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修 士 論 文 概 要 書

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Academic year: 2022

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修 士 論 文 概 要 書 

      CD       2008年  2月提出          学籍番号 3606U066-1 専攻名(専門

分野) 情報・ネットワーク 指 導 研究指導名 情報システム工学研究

氏 名

時光 潤

教 員

    後藤 滋樹  印

研 究

題 目

ENUM を利用したセキュアな  VoIP 通信の実現

□概要:

インターネットの急激な成長により、多くのユー ザが高速な常時接続環境を持つことができるように なった。現在多くの ISP や通信事業者がVoIP (Voice over IP) 技術を利用したIP電話サービスを提供して いる。VoIP における音声通信はエンドトゥエンドの P2P を用いた通信になる。しかし、ネットワークキ ャプチャソフトの進歩により、音声通信の盗聴が容 易になった。近年、音声の暗号化の技術は進歩して いる。しかし、その音声の暗号化に使用される鍵交 換アルゴリズムは標準化されていない。現在検討さ れている鍵交換アルゴリズムは、相互通信性を大き く低下させる可能性がある。そこで本研究では、

ENUM サーバを利用した鍵交換の方法を提案し、そ

の鍵を利用した暗号化音声通信が実現できることを 示す。また、提案手法と既存の方法それぞれの脆弱 性を、CVSSを利用して比較、分析、評価する。

1.ENUM 概要 1.1  ENUMの動作

ENUM (tElephone NUmber Mapping) とは、電 話番号から DNS を用いてインターネット上で利用 できるアプリケーションのサービス情報を得る仕組 みである。ENUM の動作イメージを図1に示す。具 体的には電話番号を DNS のドメイン名前空間とし て、アプリケーションのサービス情報をDNS サーバ に登録する。そして電話番号をキーとしてDNS サー バにアクセスすることにより、電話番号に対応付け られたサービス情報を得る。またENUM では、1つ の電話番号に対して複数のサービス情報を登録する ことが可能である。ENUMでは電話番号にあたるも のとして、「E.164 番号」を用い、またアプリケーシ ョンのサービス情報としてURI を用いる。

図1:ENUMの動作イメージ 1.2  ゾーン情報を保証するDNSsec

DNSsec (DNS Security Extension) はDNS のセ

キュリティを向上させるための拡張仕様である。

DNS はどんな問い合わせにも答える、オープンなデ ータベースである。そのため、ゾーン情報の信頼性 を 確 保 す る 方 法 が 考 え ら れ た 。ENUM で は DNSsec が標準的に使用されている。ENUM には、

メールアドレスやIP 電話のURI など個人情報が多 く登録されるためである。DNSsec ではゾーン情報 に ZSK (Zone Signing Key) を、ZSK 自身に KSK (Key Signing Key) を用いて、署名を行う。またそ の公開鍵の署名を上位サーバに依頼することで、信 頼の連鎖を構築する。DNSsec の動作イメージを図 2に示す。

図2:DNSsec動作イメージ 2.提案手法

本研究における提案手法の動作詳細を、図 3 に示 す。

まずURI とともに公開鍵をENUM DNS へ登録 しておく。そして、氏名とともに電話番号で問い合 わせをする。ここで氏名と電話番号が一致しなけれ ば、ENUM DNS から正しい返答は得られない。氏 名というキーワードを設定したのは、いたずら電話 や、公開鍵の無駄な流出などを防止するための実装 である。正しい返答が得られれば、通信相手の URI と公開鍵を得る。SIP URI をもとに、まず SIP セ ッションでシグナリングを行う。ただし、メディア

(音声)の接続先を「127.0.0.1」のループバックイ ンターフェースを指定しておく。これはトンネリン グツール「zebedee」の張るトンネルの中にRTP パ ケットの音声を流すためである。そして、SIP の

「contact ヘッダ」から通信相手のIP アドレスを抜 き取り、「zebedee」の設定ファイルの通信相手の部 分に指定する。SIP セッションが確立し、通信の準 備ができたら、「zebedee」を起動し、共通鍵を生成 する。共通鍵が生成されたら、その鍵を使って音

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声を暗号化するトンネルを張り、その中に音声の UDP データを流す。この通信に用いられる鍵のデー タはDNSsec で保証されているため、鍵の偽装、成 りすましなどの危険性も低い。またトンネルの中を 通るために音声通信が暗号化され盗聴も防ぐ。

図3:提案システムの動作詳細 3.評価

3.1  CVSSについて

CVSS (Common Vulnerability Scoring System) は、情報システムの脆弱性に対するオープンで汎用 的な評価手法であり、ベンダーに依存しない共通の 評価方法を提供している。CVSSを用いると、脆弱性 の深刻度を同一の基準の下で定量的に比較できるよ うになる。またベンダー、セキュリティ専門家、管 理者、ユーザなどの間で、脆弱性に関して共通の指 標を用いて議論することが可能になる。しかし、

CVSS v2 にある「現状評価基準」は時間の経過や技 術の進歩に伴って評価基準が変化すること、「環境 評価基準」は、対象システムを利用するエンドユー ザの環境にあわせて評価されるべき基準であること から、本研究では「基本評価基準」のみでの評価を 採用した。

3.2  盗聴、パケット偽装、なりすまし

非暗号化状態の SIP と RTP 、既存の音声暗号化シ ステム、提案手法、それぞれの通信確立手法を比較 評価する。RTP メディアに対する代表的な問題であ る、「盗聴」、「パケットの偽装」、「なりすまし」、に ついて脆弱性の評価をそれぞれCVSS で行う。なお 既存システムには現在DTLS-SRTP を用いて比較す る。表 1 に示すように、本研究の提案手法は各セキ ュリティの問題において、脆弱性がもっとも低いと いう評価が得られた。つまり本研究の提案手法のシ ステムは、非暗号化VoIP 通信のセキュリティ対策に 有用と言える。しかし、これは基本評価基準の数値 であるため、時間や環境の変化によって、数値は変 化する可能性がある。

表1:CVSS評価結果まとめ

盗聴 偽装・妨害 なりすまし

SIP+RTP 2.60 2.60 2.60

DTLS-SRTP 1.20 1.20 1.20

提案手法 1.00 1.00 1.00

3.3  ネットワークを流れるデータ総量の比較 SIP+RTP の非暗号化音声通信と、提案手法のト ンネリングツールを活用した暗号化音声通信を比較 する。ネットワークを流れる音声パケットの総量を それぞれ毎回 1 分間、10 回ずつ測定し、その平均 を算出して比較した。また、1 分間に流れるパケッ トの数も測定した。その結果を表2に示す。

表2:データ総量比較

SIP+RTP 提案手法 データ総量(byte) 536,937 558,596

パケットの数(個) 1,005 1,107

3.4  鍵の安全性について

音声の暗号化に用いる鍵の生成、交換における 安全性について分析する。

2004 年に RFC3830 で鍵交換プロトコルとして 標準化されたのがMIKEY である。現在MIKEY は、

SIP セッションの中で SDP の「a=」のパラメータ を用いて、鍵を交換するように実装されているもの が多い。この方法はお互いのユーザの IP 電話ソフ トが、この仕様に対応していなければならない。ま

たMIKEY は鍵交換に証明書が必要になるというこ

とから、あまり広くは普及していない。それに比べ て、DTLS は鍵交換の際パケット自体を暗号化する ため、有用と考えられる。本研究の ENUM を利用 した鍵交換の方法の最大のメリットは、ENUM のサ ーバを応用利用することにより、特にサーバやクラ イアントに、大きな変更を必要としないことである。

そのことにより、現在のベンダ間やISP 間の相互通 信性の低下を最小限に抑えることができる。また ENUM に登録された公開鍵は、DNSsec により情 報の信頼性が保証される。

4.結論

以上の結果として、CVSS を用いた評価において は、「盗聴」、「偽装・妨害」、「なりすまし」、のいず れにおいても、提案手法はもっとも脆弱性が低い値 となった。また提案手法のネットワークに流れる音 声データの総量は、SIP と RTP による非暗号化音 声通信の場合よりも若干多くはなるものの、ネット ワークに大きく影響を与えるものではなかった。提

案手法の ENUM を使用した鍵交換の方法は、標準

化に向かっているDTLS-SRTP よりも、実装後の相 互通信制が、高いことが予想される。

参考文献

[1] マッキーソフト株式会社, 「基礎からわかる TCP/IP SIP によるVoIP プログラミング」, オーム社, 2004.

[2] IPA 独立行政法人情報処理推進機構, 「共通脆弱性評

価システムCVSSv2 概要」,

http://www.ipa.go.jp/security/vuln/SeverityCVSS2.html

参照

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