工学に 貢献するところ大なるものがある。

   よって、著者は、北海道大学博士(工学)の学位を授与される資格あるものと認める。

参照

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