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修 士 論 文 概 要 書

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Academic year: 2022

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専攻名 研究指導名

氏名 学籍番号

指 導 教 員

研 究 題 目

2010 年 2 月提出

修 士 論 文 概 要 書

5108B051 – 5 CD 情報理工学

並列知識情報処理

斉藤 和佳子

上田 和紀

LMNtal 階層グラフの可視化手法の提案と実装

1 はじめに

LMNtalとは階層グラフ書換えに基づく並行言語モデル

である.データ構造が階層グラフを形成するため,図的理 解が容易であり,このためLMNtal可視化ツールUNYO- UNYOが以前より開発されていた.UNYO-UNYOにお けるグラフの配置手法は,無向グラフの描画法の一つで ある力指向配置を採用している.力指向配置では,ノー ド(LMNtalでいうアトム)間に何らかの力を定義するこ とで配置を行うが,先行研究では一般的な力の定義の他 に独自の力を追加し描画を行っていた.また,階層構造 を形成する膜もノードと見なし,力指向配置を適用する 手法が考案されていた.しかし,この手法は確立されて おらず,階層を含むグラフにおいて安定した配置が行え ていなかった.そこで本研究では,階層を含むグラフに おいても安定した配置を行うことを目標とする.

2 階層ごとの配置計算

LMNtalにおいてノードと言えばアトムであるが,UNYO- UNYOでは,配置計算上セルも仮想的にノードとして扱 う.セルとはアトムの多重集合を膜で囲ったものである.

これにより階層ごとの配置座標計算を実現する.同階層 に所属するアトムや膜(セル)同士のみ配置計算の対象 となる.

3 階層グラフ配置処理の流れ

従来は力指向配置と独自の配置手法を区別せずに行っ ていたが,これが,階層グラフの配置において良い描画 が行えない最大の原因と考えた.そこで,配置処理を配 置作成処理と配置修正処理に分け,これを軸に改良を行っ た.また,力指向配置の力の定義を見直し,新たな定義 を導入した.グラフの配置は,大きく分けて「初期配置」

「力指向配置による配置作成処理」「配置修正処理」の3 段階で行われる.

4 初期配置

力指向配置による配置の結果は初期配置に依存する.し かし,その効果的な配置法は定式化されておらず,ラン ダムに配置されることが多い.そこで本研究では初期配 置の工夫を行った.

アトムからなる連結グラフの初期配置 まず,階層を含 まない連結グラフについて,隣接ノードの近接性と最小 分離を考慮したアルゴリズムを考える.初めに,ある連結 グラフの中からランダムに基準となるノードを選ぶ.こ の基準のノードの座標を原点と考え,他ノードを配置し ていく.まず,基準ノードの隣接ノードを定められた半径 の円周上に等間隔で配置する.その後,配置されたノー ドの隣接ノード(配置済は除く)を自ノードから見て0 からπの範囲の円周上に等間隔に配置する.これを繰り 返し行う.

非連結グラフの初期配置 非連結グラフの初期配置アル ゴリズムは連結グラフgを指定領域に詰めていく箱詰め 問題として考える.gのノードはすでに前述のアルゴリズ ムで配置されている.また,gはグラフを包含する矩形と して捉える.使用したアルゴリズムはNFDH法(Next-Fit Decreasing Height Algorithm)である.

セルを含む連結グラフの初期配置 セルは非連結グラフ の配置と同じよう,箱詰めを行う.連結グラフにアトム からなる部分グラフが含まれる場合,部分グラフはアト ムからなる連結グラフのアルゴリズムで配置される.配 置された部分グラフを一つの箱と考え,同様にNFDH法 で再配置する.

階層ごとの再帰的な配置 複数の階層からなるグラフは 最も深い階層から以上のアルゴリズムを繰り返し行う.こ れらのアルゴリズムによって実際に配置されたグラフを 図1に示す.このアルゴリズムは近接性を満たすと先述 したが,c60のような閉路を含むグラフは,必ずしも近 接性を満たさないノードが存在する.

図1:グラフの初期配置

(2)

5 力指向配置による配置作成処理

力指向配置とは無向グラフ描画法の一つで,ノードを 質量0のリング,エッジをばねという物理モデルに置き 換えて考えられる.ノード間に働く力として,隣接ノー ドが離れている場合は引力,近づきすぎた場合は斥力が かかる.また非隣接ノード間には斥力を定義する.この ノード間にかかる力の定義によって,様々な手法が存在 する.本研究では,隣接ノード間のばね力を定義した.ま た,非隣接ノード間の斥力として固有楕円ポテンシャル による斥力[2]を導入した.これはサイズが違うノードが 存在しても重ならないような力となっている.これによ りセルの配置に対応した.他に,描画面積を抑えるため,

独自のモデルとして膜を縮める力を導入した.また,有 向辺の向きを揃えるための回転力が付与されるマグネス ティックスプリングモデル[3]を追加した.

6 移動量の調節

力指向配置では,配置計算と移動を繰り返し,最終的 にエネルギーが最小となる座標に配置を行う.一回の移 動は少しずつ行われるため,配置結果を得るのに時間が かかる.この移動量を大きくすれば速く収束するが,一 度に多く動かしすぎると振動や発散し,解が求まらない.

このため適切な移動量に調節することが求められる.そ こで,本研究ではGEMアルゴリズム[1]による移動量の 調節を行うことにした.GEMアルゴリズムによる移動量 の調節は,ノードに温度の概念を取り入れ,温度の高い ノードは大きく動かし,低いノードは小さく動かすとい うものである.全体の温度が低いほど,安定状態と言え る.また,ノードが振動や回転していると判定された時 は,温度を下げ移動量を減らし安定状態へ向かわせる.

7 配置修正処理

力指向配置は連結グラフのノード配置を最適化する方 法であるため,非連結グラフ同士の配置については別の 配置法を考えなければならない.また,力指向配置で排 除できなかった膜の重なりも排除する必要がある.そこ で配置作成後,配置の修正を行う.描画規則のコンパク トに配置,ノード同士が重ならないを考慮し,非連結グ ラフを互いに近づけるアルゴリズムとノードの重なり排 除のアルゴリズムを考えた.

8 膜を貫くリンクの交差削減

階層ごとの配置計算を行っているため,描画規則が考 慮される範囲は同階層のみであった.このため階層を貫 くリンクが存在するとき,他のリンクと交差したり,接 続されているアトム同士が離れすぎてしまう問題が生じ た.そこで,階層のあるグラフにおいても,アトムの近 接性とリンクの交差最小を満たすことを目標としたアル ゴリズムを考えた.この機能は,新たにばね力を「階層 が違う隣接アトム」と「膜を貫くリンクを持つアトムの

所属膜」間に定義し,通常の力と共に一定時間再配置を 行うものである.これにより,膜を貫くリンクの交差を 減らすことができた.

9 考察

従来のUNYO-UNYOと本研究による改良後の描画面

積について比べた.膜を含む6つの例題で比較したとこ ろ,すべて従来より縮小でき,最大で約0.1倍まで縮小 することができた.また,膜を貫くリンクの交差削減機 能を2階層以上膜が存在する7つの例題で実験したとこ ろ,想定していたようなグラフに関しては交差数を減ら すことができ,リンクの平均長も短くできた.従来と今 回の配置結果を図2に示す.

図2:従来(左)と今回(右)の配置結果

10 まとめと今後の課題

本研究では,LMNtal階層グラフの可視化において,階 層グラフ配置手法の提案と実装を行った.まず,先行研 究ですでに使用されていた力指向配置の力を,新たに定 義し直した.また,力指向配置では得られないグラフ配 置を配置修正処理として,このレイアウトをもとに修正 を行うアルゴリズムを考え,導入した.配置手法の改良 により,以前に比べ安定した配置を行えることを確認し た.また,階層を含むグラフにおいて描画規則が満たさ れなかった問題に対し,新たにヒューリスティクスを考 え,適用することで一定の効果が得られることを確認し た.今後の課題は,配置修正処理のアルゴリズムの改良 や,グラフの抽象化,配置計算速度の向上などがあげら れる.

参考文献

[1] A Frick, A Ludwig, H Mehldau: A Fast Adaptive Lay- out Algorithm for Undirected Graphs, Proc. Graph Drawing (GD’94), LNCS 894, pp.388-403, 1994.

[2] 松林達史,山田武士,藤村滋,藤村考:固有楕円ポテンシャ ルを利用したラベル付きグラフ可視化の座標計算,数理モ デル化と応用, Vol.1, No.1, pp.88-101, 2008.

[3] 三末和男,杉山公造: マグネティック・スプリング・モデ ルによるグラフ描画法について,情報処理学会研究報告. HI,ヒューマンインタフェース研究会報告, Vol.94, No.60, pp.17-24, 1994.

参照

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